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マスター:青鳥
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/04/09


みんなの思い出



オープニング

●はじめてのお買いもの
「ひい、ふう、みい……えっと、これで足りるかな」
 ポニーテールに結いあげた髪にピンクのリボンをつけた少女が、くまさんの形をした財布を覗き込む。
 中に入ったお金を何度も、何度も、数えて。
 意を決したようにぎゅ、と財布を握りしめる。
 おばあちゃんからもらったお年玉をためた、大事な大事なおこづかい。
 買うべきものはもう決まっている。病院にいるお母さんと、新しくやってくる弟へのプレゼントを買うのだ。
 持っているお金は多くなかったが、高等部でやっている「フリーマーケット」というイベントでは、少ないお金でもすてきなものが買えるらしいと同級生達が噂していた。
 今まで買い物といったらお母さんのおつかいや、遠足のおやつくらい。それにくらべて、なんと難しい使命だろう。
 でも。
「あいにだってできるもん! もう、おねえちゃんになるんだもん」
 久遠ヶ原学園初等部一年生篠田あい、決意の瞬間である。
 彼女は初等部の校門をくぐり、目的のため最初の一歩を踏み出した。
 そして、立ち止まった。
「……なんでこんなにこの学校広いの……」
 地図なんて頼りにならない、彼女の冒険が今始まる。


●心配性なお父さん
 おおざっぱすぎる学内図とにらめっこしている彼女を建物の影からうかがう集団があった。
 先導しているのは几帳面そうなスーツの男性――篠田の父親だ。
 居合わせた撃退士達をここまで連れてきた男は、何度も全員に頭を下げて頼む。
「あの子の買い物を成功させてやって下さい。僕にはついてくるなというものですから」
 話しながらもときおり、娘の方を見る様子はいかにも心配でしょうがないと言った様子だった。
「僕の妻…あいの母親は身体が弱くて、出産を控え入院中なんです。
 あいも寂しがっていたみたいですが、お母さんともうすぐ生まれるだろう弟にプレゼントを買って会いに行くのだと言って聞かないんですよ。
 立派なお姉ちゃんだって母親を安心させたいんだとかで」
 更に、篠田はこの学校に転校をしてきたばかりで学校にも慣れていないのだという。事情を改めて説明してから、深々と頭をもう一度下げた。
「お願いです。あの子が無事、満足のいく買い物を出来るようにしてやって下さい。
 なにぶん子供ですから、フリーマーケットの会場に一人で行けるかもあやしいですし、トラブルがないとも限りません。
 迷子になったり、スリや危ないことに出会わないように付き添って下さい。それから、守って選ぶものに迷ったら手伝ってくれると助かります」
 つまるところは彼女の付き添いをすればいいらしい。確かに、この広い学園内で、学園に来たばかりの小学生が一人高等部まで買い物に行くのも難しいだろう。
 撃退士にとっては子守りだが、本人にとっては姉のプライドをかけた一大事だ。
 そういえば、高等部の空き教室で有志のフリーマーケットをやっていたはずだと皆は思い出す。日常雑貨を扱っていて、規模は小さいが人気だという。その分、混んでいるようだが。
 場所を書いたチラシも、父親から貰うことができた。
 彼女の買い物に付き添い、会場の近くで偶然を装って待っている父親に送り届ける。それが、今回の依頼だ。
 彼女の持っている自分のお金でものを買うことが大事なので、予算の範囲に収まるようにみてやってほしいとも頼まれた。
 ちなみに、父親の情報ではあいの買いたいものは「お母さんにきらきらしてるもの(アクセサリー)。弟にはおもちゃ」だそうだ。買い物を手伝ってやるのもいいかもしれない。
 そんなことを確認し合った撃退士達が丁度隠れている方に、篠田が不安そうな顔で歩いて来る。同時に、父親は風の速さで姿を消した。
 篠田は程なく、あなた達を見つけ、そして聞くだろう。
「あの……お買い物は、どうやったらできますか…?」


