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マスター:星流 嵐
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/20


みんなの思い出



オープニング


※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


「ふぁ…… さて、寝るかなぁ」
 いつものようにベッドに入り枕に頭を沈める。今日も一日無事に終わった。そんなことをぼんやり考えているうちに眠りに落ちた。

 ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 突然のけたたましいアラート音に叩き起こされる。
「な、なんだ! ど、どうした!」
 目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。驚いて見回そうとしたとき、自分の首周りに違和感を覚える。見下ろしてみると、いつの間にか機械っぽいものがゴテゴテ付いた宇宙服のような物を着ていた。いや、待て。見下ろす? 自分はベッドに寝ていたはずだ。そこで初めて、自分が立っていることに思い至った。改めて周りを見ると金属的な質感の白い壁にモニターのようなものがいくつもあり、どこかのSF映画で見たコンソールパネルあった。とりあえずそのパネルを見てみようと思ったとき、背後から突然声が上がった。
「なんだよっこれ! ここ、何処だよっ!」
 驚いて振り向くと、同じ宇宙服をきた者が数名立っていた。皆同様に不安げにキョロキョロにしている。だが、その中に学園で見掛けたことのある顔を見つけて少しだけ安心する。
集まって話を聞いてみると、皆同じように寝たと思った途端にここにいたそうだ。とにかくこの部屋から出ようということになった時、壁にある一番大きなモニターが点いた。そこに映っていたのは、
「学園長、か?」
 白を基調とした軍服にベレー帽を被っている男性は、とても久遠ヶ原学園の学園長に似ていた。
『私は、ユーテシア王国直属艦隊司令のゴードンだ。全軍に告げる。我が艦隊はこれより次元跳躍の準備に入る』
 なにやら訳の判らないこと言っているが、出てきたのが学園長似なのだ。これは完全におふざけとしか思えない。
「ちょっと、学園長なんでしょう? ふざけてないでここから出して下さいよぉ」
『跳躍には艦のエネルギーを全て次元振動発生装置に回さなければならないため、跳躍準備の間は艦が無防備になってしまう』
「おーい! 聞こえてますか?」
 まじめな顔でSF小説のようなことを説明し続けるゴードン司令官。どうやらこっちの声は通じていないようだ。
「なんなんだよ、これ。なんかのイベント? ドッキリ?」
『しかし、帝国艦隊の追撃を逃れるためには、もはや次元跳躍するしかない』
「はいはい。それは大変ですねぇ 頑張ってくださいねぇ」
 みな、段々馬鹿らしくなってきた。なんだか知らないが変なことに引っ掛かってしまったようだ。
『我らの母なる星は帝国に乗っ取られてしまったが、ユーテシア王国は今尚健在である!』
 しかし、司令官の演説がヒートアップしていくに従って、自分たちの気持ちに変化が現れ始めた。何故か戦わなければならないんだという気持ちになってきたのだ。そして、いつの間にかモニターの前で直立不動にしている自分に気付く。それは他の者も同じようだ。みなモニターの前に集まって真剣に話を聞き始めていた。
『例え大地を失っても我らユーテシア人の誇りは失わないのだ!』
 そうだ! 学園は…… ユーテシアは不滅だ! 
『我らの王女様さえ落ち延びられれば、いつか必ずユーテシア王国は再興できるだろう!』
 帝国などには屈しないぞ!
『王女様よりお言葉がある。手の空いているものはモニター前にて待て』
 そう言うと、ゴードン司令官の映像が消え、別の部屋の映像に切り替わった。

