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マスター:天希そら
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:10人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/09/06


みんなの思い出



オープニング

『アクアキングダム、プレオープン!
 元はとある企業所有の無人島だったところを、大・改・造!
 普通のプールはもちろん、普通ではないプールだって盛りだくさんッ
 北国がコンセプトの、波が強く泳ぐより遊ぶための施設
 南国がコンセプトの、熱帯魚や海棲生物と戯れる事のできる施設などなど、君の知らない世界のプールすら、きっとある
 プールの王国が、今、ここに誕生した――』



●アクアキングダム、入場ゲート更衣室

 唯一の連絡船が船着場に到着し、桟橋の入場ゲートをくぐれば、そのまま男女別更衣室につながっていた。
「本日の議題は、水辺におけるアウルの反応、作用の調査ね」
 講義の一環だとでも言わんばかりにプロフェッサー・M(jz0362)は呟くのだが、他の誰よりも先にするりと着替え、向かおうとした矢先、「小さき事は良き事かな」と、誰かの声が聞こえた。
 足を止めるプロフェッサー・Mは振り返る。
「いい? 身体の流線が緩やかという事はそれだけ水の抵抗を受けにくいわけであり、結果として運動エネルギーを無駄にせずに泳ぐことができるのよ。つまるところ――」
 一気にまくしたてたのだが、自分で何を言おうとしているのか気づいてしまったのか一瞬だけしょげるも、すぐに顔をあげ、軽い足取りで行ってしまった。
 だが、なにも浮き足立っているのはプロフェッサー・Mだけではなく、藤堂 奈緒(jz0336)も早々に着替え、他の久遠ヶ原の女性陣達も足早にプ−ルを目指す。
 こんな女子更衣室の片隅で、派手な柄の水着をつけた女性――御神楽 百合子(jz0248)が、もぎられたチケットで口元を隠しながらも、ぐふぐふと笑っていた。
「学園にはカワイコちゃんたくさんいすぎてみんなに送るため、あの手この手でチケット手に入れるためにボーナスつぎ込んじゃいましたけど……その甲斐はやはり、ある」
 ゴクリと生唾を飲み込み、目を爛々とさせている。
 狩人の視線が突き刺さっているのはわかるが、それでも真宮寺 涼子(jz0249)は百合子へと歩み寄った。
「お前が何をたくらんでいるかは考えるまでもないが、一応、礼は言っておくぞ」
「あっついですし、早くプール行くですし! ……うぬぬ!? 背中届かんですし!!!」
 背中のホックに四苦八苦している鏡国川煌爛々(jz0265)に気付き、涼子が留めてやると、振り向いた煌爛々の口から「げっ」と漏れた。
 振り向いて揺れた部位を見た涼子の眉間に、やや皺が寄る。
「根暗女も来てたですし……んん? なんでそんなガンつけてくるですし、喧嘩なら買うですし!!」
「まーまー気にしないでください、煌爛々ちゃん。さ、涼子さーん、いきましょーか」
 百合子に背中を押されるがまま、涼子は更衣室を後にする。
 そしてただの一般人にちゃん付けで呼ばれたシュトラッサーはただ、首をひねるばかり。
「誰ですし? あの女」
 だがそこは、右から左へ抜けていくような頭の煌爛々。すぐにでこぼこな鼻歌を歌いながら駆け出すのであった――


●南国コンセプト側、浮島プールの水際にて

「うっわぁぁぁ!やばい!これはやばい!滾るね!?」
 奈緒がプールに浮く大量のブロックで出来た浮島を見てテンションが上がっていく。
 大きいプールの真ん中へと続く道もブロックで出来ており、縦に両サイドから道が出来ている。そして中央に土俵程度の大きさの浮島ことブロックの島が出来上がっていた。


 そして、傍らにはチャンバラ用の柔らかい刀。


 奈緒は一瞬で思った。
 やるしか、無いじゃん。
 チャンバラ。


「うっしゃあああ!!チャンバラやるわよ!チャンバラ!落とされた人負けで!!」


 周りを見回しながらチャンバラの刀片手に叫びまくる。
 自慢と言うほどでもないが、動き回る癖にビキニを着るという暴挙に出ている奈緒に、一部の女子は「見える、それ見えるって駄目だって」という目線を送っているが奈緒は勿論気付かない。
「あたしの刀は天下五剣を超えるわよ!」
 ビシっと見ている者達にチャンバラの柔らかい刀を向けるが、刀はふよんふよんと揺れていた。
 勿論、天下五剣を超えることなどあるわけもなく。


