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マスター:天原とき
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/08/02


みんなの思い出



オープニング


 茜色の太陽が西の地平に沈もうとしている。
 青々と夏の草木が生い茂るその山中もまた、赤い光を浴びて、黄昏の色に景色を染めていた。
 そんな中、少女はじっと地中に沈んでいた。比喩ではなく、その小さな肢体を文字通り沈めていた。
 特に山深く草木が濃い藪の中で、顔だけを僅かに覗かせ静かに息をついている。
 普通の人間であるならば、そこに少女が存在していると、気付く事は不可能だろう。
 撒いた筈だと、少女は思った。だが、確信はなかった。
 何故なら――
 風を裂いて紫色の光が無数に飛来した。
 反射的に少女は地中へと完全に沈み、さらに土や岩盤を無視して移動する。少女は息を止め暗闇の中を無我夢中で逃げ回った。しかし、攻撃は止む気配がない。地上から見えない筈であるのに、相手は女の位置を把握しているようだった。
 相手も追跡者として選ばれただけはあるらしい。
 さらに、少女は地上へと向かって押し出される力を感じた。阻霊術が発動している。こうなると、地中に潜行し続ける事は出来ない。
 覚悟を決めて地上へと飛び出した女の眼前に、パンツスーツに身を包んだ若い女が降り立った。
「今晩は、お嬢さん。もう陽が暮れるわ……鬼ごっこはおしまい。良い子だからお家に帰りましょう?」
 ブロンドの髪の女――使徒ナターシャは何処か艶と気だるさを感じさせる口調で述べた。
 視線を上へと走らせれば、炎を纏った怪鳥が無数に旋回している。
 数が多い。
 戦っても、勝てはしないと少女は悟った。
 しかし、それでもここで捕まる訳にはいかなかった。
 一歩、二歩、と後ずさりすると踵を返し全力で駆け出す。
「あまり手間をかけさせないでくれる?」
 紫光が宙を貫いた。
 少女の背へと光の刃が次々に突き刺さって爆裂を巻き起こしてゆく。ただの人ならば、並の撃退士であっても、一瞬で消し飛ぶ程の猛攻だ。
 しかし、少女は倒れなかった。血飛沫をあげながらも、そのまま木々の間を駆け抜けてゆく。
 見た目とは裏腹のこの頑強さにはナターシャも驚きの色を隠せなかった。
「流石に、あの筋肉ハゲと同じ階級だっただけの事はあるのね……」
 だが、少女は無傷という訳でもなかった。
 ナターシャは今度こそ仕留めんと両手の指の間に六条もの光の刃を出現させる。
 しかし、それが放たれる事はなかった。
 ナターシャは反射的に地を蹴りつけると横へと大きく跳んだ。間髪入れず、先程まで女がいた空間へと緑色の光の塊が飛来して大地を爆砕した。
「あ〜らぁ? ヤったと思ったのに、よーけられちまったかぁ」
 緑色のオーラの中からゆらりと振り向いたのは、獣の耳と金色の長髪を持つ若い男だった。
 人間ではない。
「……随分と乱暴なアプローチね。マナーがなってないわよ。悪魔の眷属がどういうつもり?」
 ナターシャは問いかけた。暗黙の了解というものがある。天使と悪魔は地球で全面対決に発展してしまうの嫌って、直接は争おうとしない。
「お初にお目にかかるぜ、天使ギメルが使徒ナターシャさんよ。俺はヴァニタスのユグドラ。用件だが『アレら』は冥界のモンだろぉ? うちのイザコザだ。天の手出しは控えて貰えねぇかな」
「あら……元々は天界の者達だって聞いているわよ。天は天に在るべき、違うかしら?」
「詭弁だナァ」
「さぁ、どちらが詭弁かしら」
「退く気はねぇってかい」
「そうだと言ったら?」
「なるべくなら争うなって言われてるが……死人に口はねぇだろ?」
 男が纏う緑色のオーラが勢いを増して吹き上がる。ナターシャは光の刃を構えた。
「その言葉、リボンをつけて返してあげるわ。貴方、犬っぽいから首輪の方が良いかしら?」
「ぬかせ!」
 対峙するユグドラとナターシャの殺気が膨れ上がった瞬間――
「何をしている!」
 茂みを割って二本の角を持つ白髪の少女が現れた。
 それを見てユグドラは盛大に顔を顰める。
「くそっ、アシュラか。うるさいのが来やがった」
「誰がうるさいだ。目標はどうしたユグドラ。こんな所で何を油を売っている!」
 ユグドラは不承不承といった表情を浮かべてナターシャに向き直ると、オーラを霧散させる。
「気が削がれた。勝負は預けとくぜ」
「……盛大に邪魔してくれて、それで済ませると思ってるの?」
 微笑を浮かべてナターシャ。
 それにアシュラと呼ばれた少女が言った。
「二対一だぞ。空にサーバントがいくらかいるようだがな。面倒はそちらも困るだろう?」
「元々、その面倒は、そっちの男が吹っかけてきてくれたのだけどね……まぁ良いわ、ここは退いておいてあげる」
 嘆息すると光の刃を消す。
「謝罪はしようナターシャ殿。だが、アレらは我々が貰う。いくぞユグドラ」
「へいへい」
 ヴァニタスの二柱はそんな言葉を残して梢の陰へと消えてゆく。
 ナターシャは少女が逃げていった方角を進んだ。
 木々の間を抜けると、崖に出た。
 眼下には人間達の街が、夕焼けの中に佇んでいる。
「逃がしはしないわ」
 ナターシャの呟きは、風に乗って周囲へと響いていった。

