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マスター:新瀬 影治
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/11/01


みんなの思い出



オープニング


 あの日、俺達がヒーティムと名乗るヴァニタスと相対してから、随分と長い時間が経つ。
 あれ以来、廃墟地帯にゾンビが現れる事も無く、期せずして事態は収束へと向かったかと思われていた……が。
「おいおい、何だこれ……?」
 二寺さんを連れ、ヒーティムの行動範囲内を巡回していた俺の目に飛び込んできたのは、炎に包まれた住宅地だった。
 悲鳴と罵声が飛び交い、俺達に目もくれずに、多くの人々がこの場所から走り去っていく。
「沖田君、これは……私達の予測していたヒーティムの行動範囲は、見事に的中していたと見て良いのでは?」
「そうじゃないとここまで酷い火災は起きませんよ、間違いありません。それにしたって、何で今更……?」
 二寺さんの言う事はもっともだ。もっともなのだが、本当に何故、今更になって彼はこの場所に現れたのだろうか?
 ……それに、本当にこの火災は『彼』の手によって引き起こされたものなのだろうか? その真偽を確かめる為にも、住宅地の中に踏み込まなければ。
「二寺さんは至急、救援要請を。逃げ遅れた人たちの救助をお願いします。俺はこのまま、この火災が本当にヒーティムの手によって起こされたものなのか……確かめてきます!」
「あ、ちょっと沖田君!?」
 俺はそれだけ言い残し、二寺さんの制止も聞かず、住宅地の中へと急ぐ。

 ――火災の中心と思われる場所へ急ぐ最中、焼け落ちた多くの建物の傍には、結構な数の焼死体が転がっていて。
「くそッ……!」
 もはや死んでしまっているのだから、助けるにも助けられない。
 ……だが、俺がもっと早くこの場所に来ていたのなら、この人たちも助かっていたのだろうか?
 そう考えてみると、自分が如何に非力な存在なのか、痛い程によく分かる。
 それでも立ち止まってはいけないのが今の状況だが、もし足を止めている余裕があったのなら、俺は死体の傍で、深い後悔に囚われていた事だろう。
「――ようやく来たか。随分と遅かったな、怖気づいていたのか?」
 そんな雑念を振り払い、走り続けたその果てに俺を待ち構えていたのは、ヒーティム。
 見間違う筈も無い、俺にとっての『悪』だった。

「怖気づく訳がないだろうよ。怖気づいていたら、まず此処まで走ってくる事も無いからな!」
「そうだな、それもそうか。それでもお前がこの場所に来るまでに、一体どれだけの人間が死んだと思う? お前も、その事は分かっているんだろう?」
 何も言い返す事が出来なかった。
 俺が少しでも早くこの場所に辿り着く事が出来ていたのなら、より多くの人々の命が救われていた筈だ。
 それは悔やんでも悔やみきれない、俺にとっての敗北。それは決して取り戻す事の出来ない、救う事の出来なかった命。
「ああ、当然さ……。だがな、それだからこそ、俺はお前を倒しに来たッ!」
 剣を抜き、それを真っ直ぐ構える。見据えるべき敵は、ヒーティムただ一人。
 確かにこの状況、悔やんでも悔やみきれない。失った命は、どれだけ足掻こうが取り戻す事は出来ない。
 だが、今はそんな事はどうでも良いのだ。考えるべきではない。
 考えるべきは、今此処でヤツを食い止める事だけ。ヤツを逃がしてしまえば、それこそ被害は拡大する一方なのだ。

「一人で俺を倒す、と?」
 否。今の俺に与えられた役割は、一先ずの時間稼ぎ。俺が一人でヒーティムを倒す事は不可能だ、それは最初から分かり切っている。
 しかし。俺がヤツの破壊行動を食い止め、時間を稼ぐ事が出来たのなら、話は別だ。
 現在、二寺さんが救援を呼びに行っている。つまり、時間さえ稼ぐ事が出来れば、救援部隊と合流してヤツを倒す事が出来るかもしれない。
「無理だと思うか? それもそうだろうな、でもやってみるまでは何も分からないだろ!」
 諦めなければ、足掻き続ければ、最終的にはきっと何とかなる。結局は他力本願だ、自分が情けない事ぐらいは分かっている。
 だがそれでも、それによって少しでも多くの人の命を救う事が出来ると言うのなら、それ以外に選ぶ事の出来る選択肢は無い……!
「……行くぞ、ヒーティム!」
「そうか、そういう事ならやってみろ! 人にとっての英雄がどれ程の力を持っているのか、どれだけ俺を熱くさせるのか……示しに来い!」
 剣を真っ直ぐ構えたまま、地面を蹴る。
 ヒーティムは拳に炎を宿し、俺を迎え撃たんとしているが、俺でも少しぐらいはやってみせる。
 英雄に救われたこの命、英雄と信じられたこの命。それを誰かの為に使えると言うのなら、それは俺にとっての本望なのだから。


