「じゃあ、今日お願いしたいお手伝いを確認しますね」
「はい、よろしくお願いします」
ここは温猫温泉。今日は優美さんが先に来て、女将見習いの阿佐ヶ谷さんと一緒に今日のお手伝いの確認です。
「にゃ〜」
そんな優美さんの足下をうろうろ、とことこと一緒に付いて回っているのはジェリーちゃん、まろんちゃん、ちとせちゃんたち。優美さんと一緒に来る誰かを探している様子。しっぽはぴんっと立ったり横にふ〜らふら『いないよ〜』『ね、どこなの〜』そんなしっぽなのです。
「じゃあ、この道具はここで、おやつはいつもの場所にありますから……」
そしてお手伝い内容のお話をしているお二人。その足下の猫さんたちの耳がぴくっ、しっぽぴょん、って動くと、たたっと玄関へだっしゅです。
「あらあら、到着かしら」
そんな猫さんのお出迎えに、優美さんたちも玄関へ向かうのでした。
「みぃ〜!」
元気にだっしゅなジェリーちゃん。
「お前、確かジェリーだったな」
飛び込んだのは千葉真一(
ja0070)さん。ちょっとびっくりだけど、覚えてくれた様子に顔をほころばせます。
その後ろからとてとて、よちよちとだっしゅしてくるのはちとせちゃん。お目当てはレティシア・シャンテヒルト(
jb6767)さん。
「にぃ〜」
そして、レティシアさんに抱っこされて幸せそうな顔。だけど、すぐに降りて少し前を歩いて、くるっとこっちを見る。
「なんでしょうか?」
近寄ると距離を取って、もう一度くるっとレティシアさんを見つめます。
「ふふ、これは休憩部屋に来てって事でしょうね」
阿佐ヶ谷さんがちとせちゃんのご意見を代弁してくれます。そう、ちとせちゃんが歩く方向は休憩部屋のある場所なのです。
「後で行きますね」
そんなちとせちゃんの頭を撫でながらレティシアさんは約束するのでした。
「みゅ?」
他の猫さんたちと一緒にだっしゅしたまろんちゃん。飛び込んだの藤井雪彦(
jb4731)さんの腕の中。
「いらっしゃい、子猫ちゃん」
だっこされて、初めて『このひとだれ〜』って雰囲気で雪彦さんを見上げますけど、すぐに『ふにゃ〜ん』な感じで腕に顔をすりすりご挨拶なのです。
「もふもふ……」
そんな歓迎猫さんたちを抱っこして、腕の中の猫さんをもふもふ、なでなでな凪澤小紅(
ja0266)さん。
「……はっ、しっかり仕事せねば」
猫さんのもふもふに心奪われていた様子なのですが、キリっと気を引き締めて……。
「にゃ〜」
「しょうがないな〜」
猫さんのすりすりおねだりに、やっぱり心ももふもふになってしまうのでした。
「あら、アユムちゃん」
「にゃ〜ん」
昨日から休憩部屋から出てこなかったアユムちゃん。だけど、今日だけは何故かお出迎え。そして、ルティス・バルト(
jb7567)さんにとことことお近づきでお出迎えなのです。
「久しぶり、元気にしてたかな?」
「にゃ〜ん」
だけど、ちょ〜っとお疲れの様子。
「お久しぶり、だね」
そしてアユムちゃんを抱っこしながら阿佐ヶ谷さんと優美さん、そして他の女性陣に花束をプレゼント。さすがルティスラさんです。
「まあ、ありがとうございます」
そんな花束を慣れた雰囲気で受け取る阿佐ヶ谷さんと慣れていなくて少し顔が赤い優美さんが対照的です。
「今日もよろしくお願いします……くしゅっ」
そして神谷愛莉(
jb5345)さんが猫さんを抱っこしながらの可愛らしいくしゃみが響くのでした。
そして、阿佐ヶ谷さんは忙しいので、後は優美さんにお任せするのです。
「じゃあ、皆さんよろしくお願いします」
そして役割分担して皆さんでお手伝い開始なのです。
「愛莉さんは休憩部屋ですね」
あれれ、最初は愛莉さんは雪彦さんと一緒におやつの時間では?
