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マスター:青鳥
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/07/27


みんなの思い出



オープニング

●夜からの招待状
 その招待状は、必ず夜に届くのだという。
 蝋で蓋された瀟洒な封筒は金に彩られた夜の色。
 流麗な文字で記された宛名に気づいて裏を見ても差出人は無し。
 捨ててしまえばそれだけの話。
 好奇心に惹かれて封を切れば、見事に空色の便箋に綴られた誘い文句。

「眠れぬ宵に、素敵な魔法を。
 貴方の心ゆらす幻想を準備してお待ちしております。
 御代は見ての、お帰りにて。

 幻燈サァカス支配人」
 
 招待状に記された場所を半信半疑に訪れれば、確かに張られた野外テント。
 織りなされるのは、一流の芸。
 あらゆるジャンルを揃えながら、変わらないのは必ず幕を通して一つの物語になっていること。
 たとえば、姫君が王子と出会う物語では、火を吹く男の試練を乗り越え、綱渡りのロープを辿って試練を乗り越え、最後は王子の脱出マジックという有様。
 同じストーリーは一つもなく。
 同じ物語は一つもなく。
 但しいつも終わりは幸福に。


 曰く、招待状が届くのは本当に癒しを求める人にだけ。
 曰く、忽然とそのサーカス団は現れ、一晩で消える。
 曰く、サーカス団は夜にしか現れない。
 曰く、サーカス団の痕跡は何一つ持ち帰れない。


 都市伝説のようなこの噂を、人は馬鹿にしながら、笑いながら、どこか憧れを持って噂する。
 初めてサーカスを観たときの、気持ち。
 めくるめく不思議なショウ、魔法と幽玄。
 声を潜め胸高鳴らせて見守った、小さな時の自分。
 サーカスには何かがある。
 心、揺らす何か。


●バックステージ
「というわけで、サーカスに行って下さい。
 勿論、観る方ではありません。主役は、皆様方です」
 ステージ系の依頼をめざとく選んでいるらしいのは、斡旋所バイトの観月 朱星(jz0086)だ。
 関西地方の一都市でささやかに噂されているこのサーカス団、実在するのだとか。
 主役級の団員が、今回私的な事情でどうしても興業に間に合わないらしい。
 聞けば団員同士の結婚であるとか。
 めでたいことなので十分休みはあげたいが、サーカスもいつまでも営業しない訳にもいかない。
 それで支配人が困っていたところ、この興業の援助者でもあるとある金持ちのマダムが撃退士を推薦したのだとか。
「収入のほとんどは、援助で成り立っているそうです。
 世界に不思議を、世界に夢を、と敢えての幻のような興業であるそうで。
 皆様でしたら、きっと素敵な舞台が出来ると思います」
 世にも幸せそうな表情の観月が、うっとりと言う。
「今回の物語は、願いをかなえてくれるという幻の花を集める子供の話です。
 最後は、おうちに帰るのですわ。
 どうか、頑張ってくださいませね」
 素敵な物語を、と頭を下げられた撃退士達は、一日ばかりのサーカス団員となることになる。
 ある、静かな夏の夜。
 衣装を纏い、メイクに素顔を隠して。

――君よ君、さあさ、大人も子供もよっといで。サァカスの、始まりだ。






リプレイ本文

●開幕
 薄暗い舞台の中央にはローブを纏い、フードを目深に被る老婆が佇んでいる。
 彼女が持つランタンだけが唯一の灯。
 低く低く押し殺した声で彼女は語る。
「…眠れぬ宵に招かれし方々よ
 此処は一夜限りの泡沫の夢、幻燈が織りなす夢現
 限りなく近く、最も遠き、夏の夜の夢

 …今宵描かれる魔法は、七色に輝く花の夢
 少年、少女の宛ても無き旅路」
 夜の底から遠く近く声は響く。
 不意に光が途切れた。
 客席の照明までが落ちる真の闇をやがて淡い光が拭っていく。
 老女がいた場所に立つのは夜を編んだような藍のドレスの若い女性。彼女を中心に光が溢れさせて。
 変化の妙で早変わりを見せた真宮寺 神楽(ja0036)はスカートの裾を摘み上げ片膝を少し折り爪先を立てての綺麗な礼。
「暫し現世を離れ、幻想の世を御笑覧あれ」
 凛と声を張って、体重を感じさせない所作で彼女は地を蹴る。
 同時に纏う不可思議な光も消えてしまい。
 風が通り過ぎるが如きの速さで失せれば、残されたのは人々の目に残る光の欠片のみ。