 そこに映っているのは、豪華なドレスに身を包んだ美しい少女だった。どこかで間違いなく見たことある顔なのだが、もはやユーテシアの王女としか考えられなくなっていた。
『王国軍兵士の皆さん。わたくしは、ユーテシア王国第一王女レミューリア・ソル・ユーテシアです。不甲斐ない王家のせいで、故郷を追われ、ご家族、友人と離れ離れになってしまったこと、どうかお許し下さい』
 そう言って王女は悲痛な表情で深々と頭を下げた。だが、そんな王女を非難する者などこの王国軍にはいない。気丈にしているが、王女の親、ユーテシア国王、王妃、そして兄である皇太子までもが、帝国によって見せしめのために処刑されているのだ。その映像は非情にも帝国によって全宇宙に流されている。家臣たちの手によって脱出していた王女もそれを見ているはずだ。
 しかし、再び顔を上げた王女は、もはや悲しい顔などしてはいなかった。決意に満ちた目を真っ直ぐに見据えている。
『ユーテシア王国は滅亡しましたが、わたくしたちユーテシア人の心を変えることはできません! 今のような帝国の圧制がいつまでも続くはずはありません。虐げられた諸国の民たちも、いずれ必ず立ち上がるでしょう。そのときには必ず仇を、そしてユーテシアの再興を成し遂げるのです! ですが、今はまだ機会ではありません。ここは切り抜けて、生き延びることが大切です。王国軍兵士の皆さん、どうかわたくしに力をお貸し下さい』
 おお! 当たり前だ! 王女様をお守りするのだ! みな、気持ちは完全に王国軍の兵士になっていた。
 王女は祈るように胸の前で両手を組み、優しげな表情で最後の言葉を投げ掛けた。
『どうか皆さん、死なないで下さい…… そして、一人も欠けることなく皆で新天地に参りましょう。どうか、どうかご無事で……』
 モニターの映像が切れても誰一人動こうとはしなかった。何としても生き延びるんだ! そう心に決意する。
 再びアラート音が鳴り響く。
『全艦。第一級戦闘配備。全艦。第一級戦闘配備。旗艦はこれより次元跳躍の準備に入る。護衛艦は旗艦防衛配置につけ。艦載機部隊は、直ちに発進せよ! 繰り返す。旗艦はこれより……』
 発令と同時に部屋の片側の壁がスライドして開放される。その向こうには、パイロットを待つ戦闘機がずらりと並び、その周りを整備兵たちが駆け回っていた。
「よっしゃ! いくぜ!」
 パイロットたちが愛機に向かって駆け出す。
 王女と王国の、そして自分たちの未来を賭けた戦いが、今始まる!


