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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
参加人数:8人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2014/08/23


みんなの思い出



オープニング


 ここは、とある公園。
 きれいな川と森にかこまれた、のどかな場所だ。
 週末の昼下がり。園内は大勢の人でにぎわっている。
 広場では、ボール遊びに興じる子供たち。
 ベンチにはカップルが並び、熟年層は犬を散歩させている。
 まったくもって、どこから見ても、平和すぎるほどに平和な光景だ。
 ──が! そこへ突如として現れる、ディアボロ軍団!

「きゃああああああ!」
「うわああああああ!」
「おねえさまあああ!」
「あにきいいいいい!」

 妙な悲鳴が混じっているが、ともかく現れたのはゴブリン(小鬼)みたいなディアボロ10匹。
 こういう舞台でゴブリンが登場したとなれば、やることは決まっている。罪のない人々を襲って、村を恐怖に陥れるのだ。ここは村じゃないけどな。
 どんなゲームでもザコあつかい、場合によってはスライムより立場の低いゴブリンだが、この世界では違う。なにしろ彼らは透過能力を持っているのだから。一般人には抵抗する術がない。

「ぎゃあああああ!」
「うわらばあああ!」
「ひでぶぅぅぅぅ!」

 血の雨が降り、平和な公園は一転地獄と化した。(シリアス!)
 そのとき。剣を手に威勢良く現れたのは、通りすがりの自称勇者。一応、撃退士である。
「待てい、ゴブリンども! 勇者の血を引く俺が相手だ!」
「せ、拙者も加勢するでござるよぉぉ!」
 ニンジャめいた口調で出てきたのは、35歳ニートDTの魔法使い(一般人)
 どう考えても勝てるはずないのだが、彼らには戦わねばならぬ理由があった。
 というのも、ゴブリンどもの手にロリ幼女が捕らわれているのだ!
 これは命にかえても助けねばなるまい!

 その数分後、久遠ヶ原に緊急依頼が舞い込んだのであった。



リプレイ本文



 撃退士たちが公園に到着したとき。そこには異様な軍団が待ちかまえていた。
 まず先頭に立つのは、やたらメカっぽい3匹のゴブリン。それぞれ、ザコ、ザッコー、リグザッコーの名を持つ、ゴブスカール帝国の尖兵だ。武器はビームサーベル……ではなく、鞭。
 次に、空を飛んでいるのは股間からフラミンゴの頭を生やした変態。フラミンゴゴブリン。一本足打法から繰り出す拳法は強力無比だ!
 さらに、依頼書で『ニンジャゴブリン』と書かれていたのは『ジンジャーゴブリン』の間違いだった。神社なので巫女衣装。武器は生姜!
 段々ひどくなってきたが、安心しろ。ドラゴンは正真正銘のドラゴンだ。カンフーの使い手で、名はブルース・ゴブリー! 必殺『脂肪遊戯』は、秘孔をついて相手を太らせるという大技だ!
 つづいて、パーフェクトゴブリンは完璧なルックスを誇る美少女ゴブリン。……って、コレただの美少女だ! イイネ!
 最後に、軍団を指揮するのはゴブリンコマネチ。……え、コマンダーだろって? コマネチを『Commander in chief』と空耳したんだよ!
 以上、ラファル A ユーティライネン(jb4620)プロデュースによる特殊軍団が、本日のお相手です!

 ……って、うオおおい! やってくれたな、ラファルぅゥゥ!
 どうすんだコレぇぇぇ!



「これがゴブスカール帝国の力……」
 まじめな顔で、袋井雅人(jb1469)が呟いた。
 女物のスクール水着をつけて、女物のパンツを顔にかぶってる。
 もう完全に慣れて何とも思わないけど、どうして逮捕されないんだろう、この人。
「聞いてた話と違うよー? 棍棒で殴ってくるとか言ってなかったー?」
 どこか楽しげに抗議したのは、咲・ギネヴィア・マックスウェル(jb2817)
 気持ちはわかるが、現場に行ってみたら情報が間違ってたなんて、よくある話だ!