「1人でもあたしをプールに落とせたら、全員に定番のトロピカルジュースを奢ってあげるわ!それなりに高いんだからね!」


 悪役のようなノリになりながら、さぁ、かかってこーーーい!と声高らかに叫び、無駄に注目を浴びる。
 誰かがふと、傍にあったメニュー表を見て、小さく声を上げた。


「え、トロピカルジュース、完全手作り…。これ、お札…飛ぶじゃん…」


 その場にいた者の目が、確かに色を変えた。


リプレイ本文



「わぁお、とんでもメンツじゃない!これは楽しいことになりそうね!」
 藤堂 奈緒(jz0336)は嬉しそうに言い、お近づきの印にと天風 静流(ja0373)からもらったいちごオレを飲む。
 明らかに水枷ユウ(ja0591)の表情が変わり、持参のバナナオレに手を付けようとしたが、隣にいる静流がサッとバナナオレを手渡した。ちらりとユウが静流を見ると、にこりと微笑み、静かに頷いている。
 ユウはただこくりと頷き返した。
 橋場 アイリス(ja1078)はチャンバラソードを数本手に取り、櫟 諏訪(ja1215)は腰に紐で括りつけ、宇田川 千鶴(ja1613)、エルナ ヴァーレ(ja8327)は1本ずつ手に取った。
 結構な数があったチャンバラソードが全て無くなる頃、アスハ・A・R(ja8432)も静かに1本だけ抜き取り、夜来野 遥久(ja6843)は最後の2本を手にした。石田 神楽(ja4485)も積極的参加よりも観察を重視すると言いながら1本だけチャンバラソードを持っているし、月臣 朔羅(ja0820)は何かを目論んでいるようにも見える。
「全員、準備は良いかしら!?」
 1人、中央へと移動し、全員を見やる。その目は曇っていない。


「降参は無意味よ、抵抗なさい。死にたくなかったら」


 エルナが一歩前に出てそう言うと、奈緒は「上等!かかってこいやー!」と叫び返す。


―――ここに、たった一杯のジュースを賭けた戦いの火蓋は切って落とされた。




 足場の悪さに最初は動きが鈍かったが、空を飛べるアイリスもいれば、そこは撃退士。すぐに慣れた。複数持って行ったであろうソードも空中を頻繁に飛び交っている。
「わぁ、水の上走ってるじゃない!」
「落ちなければええんよな?」
「否定はしない!」
 言いながら奈緒は、水上を走り回る千鶴に落ちていたソードを拾って投げつける。
 投げたソードより千鶴の方が早く、届くことは無かった。
「早い!」
 感激の声を挙げた瞬間、目の前にソードの切っ先が目の端に移り、態勢を低くして前を見る。
「やはり良い安定感ですね」
 遥久が二刀流で攻め入る。安定感がある二人は中々態勢が崩れない。だが、奈緒が動いた所にころりとソードが現れ、一歩大きく動いてよろけた。
「誰!?」
「惜しいですねー」
 諏訪が遥久の少し後ろから投げたらしく、あっぶないなー!落ちちゃうじゃなーい!と言いながらそれを拾い上げた時、ソードを振りかざし、目前に迫るエルナが見えた。
「隙だらけよ!」
「え、ちょ!?」
 当たると思い、咄嗟に避ける。それも目くらましだったらしく、前を見直すと、そこには何故か、怒りに燃えるユウと、静流がいた。
「イチゴオレ派は、敵。バナナオレは、わたしの」
「え?へ!?」
 横の静流を見ると「知らないな」と言わんばかりの顔で、その静流も向かって来る。
 空戦に奈緒が動きにくそうにしているのを見逃さず、同じ足場へと近づいてきた。
「ちぃっ!」
「プレミアムトロピカルバナナオレはわたしのもの」
「いつからそんな名前に、うわっ!」
 2人の猛襲に気が付くと通路側へと押しやられている。
「まだ落ちるのはつまらない、わ!」
 ソードに力を込め、前へと突き進む力のままに横のプールへとソードを叩きつけた。
 大きな飛沫が上がり、ユウの視界は水になる。奈緒はそのまま中央へと足早に戻った。
「なんとぉぉー!?!?」
 その後ろにいて、奈緒の視界から外れていたその場所でエルナは1人、大きく揺れた足場で思わず落ちかけていた。
「大丈夫ですか?」
「た、助かった…」
 遥久に助けられ、再び奈緒討伐と自身の生き残りを賭けることになっていることには気付かず、エルナは感謝をして戻って行った。