「そうだね、愛莉ちゃんは休憩部屋だね」
そんな優美さんの気遣いに、当たり前のように気付いていた雪彦さんはちょっと多めの荷物を持ってお仕事へ。
「ふにゅ?」
愛莉さんは優美さんに手を引かれてぬくぬくな休憩部屋へ。
「じゃあ、ゆっくりね」
そして毛布を準備してふかふか枕の上で愛莉さんをお休みさせます。愛莉さんがちょっとお疲れさんなのは、雪彦さんや優美さんにはお見通しなのです。
「ありがとうです」
お部屋はぬくぬくぽかぽか。それに乾燥しないようにぽとぽととストーブの上にやかんが置いてあります。そんなお部屋で猫さんと一緒にお休みしていると……静かに愛莉さんのまぶたがおも〜くなるのでした。
さて、お一人でも、猫さんのおやつを手に建物を歩きながらおやつを配って回る雪彦さん。
「さぁ〜って食べたそうな子を探すよぉ〜」
そんな雪彦さんですけど、探すまでもなく猫さんたちがおやつの美味しそうな香りに誘われて集まって来ます。
「にゃん」
「みゃん!」
雪彦さんがあげるおやつを美味しそうに食べる子や『持って帰るの』って感じでくわえてどこかで隠れにゃんこ。後でこっそりゆっくり食べるのかな?
「一生懸命食べている姿ってやっぱり可愛いよね♪」
そんな集まってくる猫さんにおやつをあげて、さらにマッサージをしてあげたりして、あっと言う間にいっぱいの猫さんと仲良しになっている雪彦さん。猫さんたちもとても楽しそうです。
「そこの君もおいでぇ〜」
そんな仲良し猫さんと雪彦さんを少し遠巻きに見ている黒猫さんがいますね。そんな子におやつをちらちら見せてお誘いしますけど……。
「みぃ!」
ちょっとびっくり……というよりは、少し人見知りなのかな? ちょっと離れては影からこっそりと雪彦さんを見ているのです。
「おいで〜」
そんな様子にもう一度、おやつをちらちら。好きじゃないおやつかもしれないから、別のおやつでも挑戦……ですけど、やっぱり逃げちゃいます。
「ま、ゆっくりだね」
ですが、そんなちらちら猫さんのお相手は慣れた様子なのか落ち着いている雪彦さん。なので、あえてしばらく視線を向けないようにして、手元の猫さんたちにた〜っぷりとマッサージ。
「みぃ〜」
「んにゃ〜」
猫さんたちの楽しそうな声が響くと、隠れ黒猫ちゃんも気になって段々と近寄って来ます。
「捕まえたよ」
そんな黒猫ちゃんが一番近くに来たときに、さっと雪彦さんの手が優しく動き、黒猫ちゃんを抱っこ。そして、お口におやつを食べさせてあげます。
「みにゃん!」
欲しかったおやつを食べたところで、同時に雪彦さんの優しいマッサージしてあげると、すぐに仲良しに。
「みゃん、みゃん!」
「は〜い、はい。どうぞぉ〜」
すぐにお代わりのおねだりなのでした。
「愛莉ちゃん、どうでした?」
「気持ち良さそうにお休みしてます」
軽くお仕事を終えて様子を見に来た雪彦さん。一人では大変かもしれないので、ちょっとだけ優美さんがお手伝い……ですけど、雪彦さんの足下には猫さんたちがぱたぱたと『おやつ欲しいの〜』って感じなのです。
そんな猫さんたちにおやつを配っていると、少し困り顔の小紅さん登場です。
「雪彦、おやつを分けてくれないか?」
小紅さんが見つけた子は、ちょっと……いやかなり耳が汚れた子。だけど、隙間に隠れて出てこない様子。
「あの子はモモちゃんですね」
モモちゃんは狭いところが大好きな女の子。なので、ときどき汚れちゃうのです。
「どれがいいかな?」
雪彦さんが差し出したのは、カリカリジャーキーと柔らかササミ。他にも猫さんミルクも用意しています。
「じゃあ、ジャーキーを」