「おお、援軍登場ですな! これで勝つる!」
「へっ、遅ぇじゃねぇか」
 ニート魔法使いと自称勇者は、血まみれで戦っていた。
 が──

「くそっ、いたいけな幼女が……!」
 桜花(jb0392)の目に映ってるのは、幼女だけだった。
 空中で捕まった幼女は、フラミンゴの首にまたがって泣いている。どういう絵だ、これ。
「野郎……引きずり落として細切れにしてやる……!」
 桜花は光纏して曲刀を抜いた。
 幼女を巻きこむ危険があるので、得意の散弾銃は使えない。ホントは狙撃銃とかあれば良いのだが、いま購買で135mm対戦ライフルを売ってないのだ。無念。しかも、桜花に飛行スキルはない。刀でどうする?
 そこへ、雅人が助け船を出した。
「私が力を貸しましょう。方向性は違えど、おなじ変態仲間として!」
「ありがとう! 持つべきものは変態仲間だね!」
「ええ、変態仲間ですよ!」

 などと盛り上がる変態どもをよそに、ラファルはいきなり最後通告をつきつけた。
「よく聞け、おまえら! 10かぞえるうちに降伏しろ! さもなくば、一斉攻撃で人質ごと皆殺しだー!」
 最初から最後通告とは、じつにラファルだ。とてもラファルだ。これぞラファルだ。
「10! 9! 8!」
 いきなりクライマックスで、問答無用のカウントダウンが始まった。
 だが、そんなことで逃げだす帝国軍ではない。勇者と魔法使いも、覚悟を決めている。

「撃退士はともかく、一般人を危険にさらすわけには……!」
 意を決すると、川内日菜子(jb7813)は縮地を発動して走りだした。
 止めたところで聞くようなラファルではないと知っての行動だ。任務とはいえ、相棒を人殺しにするわけにいかない。
 が、そんな日菜子の想いなど知ったことかとばかりに、カウントをすっとばして「3! 2!」と言いだすラファル。鬼か。
「いくぜ! フィンガーキャノン全弾斉射!」
 有言実行な性格なので、脅しではなく本当に発射してる。
 これぞ、やりたい放題!
「本当に撃ったな。それでこそラル……!」
 間一髪。攻撃が届く寸前で、日菜子は魔法使いを担ぎ上げた。
 そのまま一気に離脱……と思ったところで、砲弾が日菜子の背中にドカーンと命中。
「く……っ。いまのは効いたな。だが、私は阿修羅。どんなケガだろうと、唾でもつけとけば治る!」
 ものすごい根性論で己を奮い立たせ、金城鉄壁の想いで耐え抜く日菜子。
 そして、生命力が減ったのを利用し大逃走! 乱れ飛ぶミサイルの雨の下を、安全地帯めざして走る!

 数秒後、日菜子はどうにか生還した。
「おー。やればできるじゃねーか、ヒナちゃん」
「まぁ、な。相棒からの愛だと思えば、このくらい気付けみたいなものさ。……ただ、もうすこし手加減してくれたら、もっと嬉しかったが……」
 そう言うと、日菜子は膝をついた。
 振り返ってみれば公園は黒煙に覆われて、ひどいありさまだ。
 だが、煙が晴れたとき。そこには無傷のゴブリン軍団が!
「俺の一斉射撃が効いてないだと……!?」
 目を疑うラファル。

「ほほほほほ! 帝国の技術力を甘く見たわね! 我が軍団は、全員ゴブリウム合金の鎧を装着済み! チャチな技など通じないわ!」
 レオタード装備の美少女型ディアボロ、ゴブリンコマネチが哄笑した。
「ブルース! やっておしまい!」
「ホワチャアー!」
 萌えよドラゴンの主題曲をバックに、体長10mの竜が怪鳥音をあげて突撃してきた。
 そして炸裂する、脂肪遊戯!
「でぶーーっ!?」
 巨大な鉤爪で腹を貫かれたラファルは、激太りしながら血まみれで吹っ飛んでいった。
 なんだかもう色々ひどいが、ぜんぶラファルのせいだ! なんだよ、ゴブスカール帝国って!


「おもわぬ強敵だが……よかろう、俺様が相手だ」
 ランディ ハワード(jb2615)は闇の翼を広げて、突撃銃を抜いた。
 そこでふと思いついたように、魔法使いへ声をかける。
「いいか? いまから仲間が幼女を救出する。その子を安全確実に保護した上で、貴様にも生き残ってもらう。すべてうまくいった暁には……おまえが好きそうな合法ロリっ子を紹介してやろう。がんばって生き残れ」
「ならば拙者は命に代えても生き残るっす!」
 悪魔の囁きが功を奏したか、はたまた単なる趣味か、魔法使いは二つ返事でうなずいた。
「約束したぞ。生きて帰れば、ロリ幼女はおまえのものだ」
 魔法使いの肩をポンと叩いて、ランディは上空のドラゴンを睨み上げた。
「ゴブリンのくせにドラゴン。しかもブレス持ちの上に、謎の拳法使い……か。上等だ。悪いが墜ちてもらおうか!」
 翼を羽ばたかせ、敵へと肉薄するランディ。
 タイマンとは無謀すぎるが、大丈夫か!?
「いくぜ! BGMは銃声! できればそれにプラスして、三角関係な奴らでも聞きたいものだぜ!」
 マニアにしかわからないネタを口走り、突撃銃をフルオートで乱射するランディ。
 ドラゴンは「ほあちょおおお!」とか叫びながら、ブレスも吐かずに跳び蹴りしてくる。
 それを華麗に回避して、ランディは竜の頭部に突撃銃で兜割り!
 そのまま銃口を突きつけて、弾倉が尽きるまで撃つ! 撃つ! 撃つ!
「マニアなら一度は決めたい必殺技、アサルトマニューバ! 全弾持っていけ!」
 ズドドドドド……!