リプレイ本文

『こちら旗艦管制。発艦進路オールグリーン。全機、直ちに発進せよ! 繰り返す。全機、直ちに発進せよ!』
 九曜昴(ja0586)はいつものように牛乳パックをちぅーと飲み干すと、パックを整備兵に放る。整備兵も心得ていて、パックを受け止めると九曜のヘルメットを投げて渡す。九曜はコックピットの方へ飛び上がりながらキャッチして、颯爽と愛機である<プロキオン>に乗り込んだ。この機体の正式名称はワルキューレ級戦闘機Type-A『ブリュンヒルデ』。しかし、九曜は命を預ける愛機に<プロキオン>と名付けた。
「相棒のプロキオン・・・一緒に頑張るの・・・いつもどおりやれば大丈夫なの。プロキオンGO!」
 九曜のプロキオンは戦場へと飛び出していった。
 或瀬院由真(ja1687)は同じくType-Aのコックピットで、目を閉じてゆったりと気持ちを落ち着かせていた。敵の数は圧倒的に多いことは判っている。だが、
「敵の数がどれだけ多かろうと・・・私達は、絶対に負けません・・・」
 操縦桿を握る両手に力を込めて、そしてゆっくりと目を開けると、金色の瞳が強い光を放つ。そこには普段のおっとりした或瀬院の面影はない。
「・・・或瀬院、出ます!」
 戦乙女がまた一機、戦場へと突進していく。
 ミーミル・クロノア(ja6338)と天道ひまわり(ja0480)は、ワルキューレ級戦闘機Type-B『ランドグリーズ』で発進の順番を今か今かと待っていた。Type-Bは多数の武器が装着されたアーマード型だ。ミーミルはType-Aより多いスイッチ類の位置を再チェックしていく。
「さーて、また撃墜スコア、稼がせてもらうよ!」
『なに言ってん。今回のトップはうちがもらうで』
 通信で天道が突っ込みを入れてきた。ミーミルと天道は同じ部隊でいつもスコアを競い合っている。その2人が揃って戦場に出ると最強だ。自分の外見に合わせてミーミルは自機を赤色に、天道は黒色にしているので、敵からは“紅黒の戦慄”と恐れられている。
 ついに発進許可がきた。ミーミルは拳の関節をポキポキと鳴らして気合を入れる。
「ミーミル機発進! みんなで無事に帰るんだよ!」
「ほな、行きましょかぁ」
 赤と黒の戦慄が戦場へ躍り出た。
 蔵九月秋(ja1016)と兜みさお(ja2835)の後方部隊の発進は最後だ。ワルキューレ級戦闘機Type-C『ヘルヴォル』は護り手として強力なシールドを装備している。
『蔵九。今回こそは旗艦の護りを優先するように! いいな!』
「へいへい。判っていますよ。司令官殿。じゃあ機体の最終チェックがありますんで」
 蔵九は、司令官のいつものお小言通信を早々に切った。防衛?馬鹿言え、攻撃が最大の防御だっつぅの。内心で舌を出しながら他機へのダイレクト通信をオンにする。
「みさお。俺はいつものようにいくから、後ろは頼むぜ」
『え? えぇ! だって、さっき司令が・・・』
「戦場に出たら臨機応変っていうだろ」
『で、でも、わたしじゃ・・・』
 隣に並ぶみさお機を見ると、みさおがコックピットから不安げな顔をこちらに向けていた。
「お前だから任せられるんだよ。もっと自信を持てよ」
 そういうと蔵九はグッと親指を立てて大丈夫だと頷いてみせる。みさおもそれを見て何とか頷き返してきた。
 みさおは強く握り締めた両手に視線を落とす。出撃前はいつも気持ちが怯える。一度戦場に出ればそんな気持ちもぶっ飛んでしまうのだが。気合入れに両手で頬をパシンッと叩くと同時に発進指示がきた。
『蔵九! ハープーンTECドリーマー、出るぞ! ハレルーヤァー!』
 雄叫びと共に蔵九が射出される。
 みさおは座席の横に固定している、己の魂のロボ模型を軽く指で弾くと、
「兜、いきまーす!」
 高Gに体を押し潰されながら、最後のエースが戦場へ飛び立つ。

