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マスター:新瀬 影治
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/05/01


みんなの思い出



オープニング


 天使として成すべき命を受け、市街地に降り立つ。
 周囲にあるのは背の高いビルと、行き交う人々の姿だけ。
 だがその人々も、私の姿を見るや否や、それを避けるようにして遠くへと逃げ去っていく。
 ――それは、仕方のない事だった。私は彼等に害成す『外敵』であり、彼等とは違う生き物なのだから。
 ただそれでも、私が受けている命令の内容から、今は彼等に危害を加えるつもりは無かった。
 だから。私が此処に降り立っただけで周囲に居た人々が逃げていくというのは、少しだけ、辛い気持ちになった。
「……?」
 下らない感傷に浸りながら辺りを見回していると、十にも満たないであろう小さな男の子が、地面に転んでいた。

 ……近付けば、怖がらせてしまうだろうか。そんな不安を抱きながらも、男の子の近くに歩み寄って、その場に屈む。
「怪我は無い? 立ち上がれる?」
 問いかけると、男の子は私の方を向いて不思議そうな表情をしながら、一人で立ち上がった。
 その膝には擦り傷があった。血が出ていて、戦場で見るような傷と比べてしまえば何事も無いように思えるものの、この男の子が負う傷にしては、酷く痛々しかった。
「怪我をしているようだから、大人の人に手当てをしてもらいなさい。それとも、痛くて歩けない?」
「ううん、大丈夫だよ。ところでお姉ちゃんは、誰?」
 男の子は、私の姿を見て怖がろうともせず、平然と問い返してきた。
 でも、それに答えてしまえば怖がらせてしまうだろうと考えて、口を閉ざした。
「周りの人も逃げていっちゃったし、普通じゃないって事は分かるんだけど、何処から来たの? 髪の毛が白いし、瞳が紅いから、何かカッコいい!」
「…………」
 何故か目を光らせている男の子を前に、戸惑いを覚える。

 答えるべきなのか。それとも、このまま彼を行かせるべきなのか。
 大人と比べて子供は、その本能の赴くままに行動する傾向がある事から、彼が言っている事は本当なのだろう。
「それに、それって鎧でしょ? 戦う人なの?」
 私が身に着けている、白い胸当てとアームガードに気付いたのだろう。
 その下に着ている白いドレスではなく、そちらだけに視線を向けているのは、男の子であるが故だろうか。
「……ええ、そうよ。私はある人と戦う為に此処に来た、天使なの」
 戦うべき相手は撃退士、そして『裏切り者』たち。
 それらの姿を思い浮かべながら答えると、男の子は、そうなんだ、と何処か楽しそうに答えた。
「貴方も行きなさい、あまり此処に留まっていてはダメよ。物事には必ず理由がある、人々が逃げていった事にも当然ながら理由はある。だから、人は人の居る場所へ行くべきなの」
 人々が逃げていった方を指差すと、男の子は頷いて、私に向けて手を振ってくる。
「分かった、それじゃね! お姉ちゃんも何するのかは分からないけど、頑張ってね!」
 頑張れ、か……。これから生死を懸けた戦いをするというのに、全く、とんでもない事を言われてしまった。

 あの男の子は、私が何をしようとしているのかを知らない。
 そして逃げていった人々も、私が何の為に此処へ来たのか、というその『理由』を知らない。
 理由を知らない人々は、得体の知れない相手に対して何かしらの感情を抱き、それに応じた行動を取る。
 人々が逃げていった理由は、その『何かしらの感情』というものに、恐怖という感情が当てはまったからなのだろう。
 それはそうだ。私は堂々と翼で空を飛び、そして堂々とこの場に降り立ったのだから、その反応も自然と言えば自然だ。
 ある意味で、私はそれらの反応を見る為にそうしている節があった。
 それにも関わらず、下らない感傷に浸ってしまったのは、私がまだ未熟だからなのだろうか。
 ――いや。これは私が、どうでも良い事まで知ろうとしているからなのだろう。
 昔からの癖、というよりも、これが『私』だった。それは良いところでもありながら、悪いところでもある。