リプレイ本文


 炎に包まれた市街地、内部。
「それが英雄の力だと言うのなら、とんだ期待外れみたいだな――!」
「ッ!」
 救援要請を受けた撃退士六名が現場に駆け付けると、そこでは、沖田雄介がヒーティムに圧倒されていた。
「たった一人で無茶をする……! 沖田さん、ここは僕たちに任せて!」
 しかし彼は、自身の役目と信じていた『時間稼ぎ』を上手く成功させたのだろう。
 鈴代 征治(ja1305)の呼びかけを受けた雄介は、傷だらけになりながらも後退。征治たちに向けて頭を下げる。
「……すみません、やっぱり俺には時間稼ぎしか出来ませんでした」
「いえ。その勇気、少し借ります!」
 悔しそうな表情を見せる雄介だったが、ヒーティム撃退の任を征治たちに引き渡し、彼は要救助者を救うべく走り出す。

「人助けも英雄の役目だ、頼んだぞ」
「はい!」
 すれ違い様に鐘田将太郎(ja0114)が雄介の背中を押すと、ヒーティムは自身の相手が六人に増えた事を察し、彼等の前に自ら歩み出る。
「久しぶりだな、破壊魔。今回は随分と派手に暴れたな」
「ああ、俺も待ち侘びたぜ。そこらの人間じゃ相手にすらならねえ、やっぱりお前らみたいな相手じゃないとな……!」
 将太郎は過去、ヒーティムの存在を突き止めた際に現場に居合わせた一人であり、ヒーティムも彼の姿を覚えていたのか、ニヤリと笑う。
「どうだ、このぶっ壊れた街は。炎は。まだまだ壊し足りねえが、ようやく自分自身の拳でお前らと戦えるとなると、楽しみで仕方がねえ!」
「また、救えなかったのか……。何が英雄だ、私はただのちっぽけな人間でしかない……!」
 悪びれず、破壊活動を常とするかのようなヒーティムの振る舞いに、川内 日菜子(jb7813)は拳を震わせた。
 いったい此処でどれだけの命が燃え尽きたのかと考える度に。
 力を持っていようが、護りたい一心があろうが、結局は何一つとして護る事が出来なかったと後悔する度に。

「救えぬ事を嘆き、自らを無力な人間と呼ぶか。奴等はただ、自分で自分を守れなかっただけだと言うのに、難しい事だな」
「……黙れ」
 彼女の中で、激しく炎が燃え上がる。
「やれやれ……ヴァニタスなんて厄介な相手さぁね」
 対話の中で九十九(ja1149)は自らの立ち位置を確認、ヒーティムを観察しつつ、行動の機会を窺う。
「なら、その力とやらで俺を倒してみたらどうだ? そこまでして誰かを救いたいと願うのなら、仇である俺を圧倒してみろ!」
 ヒーティムは日菜子を挑発するかのように言葉を続けるも、しかし彼女は、自身の役割を見失わず。
「黙れ、黙れ、黙れッ!」
 その身に炎のアウルを纏い、先行。強烈な蹴りを浴びせようとする。

「……非力と言う割には、随分と楽しませてくれそうだな」
 ヒーティムは日菜子の一撃を強烈な物であると判断したのか、その拳に炎を宿し、受けの構えを見せる。
「快楽の為に人を焼き殺す貴様に、何が分かる――!」
 そして命中寸前で蹴りを避け、炎を宿した拳を振り抜いた。
 拳は日菜子に命中、炎が彼女に向けて放たれ、その身を一瞬にして包み込む。
「けどまぁ、助けなきゃいけない住人はまだまだいるんでねぇ。あんたをどうにかさせて貰うさねぃ」
 反撃を受けた日菜子は炎を振り切るように離脱、九十九がそれを援護するように弓を引く。
 強き想いが宿る一撃はヒーティムに命中し、絆の力から成る二段目もまた命中するが、ヒーティムはその両方を的確に受け止め、微動だにしていない。