小紅さんはジャーキーを受け取り、隠れるの大好きモモちゃんの目の前にちらちらと。
「にゃん!」
そんなちらちらに我慢出来ずに飛び出したモモちゃん。ぱくっとくわえてたたっとだっしゅ……の予定でしたが、そこをぱすっと小紅さんにだっこされます。
「みゃ?」
だっこされて驚いたけど、小紅さんのあったかな温もりに、ちょっとぽわ〜ん。その隙に小紅さんの綿棒が優しくモモちゃんの耳をささっとお掃除。
「ふにゃぁ〜」
耳掃除が気持ち良かったのか、可愛い声を出して幸せそう。耳掃除が終わっても小紅さんのだっこから出ようとしないモモちゃんなのでした。
さて、お休み部屋のルティスさん。
「アユムちゃんも居るね」
寝ている猫さんを起こさないように静かにのんびりと座ります。
「みゃ〜」
そんなルティスさんの来室に目を覚ましたのかアユムちゃんがとてとてとルティスさんの側へ移動。そして、なんとも当たり前な雰囲気でお膝の上に乗って、そのままもう一度夢の中へ。
(そっと、傍らに居るだけでも癒されることはあるよね)
そんなアユムちゃんに何も言わずお膝を貸してあげる優しいルティスさんなのでした。
「こちらは終わったでしょうか? お手伝いお願いします」
「ああ、手早く終わらせるぞ」
やっぱり、いやいやする子もいます。そんなときはお二人でコンビネーションです。小紅さんが猫さんを抱っこしている間に、レティシアさんがささっと爪切りを終わらせてしまいます。
「ふわぁ、すごい手際なのです」
そんな二人の爪切りをじ〜っと見ていたのは、休憩部屋でお休みして少し元気になった愛莉さん。
「愛莉だと怪我させちゃいそ……」
「じゃあ、やりかた教えてあげましょうか?」
「そうだな。何事も経験だ」
確かに、猫さんの爪切りはしっぱいすると、ちょっと痛い事がありますからね。
「ふにゅ、お願いしますです……」
「お、それは俺も教えてもらおうかな」
そんな時にちょうど、様子を見に来た真一さんも一緒に爪切りを教わるようです。
そんな風にレティシアさんと小紅さんにの爪切り耳掃除教室が始まるのでした♪
お二人の爪切り教室が終わった後、愛莉さんが猫さんたちにおやつや猫草を配っていると……。
「猫さんのおやつ〜」
「あらあら」
親子のお客さんでしょうか、愛莉さんを羨ましそうに見ていますね。
「よかったらあげてみる?」
「うん!」
「じゃあ、こうして……ね」
愛莉さんが男の子に手取り足取り教えてあげます。おやつをあげるときに猫さんが勢い良く食べて、手にごっつんこしてしまう事がありますから、ご注意なのです。
「ふわぁ、猫さんの舌、ざらざらなのぉ〜」
男の子が猫さんにぺろってされて、すっごい笑顔。
「ざらざらだよね〜」
そんな愛莉さんはお客さんとも仲良くなってしまうのでした。
そして猫さんがおやつや猫草を食べた子が、すっきりしちゃう事があるので、その後かたづけもぬかりなく片づける雪彦さんと愛莉さんなのでした。
「……」
静かに休憩部屋の端っこでじっとしているレティシアさん。そんなレティシアさんがいるからか、猫さんたちはとってもだら〜っとしています。
さっきまで眠ってた子も、少し目を覚ましてはレティシアさんの側に近寄って、そしてお膝に頭を乗せて、もう一度お休みしちゃいます。
「ちとせちゃん、もっと甘えたりわがまま言ってもいいのよー」
なんて、軽く口ずさむレティシアさん。そんな言葉が通じたのか、そうでないのかはちょっと分からないですけど、ちとせちゃんがゆっくりと立ち上がって、レティシアさんのお隣へ。そして背中をレティシアさんの足に預けて、ごろ〜んとお腹を出しての安心まったりお昼寝ぽ〜ずなのです。
「ふふっ」