 この世で生きている生物が取る『行動』には、必ず何かしらの『理由』が存在していて、それによって成し遂げたい『目標』がある。
 私はそれを知り、それに対して自分なりの『答え』を導き出した上で、それ相応の『反応』を取る。
 それが私の生き方で、私が今までに積み重ねてきた『自分』だった。
 私が今こうしている事にも、当然ながら理由が存在しており、撃退士が戦う事や彼等が裏切った事に関しても、絶対に何かしらの理由が存在している。
 だから私は、それを確かめた上で、然るべき行動を取っていきたいと思っている。
 理由を知り、真意を知る。そして最終的には、天使として自分なりの『正しい道』を探し出そうと考えている。
 故にこの戦いは、ただ命令に従って敵を斬るのではなく、彼等の持つ『理由』を問う為の戦いと言えるかもしれない。
「……行って参ります、アクラシエル様」
 武器を構え、訪れるであろう『敵』を待ち構えるかのように、長く息を吐いた。


リプレイ本文


 市街地、大通り。そこで対峙するのは、六人の撃退士と一人の天使。
「折角の戦舞台だ、名を聞いておこうか?」
「……シエルです。シエル・アークライト。戦いの前に名を問われる事になろうとは、思ってもいませんでした」
 アスハ・A・R(ja8432)が名を問うと、シエルはその名を答え、緋色の瞳で彼を見つめる。
「シエル、か。何故、此処へ来た?」
「貴方たちが戦う、その理由を問う為に。もっとも、それだけが理由ではありませんが……」
 でもその理由を教える訳にはいかない、とシエルは口を閉じる。
「そうだな……楽しむ為、と言っておこう、か? 楽しい出会いもあるし、ね」
「生死を懸けた戦いが楽しい、と……。いえ、貴方は死ぬつもりが無いからこそ、戦いを楽しめているのでしょうね」
「それに、相手を識ることが出来る……言葉よりも、ストレートに」
 実際に刃を交え、その意思を問う事で、何よりも直接的に相手の事を知る事が出来るというのだろう。

 しかしそんなアスハの言葉を聞いたシエルは、彼の方から視線を逸らして。
「相手を識る事については、確かに私の求めるところではありますが、それが楽しさと結びつくかと問われれば、何も言えません」
「殺し合う相手に、問い、耳を傾け、言葉を交える。そうして相手を識る事こそが、楽しいと思う、のだが?」
 それが楽しさとイコールで繋がるとは言い切れないのか、アスハに問われようとも、彼女は何も答えない。
「なら、こちらからも一つ聞いておこう、か? 何故、理由を聞きたいと思い始めた?」
「…………」
 その『理由』を問われるも、シエルはその『理由』が思い当たらないのか、暫く宙に視線を彷徨わせ、剣と盾を構えた。
 そんな彼女が次に視線を向けたのは、月詠 神削(ja5265)。
「……俺が戦う理由とか、教える義理が何処にある?」
「ありません、か。ですが貴方は、何かを抱えているように思えます」
 シエルは直感というものか、神削が何らかの『理由』を抱えていると見ているようだが、神削はそれを答えようとはしない。
 義理も無く、理由も無い。彼女が問い、彼が答えるその時は、今ではない。
 罠、罪、後悔。それぞれが相手に向ける『表』の『裏』では、それらが錯綜し、その人物の『反応』を形作っているのだろう。

「――そこに戦いがあるから、では不服ですか?」
 至ってシンプル。されども、もっともらしい理由。
 それを述べたのは、マキナ・ベルヴェルク(ja0067)。
「不服という訳ではありません。むしろ、それが自然な理由なのかもしれません。自ら望んで戦の中に身を置く方が、変わっているのかもしれませんから」
 しかし、最近では自ら望んで戦地に赴く事でさえ、変わっているようには見られない、とシエルは続ける。
 戦はいつ、終わりを迎えるのか。むしろ戦は増える一方で、休む暇など、どこにも無い。
 そんな状況があるからこそ、本来であればおかしいであろう『理由』が『普通』として受け入れられるようになり、それは螺旋のように、泥沼のように戦を拡大し続ける。
「……遍く見渡してみれば良い。何処を見ても戦ばかり、天魔と人の別もなく。戦場など、現世に具現した地獄でしかない」
 マキナには、それが堪えられないのだろう。彼女がそう言うまでも無く、シエルはその意思を見透かしたように、瞼を閉じた。
 もとよりそこに『逃げる』という選択肢は用意されておらず、彼女たちは戦う事でしか、その先に進んでいく事が出来ない。
 天使、悪魔、そして人間。少なくとも、この場に集う彼等にとっては、戦いとはもはや『日常の一部』なのかもしれない。
 ……逃げたところで、碌な事にはならない。マキナは、そしてシエルは、言葉で表さずとも、その事を知っていた。
「ならば、戦いましょうか。この戦いは、恐らく……戦う理由を得る為の戦いなのかもしれません」
 シエルは剣の刃を縦にして、それを撃退士たちへ向ける。