「威力は置いておくにしても、狙いが的確だな……? 普通じゃねえな、アンタ」
 しかし九十九の目論み通り、ヒーティムは狙いを彼に切り替え、脚部に炎を纏わせていた。
「英雄だかなんだか知らねえけど、やろうとしている事は結局、殺し合いじゃねえか」
 その刹那、カイン=A=アルタイル(ja8514)がヒーティムの死角を取り、至近距離からショットガンを撃つ。
 状況的にも命中は確実かと思われたが、ヒーティムは命中直前で咄嗟に回避。すぐさま受け身を取り、体勢を立て直した。
「数も不利なんでね、最初から分かってんだよ……!」
 彼は複数の相手と戦い慣れているのか、或いはその読みが的中したのか。
 炎を纏う足で地面を蹴り、爆速でその場を離脱。瞬く間に九十九の元へ接近し、踵落としを決めようとしていた。

「確かに此処へ来るのが遅れたせいで、失われた命があります。だからこそ、もうこれ以上は失わせません!」
 だが、それに反応した川澄文歌(jb7507)はアウルの力で鎧を作り出し、九十九の援護を試みる。
 九十九は踵落としを前に、回避すべきかと過去の経験から若干の迷いを抱くも、それは不可能と判断。
 正面からそれを受け、どうにか持ち堪えようとするが、その一撃は彼にとってはかなり重いもので。
「重いか? だがもう一発ッ!」
 続く攻撃も回避に転じる事が出来ず、九十九は拳を受けて吹っ飛ばされる。
 文歌の支援によって、九十九はどうにか意識を保つ事に成功するも、連撃によって受けた傷は重く、後が無い状況へと追い込まれる。
「俺は沖田と違って英雄に興味ねぇが、てめぇを許せないのは同じだ。てめぇがやらかした事、てめぇの身体に叩き込んでやる!」
 しかし、そのタイミングで将太郎がヒーティムに追いつき、力を込めての一閃を当てにいく。
 ただヒーティムは追撃、或いは援護が来ると読んでいたのか、すぐさま防御態勢に転じ、将太郎の一撃を受け流す。
 更に、攻撃を受け流しただけでは終わらず、攻撃後の隙を突いて一発、将太郎に拳を叩き込んでいった。

「一人ひとりの力は弱くても、皆でならっ!」
 だが、撃退士側も一歩たりとも譲らぬ動きを見せる。
 将太郎の攻撃によって生まれた隙を突くように、文歌が絆の力を利用しての二連撃を放ったのだ。
 想いが、絆の力が乗せられた二連撃であっても、ヒーティムはそれらを正面から受け止め、大したダメージにはならない。
「預かった想いと、人間の底力と、撃退士の絆がお前を倒す!!」
 そこへ征治が、更に繋げるように二連撃を狙う。
 単調な一発目の袈裟斬りをヒーティムは上手く受け流すが、二発目の受け流しは間に合わず、その一撃を拳で受け止めようとする。
 しかし征治の一撃はヒーティムの防御を押し崩し、多少なりともだが、有効な一手と成り得た。

「英雄だの正義だの悪だの、そんなのどうでもいいさね。自分の意思でやりたい様にやり切る事が、うちにとっては一番の事さぁねぃっと」
 前衛がヒーティムの注意を引き付け、攻撃によって押している間、九十九と文歌は再び敵との距離を取り、位置取りを行う。
「想い、絆、底力。中々強力だな、正面から押し崩しに来るとは」
 ヒーティムは前衛に包囲され、下手に動けばむしろ隙を晒す事になると判断したのか、その場から動かず、受けの姿勢を見せる。
「……どうして人の命を、私の想いを容易く踏み躙るか!」
 故に、これ以上の好機は無いと踏んで。
 日菜子が再び先行、先程受けた炎にも負けぬ、炎を纏っての蹴りを以て、自らにとっての敵を打ち砕かんとする。
「お前たちが真に力を持つ人間ならば、何度でも立ち向かってくるからだ――!」
 それは彼にとっての『選定』なのだろう。
 ヒーティムは回避ではなく、日菜子の一撃を真っ向から受ける事を選択し、彼は選択通り、その場を動かずに一撃を受け止めた。
 彼の纏う炎と彼女の纏う炎が衝突し、それは爆炎となって、辺りを真っ赤に染め上げる。

