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マスター:ArK
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/04/15


みんなの思い出



オープニング

○あらすじ
 撃退士の纏うアウルは植物の成長に影響を与えるか否か。その調査として様々な調整の末に得られた実験地。
 生徒らと共に最終確認に赴くと不運が待ち構えていた。奉仕種族・土竜が屯い現れたのだ。生徒らの活躍により近隣住民が知る間もなく土竜の撃破に至れたものの――
「異空間――ゲート?」
 戦闘の痕跡を片付けながらの整地中、土竜の穴を追った先の地中にて廃棄ゲートを発見した。


●調査結果
 廃棄ゲートとは、管理者による破棄や撃退士による破壊によりエネルギー吸収活動を停止したゲートである。吸収活動はしないものの作成時の残存エネルギーによりそのエネルギー尽きるまで眷属を召喚し続ける代物だ。
 なぜ今回の実験候補地調査時点で発見できなかったのか疑問を持つ者も居るだろう。
 起動中のゲートは管理者による結界や人間の変調、支配する天魔の活発な活動により発見はさほど難しくない。
 しかしそこにゲートがあったという記録すら残っていないゲートについては、現状、偶然の侵入など以外による方法で発見に至る手段がないままである。勿論一般人が誤って侵入すれば一瞬のうちに死亡することに変わりはない。
 地上に入口が存在していたならば発見されていただろうが、被害もあっただろう。
 発生経緯の一切が不明だが、今もエネルギーが残存し眷属を排出し続けているということはそれなりの力の持ち主により作成されたはず――というのが学園に所属する、ある研究者の見解である。
 同時に、存在さえ知られないうちに放棄するのは天魔陣営からすれば余程の臆病者か馬鹿者だろう――という見解も。


●新たなる目的
「悔しいですが、考えることは同じだったということでしょう」
 というのが一応学園の技術職員であるはぐれ悪魔ライゼ(jz0103)の見解。
 天魔にとってゲートとは城である。満足いく城を建てるため気脈のよい地を求め、その天魔はこの地に辿り着いたはず。
 そしてはぐれ悪魔のライゼも、人類側に帰属してからはゲートに変わる城として、畑を持った。更に今回の実験地も、
気脈のよい地としてこの地に辿り着いたわけだ。偶然か必然かはともかく、
「気に入りませんね」
 先住者の残骸が残されていることが、気に入らないとライゼは零す。
 更に現れる眷族が奉仕種族ということは天界陣営ゲートであり、学園からも眷属排出地のうちのひとつが判明したものとして、脅威の排除が依頼され、ライゼの実験など中止である。それでも。
 それでも早期に決着が付けばまだ間に合うかもしれないと、諦めきれないライゼは任務への同行を強く願った。


●侵入
 土壁にしかみえない入口をくぐると、そこは異次元空間、ゲート内部。
 灯りがなくとも視界に困ることない妖しい光が所々に浮いている。直視しても眩しくはない。薄暗く青白く、寒くなく、暖かくもない、ただ力失せる場所。
「‥‥学園に所属してからゲートに入るのはわたくしも初めてでして。最近のゲートは何か変わりましたかしら?」
 まるで流行に変化があったかどうかを確認するような口ぶりでライゼはあちこち観察しながら歩いていく。
 植物の蔦が絡み合うような床と壁が細い通路を作っている。製作者の意向か、壁のところどころに覗き窓のような小さな隙間がある。隙間から外を窺ってみると何色とも表現しがたい空間が広がっていた。
「ここと外はどのような関係になっていますのでしょう?」
「そう‥‥ですね」
 このゲートの場合、植物の蔦が足場としての重力を持ち、人が足をついて歩ける状態を保っていると仮定。外は人間界でいう空――どちらかといえば宙であり、蔦の通路は何らかの力で空間に浮遊固定されている。空間自体は無重力空間のようなものである、と。
「放りだされても、撃退士であれば生命活動に問題はありませんし。飛翔出来る天魔なら外で困ることもないでしょう」
 ――色々観察しながら進むと、先に広間らしい空間の開きを感じた。
「終点であろうか?」
 壁沿いに進み、丁度入口に立ったところで、ライゼの動きがぴたりと止まる。
 疑問を抱いた後続が広間を覗き込むと、そこには床を埋め尽くすような土竜の大群が在って、数の倍の瞳と、己の目が合った――。