「私では少々役不足かもしれませんが、一手、お相手願います」
 夜姫(jb2550)がその翼を広げ、シエルに挑まんとすると、シエルもまた、その純白の翼を広げた。
「……分かりました、お受けしましょう。問わずとも分かる、その意志を見込んで」
 シエルが翼を広げたその瞬間、先程とは明らかに違う威圧感のようなものが、その姿から発せられる。
「該当データ、無し……情報、集めなきゃ」
 その威圧感から、飛行すれば叩き落とされる事はほぼ確実と判断したSpica=Virgia=Azlight(ja8786)は、他の五人の後方へ下がり、狙撃体勢に入る。
 だが彼女が呟いた通りで、シエルに関する情報は皆無に等しく、相手がどのような戦術を取ってくるのかという事すらも、不明瞭なままだ。
「理由、でしたね。強くなる為、というのもその一つですが、共に戦う仲間を、そして力無き人々を守る為です」
 夜姫は己の抱く理由を述べた後、その翼で飛び立ち、シエルの頭上を取り、行動の阻害を狙う。
「何故に、人々を守るのです?」
「守りたい理由は、武人として力無き者を襲う事を嫌悪しているという、ただの個人的で勝手な理由です。まぁ、本当はそれだけではありませんが」
 シエルに問い返され、夜姫が答える。彼女の脳裏に浮かぶのは、亡き妹の姿。
「……そうですか。なら、更なる強さが必要なのも、納得です」
 しかしその瞬間、シエルが微かな笑みを浮かべて。
「無礼の無いよう、現時点で出せる全力で挑ませて戴きましょうか」
 そして次の瞬間、彼女は今までの姿からは想像も出来ないような速度で飛び立ち、夜姫を、押し上げるような形で地上から引き離していく。

「ロックオン……戦闘、開始」
 それを確認したSpicaは、上空に居るシエルに標準を合わせ、狙撃を行う。
 彼女が引き金を引くのと同時に放たれた弾丸は、一切の迷い無く、シエルに向けて飛んでいく。
「邪魔はしないで戴きましょう。その弾丸、貴女にお返しします」
 だがシエルは即刻、盾に光のコーティングを施し、その弾丸を盾で受ける。
 ……すると、どうだろう。Spicaが放った弾丸と同等どころか、威力こそ半分程度にまで落ち込んでいるが、盾と弾丸が接触したその瞬間、Spicaの目の前に弾丸が転送されて。
「っ……」
 そして、Spicaの身体を撃ち抜いた。
 絶対に避ける事の出来ない、光による反撃。これがシエルの操る、光天の技の一端。

「……それはそうと、こちらだけ答えるのも不公平ですし、貴女の理由も聞かせて戴きましょうか。ついでに、今回現れた目的についても」
 夜姫は魔力を雷に変換、放出したそれを手足に纏わせ、シエルを迎え撃つような形で、雷の如き一撃を叩き込もうとする。
「命令を受けて動いているに過ぎない、理由は探している途中。それだけ答えておきます」
 しかし、シエルは雷の如き一撃を受け流し、その隙を突いて夜姫の懐に潜り込んだ。
「狙いは正確に。そして相手がどのような戦いを得意とするのか、冷静に分析する事が必要です。その意志、ただの一度で折れるとは思いませんが……今は、落ちて戴きましょう」
 シエルが構える剣に、また別の『剣』と思われるような影が重なる。
 魔力で生成されているであろうその影は、剣である事に間違いは無いのだろうが、今、彼女が構えている剣の本体よりもかなり大きく、力の大きさが窺える。
 それを更に増強させるように、光の粒子が『大剣』の影に集まり始め、シエルはそれを一閃、夜姫を斬る。
 夜姫はその一閃を受け止めようとするが、投影された二本の刃を受け切る事が出来ず、深い一撃を受けて意識を失い、地上へ落下した。