「……ちっ、やるな!」
 その一手を制したのは、日菜子。
 彼女の蹴りを受けたヒーティムは、比較的大きなダメージを受け、そのまま反撃に転じようとする。
 だが、日菜子とて負けじと受けに転じ、反撃の拳を反発の拳で以て相殺した。
 日菜子は炎によって多少の負傷こそ許したものの、反撃までもを防がれた事でヒーティムはバックステップを踏み、離脱を試みる。
「……そんなに暴力が好きか? 糞野郎」
 その瞬間、カインは一種の自己暗示法を利用した上で接近、着地したばかりのヒーティムの脚部に水面蹴りを叩き込もうとする。
 しかしヒーティムは着地の体勢から素早く回し蹴りを放ち、それを相殺。連続攻撃を狙っていたカインの懐に飛び込み、拳を突き出した。
 カインは咄嗟に拳を防御するも、炎の拳によって軽く負傷。狙いを打ち砕かれてしまう。

「こっちも格闘が主体なんでな、殴り合える間合いでペースを譲るつもりは無い。暴力というよりは破壊行為その物が好みだな、お前たちのようなヤツらが来てくれるんでよ……!」
 ヒーティムの渇望の根本的な部分にあるのは恐らく、自身を満足させ、より熱くさせる程の『強者』と戦う事だ。
 九十九はカインの支援をするべく、絆の力を利用しての二連射を放つ。
 一発目はヒーティムの反応が間に合わずに直撃し、二発目は防御されるが、そのどちらも有効な一手とは成り得ない。
「遠距離が苦手なら、アウトレンジから攻撃を仕掛けさせてもらいますっ!」
 だが、支援として見るなれば、それらの行動全てが大きな価値を持つ。
 九十九に続いて文歌もまた、絆の力を利用しての二連撃。
 初段を防御され、二発目も防御されたかと思ったその瞬間、ヒーティムの拳に炎が宿り。
「悪いな。俺は一方的にやられるだけの、つまらない戦いをする気は無いんだよ!」
 そして彼が指を鳴らすや否や、拳に宿った炎が解放され、文歌の足元から火柱が上がる。
 火柱は文歌の肉体を一瞬で呑み込み、致命的なダメージを負わせるも、彼女はどうにか踏み止まって。

「私は撃退士であると同時にアイドルです。私では力無く、英雄足り得ないかもしれない。でもアイドルは、倒れる訳にはいかないんですっ!」
「……ほう、随分と面白い事を言うじゃねえか。やるだけじゃねえ、やられる覚悟もあるって事だな?」
 文歌がその意志を示すと、ヒーティムは脚部に炎を纏わせ、彼女と九十九の元へ、再び突っ込もうとする。
「英雄じゃねえが、俺の攻撃、喰らいやがれ!」
 しかし、ヒーティムが構えを見せたタイミングで将太郎が突撃。
 力を込めた掌での一撃を叩き込み、吹っ飛ばす事で、彼の構えを見事に打ち崩した。
「残念ながら、長々とお楽しみに付き合うつもりはないんですよ!」
 更に、連携を繋げる事こそ叶わなかったものの、征治が吹っ飛んでいくヒーティムの元へ接近し、渾身の二連撃を叩き込む。
 ヒーティムは一発目こそ受け止めたが、歯が軋む程の力が込められた二発目を受け止める事が出来ず、再び吹っ飛ばされる。
「やりやがる、やってくれやがる……! やっぱりそこら辺のヤツらとは違う、随分と熱くさせてくれんじゃねえか!」
 吹っ飛ばされたヒーティムは着地、体勢を立て直しているが、その隙に九十九が小さな旋風を以て、文歌の傷に処置を施す。