リプレイ本文

●遭遇そして案内
 篠田の救世主は、高等部の男性二人組だった。綺麗な髪のお兄さんことネコノミロクン(ja0229)と一見不良少年、しかし心は幼女に優しい神鷹 鹿時(ja0217)。
 しかし全く雰囲気の違う彼らは篠田が近づいていくと表情がふっと優しくなるのは同じだった。
「あの、このお店にはどう行ったらいいですか?」
 篠田に柔らかな声がまず応えてくれた。
「フリマへ行きたいの? 俺達もこれから行くところだから、一緒に行こうか」
 快活に迎え入れてくれるのは神鷹だ。
「よう!フリーマーケットは初めてな顔してるな! 俺も初めてだから一緒に周らねぇか?」
 篠田が思わず緊張も忘れて笑ってしまうと、神鷹は優しく彼女の手を取ろうとする。
「はぐれると大変だからな! こうすれば安心だぜ!」
 篠田も抵抗はなく、むしろ年上に甘やかされることが嬉しいよう、ぎゅ、と握り返す。
 高等部までの道のりも、優しいお兄さん達と一緒なら安心。
 そんな感じで移動を始める御一行は大変微笑ましい光景なのだが。
「あー、ロリコン発見!」
 三人を発見した天音 みらい(ja6376)の台詞に何気なく様子を窺っていた高等部の皆さん達が、あっやっぱりそうなの? 的反応をしたのは責められないところだった。
「ろ、ろり…?」
 目をぱちくりとさせる篠田。
「違う! 俺はロリコンじゃねぇ! 少女と一緒だからって決めつけんな!」
 身振り手振りで熱く主張する神鷹の手はしっかりと篠田と繋がれており。
「……えーっと、どうみても」
 続きを言わないのは天音の優しさかもしれない。
「あいちゃん、これ。良かったらプレゼントさせてくれないかな」
 ネコノミロクンはいつもの通りの涼しげな笑顔で、しかしさりげなく篠田をロリコントークから逸らす。
 りん、と優しげな音を立てて彼の掌の上で鈴が揺れる。
「財布にもつけておけば、もし無くしちゃっても自分の物だって判るよ」
「わあ、きれいありがとう…!」
 鈴は彼女の気に召したようで、財布の勧めにも納得顔だ。
「うちもこれ、あいちゃんに」
 神鷹と楽しげに話していた天音も、持っていた風船を少女に差し出す。目立つようにとピンクにした風船は、立派な目印になりそうだ。
「ありがとうおねえちゃん! おにいちゃん、つけてつけて」
 手を繋いでいた神鷹にねだると、神鷹が財布に鈴を、風船の紐にも鈴を絡めて彼女の鞄につけてやる。
 いい笑顔でくまの財布を少女に返す神鷹の姿はどこから見てもロ、……優しいお兄さんの図、だった。



●静と動の捕物劇
「人がかなり多いな」
 マーケットが流行っているのはどの国でも良いことではあるのだが、今回ばかりはそう言ってもいられない。
 会場を見回っているcicero(ja6953)は考え深げに呟く。
 狭い会場ではあるが、人気の店の周辺は大混雑だ。会場を回るだけでも困難で、一人で全てはカバーしきれないだろう。
 今も野球帽を目深に被った男が辺りを頻りに見渡しているのが目に入ったが、人混みに遮られてciceroがそこまで行くことは難しそうだ。
 だが、慌てず騒がず彼はスマフォを操作する。状況をメールに書き連ねて送信するのは仲間達へ。
 更に、見知った人影を見つけて安堵の息をつく。
 視線の先に居たのは、ニット帽を被る無愛想な青年こと影野 恭弥(ja0018)だ。
 丁度、母親はぐれたと泣き喚く少年を入口で家族と再会させていたところ。
 有難うございます、と何度も母親が頭を下げるのに軽く首を振って、また歩き出す彼に短くciceroは目配せで伝える。
「了解」
 影野の返事も端的で話は早い。男の風体を確認すると、早速人混みに紛れ対象の警戒に入る。
 不自然にならないよう品物にも目を配りながら数メートル。じりじりと、引き離されず警戒もさせない距離を影野は保ち、歩く。
 男は影野に気づかずに辺りを物色していたが、籠バッグを持った女性に目を止める。
 どん、とわざと大きくぶつかったのが分かった。
 同時に、腕は覗いていた財布を掴み自分のポケットにねじ込もうとするが。
「それはお前のじゃないだろ」
 鋭い影野の声が耳元で響く。
「……ッ!?」
 見とがめられた、と分かった途端男は躊躇いなく近くの子供を影野に向け突き飛ばそうとする。
 咄嗟に、影野は身体を割り込ませその衝撃を引き受ける分、追いかけるのは一手遅れた。
 だが、――影野は不覚を取ったつもりはない。何故なら。
「見過ごせないな、これは」
 進行方向を予測して立っているciceroの姿があるからだ。
 真正面からぶつかる位置で、スリは減速せざるを得ない。そこを、すかさず追いついた影野が後ろから手首を捩じり上げる。
「一人確保。これが全部ってわけじゃないだろうなぁ」
 なにぶん会場は人混みだらけだ。ひとまず捕まえた一人を然るべき場所に突き出しに、影野は歩きだす。
 視線は自然に、篠田以外の迷子や掘り出し物も探しながら。