「では、ここからは地上戦ですね。その力、見せて戴きましょう」
 夜姫を落としたシエルは地上へ降り立ち、翼を出したまま、地上戦へ移ろうとする。
「……互いに信念を抱くなら、言葉は不要。下手な言葉は、愚弄にしかなりません」
 そのタイミングでマキナはシエルの元へ接近、盾を構えた彼女を前にしようとも動じず、拳を突き出した。
「戦う事で相手を問う、と……?」
 シエルは盾に光のコーティングを施し、マキナの拳を受け止める、が。
「……!」
 拳による一撃はマキナへ反射され、彼女もある程度のダメージを受けたが、拳と盾が接触したその瞬間、幾方向から現れた黒焔の鎖がシエルを捕らえた。
 彼女は終焉を希求する者。戦場に於いて、彼女は終幕を求めて摧き、そしてそれを滅ぼす。
 ――それ故に、彼女は偽神と呼ばれるのだろう。
 彼女の抱く不変の信念、それは即ち、障害の総てを轢殺し、直進し続ける事。その求道こそが、彼女の信念に他ならない。

「彼女から怒られそうな児戯だが、な? 受けてみろ」
 マキナの一撃に続き、一瞬でシエルの側面に接近したアスハは、アウルで魔具を変質させ、それによって生み出された氷の太刀を振り抜かんとする。
 氷上を滑るかのような素早い踏み込み、隙が極めて少ない、回避困難なその一閃。
「……あの女性の使う技に、似ていますね」
 アスハのその姿を見て、シエルが呟く。
 だがアスハがその太刀を一閃させ、鎖に拘束されている彼女を斬ると、その身体を凍り付かせ、自由を奪い去った。
「今の内に、可能な限りの治療を行っておく」
 シエルが行動不能になっている時間を有効活用、戦況の安定化を図るべく、神削がマキナへ治療を行う。
 送り込まれたアウルの光がマキナの傷を癒し、攻撃の反射による負傷こそ治療出来たようだが、それでも全快には至らない。

「貴様らゴミは、この地上から綺麗サッパリ塵も残さず滅殺する。其処を動くな」
 行動不能になっているシエルの元へ、アウルを身に纏った蘇芳 更紗(ja8374)が接近、棒状にした布槍での攻撃を行う。
 しかし攻撃としては、シエルには殆ど効き目が無いようで、更紗は布状にしたそれを、彼女の腕に絡みつかせた。
「見え見えの挑発ほど、効き目の無いものはありません。ですがお陰様で、目が覚めました……!」
 その瞬間、シエルの視線が鋭くなり、鎖と凍結を打ち破った彼女は、布槍を振りほどき、上空に飛び立って強引に離脱を図る。
「戦乙女の二つ名、無駄にはしません」
 宙を舞った彼女がそう呟いた途端、光の粒子が彼女の身体を包み込み、身体の傷の殆どを消し去っていく。
「……ですが、貴女は違うようですね。少なくとも、今はまだ」
 治療を終え、着地したシエルの元へ、マキナが迫る。
 突き出された拳を前に、彼女の攻撃を防御すれば再び拘束されると考えたシエルは、それを寸前で回避、体勢を立て直そうとする。