 そしてヒーティムの前に立ち塞がるのは、温度障害を振り払った日菜子。
「壁を壊さん事にはその先の相手も壊せないって事か。そういう事ならやってやるさ、この拳で以て――!」
 恐らく、これが彼の全力なのだろう。
 解き放たれた力は炎となり、炎となった力は彼の全身を包み込んで、日菜子に対して神速の七連撃を叩き出す。
「……私はただ、真っ直ぐあろうとした」
 その初段を日菜子は、反発の拳によって相殺し。
「ただそう在ろうとするだけでは何にもならないぞ! その意志を以て、お前は何をする!」
 二段目は、九十九の放った矢が紫紺の風へと変化し、その拳の軌道を変化させるも、頬を掠めて。
「力さえあれば人を、命を護れると思っていた……!」
 だが三、四段目と続く拳を、日菜子は反発の拳によって相殺していく。
 拳と拳が衝突する度に炎が放たれ、日菜子はその身を徐々に焼かれていくが、決して屈しようとはせず。
「それで護れなかったからと、お前は――!?」
 五段目を、再び九十九の支援を受けながら、日菜子が拳で打ち返す。
「なのに、貴様はッ……」
 続く六段目、拳を打ち返された事でヒーティムが繰り出した回し蹴りを、彼女は的確に防御して。
「貴様はぁぁぁーーーッ!!」
 そして最後の一撃、互いに渾身の力を込めての一撃が、正面から衝突する。

「一人で全部受け止めやがるとはな……全く、どうなってやがる」
 炎に幾度と身体を焼かれた日菜子ではあるが、神速の七連撃を全て受け止められた事で、ヒーティムは反射的に彼女と距離を取ろうとする。
 しかし、そんなヒーティムの元へカインが素早く接近し、再びの連撃を狙う事で離脱を阻止する。
 カインは初段を防御され、素早く二段目の攻撃へと繋げようとしていたが、ヒーティムは決して連続攻撃を許さず、炎を宿した拳で彼を吹っ飛ばす。
「多くの人の想いの具現である私が倒れたら、希望が失われてしまうから。辛くても笑顔で、何度でも立ち上がりますっ!」
 だが文歌が反撃後の隙を狙い、絆の力を宿しての二連撃、最後の一発を叩き込もうとする。
 ヒーティムは二連撃を的確に防御、体勢を立て直して反撃へ移ろうとするが、日菜子が更なる追撃を狙う。
 鼓動の如く、強弱を繰り返す炎のアウルを宿しての一撃は、威力こそ十分だが、ヒーティムはきわどいタイミングでそれを受け流し、反撃の矛先を日菜子へと向けようとして。

「そのままやれると思うな。もう一発、喰らいやがれ!」
 最終的に、将太郎が繰り出した、目にも留まらぬ速さの一撃の防御へと転じる。
 ヒーティムは防御こそ成功させたが、その威力までは計算していなかったのか、防御すらも押し崩す程の勢いに吹っ飛ばされた。
「連携が、人の力がここまで強力とはな。これなら小癪な真似をせずとも、随分と……いや、十分過ぎる程にやり合えそうじゃねえか」
 吹っ飛ばされた彼は着地して、満足そうにニヤリと笑うが、そんな彼の元へ、光と闇のオーラを腕に宿した征治が詰め寄り。
「これで、終わりだ――!!」
 混沌の片鱗を宿すその一撃を以て、ヒーティムを捻じ伏せた。

「……俺の負けか、こりゃおっさんにも良い土産話が出来たな」
 撃退士の絆と底力を味わい、正面からのぶつかり合いに負けた事を認めたヒーティムは、やはり満足気にそう呟いてから、炎の力でこの場を離脱する。
「救出、手伝うか。あいつたぁ、また相まみえる事になるかもな」
 脅威となる存在の排除に成功した事を確認、将太郎は踵を返し、救出作業へと向かって行く。
「間に合わなくてごめんなさい……。せめて、これから助けられる命は精一杯守りますから」
 その一方、文歌は救う事の出来なかった人々の元へ歩み寄り、目を閉じさせてから黙祷を捧げる。
 そんな様子を見た九十九は、別働隊へ消火活動への移行を要請しながら、戦場となったこの場所を後にするのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 万里を翔る音色・九十九(ja1149)
 烈火の拳を振るう・川内 日菜子(jb7813)
重体: −
面白かった!:6人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
万里を翔る音色・
九十九(ja1149)

大学部2年129組 男 インフィルトレイター
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
無傷のドラゴンスレイヤー・
カイン=A=アルタイル(ja8514)

高等部1年16組 男 ルインズブレイド
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