●側面の戦い ―骸骨弓士―
「――かねてより計画していた、旧支配地域の完全な掃討戦が行われることになりました」
 オペレータの少女が淡々と言う。
「細かく戦区が区切られた中で、残存している幾つかのサーヴァントないしディアボロを撃破して頂きたいと思います。
 こちらが資料になりますので、よく目をお通しください。
 それほど強敵ではありませんが――確実な撃破をお願い致します」


リプレイ本文

●嵐の眼
 ――風を切る音と共に、嵐が襲ってくる。
「っ!」
 廃車の陰から跳び出したフェリーナ・シーグラム(ja6845)は、アウルを爆発的に燃焼させて一挙動。
 朽ちかかったアスファルトを蹴って、至近目標である瓦礫の影へと飛び込んだ。
 直後、がががががっ! と機関銃の掃射にも等しい勢いで、一瞬前までフェリーナが存在した場所の空気が削り取られていく。
「っ、はぁ」
 一呼吸。
 陰から覗けば見える敵は、まだ遠い。
 即座に顔を引っ込めて、飛んできた一矢を躱す。
 矢と言っても上等なものではない。無骨な針のような、先端が尖っているだけの棒と言っていい代物だ。
 だが、六体からなる骸骨の弓士が放ってくるそれは、アスファルトやコンクリート壁に突き刺さって穴を穿つだけの威力があり。
「落ち着いて……!」
 前方を見て、前を行く田村 ケイ(ja0582)の合図を確認し、再び加速。
 瓦礫の陰から右手前方にある車の陰まで、およそ十メートル。
 その僅かな距離を四秒足らずで駆け抜ける間に、少なくとも十二発を超える矢が降り注いでくる。
「ぐ、っ!」
 一発が肩を掠め、跳ねた黒髪が何本か持っていかれる。
 身体まで強引に持って行かれないように、無理やり前進。
 飛び込んで、転がり込み。口元に入り込んだ砂埃を吐き出して、フェリーナはひとつ息を吐いた。
「大丈夫?」
 声が飛んでくる。
 見遣れば、インニェラ=F=エヌムクライル(ja7000)の姿が近くの瓦礫の陰にあった。
 豊満な身体を魔装のドレスに包み、その裾を飛来する矢の衝撃波に靡かせ、妖しく輝くサファイアの瞳で先を見据えている。
「大丈夫、です。そちらは?」
「大丈夫よ。アナタや田村さんのお陰で、ね」
 矢の嵐に晒されながら、僅かに言葉と小さな微笑みを交わす。
 フェリーナから見ても、彼女に傷はない。
 それどころか、その豪奢なデザインのドレスに一片の砂埃も着いていないのが、とても『魔女』たる彼女らしかった。
「田村さんは……」
「さっき、一発受けてしまったみたいだけれど、致命傷ではないようだったわ。信じましょう、彼女を」
「っ、はい」
 隙を見計らっての移動は、すなわち隙を作る誰かの犠牲が必要だ。
 僅かに先を行くケイがその先鋒。
 その役目に自ら名乗り出た彼女は、最も苛烈な火力に晒されている。
「そう、長々といられないわね」
 顔を引っ込めて、飛来した一矢をぎりぎりで躱しながらインニェラは言う。
「はい。距離が近付くにつれ、威力も、正確性も、向上しています」
「十分に考えられたことではあるけれど。苛烈ね」
 ひとつフードを目深に被り直すインニェラに倣うようにして、フェリーナも額の汗を拭い、魔装のコートの胸元を引き締め直す。
「次、私は右から行くわ」
「では、私は左から」
 お互いに言葉を交わして、フェリーナとインニェラは次の目標地点を見据える。
 距離十二メートル。遮蔽度合いは良し。耐久性にやや難。/距離八メートル。遮蔽度具合は並。耐久性は良し。
 ひしゃげた車、瓦礫の隙間から再確認。
 骸骨の弓士達が陣取るビルの屋上までは、あと五十メートルほどの距離。
 あと三、四度の移動で、ようやくこちらの射程圏内。