リプレイ本文

●広間手前
 通路にて礼野 智美(ja3600)は掌を閉じたり開いたり、閉じたり。
「ゲート内って、力が減少する感覚が嫌なんだよなぁ‥‥」
 万全で乗り込んだにもかかわらず、本調子に届かない力の喪失感を確かめていると。
「あぁ。相変わらず居心地がいいとはいえない場所だ」
 ルーカス・クラネルト(jb6689)も智美の言葉に同意を返す。ルーカスはゲート入口発見現場に居合わせ、引き続き任務に当たろうと名乗りをあげたひとり。外の様子を覗き窓から見ては眉間に皺を刻んでいる。
 またルーカス同様、カルロ・ベルリーニ(jc1017)も引き続き任務に当たる者であるが、
「なんと天界側のゲートであったとは‥‥! 人間界に居なければ決して入りえることなかったであろう‥‥!」
 その場の誰よりも悦びに包まれていた。冥界陣営に居たときは自称戦争中毒者として各地を転戦したものだが、ゲートに攻め入る機会など私にはやってこなかった。それに引き換え地上にはなんと戦場が溢れていることか――等と口上展開するカルロの隣を、ひらりとすり抜ける少女は黒百合(ja0422)。
「ねェライゼ、もう少しここに関する情報はないのォ♪?」
 出し惜しみしてるんじゃないの? と疑うように、ねだるように、にたり微笑む黒百合が尋ねるとライゼは答えた。
 土竜の出現元がここであり、地上で交戦した土竜が潜んでいることは確か。これまでも不定期に眷属を排出しては被害を出していたらしい。しかし排出元として真っ先に疑われたのは攻略済ゲート。既に閉じているが、過去に幾度も掃討班が送られていたという。
「そっちも土竜だったのォ?」
「いえ?」
 色々居た様子。また内部にどれだけどのように土竜が潜んでいるかについては、これからこの目で確かめる他にない。
「ふぅ〜ん‥‥。ま、頑張っていきましょォ♪」
 なんたってゲート内での戦闘は久しぶりだし、と黒百合から不敵の笑みは絶えない。


●広間入口
 先頭に立ち、広間を覗き込んだライゼの動きが凍った。
「‥‥あら。先生の様子が――どうしたのでしょうか?」
「ん? ほんまやな。ライゼ先生どうしまし‥‥」
 やや後ろに居たユウ(jb5639)が異変に気付き声を発すと、ライゼの直ぐ後ろに居た亀山 淳紅(ja2261)が前へ出た。
 広間を覗き込むため、ひょっこりライゼの隣から顔を出す――と、土竜の大群と目が合った。
「あー‥‥、これはまた大猟、ですね?」
 淳紅はそのまま、今度はライゼの顔を見る。言葉を失うを通り越して硬直状態であるのが確認できたが――反応の素早かった土竜が先手、礫を放ってきた。身構えることないライゼの身を礫が打つ。
「敵、大量!」
 淳紅はライゼを庇うように前へ踏み出しながら叫ぶ。向かってくる土竜、礫を放ってくる土竜への堰だ。
 声と同時に闇の翼で浮遊したユウが広間を一望に収め、結果を伝う。広間に障害物はなく、奥に通路が見える。また、瞬間では数え切れない数多い土竜の注意が此方に向いていると。
 浮遊しているユウの真下を潜り抜けた黒百合は、ゆうに己が身長の2倍はある漆黒の巨槍を発現し、
「そこのボサっとしてる土竜ちゃんたちにプレゼントォ〜!」
 土竜密集地目掛けて凪ぐ。同時、ロンゴミニアトの尖端から槍身を分けた如き影の刃が放たれた。刃は土竜のみを抉り切り刻んだ。直撃を受けた存在は消滅。
 しかし突出はしていないものの前へ出たことで標的に定められる。足の届く土竜が勢いのままに体当たりを仕掛けてきた――が、するりと回避。
 黒百合が抜けた空間へ、鈍い銀色の銃身に塗装し直した自動式拳銃を手にカルロが滑り込む。
「兵力を揃え待ち構えていようとは! 罠か策か!? だが私は行為を蔑むまい! 何故ならここは戦場!」
 冥界陣営時に、カルロがどのような戦場を渡ってきたかは本人しか知りえない。
 しかし戦端は開かれた。言うが早いかオートマチックのマズルフラッシュ。弾丸は射程内の土竜に撃ち込まれるも、消滅には至らない。
(まずは頭数を減らさなくては。なるべく一回の射撃で致命傷などになりうる攻撃を――)
 ルーカスはカルロが撃ち抜いた土竜への追撃を試みる。得物はPDW FS80。地上戦においても仲間を支援した防衛火器だ。
 攻撃に専念出来る様、淳紅やユウの後ろより狙撃に努めながら、横目でライゼを見ると未だ動きはない。
(初撃で致命傷を――違う、か。地上での件を考えると単純に‥‥)
 今ルーカスに出来ることは気にはなれど具体的対策を考えるより、狙撃し、数を減らすこと。正解にも遠くないはず。
 直ぐ横を風が抜けた。此れまで戦況を注意深く観察していた智美が駆けたのだ。黒髪を結い留める飾り紐を指で梳き、珠をひとつ抜きとれば、其れが智美のヒヒイロカネ。珠は掌の中で眩い白銀の刀身を持つ曲刀に変容、全身に纏う金色の炎が切っ先に届くと同時に一閃、土竜を凪いだ。追撃に次ぐ追撃で消滅する土竜。
(広範囲攻撃手段を持ってない俺に出来ることは、此れくらいだろう)
 力量を見定め、出来ることを努める。死角を減らすよう壁を背負った智美は刀を構え直した。
 この間にも土竜の大群は獲物を求め、押し合い圧し合い前進を続けている。