 知らせは囮となって歩いている少女達の元へ舞い込む。 
「捕まったみたいですね」
 スマフォを確認しながら各務綾夢(ja4237)と紅葉 公(ja2931)が言葉を交わし合う。
 巫女服小学生とおっとりとした幼く見える天然系女子。囮には最適というか、不審者的にここを狙わずしてどこを狙うっていうレベルの娘さん達だ。
 はたから見れば彼女達は仲良く会場を歩いているようにしか見えないだろう。だが、さっきから紅葉の背筋は嫌な気配を感知してぞくぞく震えている。
「あの人、……ずっとこっちを見てますね」
「ちょっと、こわいです」
 紅葉の耳打ちに頷く各務。
 後ろをついて来るのは小太りの若い男性で、どうにもねっとりとした視線が二人から剥がれない。
「予想してたのと違う不審者ですね〜。すごく不審ですけど…」
 思わず紅葉から溜息が漏れた。自分達が見回りをしていたからいいようなものの、こんな男が篠田に出くわしていては何が起こったかわからない。
「あいちゃんには近づけないよう、ひきつけます」
 覚悟を決めた顔で言い放つ各務。それは、即ち自分がターゲットになるということであり。
「じゃあ、ペースをゆっくりにして離れますか? 大丈夫、私も側にいるから」
 フォロー役として紅葉も頷く。
 各務の身だって心配でないわけもないけど、各務が囮をすると決めたのなら紅葉はフォローすると彼女だって決めている。
 二人でじゃれあう素振りで相手の出方を見に、わざとゆっくりと奥の方へと歩いていく。
 不審者が何を目的とするかまだ分からないのだ。こちらも慎重に動く必要があった。
 人混みが段々と増したところを狙ってか男は距離を詰め始める。そしてさりげなく伸ばした腕は――各務の肩を掴もうと、した。
「誘拐、です!」
 彼女が見た目通りのなんの力もない少女なら抱えて攫われたかもしれない。だが、各務は身を硬くして堪えることが出来た。紅葉も、各務を自分の方に引き寄せ男に向き直った。
 そのとき。
 ゴッ、と鈍い音が響いた。
「不審者やスリは引っ込んでなさいなのー☆」
 笑顔と裏腹に、分厚い魔法書を男の後頭部に躊躇いなくめり込ませたのは鳳 優希(ja3762)。
「えっ…!?」
 思わず魔法書の角を二度見する紅葉。これはだって、多分とても痛い。
 男は頭を抱えて地に伏している、見事なクリーンヒットだった。
「見かけたからやっちゃったのですよー☆」
 魔法書を何事も無かったかのように仕舞う鳳に、各務も漸く肩の力を抜く。
 囮と狩り手が役割分担した、見事な捕物劇ではあったのだろう。
「ありがとうございます。誘拐犯…なのですね」
「公衆の面前で誘拐ですか…。世の中は危険が一杯です」
 誘拐犯の処遇を話し合う三人のスマフォが、一斉に震える。
 文面は皆同じ。
 『現在、入り口に到着』
 その一言だけで皆は顔を見合わせ、各自が行動を開始するのだった。