 僅かにでも動きが鈍れば、死へと足を踏み外すかもしれない綱渡りを、それだけ。
「――大丈夫。冷静に、確実に」
「ふふ……」
 だが、恐れはない。
 耳を澄ませば聞こえてくる。
 この砕かれた街で戦う、他の仲間達の戦いの音が。
 仲間を呼ぶ声が。
 敵を追う怒声が。
 彼らのことを思えば、この程度、どうということはない。
「――」
 もう一呼吸。
 前を行くケイに視線を送る。
 彼女はひとつ頷いて、後ろ手に合図。
 慎重なカウントダウンから、一足先にケイが跳び出す。
 降り注ぐ矢。
 腰の通信機に一瞬だけ視線を落としてから、フェリーナとインニェラは再び瓦礫の陰から跳び出した。

●嵐の陰からの侵攻
「――背中は預けるぜ。スナイパー」
 公園の林の陰。
 手入れするものがなく、ただ荒らされるばかりで、自然と乱雑になったその場所。
 ビルの隙間から双眼鏡を通して、向こうの通りを突き抜けていく矢の嵐を一瞥し、小田切ルビィ(ja0841)は呟いた。
「惹き付けは、上手く行ってるようだ」
「なら、行こう。こっちがさっさと位置に付かないと、立つ瀬がなくなる」
「くかかっ、おねーさんらに申し訳なくなるのは困るもんなー」
 見回して、頷く。
 銅月 零瞑(ja7779)は口数少なくも、重く頷き。
 七水 散華(ja9239)は、調子づいた声でありつつも、その言葉には二人して同意だ。
 戦いに赴く撃退士であっても、女性を矢面に立たせたまま何も出来ないなど、男が廃るというもの。
 確認をそこそこに、三人は急ぎ足でありながら潜行する。
 木々の陰を跳び出して、素早く大通りを横切っては崩れたビルの陰へ。
 瓦礫に足を引っ掛けないよう、慎重に、かつ大胆に。
 塵舞うアスファルトの上に、鋭いラインのルビィの白い影。
 瓦礫を身軽に乗り越える黒豹のような零瞑の影。
 細く長く尾を引いて、ひらりひらりとどこか衝動的に駆ける散華の影。
 僅かに顔を覗かせ、目標である骸骨弓士達が陣取っている屋上を遠目から確認。
 朽ちたアスファルトの上を、足音を殺しながら飛ぶように駆け。
 細い裏路地に次々に飛び込んでは、ルビィを先頭に進路を確認し、零瞑が中途を警戒。
 最後尾から余計な邪魔が付いてきていないかを散華が確認して、目標のビルに到着する。
 シャッターは下りているが破られており、何者かの破壊の影響か、歪んでいる扉が見えた。
「かかっ、到着ー、と。扉は?」
「歪んでるな。壊してもいいが……」
「あれを」
 零瞑が短く声を上げ、もうひとつの路地から陰を指差して示す。
 そこにあったのは小さな非常階段。
 赤錆びた老朽化と破壊で一階から二階、二階から三階へ至る段が大幅に抜けてはいるが、全体はしっかりとビルに張り付いているようだ。
「なら、向こうから行こう。念の為、二階から入って屋上へ」
「分かった」
「おっけー」
 短い助走から身軽にとんとんっ、と飛んで、まず散華が鉄骨にぶら下がってはひらりと身体を持ち上げ、二階の扉へと取り付いた。
 目隠しの布の裾が髪の毛のように靡く。
 音を殺しながら、目が見えぬ故に音で全てを判断する達人のように、静止して暫く。手招きをし、まずルビィを引き上げる。
 続いて零瞑を引き上げる間に、ルビィは静かにビルの中へ。
 荒れ果てた室内を見回し、誰もいないことを確認してから、入ってきた二人に目配せをし、階段の上へ。
 埃積もった小さな踊り場を抜けて、三階を同様に確認。
 静かに屋上へ続く扉の前に。
 そこでタイミングよく、通信機が震えた。
「――シーグラムより突入班。攻撃可能ラインに到達っ」
 同時、軽やかにくるっと一回転して放たれた散華の蹴りが、轟音を立てて屋上の扉を吹き飛ばした。