 その頃、浮島の下の方ではアイリスとアスハが対峙していた。
 始まって早々にアイリスはアスハへと突っ込んできた。何とか耐え忍び、そこから狭い通路部分で2人は争っている。
「やっぱり簡単には落ちてくれませんか」
「落ちんな。貴様もだが」
 お互いが揺らし合いながら、時に落ちているソードがあれば投げつけあい、均衡を保っていた。
 2人とも適度な距離を持ち、もう一度仕掛けようとアイリスが動こうとしたその時。
「はい、隙有り♪」
 突如現れた朔羅が後ろからアイリスの背中を指でなぞり、ぞわっとして振り向き、朔羅を怒る。
「このタイミングはどうかと思うんです!」
「だって後ろが隙だらけだったんだもの」
「仕方ないですね」
 抱き着いてその柔らかな桃源郷に暫しすりすりとしてから離れ、2人でにこっと笑いあった刹那。
「とりあえず落ちておけ」
 ガシリと黒い手が2人の手足を掴む。
「あ…」
 どちらかが言った瞬間、大きい飛沫をあげて2人がプールに沈んだ。




「あ、夜来野さん」
「石田殿?」
 敵意など億尾も出さずに神楽が走り寄る。
「いいえ、情報共有でもできたらと思いまして」
「そういうことですか」
 背後が取られないようにと端の方へと移り暫し話す。奈緒が想像よりは善戦しているという話をされ、神楽はではもう少し見学することにします、と言って中央へと寄って行く。
 落とされても良いが、できれば奈緒が落ちるまではいたいというのが本音である。
「中々落ちんのやね」
「目指せ、ラスボス…!」
「この面子でなれるわけないでしょぉー!?」
「わからないじゃない!!」
「勝つのは、わたし」
 外からの千鶴からの攻撃に耐えつつ、エルナにツッコミをかまされ、そしてユウと静流の攻撃に、流石の奈緒も疲れ始めていた。
 誰かが少し身を引けば誰かがやってくる。
 遥久が視界を塞ぐように奈緒へと攻撃を仕掛け、奈緒は遥久の背後を無意識に伺っていた。
 それがいけなかった。
「今や」
 奈緒の横から千鶴が容赦なくブロックを蹴飛ばし、大きく揺らす。
 慌てた奈緒が横に飛び、丁度向かって来ていた諏訪にぶつかった。
 反動で吹き飛び、落ちると思った諏訪は迷わず召喚を決め込む。
「切り札、使わせてもらいますよー!」
 ストレイシオンの重さで大きくブロックが揺れ動き、連結されている中央のブロックが直角寸前まで持ち上がった。
「なんとぉぉー!?!?」
 休もうと思って移動していたエルナがひっくり返って派手に沈む。咄嗟に羽を広げ、空中へと逃げた遥久はエルナに手を伸ばしたが、その手は握る所か遠くへと沈んでいく。
「あたい、よくやったわよ…ね…」
 何とかプールを出てからげっそりとエルナはそう言った。
 千鶴はブロックが戻る時の反動を受け切るために少し離れ、生まれた大きい波を畳返しで耐え忍ぶ。
 神楽は危険を感じ、ここで降参としてプールからは出ていた。
 同時にソードで狙撃をしていたのだが、諏訪は何があったかわからないままプールに落ちていた。
「ぷはっ!落とされちゃいましたねー」
 騎乗していたにも関わらず、諏訪のみを狙ったそれは結構な衝撃だったらしく、落水。
 奈緒は沈む手前に飛び、少し揺れてはいたがまだマシな通路の足場へと移動しようとしていた。
 だが、足が付く前でその足場が不自然に大きく揺れ、奈緒は足は着いたものの、バランスを完全に失う。
「う、わ、あぶな、ちょ!」
「プレミアムトロピカルバナナオレはわたしの」
 目の前に突然現れ、チャンバラソードでスパーンと叩かれた。
「いやぁぁぁぁガボボボボボボ」