●はじめてのお買いもの
「おおっと、お宝を発見したぜ!」
 物珍しげに周囲を見渡す篠田の手をちゃんと離さない侭、賑やかな神鷹の声が会場に響き渡る。
 レアカードにトレジャーハンターの血が騒ぐのは、あながち篠田に見せる為の演技だけでもなさそうだ。
「半値で売ってくれ! 無理なら2割3割で!」
 威勢のいい値切り方に、売ること自体が楽しいのだろう蘊蓄を語りながら交渉に応じる店主。
 フリマというものを知らなかった篠田は、彼らのやり取りに目を白黒させる。
「値札の金額から引いてもらえることもあるんだよ」
 但し無条件の値引きでなく、交渉の仕方があることなどを分かりやすい口調でネコノミロクンが言って聞かせる。
「あいもやってみる…!!」
 意気込んで決意したのは良いが、並ぶ商品群の多さに篠田は押され気味だ。
「一杯あるから、ゆっくり見て行こう?」
 焦らないようにと天音が優しく添う。何が欲しいのかはネコノミロクンが行き道に彼女と話しているので不審がられず欲しいもののある方に誘導もできそうだった。
 鳳からのメールで彼女お勧めの手作り品の揃う手芸屋に迷わず四人は辿りつく。
 布生地で出来た積み木や、お腹を押したら鳴るぬいぐるみ、新生児でも無理なく触れそうなものばかりの行き届いたチョイスはさすが気遣いに溢れる人妻と言ったところか。
「可愛いー。うちも欲しくなっちゃう。すっごいふかふか」
 篠田に話しかけながら、天音は商品をチェック。手触りや値段を確かめて買い物の手伝いを欠かさない。だが、強く勧める訳ではなく根気強く彼女の相談に乗り、欲しいと思えるものを選ぶのを待つ。
「出来るか、あいちゃん?」
 悩んだ末に柔らかな布地で出来た噛んでも大丈夫な猫のぬいぐるみを掴んだ少女に、神鷹がさりげなく値切りを促した。
 横ではネコノミロクンが端切れを見繕い店主へと差し出す。
「これを全部まとめてでお願い出来るかな。少し、おまけしてくれる?」
 後半は店主にだけ伝える小声で、篠田の方を示しながら。
「……お、おねがいします。あの、おやすくして、くださいっ!」
 神鷹に励まされ緊張に震える声で挑戦。
 おおらかに店主は頷いてくれて初めての買い物は無事済んだのだった。
 だが、財布を取り出したそのとき背の低い少年が人混みに押されるよう大きく傾ぐ。
 財布を狙う動きだと全員が分かる。
「駄目、です!」
 真っ先に動いたのは、目印を頼りに動く周辺警戒組の各務だ。子供には特に気をつけるつもりでいた各務の反応は、早い。
 小さな身体を少年にぶつける!
 紅葉がよろめいた各務を慌てて支えた。
「なんだよてめえ!」
 悪びれるどころか、少年は各務がさも悪いかのようにぎらりと睨み、喰ってかかる。
「危ないことをしちゃ、駄目ですよ」
 紅葉も一歩も引かない構えだ。小さい各務を庇うようにして、言うべきことはちゃんと言う。
 その態度が癪に障ったのだろう、少年は余計に気にくわないとばかり拳を振り上げ。
「そこまでだな。…怪我はなかったか?」
 すらりとしたcieroの身体が、彼女らを背に少年へと立ち塞がる。
「な、なんだよお前……ちきしょう、もういいよ!」
 高い上背に少年が怯み、くるりと背を向けて走り出し――。
 そして走り出した先には、当然のように影野が立っている。
「さっきとは逆だねぇ。二人目、だ」
 無表情で呟いての捕獲だった。


