●キャタピラキュラキュラ
――久遠ヶ原学園第三中庭。
「花子さん……!」
「太郎君……!」
約束の樹の下で抱き締め合う二人の撃退士。
ひしっと。そして、ゆっくりと顔が近付き――
瞬間。
がぉんときてずどんときてどかーん! というノリで、二人の撃退士と約束の樹はアワレにも裸になった。
「…… きゃああああっ!?」
「え、ちょ、ちがっ、これはっっ――!?」
木の葉と共に舞い散る服の欠片と甘い青春。
ブラックストームスペシャル・スペリアルアルファ一号(以下ブラスペ号)はそれを見て、満足気に、がぉん! と発進。
軽快なスラローム走行を披露しながら砲塔を転回させるのであった。
「――よくわからんけどつまりそゆことらしいんだぜ!」
と、スバらしいかくかくしかじかな説明を通信越しに披露した七種 戒(
ja1267)の声に、ブラスペ号の対処に当たる撃退士達はげんなりとした顔になった。
「ええと、つまり、囲むなりで動きを封じてから取り付くか、犠牲覚悟でとにかく魔法攻撃を叩き込む以外ではほぼ破壊不能……?」
「さすが戦車じゃね?」
如月 統真(
ja7484)の再確認の声もどこか力ない。
ともかく分かったことは、あれは犠牲なしには倒せないということだ。
ブラスペ号は遭遇した相手をとにかく手当たり次第にひん剥きながら校舎傍へ。
熱探知とアウル探知を併用したセンサーは、例え堕天使やはぐれ悪魔が壁の中に逃げても逃しはしない。
メインの主砲をどかんと一発。いい音でしょう、余裕の貫通力だ。火力が違いますよ――と班長なる男は戒に語ったという。
キュラキュラキュラ。我ガ前方ニ敵ハ無シ。
そんな快進撃を続けていたブラスペ号の前に、果敢に立ちはだかる影が二つ。
ブラスペ号破壊作戦に当たって囮役を買って出た北斗 哲也(
ja9903)とクリスティーナ アップルトン(
ja9941)の二人である。
「来たか――悲鳴が凄い。なんておいしい、いや、危険な兵器を」
「それを私達が喰い止めるのですわ。ここに『久遠ヶ原の毒りんご姉妹』の姉、クリスティーナ、華麗に――」
しかしブラスペ号、名乗りを待たずに撃った。どぉん!
「「ちょっ」」
炸裂する砲弾。吹き飛ぶ半身――分の服。
右半分と左半分だけ晒される哲也の中性的な肢体とクリスティーナのナイスバディに、何処かの動画サイトの生放送では大いにコメントが沸き立った。
「な、なんという破廉恥なっ……!」
「く、ともかく予定の場所へ――」
どぉん!
「「アッ――!」」
●鬼ごっこと生着替え
――軍靴ならぬ戦車の音が響いてくる。
独特の疾駆音と、轟砲の射撃――炸裂音。それに伴う悲鳴。
まるで戦場の音だ。
「も、もう止めて下さいましー!」
――そんなクリスティーナの半泣きな悲鳴がなければ。
どかん! と砲弾が炸裂するごとに吹き飛ぶクリスティーナの服。土煙の中からその裸身が顕になる前にすかさず替えのシャツとパンツを素早く魔装セットアップ。
この一連の流れを×十五回ぐらい。
「ふはははは、同士よ、その意気だ」
何故か哲也は赤ふんどし一枚の上に微妙にイっちゃった目で、砲撃しながら爆走するプラスペ号の上に仁王立ち。しかもクリスティーナが撃たれた瞬間にぱしゃぱしゃ使い捨てカメラで撮りまくっていた。
あまりの威風堂々。その背中には華を背負っているように見えなくもなかったという。
「……はっ」
そんな光景を校舎の上から見てしまった統真は、しばし呆然としてから頭を振って正気に戻る。おれは しょうきに もどった!