●広間進攻
「自分たちから進んで群れて貰えるのは、私としては助かりますけれど」
 ユウは脇にいる淳紅、少し前の黒百合、壁際の智美らの位置を素早く確認してからエクレールCC9を用い影の刃を放つ。敵味方識別不可能な技であれ、仲間が付近に居なければ躊躇う必要はない。そして刃は高威力すぎたか、逃げる余地のない土竜らを床ごと一掃。空間に流し放たれたのが先か、塵と消滅したのが先か。
「どうやら、床の下に地面はないようですね」
 通路に繋がれた広間は積層階層の一部ではなく、空間に浮いていると発覚。また、空間を破壊したからといって広間が傾くこともない。進行方向に道を失った土竜らはその場で踏み留まり礫を放ってくるも淳紅の受ける傷は僅か。
「ん? 先生?」
 背後に庇うライゼが動きを見せた気がして声を掛けるが反応はない。視線を戻す淳紅。
 ユウに続いて再び範囲攻撃を仕掛けた黒百合が声を上げる。土竜は劫火で焼き尽くされるが、床に損傷なし。
「ね〜ユウちゃん、床に穴を開けるのは宜しくないんじゃないのォ〜?」
 黒百合の威力制限は、翼持たない人間が外空間に放りだされては乱戦中の回収困難と考えての懸念。
「いえ。翼がないのは土竜も同じです。見ての通り土竜たちは穴を渡ろうとせず足を止めました。これを利用すれば移動進路を限定できるのでないでしょうか?」
 どちらも一長一短一理あったが、答えを即断できる者は居なかった。
「俺が位置取りに気をつけるよ。二人に合わせて動くようにするから」
「ふふぅん〜♪ それじゃ〜ァ、私が智美ちゃんの進行方向を掃除しようかしらァ♪」
 双方の意見を尊重し、太刀を手に床を駆ける必要のある智美自身が気をつけることに落ち着く。万が一どちらかの性別が男であったなら対応は違ったのかもしれない。