『旗艦より各機へ。敵艦載機を確認。数300。接触まで20秒。また、後方攻撃艦に高エネルギー反応確認。主砲準備の可能性大。注意されたし』
 先行して布陣を終えた王国軍は、敵を迎え撃つ形になった。
『こちら、ミーミル。私たちが弾幕を張るからね。それと同時に突撃よろしく!』
『こちら、或瀬院。了解しました。まずは私たちが敵を攪乱します。皆さんは、その隙を突いて攻撃艦を狙って下さい』
『天道、了解。攻撃開始カウントダウン・・・ 5、4、3、2、1、発射!』
 Type-B全機のミサイル・ポッドから無数のミサイルが射出され、敵軍へ殺到していく。そのミサイル群を追うようにブリュンヒルデ隊のType-Aが猛進する。
 敵軍からの応戦のミサイルが多数発射され、両軍の間に無音の花火の帯が発生した。
『突撃なの!』
 九曜のプロキオンが爆炎の間隙を抜けて敵軍へ踊り込んだ。正確無比のレーザー機関砲が次々に敵機を落としていく。敵軍の編成を斜めに切り裂くように突入する。敵機が2機正面から撃ってきた。九曜は機体をロールさせながら銃撃を回避しつつ機関砲を二連射する。
「なのっ!」
 そのまま敵機の間をすり抜けると、2機が後方で爆散した。九曜の口元がにやりと歪む。
「その程度の腕で僕と戦おうなんて、思わないほうがいいよ?」
 或瀬院機も敵軍の中を縦横無人に飛び回る。機動力にものを言わせて急旋回や急加速を繰り返して敵を翻弄している。
「! そこっ!」
 急旋回で相手の後ろを取った或瀬院がトリガーを引く。しかし、相手は機体を横スライドさせて回避した。その後も射線を外すような機動でなかなか簡単に撃たせない。
「この動き・・・リーダー機ですね。落とさせて頂きます!」
 或瀬院は敵の後ろに喰らいついて離れず、じわじわと追い込んでいく。
「そろそろですね」
 相手の動きに焦りが見え始めたところで、進行方向にミサイルを撃ち込む。相手は難なく回避したがそれは予測済み。回避した先に既に機関砲を連射しており敵機が蜂の巣になって爆発した。
 ミーミルと天道の部隊はブリュンヒルデ隊が切り崩したところに、更に追い討ちをかけて敵の数を減らしていく。高出力レーザー砲で威嚇しつつ、端からロックオンして墜とす。視線感知式で視線を向けた先の物体を次々ロックオンしていく。機体の機動と平行して行うのだ。常人ならあっという間に目を回してしまうようなことを平然とやってのける。
『ミーミルちゃん! あそこやっ!』
『よっしゃ! 右舷前方20度、仰角14度! 敵の層が薄くなった! 突っ込むよっ!』
『『了解っ!』』
 破壊力を持った獰猛な戦乙女が動き出した。
「この機体の真価はこっからなんだよ!」
 重い機体を器用に振り回して敵の攻撃を回避しつつ、敵機が集まってきたらミサイルの弾幕で蹴散らして敵の攻撃艦に接近する。
 そのときミーミル機が後ろを取られた。
「ちっ! このっ!」
 機関砲を後方に向けるが相手の方が速い。やばいと思ったのは一瞬の半分、敵の射線上に位置するミサイル・ポッドを1つ迷いなくパージする。切り離されたポッドが相手の攻撃を受けて爆発した。ポッド内に残っていたミサイルにも誘爆して爆炎が広がる。