 奈緒が沈み、今ここにトロピカルジュースは確定した。




 沈んでいった奈緒を、水上に居た千鶴がプールサイドへと放り投げ、やれやれと振り向く。
「残ったのは私も含めて5人ってことでえぇんかな?」
「違いますです!私もです!」
「私もいますよ」
 先ほど落ちたはずのアイリスと朔羅が水の中から現れ、一瞬空気が固まる。
「どういうことだ」
「簡単ですよ」
 落ちる時にブロックの横を足で掴んだまま沈み、そこからは何となくお察しの通りである。要するに、ブロックを掴んでいたんだから落ちてません理論。
「上にブロックが飛んで行くから出てきちゃったんですよ」
「目的は達しましたからね。ここからは誰が生き残るかのサバイバルゲームでしょう?」
 楽しむために戻ってきましたよ。と言われたらやるしかない。
「どうでもいいので、プレミアムトロピカルバナナオレはわたしのもの」
 聞いちゃいないユウが、優先順位を変えた。今、この場で一番近くて尚且つ先に仕留められる者。それは隣にいる静流だ。
「わたしの為に、沈んで」
「それはこれを飲んでから決めて欲しいな」
 今にも襲ってきそうななユウをものともせず、手元から取り出したのはバナナオレ。
「ほら、有力候補を落としてからでも遅くはないさ」
「ありがとう。そうする」
 小さく息を吐いて安心してから他を見る。
「さぁ、生き残るためのサバイバルゲームの始まりだ」
「まだ間に合うわよ!?終わりにしてトロピカルジュースを飲んで幸せに終われる世界があるんじゃない!?」
 水際からエルナがツッコミの如く叫ぶが、誰も聞く耳を持たない。
 見ているだけだった諏訪が、何かを思いついたかのように落ちたメンバーを集め、こそこそと小さく話す。それを聞いて、全員がニタリと笑った。




 遥久は警戒している。
 このサバイバル切り抜ける方法を探っているからだ。
 そして、辺りを見回してとても居心地が悪いと思っている。
「これは何ですか?」
「どうせならより面白くしようと思いましてー」
「プールを囲んでチャンバラソードを投げ合おうと言う話になりまして」
「面白そうじゃない!?」
「そもそも、あんたらとガチでやりあって生き残れるわけないでしょうがぁー!?」
 だからせめて外野から投げるのよぉぉ!と言われて、更に難易度が上がったんですね、と冷静に思考を巡らせていた。