「ど、どこからツッコんでいいのかわからないけど、取り敢えず作戦通りにっ」
「ん、了解」
「な、何やってんだか……」
統真の号令に応え、イヴ・クロノフィル(
ja7941)と平山 尚幸(
ja8488)がそれぞれの得物を構える。
なんやかんやでヒドい光景ではあったが、誘導するという目的は十分に果たせている。
悲鳴をバックに一拍の間。
「今っ」
縁から飛び出しては一斉射撃。
主砲の仰角が取れない上部から、アウルの弾丸と矢が立て続けにブラスペ号の足回りを潰そうとキャタピラに突き刺さる。
流石の重装甲である程度は弾くものの、主装甲に比べるとキャタピラのそれは脆弱だ。このままでは破壊される恐れもある。
しかし対抗策もある。砲塔上面の重機関銃の出番だ。
うぃいいいん、と転回しては、上面は任せろー、ばりばり! とばかりに猛烈な弾幕を展開する。
止めて! と言いたくなるのは勿論、射程内の二人。統真とイヴである。
「っ、イヴちゃん、危ない――!」
咄嗟に統真が庇いに入る。流石だ。
でも悲しいけどコレ、範囲攻撃も出来るのよね。というわけで容赦なく銃撃が二人をまとめて剥く。力強く。
嵐のような弾幕。吹き飛ぶコンクリ。舞い散る服の破片。
次の瞬間、撮影班が目にしたものとは――
「だ、大丈夫? って、うわぁ――!?」
「ん、問題ない……」
「問題ありすぎるよ、主に僕が!」
――そう。御覧ください、このわざとらしいロリ巨乳味を。
何処か中性的なショタぼでーとけしからん胸囲のロリぼでー、二つの危険な花が露になったことにより、某生放送のコメントの流れは更に加速した。
「む――捉えたっ」
ぱしゃり。ご丁寧に哲也も真正面からナイスショット。
ちなみにちょっと離れた射撃の傍らに尚幸もこっそりとパシャパシャ撮っている。汚い。
「そっちも何してんのさっ! と、とにかく、コレ羽織ってっ」
「……統真、鼻の下が伸びてる。 ……どうしたの?」
ついでにアレなところも伸びていたかもしれない。何処とは言わないが。
●ふたりは某キ○ア
ともかくトップアタック――様々な点において脆弱な装甲の上面から攻撃を受けたことを察知し、すかさずブラスペ号は転進に掛かる。
前進は不可だ。正面には半泣きで睨むクリスティーナがおり、主砲と同軸機銃のコンビネーションにより三秒に一回のペースで脱がして足止めをしているものの、接近の際に彼女が取り付いてくる可能性が微レ存する限りは行うべきではない。
無用にC4を貼り付けられてバクシニウムを稼ぐかのような行為は避けなければならない。
つまり後退だ。戦略的撤退。
だが、撃退士達もそれを安易に許すわけがない。
「逃さないわよ――」
「はい。ここで止めます」
続いて進路上に立ちはだかるのはナタリア・シルフィード(
ja8997)とアンナ・ファウスト(
jb0012)。
二人が出現したことで、後退の動きが止まる。そして進路をクリアにするべく重機関銃が二人を狙う。
ばりばりっ! と猛烈な弾幕。
「く――!」
二人は咄嗟にアウルによる防御壁を展開しながら術撃を応射。
火線と光線が飛び交い、お互いに着弾する前にエネルギーフィールドにも似たアウルの防壁がそれを弾くという、SFさながらの光景である。
「押されています……!」
「整備不良のくせに、腐っても現代兵器ということね……!」
しかし足は止まった。
今、とばかりに空から落ちてくる女の子が二人。親方がいないのが悔やまれる。
「行くよー! 楓様!」
「んふふふ、よぅしっ、いっくのだっー♪」
ばっ、とブラスペ号の上部装甲に取り付く姫宮綾(
ja9577)と焔・楓(
ja7214)。
着地時の衝撃波で哲也がアワレにも吹き飛んだ気がしたが、きっと大丈夫だろう。
それより気付いて欲しい、この3:7という男女比に。
こういうのを待っていたんだ。
豊富な脱がされ成分に適度な観客。素晴らしいと思わんかね?(書きやすさ的な意味で)
勿論、本音を言うならその場に居たかったがね。
――ともかく取りついた二人は、放たれるアウルの波動に歯を食い縛りながらも、攻撃を開始する。
狙うは戒からの情報通り、攻撃の要である主砲に対し、防御の要である上部重機関銃。
「がるるっ!」
ワン子な綾の魔法の犬歯が装甲に炸裂する。
全力で抵抗するアウルの波動が起こす衝撃に、綾のツインテールはさながら千切れんばかりに振りたくられる子犬の尻尾の如し。
そのひらひらふわふわな魔女っ子の如し服も、裂かれながらもごうごうとサ○ヤ人の髪の毛のようだ。
あ、パンツ見えた。
――対する楓もなかなか強烈。
小さな拳から繰り出されるワン・ツーの連撃が装甲板に確かな打撲跡を残していく。
「全力全壊で行くのだー♪」
服が裂かれようが気にしない。
全力でしがみつきながらとにかく猛打、猛打、猛打。
着実に蓄積していくダメージに、ブラスペ号はあたかも嫌がるように砲塔の転回を行う。
主砲が捉えるのはナタリアとアンナ。
「っ、防御――」
長らくクリスティーナ以外を相手にしていなかったその太くて(口径的な意味で)硬くて(装甲的な意味で)大きい(主砲的な意味で)砲門が、ずどん! とアウルの火を噴く。
ギリギリの至近距離から放たれた砲弾は流石にダアトの二人には回避し切れるものではない。