●返礼の一撃
「――姓は七水、名は散華。さァ、告悔室の解放だ!」
 鬨の声を上げて、屋上にルビィと零瞑を先頭、散華がその後ろに続く形で三人が雪崩込んだ。
 骸骨の弓士達の半数、三体がそれに反応して一瞬遅れつつも三人に弓を向ける。
 距離は僅かに六メートルと少し。
「はっ!」
 まずはルビィが先制。
 大剣を振り被って一閃。放たれた衝撃波が屋上の縁に並んでいる骸骨の弓士達の半数を薙ぎ、その射撃体勢を揺らがせる。
 その隙に、撃退士にとっては短すぎる間合いを、やはり三人は一瞬で詰める。
「っと!」
 放たれた矢を、黒と白が入り混じったアウルを纏った盾でルビィが弾く。
 アウルの強化に伴って強化された盾は、至近距離からの大弓の強烈な一矢を容易く弾き、僅かな衝撃だけをルビィの手に伝える。
「手荒い歓迎、ありがとよ? ――ちょっとした礼だ。受け取って行け……!」
 返す攻撃は、二発目の衝撃波。
 囮班の三人が受けた分を纏めて返すように、大剣から再び一閃。
 間合いを詰めてから放たれた一撃は、ほぼ弓士の全員に少なくない衝撃とダメージを与え、注意を引き付ける。
 至近距離からルビィへと向けられる六つの大弓。
「――させん」
 しかし、そうはさせじとまずは零瞑が至近の一体に連撃を加える。
 振るわれた短槍が弓持つ骨の腕を払い、乱れたところに首狙いで一撃。
 飛び散る白い破片に意を介さずに、胸骨の中央へと鋭い突き。
 からからっ、とたたらを踏んだところに、零瞑の大柄な身体の影から散華が忍ばされた刃のように滑り込んでくる。
「かかっ――貰ったァ!」
 バランスを崩している一体へ、素早い足払い。
 がんっ、と痛烈な衝撃を受けて、転倒。
 それを逃さず――瞬時にヒヒイロカネから光纏の輝きと共に出現した大型の鎚が、正しくその一体を叩き潰した。
 だが、それでも五体からの射撃――
「――こちらを忘れてもらっては困りますよ……!」
 端の一体が、その頭蓋骨を砕かれた。
 矢の嵐が中断したことによる、フェリーナからの痛烈な狙撃返し。
「そうね――受け取りなさいな」
 続くインニェラが、アウルの輝きで描かれた魔法陣から、雷撃を放ち。
 僅かに弧を描いて、その一体を焼き尽くし、骨粉へと変えた。
 残り四体。
 いや、再びケイやインニェラに攻撃対象が散り、それぞれに二体。
「ふ……!」
 一矢を零瞑がすかさず斬り払い、
「させませんっ」
 瞬時にフェリーナが放った三点射が、ルビィに向かったもう一矢を見事に逸らす。
 一方で、ケイやインニェラは自身に向けられた矢を遮蔽物の陰に身を隠し、容易に回避する。
 挟撃に対してバラつき、散発的になってしまった攻撃など、もはや脅威ではない。
 本来なら、片方を最低限足止めしつつ、もう片方を殲滅すべき。
 だが、ディアボロやサーヴァントの頭だけでは、これが限界ということなのだろう。
「は―― っと!」
 好機と見て、散華が乱取りのような攻勢に出る。
 一体の腕を払いながら、ひらりと跳んで脇腹に一矢を掠らせながらも回避。
 そのまま一体の肩を踏み抜いて背後に降り立つと、強烈な回し蹴りを一発。
 小気味良い音を立ててバラバラになる骸骨兵。
 ――すぅ、と再び組み上がろうとしたところを、すかさず零瞑から止めの苦無が飛んだ。
 腰骨に直撃。粉砕すると、組み上がろうにも組み上がれないのか、そのまま崩壊する。
 残り三体。
「七水さん、小田切さん、油断するな。こいつら、重要な部分を粉にしない限り復活する」
「おーけい。分かったっ」
「そうみたいだな……! 流石、こんなナリしてるだけは、あるっ!」
 がんっ! と続けて一体をルビィが斬り払う。
 僅かに距離が離れた隙を見計らって、続けざまに三度目の衝撃波を一閃。
 一体が剣閃の圧力に耐え切れず粉々となり、余波に煽られて二体の攻撃態勢が崩れる。
 残り二体。
「貰いますっ」
「冥界より来たりし雷よ――」
 屋上の縁に押し寄せられた一体を、背後から銃弾と雷が貫く。
 息の合ったフェリーナとインニェラの二人によるコンビネーション。
 正確に、腕骨を撃ち抜いて粉砕してからの雷火焼却。
 砕かれた部分から染み渡るようにして骨を電撃が焼き、その芯を喰らい尽くしたかのように塵とする。
 残り一体――
「終わりだ」
 最後の一矢を弾き。
 零瞑がその弓ごと大上段から頭蓋に胸骨から腰骨を叩き割って、止めとした。