 爆炎を隠れ蓑にして、ミーミルは操縦桿を限界まで引くと同時にスロットルを全開にして急反転を掛ける。敵の背後に回り込んだミーミルは一撃で撃ち落す。ホッと息をついていると、Type-Aが2機高速で追い抜いていく。
『道は僕たちが切り拓くの、思う存分攻撃艦を落とすといいのっ!』
『レーダーや対空火器は、こちらでできる限り潰します!』
 2機は連携しながら、鋭い槍のように右翼の攻撃艦への道を穿つ。
 九曜と或瀬院が開いた花道を通り、激しい対空砲火の中をランドグリーズ隊は攻撃艦に接近する。
「全機、出し惜しみは無しやで! 全弾発射っ! 突撃1000%LOVEハートぉ!!」
 Type-B全機から残りの全弾が一斉に発射され、まるで霰のように攻撃艦へ降り注ぐ。次の瞬間、攻撃艦の右側面が白い閃光に包まれた。爆発の衝撃波が数秒遅れて空間を震わせる。敵の攻撃艦は右側を無残に破壊され、姿勢制御を失って左に傾きつつコースを外れていく。これでもはやこの艦は戦力外だ。沈める必要まではない。時間さえ稼げればいいのだ。
「一艦片付いた! ランドグリーズ隊全機、重いドレスは脱ぎ捨てて、後方部隊と合流するよ!」
 空になったミサイル・ポッドを全てパージすると、身軽になったランドグリーズ隊は反転して後方へ下がっていく。
『左翼がまだ結構残ってるけど、どうするんや?』
『大丈夫だよ。そろそろ痺れを切らすのがいるから。あ、来た来た』
 そういうと同時に、通信にだれかの雄叫びが響き渡った。
『イィィィイヤッホォ!!』
 蔵九のType-Cがブースター全開で、敵左翼に突っ込んでいく。砲撃をシールドで防ぐのはいいとして、近付いてきた敵機にシールドで体当たりして弾き飛ばすのは非常識にも程がある。
「タリーホー! てめぇらそこから動くなよ。 ハハハ!」
 わざわざ敵が密集しているところに飛び込んで的になる。当たる攻撃と当たらない攻撃を見極め、攻撃が着弾する寸前にシールドを張る。
「おっと、おしい・・・ほら、もっと纏まって来いよ、俺の処理能力が追いつかないほどによぉ」
 最大戦速に達したところでブースターを停止して慣性飛行で飛び続ける。そして機体の姿勢制御のスラスターを左右対称に噴かして機体の向きを変えて攻撃するのだ。まるでミラーボールが光を散りばめるように、全方位に高出力レーザーを撃ちまくる。
「ヒャッホォォォッ!! オラッ! オラッ! オラァァッ!」
『・・・』
『・・・』
 敵も味方も蔵九のアクロバティックな攻撃に言葉を失った。
 その頃みさおは最終防衛ラインで抜けてきた敵機を確実に落として、旗艦の方には一機たりとも通していない。
「熱い! この熱さ!! 勝利は我等に有りです!」
 出撃前の怯えは影も形もなく、敵を落とす毎にヒートアップしていく。
「兜みさおの熱き魂とくとみやがれーッです! ゲキスゴイビィーーム!!」
 味方を援護しつつ、被弾して戦線を離脱してきた味方機がいれば即座に飛んでいって、自分が盾になりながら味方を護る。
「大切な人達を守る! どんなことがあろうと! 皆で笑い合えるその日まで!」