「はじまりましたね。ともかく私たちは幼女を助けましょう。この、力をあわせた合体技で!」
 ランディの空中戦を見上げながら、雅人は地面に寝転がっていた。
「ほんとにいいの? 言っとくけど私、恋音より重いよ?」と、桜花。
「大丈夫。信じてください。おなじ変態仲間を!」
「わかった。信じるよ、おなじ変態仲間を!」
 イヤな絆を深めつつ、合体技の体勢をとる二人。
 字数がないので描写は省くが、冷静に見て気が狂ってるとしか思えない技だ。ふたりにピッタリ!
「桜花さん、幼女のことはすべておまかせしますよ!」
「了解! まかせて!」
「「いけェ〜〜! スカイラブハリケ〜〜〜ン!」」

 ロケットみたいに打ち上げられる桜花。
 一直線に敵へと迫った彼女は、曲刀を一閃。
 フラミンゴの首ごと、ゴブリンの首を切断。
 同時に、左腕で幼女をかかえ──
 空中でクルッと回転し、華麗に着地。
 救助成功!
 幼女南無!

「よしよし、怖かったね。もう大丈夫だよ、私が守ってあげる。ここは危ないから避難しようね」
 変質者めいたニヤニヤ笑いを浮かべながら、幼女をかかえて走る桜花。
 幼女は完全に怯えた様子で、声も出ない。
 そのまま暗がりへ連れ込み、息を荒げる桜花。
「怖かった? 私の胸に顔をうずめてみて? どきどきしてるでしょ? 私も怖かったの。でも、あなたのために頑張っちゃった」
 どきどきしてるのは、単に幼女と二人きりだからだ。
「ケガとかしてない? 痛いところない? もしケガしてたら大変だから、服を脱いでみて?」
「へ、へいき……ケガしてない……」
「ちゃんと見ないとわからないよ。おねえちゃんが見てあげるから。全身くまなく。ね?」
 両手をワキワキさせながら、幼女に迫る桜花。
 こうして幼女は、天魔以上のトラウマ体験をすることに。



「まるで、虎から救って狼に預けるようなもんね」
 桜花の言動を見ながら、咲は呟いた。
 そこへ、3匹のザコゴブリンが襲ってくる。
「よし、こやつらはあたしに任せてもらおう!」
 葉っぱをくわえて、巨大な戦鎚を背中から抜き放つ咲。
 その戦鎚で予告ホームランを宣言すると、向かってくるザコをフルスイング!
 しかし、体型が不自由な咲のバッティングは精度が悪い。
 おまけに、三位一体のザコアタックはみごとな連携ぶり。
 一方的に鞭を喰らって、咲はMに目覚め……たかどうか知らないが、とにかく全身ミミズ腫れに。このままではアブナイ!
 弱った咲を見て、ザコ三連星はトドメを刺そうとJSA!
「あー。ジェットストリームアタックって、一列で突進してくるのよね。一列で。あー。あ?」
 おもむろにバッティングフォームをとりなおし、タンゴのリズムに乗る咲。
 キラーン☆と瞳を輝かせ、封砲発動!
「秘打・だんゴブ三兄弟ッ、チャーンチャン♪」
 グワァラゴワガキーン!
 封砲とは思えない怪音とともに、黒い衝撃波が走り抜けた。
 その一撃で、ザコ三連星は爆発四散! 3匹だから十二散!