 大変な捕物劇は篠田に気づかれない。
 彼女をすかさず安全な場所にと神鷹達が移動してきたからだ。
「あ、あいちゃんあれ素敵じゃない?」
「ふふー、これ可愛いのー☆」
 鳳が一生懸命カラーストーンの装飾品を物色している方へと天音が気を惹きつける。
 鳳もいかにも偶然通りすがりました、みたいな顔で話しかけると篠田はすっかりそっちの方に夢中になる。
 鳳が見つけてきたものはどれもきらきらしていて、少女の心を捕らえるには十分だった。
「じゃあ、今度はうちと値切ってみようか?」
「希も一緒に頑張るのですよー☆」
 オレンジの綺麗なブレスレットを握りしめる少女の脇に、天音と鳳。
 明るくはしゃぎながら、そして懸命に値切る少女達にかかれば、篠田の欲しいものが、お安めの価格で手に入るのはもう決まったようなものだった。
「なんとか無事終わりそうだね」
「全く、ああいう奴らがいるからトレジャーハンターは泥棒って思われんだよ!」
 女の子達を見守りながら、小声で神鷹と話す間にもネコノミロクンの手元ではメールが作られていた。
 篠田の買い物が終わったことを、依頼主に伝える為に。
「弟さんとお母さんが喜んでくれるといいね」
 戦利品を大事に抱えた篠田に天音がそっと言う。
 満面の笑みで頷く篠田の様子は、何より彼女の満足を示すものだった。



●さようならといらっしゃい
「あいちゃん元気でな! またお宝探しに来いよ!」
 皆を代表しての神鷹の挨拶が、別れの合図だった。
 もう時刻は、夕暮れ。
 校舎近くの中庭まで篠田を送り届けた一同は、その侭物陰に隠れて彼女と父親の再会劇を最後まで見届ける。
「あのね、すっごい優しいおにいちゃんやおねえちゃん達がいたの! あいもね、だから優しいおねえちゃんになるの!」
 鞄にはピンクの風船、りんりんと優しい鈴の音も篠田が身振り手振りで話す度に響く。
 高揚と満足で少女の顔は紅潮しているのが見て取れた。
「良かったのなのですよー☆ あいちゃん、可愛かったなあ」
 満足そうに頷く鳳。
「優希さん達も、お疲れ様」
 ネコノミロクンが微笑ましげに目を細めながら、篠田の目に触れないところで奔走していた彼女らを労う。
「マーケットはどこもスリが多いもんだな」
 しみじみとciceroが言うのは、離れて間もない自国を思い出したのかもしれない。
 無表情で影野が頷き、同意を示す。
「スリ、二人もいましたしね。あいちゃんに近づけないようにしてくれてよかったです」
 立ち回りを担っていた彼らの様子に、天音も改めて実感する。
 護衛と見回り、それぞれがそれぞれの役を果たせなければ、篠田の笑顔は守れなかったろう。
「あたしの愛しき人と同じ名前のあの子は、無事にお姉さんになれるでしょうか……」
 再会劇を見守っていた各務が小さく呟くのに、紅葉が柔らかく笑う。
「あいちゃんは、立派なお姉さんですよ」
 それを聞いてほっとしたように各務は頷き、お姉さん、と口の中でもう一度呟く。言葉を、噛み締めて。
「うふふっ……。さて、あたしもお姉ちゃんに会いに行くのですよ〜」
 報酬を受け取る前に各務は一足先に、ぺこりと一礼。
 まっすぐ、各務は走り出す。会いたい人を、思い出したから。


 やがて八人の元に手紙が届く。
 中には、父親の丁寧な感謝を記した文章。報酬を渡し損ねた人には、学園に預けておいたからくれぐれも受け取ってくれと請う言葉も添えられていた。
 そして。
 同封されているのは、家族四人の写真。母親の手には綺麗なブレスレットが嵌り、新生児の横にはぬいぐるみがある。
 父親に肩を抱かれている篠田は、この上なく誇らしげな姉の顔をしていた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 鷹狩(ハンターイーグル)・神鷹 鹿時(ja0217)
 撃退士・各務綾夢(ja4237)
重体: −
面白かった!:13人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
鷹狩(ハンターイーグル)・
神鷹 鹿時(ja0217)

大学部4年104組 男 インフィルトレイター
くず鉄ブレイカー・
ネコノミロクン(ja0229)

大学部4年6組 男 アストラルヴァンガード
優しき魔法使い・
紅葉 公(ja2931)

大学部4年159組 女 ダアト
蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
撃退士・
各務綾夢(ja4237)

中等部1年3組 女 ダアト
託された約束・
星乃 みらい(ja6376)

大学部6年262組 女 ダアト
クオングレープ・
cicero・catfield(ja6953)

大学部4年229組 男 インフィルトレイター