「戦女神の、模造品が……戦乙女を、屠る……」
 だが立て直しの隙を与えず、彼女に狙いを定めたSpicaが、狙撃を行う。
 もはや現状からでは回避、防御は不可能と考えたのか、シエルはその着弾地点を予測、そこに光の粒子を集中させた。
「……滑稽な、話」
 感情の無い、殺戮を行う為に作られた機械のように、Spicaが弾丸の命中を確信する。
 そこに『敵』が居るから戦い、かつての志を忘れず、更なる高みへ上ろうとする彼女の弾丸。
「戦女神の模造品、殺戮を行う為の機械……いえ、人形と呼んだ方が良いでしょうか。光天の加護を受ける私を屠る事は、そう容易くはありません」
 それは命中こそしたものの、着弾地点に集中した光が弾丸の威力を弱め、シエルは殆どダメージを受けていないようだった。
「ならば、本気で、ぶつかって来い……こんなものでは、ないだろう?」
 マキナ、Spicaの攻撃にシエルが意識を向けている間に、彼女の側面を取ったアスハは、雪村と呼ばれる刀を基に氷の太刀を形成、再び高速の斬撃を仕掛ける。
「Valkyrieとしての私と、本気でぶつかり合う事をお望みですか……」
 その言葉を聞いたシエルの目の色が変わり、盾が光となって消えたその瞬間、彼女が構えている剣に大剣の影が重なる。
 光の粒子がその影の力を増幅させ、それを両手で構えたシエルは、アスハの一閃に合わせ、投影された『光刃』を振るう。
 氷の太刀と光の刃が接触、周囲に衝撃が走るや否や、アスハが振り抜いたそれは粉々に砕け散り、投影されていた光刃もまた、光となって消えていった。

「……やはり、貴方の攻撃を打ち破る事は出来ても、この程度では、貴方に傷をつけるには至りませんか」
 シエルは盾を呼び戻し、先程から動かぬ戦況を見て、考え込む。
「戦況が安定する事に越した事は無い、それが最重要だ」
 自分達の主目的が『偵察』である以上、これ以上の負傷者を出さずに戦う事が最重要だと考え、神削はSpicaにアウルの光を送り込み、治療を施す。
「……ん、ありがと」
 Spicaすらほぼ全快になっている状況を見たシエルは、軽やかに宙返りをして、撃退士たちとの間に距離を取る。
「何処を見ている、貴様の相手はわたくしだ」
 自分達の姿をシエルが見回している事を確認した更紗は、自ら前に出て、注意を引きつけるように布槍での攻撃を仕掛けた。
「自ら前に出てくる者、それは即ち、私の攻撃を受け切れると自信を持っている者という事になります。その挑発に乗っていては、貴女の思う壺ですし、流させて戴いたのですが」
 槍として突き出された布槍を易々と回避するシエルだったが、その戻り際に、更紗は布状に戻したそれで拘束を狙う。
「……まぁ、良いでしょう。それで貴女の考えている事を聞き出せるのであれば」
 するとシエルは、今まで盾を構えていた左腕を自ら差し出し、そこに布槍を絡みつかせたではないか。

「戦う理由だと? 貴様らが気ままに作るゴミの一掃が、戦う理由だ」
 それを聞いたシエルは、布槍を振りほどこうとしないまま、冷たい視線を更紗に向ける。
「他者の力を利用せんと戦争一つ出来ん、貴様らゴミ製造機の殲滅も、ついでだが理由の一つだ」
「……殲滅、ですか。ならその前に、手を打っておかなければいけませんね」
 そう呟いたシエルの剣に、光の粒子が集中し始める。
 更紗が布槍でシエルを拘束しているという事は、逆に捉えると、シエルを拘束している限り、更紗は動けないという事になる。
 シエルはその考えから、拘束されている左腕を引き、引き寄せられるように更紗の懐へ潜り込んで。
「小細工をせずに真っ向から戦えるよう、今出せる全力を。ですが拮抗していますので、退散させて戴きます」
 そして彼女は、光を纏った剣を振るい、光の波動を放った。
 更紗がそれを咄嗟に防御すると、シエルはその隙に空へと飛び立ち、姿を消していった。
 神削は戦闘終了を受け、ここで出来る可能な限りの治療を負傷者へ施し、気絶者を連れ、撤退していくのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・マキナ・ベルヴェルク(ja0067)
 蒼を継ぐ魔術師・アスハ・A・R(ja8432)
重体: −
面白かった!:1人

撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
屍人を憎悪する者・
蘇芳 更紗(ja8374)

大学部7年163組 女 ディバインナイト
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
さよなら、またいつか・
Spica=Virgia=Azlight(ja8786)

大学部3年5組 女 阿修羅
撃退士・
夜姫(jb2550)

卒業 女 阿修羅