 しかし! 次に現れたのは完璧美少女!
 モデル並みのルックスとプロポーションは、とてもゴブリンと思えない! 実際これはもうゴブリンじゃない!
「くっ、おっぱいが全て押しつぶされたようなドラム缶体型のあたしでは、歯が立たないわ……! あとはまかせた……ッ!」
 勝ち目がないと悟って、崩れ落ちる咲。

 Pゴブ○(体型勝負KO)×ギネヴィア



 そんな感じで、戦況は混戦の様相を呈してきた。
 敵は残り6匹。
 撃退士側はラファルと咲が脱落しただけだが、そろそろ勇者がヤバい。どれだけ止めても戦いをやめないのだ。
 そこへ現れたのは、魔王・月乃宮恋音(jb1221)
 冗談ではなく、本当に魔王の格好だ。顔の隠れる、フード付きの黒ローブ。さらしはギチギチに締めて、体型がバレないよう配慮。手には大鎌を持っている。
 横に引きつれているのは、真っ黒な鎧に身を包んだ黒神未来(jb9907)
 ただならぬ二人の気配に、敵味方の視線が集まった。
 注目を浴びたところで、未来が演技力たっぷりに言い放つ。
「ふん、しつけの悪い犬だ。魔王ツキノミヤ様が降臨されるというのに、勝手に動きおって」
 ゴブリン軍団に向かって言ったのだが、これは勇者に聞かせるためのセリフだ。
 つづいて、勇者を挑発する。
「まったく、愚かな話だ。人の身で我らに挑もうというのか? チリになりたくなければ、さっさと逃げ失せるが良い」
 だが、勇者は逃げなかった。
 それどころか、「ウオオオ! いくぞオオオ!」とかソードマスターっぽく叫びながら走ってくる。超迷惑!
「まさか、この時代に勇者を名乗る者がいるとは……。その力、見てさしあげましょう。きなさい」
 演技中だけ、やたら滑舌の良い恋音。
 その手からスリープミストが放たれ、ついでに未来が氷の夜想曲を奏でる。
 走ってきた勢いのまま、W睡眠を喰らって地面を転がる勇者。
「よしゃ、うまくいったで」
 未来は荒縄を取り出すと、勇者を簀巻きにして安全な場所に転がした。



「これで全員救助しましたね。ならば手加減無用! いまこそラブコメ仮面の本気を見せるときですよ!」
 雅人は闇を纏いつつ、敵陣に斬り込んでダークハンドを発動した。
 束縛されたフラミンゴゴブリンが、目の前に落ちてくる。
「一切の迷いを捨て、放つは全てを破壊する一撃! 暗黒破砕拳!」
 グシャアアアッ!
 一本足打法とか見せるヒマもなく、フラミンゴは死んだ。
 あと珍しく雅人がカッコイイけど、女子用のスク水でパンツかぶってることを忘れてはいけない。

「今日の私は本気です! くらえ、キッコー・バインド!」
 雅人の手からアレスティングチェーンが飛び、巫女さんを縛り上げた。
 さらに、動けなくなった巫女さんに対して妖召呪符で触手妖怪を具現化!
「悪い天魔はおしおきです! ここを! こんなふうに!」
「いやああああ……!」
 急所を触手責めされて、巫女さん昇天。

「では、もう一人の巫女さんにもSM触手プレイゲフッ!?」
 怪しいことを言う雅人の頭上から落ちてきたのは、ドラゴンに敗れたランディだった。
 頭をぶつけた二人は、その場で失神KO。
 やはりドラゴンと空戦でタイマン張るのは無理すぎた。



 というわけで、あと戦えるのは恋音と未来と日菜子だけ。
 え、桜花が無事だろって? うん、全力で幼女にイタズラしてるよ。
 一方帝国軍は、新体操美女、完璧美少女、巫女さん、ドラゴンが残ってる。

「なかなかヘヴィーな状況だな」
 日菜子が冷静に現状を評価した。
「なんも問題あらへん。月乃宮クンにまかせとけばええって!」
 無責任なことを言う未来。
「えとぉ……私は非戦闘要員ですよぉ……?」
「なに言うてんの! さあ魔王様、あのしつけの悪い犬どもに奥義テラ・マギカを食らわせてくださいませ!」
「その演技、まだ続けるのですかぁ……!?」
「よろしいですか、魔王様。あなたさまの真の力を見せつけることで、魔界を引き締めなければなりません! いまこそ、魔王月乃宮様のご威光を見せるとき! さぁぶちかましてください!」
「うぅ……そこまでおっしゃるなら……」

 というわけで テラ・マギカが 炸裂し 敵を残らず 殲滅したのさ



「さ、さすが魔王様! 一句詠んでる間に、あれだけの敵を皆殺しとは!」
 あまりの結果に、未来も驚くしかなかった。
「なんという行殺……これがコメディバトル……」
 日菜子も唖然とするばかり。
「ううう……こんなことになるなんてぇ……思いもしませんでしたよぉぉ……」
 恋音は半泣き状態だ。
「これでまた、魔王ツキノミヤの名が広まるっちうわけやな!」
「そ、そんなぁぁ……!」



 以上が、『魔王月乃宮テラマギカ事件』の真相である。
 こうして彼女は、魔王の座を不動のものとしたのであった。




依頼結果