 残滓を追って舞台を見渡す流れで少女、雪成 藤花(ja0292)へと視点は移る。
 真っ白の柔らかな布地のワンピースは、裾がふわりと広がる形。
 絵本を抱えて、少女は力なく座り込む。
「…花があったらきっと願いは叶う…? 透お兄ちゃん」
 見上げた先には、影の如く黒い衣装に茶へと髪を染めた星杜 焔(ja5378)。
 何処か儚い、存在の希薄な彼に向かって懸命に少女は語りかける。
「喋れる? 笑ってくれる? ずっと傍に居てくれる?」
 焔は何か喋ろうとするも何一つ客席にも、彼女にも届かない。
 寂しげに笑い、ただ唯一届く手を差し出して。
「お兄ちゃんも一緒だよ?」
 世界で一つだけの寄る辺のように彼女は全身で彼に縋り立ち上がる。
 歩き出す、二人の姿。
 焔の、唇がまた動く。
「――愛しいマシロ、大事な妹。家族も記憶も忘れた君に、どうかありったけの幸福を」
 確かに客席には聞こえるのに、少女には届かぬ侭、旅は始まる。


●花を探して
「おや、お客さんかな?丁度いい、今から妖精たちのダンスが始まる所さ」
 舞台を見守る観客へも投げる朗々とした声。
 君田 夢野(ja0561)扮する吟遊詩人、ロッソ。紅の大きなマントを羽織り、ツバの広い帽子にはひらりと遊ぶ一枚の羽根。
 片手を広げ招いてから大きな金の竪琴を掻き鳴らす。
 演奏に精通した指先が踊って弦を弾き、ほろほろと光の滴の如く眩しい音が零れる。
「さあ妖精たちよ 舞い踊る時さ
 気の召すままに 美しく鮮やかに」
 音楽の灯す光が実際に見えたのかと錯覚して観客が瞬けば、本当の光が彼の傍らに立っている。
 先程の妖精、神楽の姿だ。
 君田に視線が集まる隙に登場した彼女は軽やかな笑顔で、インラインスケートを操り舞台を滑る。
 地を押し蹴って伸びやかに身体を跳ねさせるステップは舞台を所狭しと駆け回るどころか、壁までを跳ねて。
「七色の光を 灯す花の如く
 見る者の心を 映す花の如く」
 歌詞に沿い彼女の腕は高く掲げられ、爪先で立つ姿勢はそれ自身が太陽に向けて咲く花のよう。
 舞踏に精通し鍛錬を積んだ体躯は静止の瞬も、完全に姿勢を保ち一番美しい形から崩れない。
 繊細な旋律は軽やかに転調して、花開く色彩に満ちる。
 複雑な音程ながらも技巧だけに走らず素直に伸びる声は世界を満たしていく。
ダンスは一瞬の静から、激しい動へ。
 影に隠されたトランポリンを使い、全身を使った躍動。
 中空でも姿勢を崩すことなく、跳ね上がる足先は頭より高く上がって天上を目指し息入れの暇も無く、精緻にも大胆なスピンの連続。
 アクロバティックながら繊細で柔らかな振りは、光纏う幻想の如く揺らめいていく。
 音楽もアップテンポに疾走していくかと思えば、またも転調して幽玄の旋律へ。
「見えぬものを 見る翁は
 光無くも 光を知る
 七色の心を 宿す人よ
 彼に光を 授けたまえ」
 最後の一音を弾くと共に、妖精が森の方へと光纏い跳んでいく。
「あちらに行きなさい。紅と藍の祝福があらんことを」
 快活に笑う君田に見入っていた少女は素直に礼と共に歩みかける。
 一度振り返り。
「素敵な歌と踊り、また見たいな」
 名残惜しげに呟と、彼は己の胸に軽く手を当て。
「いつでも見れる。君が望めば。――必ず」
 確信に満ちた台詞が、シーンの幕切れ。