『旗艦より各機へ。旗艦の次元跳躍の準備完了。これより15分後に次元跳躍を行う。全機防衛を維持しつつ後退せよ。跳躍カウントダウン開始』
 旗艦からの通信のが終わると、側面モニターにデジタル・カウンターが表示され、15分の数字がかうんと・ダウンを始める。
「こちら九曜。ブリュンヒルデ隊、後退するの」
 敵の艦載機は旗艦を護る後衛部隊以外はほとんど撃墜している。ここで後退しても追っ手はないだろう。
 機首を回そうとした或瀬院は、敵の後衛部隊が動いたのを見た。後方の攻撃艦の前から退避するように左右に分かれていく。ハッとして、慌てて味方全軍へのオープン・チャンネルをオンにして叫ぶ。
「敵艦主砲きますっ! みんなっ! 逃げてぇっ!!」
 通信を切ると或瀬院は機首を返して、主砲を撃とうとしている攻撃艦へ向かう。その横にもう一機。
「! 昴ちゃんっ!」
『行くのっ!』
 艦首にある巨大な砲門が光始めた。発射まで数秒もないだろう。
「「いっけぇぇぇぇっ!!!」」
 2人が放ったミサイルが主砲発射口に全弾着弾するのと、敵艦主砲が発射されるのが同時だった。膨大な光の奔流が押し寄せる。2機はギリギリで直撃を免れる。
 主砲発射から僅かに遅れて、ミサイルが着弾した発射口が爆発を起こした。その爆発は徐々に攻撃艦内部に伝播し大爆発を起こし攻撃艦は轟沈した。更に、爆散した艦体の一部が左翼攻撃艦の推進部に突き刺さり行動不能に陥れた。しかし、最初の爆発によって主砲レーザーは遮断されたが、既に放たれたものが消えるわけではない。威力は半減したとはいえ、当たれば被害は甚大だ。
『させるかよぉぉぉ!!』
 蔵九機が迫り来る主砲レーザーの前に躍り出た。前方シールドに全エネルギーを注入すると、シールドが青白く輝きその面積を広げる。
 直撃。エネルギーが対消滅によって光に変換されて中和されていく。先ほどの攻撃で結構エネルギーを使ってしまったので、パワーが足りるかどうかギリギリだ。時間にして数秒が何分にも感じられた。やがて衝撃が収まり、静けさが戻る。何とか耐えたようだ。蔵九は役目を終えたシールド・パーツをパージして後退する。
 みさおは蔵九機が動きだしたのをレーダーで確認してホッと息をついた。最終防衛ラインの外側で味方機が全機後退したのを確認して、自分も転進する。敵艦隊も追撃してくる様子はない。カウントダウン、残り3分。
「なんとか、みんな無事に逃げられそうですね」
 だが、ホッとしたところに悪夢のような通信が入る。
『敵攻撃艦に高エネルギー反応!! 全艦退避!』
 しかし、次元跳躍直前の艦隊は動くことができない。どうにかできるのはType-Cに乗っている自分だけ。
「諦めません! この命ある限り!!」
 敵主砲の射線上に自機を移動させシールドを展開する。今度の主砲は全力のものだ。中途半端なパワーでは持ち堪えられない。帰艦用の予備エネルギーも全てシールドに回す。これでもう帰れない。でもそれで構わない。
「皆さんは明日を生き、未来を繋いで・・・」
 敵主砲が発射された。視界が白熱する。生死の境にいるのに気持ちは妙に落ち着いていた。今までの仲間との楽しい時間が思い出される。
 光が収まり、閉じていた目を開く。後方に目をやると王国軍艦隊は健在だ。防ぎ切った。しかし、機体はボロボロになっている。例えエネルギーが残っていても動けないだろう。その時、モニタのカウントダウンが“0”になった。時間切れ。シートを倒すと虚空を見つめて呟く。
「グッナイソルジャー・・・です」
『なにがグッナイソルジャーだ! ボケが!』
「え?」
 突然の罵倒にみさおは驚いて身を起こす。カツンッカツンッと機体に何かがぶつかる音が響く。
『なに、一人で黄昏てんねん。さっさと帰るで』
「え? え?」
『時間ないからねー ちょっと荒くなるから、しっかり捕まってるんだよ』
 機体が何かにグイッと引っ張られるように動き出す。
「え? え? え?」
『まったく。無茶は蔵九くんだけにして下さい』
「え? え? え? え?」
『・・・ちゃんと、みんなで、帰るの』
「えぇぇ!」
 周りを見ると、エース仲間の5機がみさお機を囲むように飛んでいた。ミーミル機と天道機が牽引ワイヤーでみさお機を引っ張っている。
「みんな・・・ ありがとう!」
 みさおは溢れる涙を止めることができなかった。諦めた明日がまたみんなと過ごせるのだ。
 6機はギリギリで次元跳躍の影響範囲に飛び込んだ。視界が虹色になるとともに、意識も安らかな眠りに落ちていった。

 次の日、6人はそれぞれの自分のベッドで目が覚めた。夕べのあれは夢か現実か?
 でも、清々しい気持ちと、生きているという実感が心に満ちていた。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

お婆ちゃん子・
天道 ひまわり(ja0480)

大学部4年78組 女 鬼道忍軍
秘密は僕の玩具・
九曜 昴(ja0586)

大学部4年131組 女 インフィルトレイター
TriggerHappy・
蔵九 月秋(ja1016)

大学部7年48組 男 インフィルトレイター
揺るがぬ護壁・
橘 由真(ja1687)

大学部7年148組 女 ディバインナイト
ロボナイズ撃墜王・
兜みさお(ja2835)

大学部1年252組 女 ルインズブレイド
紅の撃墜王・
ミーミル・クラウン(ja6338)

大学部4年158組 女 鬼道忍軍