そんな安心すぎる寝姿に思わず優しく微笑むレティシアさんなのでした。
さて、爪とぎをてきぱきと交換しているのは真一さんとルティスさん。普通なら重くてかさばる爪とぎを運んで設置してと大変なのですけど、そこはやっぱり男の子二人。
「これで交換は一通り目処が付いたな」
「そうだね」
さらにルティスさんは一番使われている場所をチェックして、リストまで作ってくれました。なんて、細かいところまでの心配りなのでしょうか。
「古いのは処分ってことで良いのか?」
「そこは後で確認だね」
こんなに早く終わると思ってなかったから阿佐ヶ谷さんが様子を見に来るまで、もう少しなのです。
「後は予備を作っておけばOKと」
「そうだね……猫さんの爪が引っかかり易いようにしておくことも忘れずにね」
「ああ、そうだな」
そんなテキパキとお仕事するお二人を、少し離れた場所からず〜っと追いかけていた猫さんがいます。ジェリーちゃんとまろんちゃんです。
「みぃ〜」
「みゃん!」
「少し遊んであげるか」
「それがいいね」
二人はダンボールの切れ端で即興の玩具を作って遊んであげるのでした。
そしてお休み部屋は真一さんの番なのです。
「外でひなたぼっこするのと似た感じか?」
真一さんが入ってもぴくりとも動かない猫さんたち。一緒にジェリーちゃんも入ってきますけど、ここでは真一さんのお膝ではなく、ストーブ前のぽかぽかエリアで丸くなりました。
「……いや、ちょっと違うか」
そんな幸せそうなジェリーちゃんを見て、そう思う真一さん。とりあえず本を広げてのんびりと……って思ったら読んでいる本は猫さんと仲良くするための本。勉強熱心なのですね。
「みぃ〜」
そんなのんびりしている時間はそろそろ終わりです。
「交代するか?」
「そうだな」
小紅さんが顔を出したので、立ち上がろうとする真一さん。ですが、その真一さんの足に、シズナちゃんが両手を乗せて『いやいや〜』って感じ。
「むう、こういう場合はどうすれば……?」
「もう少し、ここに居るしかないだろうな」
そんな真一さんにクールな表情で甘い言葉を返す小紅さんなのでした。
それからシズナちゃんの興味が小紅さんに移ったところで、真一さんは他のお手伝いに向かいました。
それから、ノンビリ猫さんを眺めて癒されるつもりだった小紅さんですが……。
「これは、なんという拷問だ……」
猫さんたちは、いつも以上に自由気まま。のんびりもーどだからか、小紅さんのお膝に来たり、『なでて〜』なんて事が無いから、猫さんに触る事が出来ないルールなのです。
「幸せと苦しみが一緒にくるとは!」
そんな風にしていると、近寄ってくるのはポン太君。お膝に乗るのかと思えば、小紅さんの目の前の毛布に乗って、何故か毛布を前足でふみふみ、くるっと回ってもう一度ふみふみ。
「可愛い……」
その愛らしい仕草に、思わず手が伸びそうになるけど、一生懸命我慢なのです。そして毛布に飽きたのか、小紅さんの側に寄って今度は服の裾をふみふみ。くるっと回ってまたふみふみ。でも、小紅さんには全然触りません。肉球の柔らかさもあったかさも無いのです。
「恐ろしや、お休み部屋!」
大げさな小紅さんなのでした♪
「今日は皆さんありがとうございました」
楽しい時間はあっと言う間。皆さんでお見送りです。
「帰りは名残惜しいけど、また来るね。その時はアユムちゃん、またお散歩しよう」
「にゃ〜ん」
ルティスさんがアユムちゃんと阿佐ヶ谷さんにウィンクをしてお別れの挨拶。
「また遊びに来ますよ〜」
「みゃ〜ん」
温猫温泉に皆さんの声が響きます。
ここは猫と温もりを共にするお宿。また、お手伝いに来てくださいね♪