 より効果的な範囲殲滅を狙うため、入口付近に在りながらも見過ごされた大小2体の土竜が淳紅らに接迫する。
 大土竜の体当たりの衝撃は重く、ライゼごと淳紅を通路の奥へ押し込めた。次いで小土竜の放つ礫がカルロを叩く。
「この‥‥!」
 重い衝撃を覚えながらも反攻に転じる淳紅。赤黒ヘッドセット周りで踊る小さな鯨が淳紅の意志を得て飛び出した。
 マジックスクリュー。
 激しい風が巻き起こり眼前の大土竜を飲み込む。風が収まったとき土竜は朦朧状態。目は敵を捉えていない。次手で致命傷を与えられればいいのだけど、など考えていると後方から衝撃に襲われた。――後方?
 朦朧としていたはずのライゼが意識を取り戻していたのだ。土竜との間に位置していた淳紅を壁際に押しのけると、一足飛びに前へ出、鋭い爪で土竜を切り裂いた。大土竜消滅。
 時を同じくカルロと共に小土竜を排除したルーカスが隣に立ったライゼを見る。
「先生、大丈夫で――はなさそう、か」
 声を掛けたが目は敵だけを捉えていた。群れる敵目掛け、何も考えずに飛び出していく可能性を淳紅が阻む。
「ちょっと待って下さい!」
 自分が危ない状況ならともかく、平常状態で生徒を突き飛ばしてまで攻勢にでる教師がいるだろうか? 恐らくまだ普通ではないと判断し、しがみ付く。
「飢え、敵を求める様を否定することはないが、滅ぼすならば礼儀正しくであろう!」
 無差別に暴れまわって何が得られるか、とカルロも持論で諭すも効果はなく。ライゼのせいで入口付近が慌しい。
「そういえば先生は土竜が嫌いだって聞いた覚えが‥‥」
 騒動に乗じて獲物を裂こうと構える土竜の背に、智美は時雨で切りかかる。
 ルーカス自身も先の戦いでの様を見ているため、土竜を前にしたライゼが正気でないことは想像に難くない。
 淳紅がライゼを取り押さえている間に土竜の数を減らすよう、前方のユウ、黒百合へと強く願いながら、ルーカスも智美が切りつけた土竜へ正確な射撃を追って加えることで倒していく。


●広間制圧
 土竜は威力侵攻によって既に数を半数以下にしていた。
 敵の合間に降り立ったユウが、氷の夜想曲と謳う常夜の闇を周囲に撒けば、土竜は瞬時に動作を凍らせ、目覚めない眠りを漏れなく与えた。
「これはどうかしらァ〜ア!」
 対して黒百合が方向のみを定めた命名・雷光砲を放つと射程上の土竜は薙がれ、何も残らない。
 既に大技は撃ちつくし、残りは点在する土竜を片付けるのみ。
 この頃にはライゼも徐々に正気を取り戻したようで、淳紅やカルロに頭を下げながら広間に出てきていた――が、ユウの攻撃により床は多く抜け落ちており、無用に歩かないよう、黒百合が制した方位から大回りする。
 残った土竜が細道を縫って迫るのをカルロが矢で射ると、ルーカスは礫を放とうとする土竜を回避射撃で阻害した。