防壁が容易く貫通され、着弾、炸裂。
「っっ、この――!」
弾ける土埃。吹き飛ぶ衣服。
顕になるナタリアのスレンダーながら出るとこ出ている均整の取れたないすばでーと、アンナの危険な匂い漂うろりばでー。鼻血を垂らしながら三秒以上見つめたら、ちょっと署まで来い、は確定的に明らか。
恥じらいに顔を赤くし片手で要所を隠しながら果敢に反撃を行う姿に、観客は総立ちである。何処がとは言わないが。
「よし――貰った」
刹那、恐らく二つの意味で呟いたのは尚幸。
カメラを片手に、威力的には対物ライフルもかくやというその得物で、慎重に狙いを定めて一撃。
ずがんっ! と一際激しい衝撃と共に、履帯の片側を破壊、吹き飛ばす。
「お返し、です……!」
動きが止まったそこへ、アンナが更に追撃。
ずばんっ! と術撃が放たれ、しかし弾かれたその瞬間、轟! と空間が歪むような衝撃波と共に戦車の防壁が崩壊した。
そして上に乗っていたロリロリ風味の少女二人の服も崩壊した。
舞い散る布の切れ端はさながら桜の花びらのよう。
春先の 舞い散る花に 夢を見て 目に止めようぞ 肌色祭り
ちなみに某生放送では画面が見えないほどコメントが溢れ、さまざまなタグが溢れ、流石に運営が仕事したという。
しかしこのロリ風味の二人、肌色祭りになっても殴るわ噛み付くわ。
「とどめの、トンファーキーック! なのだー!」
そしてついに楓から伝説の妙技が放たれ、ごきゃっ! と豪快な音を立てて上部重機関銃がもぎ取られた。
これを好機とばかりに降り注ぐ射撃チームからの総攻撃に、主砲を撃たれながらも果敢に反撃するナタリアとアンナ。
「こうなったらもう破れかぶれですわ! 淑女の怒り、お受けなさいっ!」
脱がされに脱がされまくった結果、もはや失うものはなくなってしまったクリスティーナも果敢に装甲を剥ぎ取りに掛かる。
「がるるるっ!」
見てくれだけは完全にどこぞの野生少女になってしまった綾も、バキバキと薄いところから装甲を破壊していく。
●勇者たちの勇姿(放送禁止)
――流石にもはや趨勢は決しつつあった。
いくら頑丈といっても、武装を剥ぎ取られて囲まれオクトパス殴りにされてはどうしようもない。
非殺傷設定でなければこうなる前に薙ぎ払えたかもしれないが、素晴らしい光景と引き換えになってしまうので考えものである。
「はぁ、はぁ、はぁっ…… これで、トドメですわっ!」
最後の一撃を喰らわせたのはクリスティーナ。
後部装甲板をその拳で貫徹。内部の無尽光機関中枢を握り潰すことで、遂にその駆動を止めることに――
しかし、握り潰したにも関わらず、きゅいいいぃいいいぃぃん、と妙に甲高い音を立てながら眩しく輝く中枢部。
「ちょっ――」
「ヤバ――」
「伏せっ――」
――かっ、と閃光が放たれた。
その輝きときたら、空に七つぐらい太陽が輝いたかのようであったという。
「……けほ」
イヴがひとつ咳を払って、土埃を払う。
大爆発、というほどではなかったが、ブラスペ号があった場所には見事なクレーターが出来ていた。
全員辺りに転がっているが、取り敢えず最後っ屁までしっかり非殺傷設定であったのは感謝すべきところなのか否か。
とはいえ応急処置的に身体に巻きつけたものまで吹き飛んだ上で土埃を盛大に被ったその姿は、まるで泥んこプレイが終わった後のようであった。
しかし気にせず、ぐるりと見回す。
「く、同士よ…… お前の勇姿、忘れはしないぞ」
爆心地近くではパシャパシャまだ撮っている哲也。ふんどしもなしにカメラを回すその姿は完全にアレである。
誰か止めてやれよ、と思ったら飛びつく影があった。綾である。
「いい度胸だ! 噛みつかれろ! がうぅ!!!!」
「おわ――!? ――はっ、私は一体何を、って、姫宮君いたいいたいいたい」
なお、お互いにアレな格好の綾が哲也に絡んでいる(攻撃的な意味で)光景はあまりにも肌色が過ぎたので割愛しておく。
ちなみに崩れた校舎の影では、情報収集に向かってまだ到着していないはずの戒がやたらあたふたしていた。
片手にカメラ。もう片手にあんまん。そして顕になる前と比べて妙に痩せてしまった胸。
「戒さん……」
「ち、ちが、コレはほら非常食とか銃弾から心臓守ったりとかそういうアレで……っ!」
襤褸切れのようになって転がっているクリスティーナからの何とも言い難い視線に、がくりと崩れ落ちる戒。
「夢を見たって…良いじゃない…っ!」
その手のカメラを隠す気はないのだろうか。
とにもかくにも無事そうな面子を見て、イヴはひとつ息を吐く。
「……取り敢えず、任務完了…… ? 統真、変なところ向いて、どうしたの?」
「な、何でもないよ。だ、大丈夫大丈夫!」
「?」
真っ赤になって明後日の方を見続ける統真。推して知るべしであるが、しかし現実は非情である。
「統真ー! やったのだー!」
「うわぁ!? 楓ちゃん、い、今抱きつくのはナシ、ナシーっ!?」
少年の受難は激しい。肌色的な意味で。
「――今、出て行かないほうがいいだろうなあ」
唯一無事だった尚幸は遠くからカメラ片手にそう呟く。
その背に迫っている、スクロールで身体リボン状態のアンナとナタリアに彼が気付くのは、だいたい五秒後ぐらいの話――