「では、改めて。チャンバラロワイヤルを開始する」


 静流の声と同時に動き出す。
 朔羅は攻撃には加わらず、それぞれの戦いを見ようと距離を取る。
 攻撃というよりも引っ掻きましたいのだろう。
「2対2と1対1とは面白いことになっているわね」
 先ほど邪魔をして怒られてしまったので違う方を見ることにしようと近づいていく。
「まずはチヅル、ハルヒサから沈ませる」
「どうせなら生き残りたいやんなぁ。私も落ちたないなぁ」
「誰もがそうですよ」
「私も落ちたいとは思わないな」
 全員がそう言って無言になり、同時に動き出した。
 ユウは真っ直ぐ向かってきた水上の千鶴に容赦なく攻撃を繰り広げる。
「そうは行かんなぁ」
 有効打が来ると畳返しを使われ、ユウの攻撃は中々千鶴には通らず、千鶴が押していた。
 だが、そうは問屋が卸してくれないのが残った面子。
「あら、ここに良い畳が…」
「っ!?」
 畳返しで現れた畳は勿論プールに浮き、丁度千鶴の後ろにあったのが運の尽き。
 背中を擽られた千鶴の動きと息が一瞬止まる。
「すぐに決着が付いてしまうと、面白くないでしょう? だから……うふふ」
 そう言ってそのまま畳から飛び、また浮島の上を走って行ってしまう犯人である朔羅。
 勿論、ユウがそのタイミングを逃すはずが無い。
「沈んで」
 今日何度目かの言葉と共に、強い風で千鶴はプールへと頭から落ちて行く。
「あちらも決まったようだし、私達もそろそろ決めよう」
「そうですね」
 静流の体に赤い紋様が浮かび上がり、遥久が身構えた。
「ここで奥義が来ますか」
「気にしたら負けだ」
 速く重い一撃を片方のソードで受け、逆の手で反撃をするが当たらない。
「これで、どうだ!」
 少し大振りに来たそれを受けた時、タイミングが良かったのか静流が反動でよろけ、足元へと迷わず一撃を叩き付けた。
 ぐらりとよろめき、落ちていく時、側面を蹴り上げ宙返りをし、そのままの勢いで浮島を蹴りつけ、飛ぼうとした遥久の動きを見切ったと言わんばかりに目に見えぬ速さでソードが当たり、2人は仲良くプールへと沈んでいった。
 アスハは迷わずに向かってくるアイリスに対する迎撃態勢を取る。開始と同時に投げられた外野からのソードを片手で受け止めそのまま投げつけた。
「当たらない、です!」
 同時に最後のケセランを顔面狙って投げつけ、それを片手で振り払ったその一瞬の隙を逃さず、大きく足元を揺らしながら突き進む。
「落ちるです!」
 揺らされた足場、寸前で広がった羽による視界不良があったものの、アスハは冷静に構えたままアイリスの攻撃を受ける。攻撃のせいで動きが止まる瞬間を逃さず闇からの黒い手はまたアイリスを捕えて離さない。
 そこに、移動してきた朔羅が現れ、2人が目配せをした。
「ただでは、落ちないです」
 今度こそ落ちたと思った時、朔羅がアイリスを庇って落ちたようにアスハには見えた。
「2人掛かりなら、どうですか?」
 同じ手を使ったのはわかったが、何故かプールからアイリス2人が出てきている。
 片方は変化した朔羅なのだろう。
「はむぁー♪」
「やめてくださいです!」
 すぐにわかった。
 そしてそのまま羞恥心に駆られたアイリスに足場に使われて朔羅は沈んでいき、同時に高く飛んだアイリスの周りから無数のソードが現れて降り注ぐ。
「沈む、です!」
「断る」
 真上からアイリスが無数のソードと共に突っ込んでくるが、そのソードを全て叩き落とし、アイリスが間近になってからアイリスの背後へと移り、着地する場を激しく揺らす。
 更に、外野の投げるソードに当たり、着地すべき場所が無くなった。
 自身の足場も大きく揺れたがしゃがんで耐え、アイリスは着地すべき場が無くなったまま落ちていく。
「こんなのありですか!」
「全力で遊ぶなら、この程度普通、だな」
「プレミアムトロピカルバナナオレは、わたしのもの」
 足元の揺れも落ち着かない状態のアスハにユウが後ろから突撃し、態勢を崩したアスハは勢いのままに落ちる。
 そして共に落ちたはずのユウは浮島中央へと瞬間的に移動し、1人、生き残った。


「プレミアムトロピカルバナナオレ、おいしいです」
「本当にあったんだな、プレミアムトロピカルバナナオレ」
「金額増し増しでしたよ!!」
 美味しそうに勝者であるユウが特注であるバナナオレを飲み、気になった静流と奈緒も同じ物を頼んだ。
「最後は、可愛い子をもふもふしながら美味しいジュース。ほんと、最高よね?」
「はむぁ…癒されますです…」
 朔羅とアイリスは椅子に2人で座りながら抱き合って各々ホクホクとした笑顔でトロピカルジュースを飲んでいる。
「改めて、おつかれさん。神楽さん、何食べる?焼きそばとか食うかな。ちゃんと炭水化物食いなや? 」
「有難うございます。大丈夫ですよ食べてますよ」
 千鶴と神楽は2人で微笑みながらグラスで音を鳴らし、ちゃっかり注文もしている。
 そんな中、ぐったりとジュースをテーブルに置いてエルナは突っ伏していた。
「今年の夏の一番の思い出ができたわ…」


 その後、お会計の時に奈緒の支払額がびっくりする金額だったことは言うまでもない。
 それもまた、立派な「夏の思い出」である。


依頼結果