 床を穿つ穴をものともせず、飛び抜けた先で武器を振るうのはふたり。
 威力を見せ付けようと理解のない土竜は怯まず迫り来る。
 身体に疲れを覚えたユウは土竜が射程内に収まったことを確認してから、
「‥‥吸魂」
 銃の先端を突きつけながらぽつり呟いた。土竜の動きが止まったと思えば生命力がユウに還元される。弱々しい足取りの土竜に一隻の矢が放たれ突き刺さった。目を向ければ黒百合が魔滅銀星弓を構えている。
 鈍い動作でゆったりとやってきた特大土竜と交戦する頃には数逆転。
「もうひと踏ん張りですよ!」
 淳紅がヘッドセットに手を当て、高らかに謳うとユウの傷が癒された。黒百合も前線に居たが、スクールジャケットを代償にした空蝉や、元来の丈夫さにより被害は少ない方。
「大きな的は外す方が難しい」
 射程際に陣取ったルーカスは足場が安定していることを確認し、一射。
「これで終わりか? 他に伏兵は居ないのか!?」
 待ち伏せる敵はこれだけで終わるはずはない、と瞳を輝かせカルロは周囲を警戒しながら、土竜への攻撃も忘れない。
「小さいのはこれで仕舞いだ」
 壁や床に開いた穴を背負わないように注意して動く智美が、負傷した土竜を切り捨てていく。
「ここの主かどうかは知りませんがそろそろ退場頂きましょう」
 ふわり優しく微笑みを浮かべたユウは轟音と共に黒い霧を纏う弾丸を撃ちだした。弾丸は一直線に特大土竜を貫通。巨体に対して傷の程は小さい。反撃に備え身を固め、次手を待つ。
 飛び出したのは黒百合。槍を突きつけ抉り、傷を広げた。特大土竜が腕を大きく振り上げ叩きつけてきたが、回避。
「そうだ‥‥!」
 淳紅は思い出す。
 小土竜らは片付けられ、智美らが合流しようと駆けて来ている。特大土竜もユウと黒百合に掛かれば時間の問題のはず。今後の為として手持ちのデジタルカメラで土竜の撮影を行った。乱戦状態では難しく、倒せば消滅してしまう相手でも今ならば可能と見定めて。
 撃退士らの能力が非常に高すぎて判別が非常に困難だが、特大土竜の命中精度は確かに落ちてきている。もう一息。
 ユウの更なるダークショット、黒百合の斬撃、淳紅による土竜の鼻っ面に狙いを定めた通常攻撃。土竜の反撃は射程内に辿り着いたルーカスが回避射撃で逸らすよう援護し、カルロが温存していたストライクショットを撃ち込んだ末、土竜は潰えるのであった。


●広間調査
「歩くならこちらの方がいいと思いますよ」
 自分で破壊した痕跡だけれどもと、ユウがはにかみながら安全な道筋を案内し、奥の通路を目指した。
 現在の広間に土竜はいない。奥の通路前に辿り着いて、慎重に覗き込んだが、敵の姿は無い。ただ道が伸びている。
 新たな敵が居ないことにがっくりとうな垂れたカルロ。
「一息つけそうだね」
 増援などに備え、智美は携帯してきたおにぎりをひとつ頬張った。中身は梅干。
 先に進む前に少し調査をしておきいたと、黒百合が陰陽の翼を広げて外空間へ飛び出す。
「ところで先生、土竜そんなに駄目なのか?」
 尋ねるルーカスに、多少ならともかく数の多さにふいを打たれただけです、とライゼは答えた。衝撃が解けたかと思えば怒りが前面に出てしまいお恥ずかしい、と。
(根本的な対策は掃討に参加しないことなのだが。数、か‥‥。視界に入れなければいいのか?)

「は〜ァ? ふ〜ん。へ〜ェ――もしかしなくて壁に穴明けて、外から一方的に射撃って手も取れたのかしらねェ?」
 黒百合が外空間で矢を放ってみると、力の方向へ真っ直ぐ飛んでいった。十分に威力で勝っていたため、また外へ放り出されないよう十分に注意していたため、戦闘中に機会を得られなかったが、面子によっては可能だったかもと考える。
 そんなことを考えつつ、翼が消える前に仲間の下に戻り報告する黒百合。
 伸びている通路の先に此処と同じような大きな箱――恐らく部屋が確認できた。中は見えない。
「土竜どもは軍勢を率い、そこで待ち構えているわけか!」
 なるほどなるほどと、カルロは満足げに何度も頷いている。戦争はまだ終わっていないのだ。
「私たちに学園が与えた任務は、このゲートから排出される眷属が、人里に被害を及ぼす前に処断しておくことです。今のような数が一斉に開けた地上に現れ、先の報告にあったように地中移動をされると厄介ですからね」
 どれだけの数が待ち構えていようと、内部で処理できるものは内部で処理すべき、と通路の奥を見据え、ユウは語る。
「先生は、次も付いてくるんですよね?」
 淳紅が念のため確認を取ると、視線を向けた先のライゼはゆっくりと頷いてみせた。

 ――耐性が少しでも出来ていればいいんだけど――気にかけた者は心で祈ったかもしれない。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: 歌謡い・亀山 淳紅(ja2261)
重体: −
面白かった!:2人

赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
暁光の富士・
ルーカス・クラネルト(jb6689)

大学部6年200組 男 インフィルトレイター
戦争こそ我が夢・
カルロ・ベルリーニ(jc1017)

大学部4年178組 男 インフィルトレイター