 場面は切り替わり深い森の奥。
 ローブに身を包む隠者の様相――速水啓一(ja9168)だ。
 目を瞑って、手さぐりに茂みをかき分ける様子に、藤花は首を傾げる。
「さっきの歌、見えない人に光を? …困ってる、でも優しそう。お父さんみたい」
 助ける手段を探す少女に、傍らに立つ焔が茂みを掻き分ける。
 輝くのは薄紫、菫青の石。
 どうやら宝石の嵌った杖のようだ。
 それを躊躇わず、少女は彼へと差し出して。
「有難う。――君は、」
 杖を手にすると、彼は少女に向かい宝石を翳す。杖を通して、彼は視界を得ることが出来るのだ。
「こんな暗い場所にいてはいけない。迷子かな?」
「……おうちは、ないの。花を探しています」
 気が付けば少女の肩はいかにも細く頼りなくて、彼は少し眉を下げる。
「なら、女王の話をしよう。私のかつての主、哀しきアンジョーヌの話を」
 舞台の反対側に新しいスポット。
 何をかも拒む、孤独の背中が見える。豪奢な黄のドレスを纏った女性の後ろ姿。
 高坂 涼(ja5039)は男だが華奢な体躯と端正な顔の造作が違和感を感じさせない。
 暗い闇の中央で、彼女は呟く。
「私は、一人きりだ。荒涼たる孤独ばかり。
 仲間、友達。そんなものがあるのだろうか」
 隠者が語るのは、孤独な女王と従者の話。
 そうして、少女へと憂いを含む目で囁く。
「気をつけて、おいき。私の娘も、君のように素直な子だった」
 彼が杖を翳して器用に指先だけで回し操れば、呼応して小さな光が杖から零れ少女を導く。
「ありがとう、いいことありますように」
 亡くした娘に重なる少女の笑顔。
 それが何よりの彼への祝福なのだと知らぬ侭、少女は旅を続ける――。