 小さな静寂が場に満ちる。
 だが、遠くではまだ戦いの怒号は続いていた。
「よし、これで、ここは終わりか」
「……作戦終了、ですね」
 通信機を通して、少し離れていても声が入り混じる。
 フェリーナの声色は、遠くの戦音に耳を傾けているのがありありと分かる様子だった。
「駄目よ、フェリーナ。気持ちは分かるけれど」
「了解です」
 頷いて。
「これで攻撃、ってか。 ……よくもまーこんな強い弦が引けるなー。さっすがバケモノ」
 散華が骸骨弓士達の大弓を片手に、弦を引く。
 何で出来ているのかは不明だが、その骨の弓は撃退士を持ってしても扱うには困難な代物だ。
「放置しておけば、強力な砲台であり続けただろうな」
「――何で今になって、ってところか。急な作戦に、全体の詳細が不明な大規模掃討。渡されたのは目標の居場所とデータだけ、か」
 何とも言えない顔でルビィが肩を竦める。
「ともかく、こっちの担当は終了だ。何かあれば、追加で指示が来るだろう」
「はい。 ――帰投しましょう」
 各々は、それぞれの思惑を持った息をひとつ吐いて。
 未だ戦いの音響くその廃墟を、一足先に離脱するのであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
手に抱く銃は護る為・
フェリーナ・シーグラム(ja6845)

大学部6年163組 女 インフィルトレイター
終演の幕を降ろす魔女・
インニェラ=F=エヌムクライル(ja7000)

大学部9年246組 女 ダアト
大地の守護者・
銅月 零瞑(ja7779)

大学部4年184組 男 ルインズブレイド
告解聴者・
七水 散華(ja9239)

大学部2年116組 男 阿修羅