●女王と従者
 美しい花畑では二人の道化師が競って花を摘み合っている。
「これなら女王様に喜んでもらえるかねぇ」
 籠に花を詰めるのは金糸の縁も眩しい青の衣装にマント、帽子にも青の羽飾りの加倉 一臣(ja5823)。
 髪先を金に染めて甘めの面差しもまた金と青のペイントで彩った華やかな姿だ。
「なーに言ってるの? シアンの花にはパッションが足りない。見ろよ、こっちの方が綺麗!」
 応える久遠 栄(ja2400)は派手な襟のついた装いで、ふわりと染めたオレンジの髪が快活に揺れる。
 衣装も揃いの鮮やかなオレンジに、ペイントも同色に。
 南国の花々を自慢げにおどけた格好で持ち上げる栄に、ちちち、と大仰に指を振って見せる加倉。
「おいおい、俺の集めた花を見てみろよ。色鮮やかで麗しく、まるで乙女のようだろう?」
 ピンクの花を取り上げれば艶やかな花弁に唇を寄せた――瞬間。
 的確に一臣の手元を狙って、弓が放たれる。持っていた花は、ひらひらと綺麗な桃色の花吹雪へと変じてしまう。
「アランチャ! 女王様の花になんてことするんだ」
 一臣の抗議にも栄は素知らぬ顔でくるりと背中を向け、頭に篭を乗せて調子はずれの口笛を殊更大きく吹き鳴らす。
「あれ、花落ちちゃった?残念だったね」
 彼の頭上を今度撃ち抜くのは、一臣だ。片手ですかさず抜撃ちの早業も見事命中。
 栄は花を頭から被ってしまうことになるが負けてはいない。
 赤や黄の色鮮やかな花々をこれ見よがしに飾って見せて、ふふんと笑い。
「わざわざ飾ってくれたの? 有難う! シアンももっと綺麗にしてあげるな」
 縺れあいながらの追いかけっこ。
 舞台裏に消えたかと思えば、次は舞台の上空に張られたロープへと現れる。
 攻守は逆転、一臣が壺を抱えて栄を追い回す。
「ほら待てよ。お前の大好きな蜂蜜だっていっぱいあるぞ?」
「頭からかける気だろ!」
 危なげのない足取りで細い綱の上を駆け巡る。
 途中で栄がしゃがんで足元を掬おうとすれば彼を台にして高く馬跳び、対して栄はよろめいたふりをして片手だけでロープを掴みぶら下がると言った有様。
 頃合を見測って派手な悲鳴と共に、とうとう転んでしまった二人にロープが絡み付く。
「子供さん子供さん、助けておくれ」
 通りがかった少女にヘルプコール。助けながら彼女は喧嘩の原因を聞く羽目に。
「喧嘩したら悲しい気分になっちゃうよ? それに、どっちも綺麗」
 二人は目を見交わして、くしゃりと笑う。
「やぁ、これはこれはお恥ずかしい。そうとも、アランチャの摘んだ花は国一番」
「シアンの花飾りは何より美しいんだよな!」
 一転して仲直り。
「花探しなら女王様に聞くと良い!俺達の女王様だ!何でも知ってる!」
 揃って舞台の裾に引っ込む姿も賑やかに、きょとんとしている少女の元へ彼らが案内するのは先程の女王の姿だ。
「私の従者が迷惑を掛けたな。話は聞いたとも、秘密の花畑へと案内しよう」
 いかにも優しげに女王は微笑んだ後、従者達に傲然と視線で命ずる。
「「シアンとアランチャにお任せあれ!」」
 二人が跳ねて舞台奥に被さった布を剥ぐと、手入れされた麗しき花々が咲き誇る地が現れる。
「よいか、私は花が何としても欲しい…私の可愛い従者達よ、分かっておるな? 七色の花、あの小娘なら見つけられるかもしれぬ」
 夢中になって駆けだす少女を見送って、従者達を見下ろす眼差しはひどく、冷たい。
 何か物言いたげな顔をしても、結局二人そろって頷くしかなく。
 少女が近づいた途端、花畑の一角は緑の美しい光を放つが――。
「ごめんよ! 女王様の命令なんだ!」
「俺達はあの人に笑って貰う為なら何でもするって決めたんだよ」
 こぞって従者が少女に飛び掛かる合間に、女王は花を毟り取る。
「この花は私の物。小娘、そなたには勿体無い限りよ。漸くこれで私の願いは叶うのだ。さあ花よ、私に本当の友達を与えてくれ!」
 高笑いと共に花を差し伸べる女王の足に、するりと絡むのは緑の蔦。動こうとすればさらに絡んで、結局彼女は動けず、花は願いを叶えてくれない。
「…なんだと? 花すら私に与えてはくれぬか」
 絶望に色を失う女王に、少女はゆっくりと歩み寄る。
 手に暖かな光を宿してそうっと足元に跪き触れると、蔦は魔法のように解けていく――。
少女の慈しむ優しげな眼差しで、囁く。
「女王様の欲しいもの、側にあるよきっと」
 励まして振り返るのは女王を助けようとしていた従者達。
「そうだよ、俺達がいるじゃないですかー!」
「貴方の為に、二人で集めた花だ。七色の光はないけれど」
 先の花篭は二人の傍に。一緒に抱えて、彼等は女王に花を捧げる。
 彼女は強く強く、顔を埋めて。
「そう、か。友達、仲間……我が最も欲した物は、こんな近くにあったとはな…」
 不思議な光を放つ花は、女王の手から離れ――。
 少女の元ではなく、ずっと彼女に付き従っていた焔の元へ。
 焔の髪色は元の緑、衣服も合わせての薄い長衣。
 彼の光纏は虹の炎。色彩が彼を包み、世界を照らし出す。
「私、家族が、帰れる場所がほしくて、それで」
 心から溢れる音を懸命に少女が叫べば、兄の顔で焔は静かに抱き締める。
「ずっと、好きだよ。大事な妹」
 漸く伝えられたと囁いて、次の瞬間には彼は花の精霊としてその場に立つ。
 家族と共にある、という願いを束の間叶えたのだと。
「けれど、もう兄だけではない。皆の許へお帰りなさい。お前の手には、全ての愛しい幸せがある。さあ、鍵を」
 示すのは、広げた純白の布に蛍光塗料。
 光と花畑の失せた場で、少女は筆を手に大きく描いていく。
「これが、私の求めてたモノ……!」
 万色の彩を持つ花が完成すると共に、何処からか、歌が聴こえる。
 包み込む、暖かな歌声。
「もしも君が寂しければ
 時に周りを見渡して
 その時君は見るだろう
 君を思う人の姿を」
 寄り添うは吟遊詩人の紅。先を指示し勇気を与える、強き色。
 軽やかなステップと共に、妖精が彼女の手を取り花畑の中で声に合わせて歌い踊る。
 重ねる藍。夜を包む優しい安らぎ。
 先を導く菫色の杖を翳した隠者と、誇り高い黄の女王が並んで現れ。
 鮮やかに踊りさざめく明朗の橙と、支える青が後ろには控えている。
 傍らの安らぎの緑の手を取り、純白の少女は色彩に囲まれ万色をその身に映す。
 全ての色を抱き締めるよう。
「私は一人じゃないんだね」
 毀れた涙が光を弾き、君田が代表の姿勢で腕を差し出す。
「何時だって誰かがいる。家族と思ってほしければ、そう在ってあげよう。君は独りじゃない」
「姿は見えずとも、傍に居るよ」
 焔が最後に彼女を包み込むのは、鮮やかに美しいひかりの翼。
 永遠に、共に。

 ―――光が集まり、光が、弾けた。

●フィナーレ
 歓声に包まれる舞台を神楽がふわりと跳ぶ。
 飛翔に見紛うアクロバットは、空中ブランコを使ってのものだ。
 軽やかな動作で勢いをつけ、中空での回転から着地に思わず拍手が巻き起こる。
 光の粉を撒くように客席でのダンスを披露すれば音楽が寄り添う。
 君田は竪琴を掻き鳴らして、子供達の間近で即興の旋律を奏でて見せる。
 藤花が淡く優しい歌で更に添って、観客もいつしか歌を口ずさむ
 舞台では焔が器用にぽうんとフライパンを跳ねあげて。
 砂糖に小麦粉、金色の蜂蜜。子供の夢を凝縮させたホットケーキが生み出されては、器用に道化師達が皿でキャッチする。
「ケーキが欲しい子は誰かなー?」
 はーい、はーいと上がる声に栄は順番、と配り歩く。焔の準備で花飾りや皿の種類によってアレルギーまで配慮されており丁寧に高坂や速水が確認しながら菓子を配っていく。
 子供達には青の羽を配り降らせる一臣は足を止める。
 けれど、小さな胸を何かに満ち溢れさせて今はもう誰もいない舞台に見入る少年へは、寄り添うように撫でる手。
 少年が強く握れば、気が済んで離すまでを、側に。
 
 世界に夢を。
 人に笑顔を。
 気持ちを、貰ったものを誰かに返すこと。
 舞台に、人に、心に、かけた想いはそれぞれに。
 そして、見たのは。
 確かに心揺らして、息もつかず舞台に見入り、驚き、笑い、涙した観客達の姿。

 サァカスからは何も持ち帰れない。
 けれど。
 観客は、伝えるだろう。
 言葉で、歌で、動きで。何よりも己で。
 心揺らした思いに笑うように愛おしむように。
 夢を宿した眼差しを、人は覗き込んで、彼等の変化を受け取って。
 そうして、未だサァカスを見ぬ人も光と夢の欠片を、観客を通して知るのだろう。
 夢を紡ぐ、八人を。


 サァカスからは何も持ち帰れない。
 けれど。
 彼等だけは後程、観月 朱星(jz0086)から、彼等の色彩の花を渡される。
 団長から預かったのだと、心からの賞賛と共に。

 夢の紡ぎ手にただ喝采を。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 光灯す夜藍の舞姫・真宮寺 神楽(ja0036)
 Blue Sphere Ballad・君田 夢野(ja0561)
 思い繋ぎし翠光の焔・星杜 焔(ja5378)
重体: −
面白かった!:14人

光灯す夜藍の舞姫・
真宮寺 神楽(ja0036)

大学部4年177組 女 陰陽師
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
心眼の射手・
久遠 栄(ja2400)

大学部7年71組 男 インフィルトレイター
飛天一槍・
高坂 涼(ja5039)

大学部7年305組 男 ディバインナイト
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
戦地でもマイペース?・
速水啓一(ja9168)

大学部9年187組 男 ダアト