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「えと、荻窪さんも撮影に参加していたんですね……!」
「お久しぶり、優美さん元気だったかい?」
「優美さん、今日もお願いするんだよ」
「あ、Kamilさん、ルティスさん、宮子さん、こんにちは。皆さん今日もよろしくお願いします」
「ふみゅ オギクボユウミさん? カミルさん? 智さんと一緒にいた人だぁ」
「先日は智美さんにお世話になりました」
最初に皆さんで顔を合わせた何人かはすでに顔見知り。ルティス・バルト(
jb7567)さん、猫野・宮子(
ja0024)さんは以前の温猫温泉の依頼でご一緒した仲。神谷 愛莉(
jb5345)さんは以前の依頼でお友達が荻窪優美(jz0273) さんと一緒にピクニックに行った繋がり。そのピクニックに一緒にKamil(
jb8698)さんもご一緒しています。こんな風にお友達の輪が繋がっていくのですね。
「今日もよろしくお願いします」
「ん、二回もお世話になってるし宣伝、頑張らせて貰うんだよ」
「はい。お部屋と食事も準備していますからね」
こちらも顔なじみな人がいる女将見習いの阿佐ヶ谷優花さん。宮子さんは今回が三回目なので、やる気十分のようですね。
「猫さんと一緒にのんびりできるだなんて素敵ね♪ 」
「本当、にゃんこと触れ合えるなんて素敵ですよね」
そしてイリヤ・メフィス(
ja8533)さんとヴェーラ(
jb0831)さん。お宿の中から猫さんがのぞいているのがとっても不思議な雰囲気。
「みゅ!」
そんな事をしていますと、愛莉さんの足下が何だかふわふわで暖かいです。愛莉さんが驚いて足下を見ると……小さい毛玉さんが、足をもふもふしています。
「もふもふなのです」
そんなもふもふに手を差し伸ばすと、毛玉さんが愛莉さんの手ぺろってします。
「くすぐったいです」
毛玉さん……ではなくて猫さんは愛莉さんに興味津々。
「この子はケイトちゃんです、抱っこして欲しいみたいです」
ケイトちゃんはチンチラシルバーの女の子。毛糸玉に似ているからケイトちゃんです。そんな様子を見て、手早く撮影用カメラを用意するルティスさん。
「こんな風に、この温泉では人懐っこい子が多いのが特徴です」
「それでも、急に駆け寄ったり、追いかけ回すと駄目です。最初はじっと……です」
ルティスさんの撮影しながらの説明と、ケイトちゃんを優しく見つめながら愛莉さんの説明開始です。
人懐っこい子が多い温猫温泉。でも、もちろんそうでない子も多いですから……愛莉さんは一番猫さんに優しい方法をとります。
「猫さんも、最初は怖がる子が多いです」
そう言って、静かに膝を付いてゆっくりとケイトちゃんをなでなで。最初は背中から。そして、首から頭、そしてお腹をゆっくりとなでなで。それから安心したところでの抱っこです。
「にゃ〜ん」
腕の位置に注意して、お尻が安定するように抱っこすると、猫さんも安心して抱っこされて、幸せそうな雰囲気になるのです。
そんなちょこっと小さめな愛莉さんが抱っこしているから、それが綺麗にフレームに入っていますね。
そんな様子に、ちょっと離れたところで様子を見ているのは、別の猫さん。ケイトちゃんを羨ましそうに見ているのか、じっと狭い場所から見ていますね。
「どうしたの?」
宮子さんは気が付いた様子ですが、あまりじ〜っと見ないようにしています。
「あの子はオクビちゃんですね」
ちょっと臆病な子……というよりは、自由奔放で遊ぶの大好きな子が多いからそんな気がしますけど、オクビちゃんは猫さんとしては普通の子ですね。
「にゃ〜ん」
そんなオクビちゃんをあまりじっと見つめないようにしていた宮子さんですが、お宿から走ってくる別の子が。以前にお世話をしたみ〜ちゃんですね。
「み〜ちゃん元気だったかな?」
「にゃ〜ん」
み〜ちゃんは覚えているのか、宮子さんに一直線にだっしゅです。そして、ルティスさんのところにもアユムちゃんが。前と同じようにお散歩用のリードをくわえています。
「そうだね、一緒に行こうかい」
ルティスさんはリードをアユムちゃんに付けて一緒に行くようですね。
だけど、何度も来ている優美さんのところには来ていません……。
「しょぼ〜ん」
ま、まあ来ても裏方で洗濯や皿洗いなどのお手伝いをしている事が多いですからね。
「こんなときこそ、笑顔の練習の成果、出す時ですね……!」
ちょっと落ち込んでいる優美さんにKamilさんが声をかけていますね。あらあら、優美さん笑顔の練習なんてしてたのですか?
「……に……にこぉ〜」
そんな優美さんの一生懸命に……びっくりして顔を愛莉さんの腕に潜らせるケイトちゃん。優美さんのお顔は笑顔というよりも、赤ちゃんを笑顔にさせちゃいそうな、そんな顔ですね。
「大丈夫さ、優美さん。可愛いよ」
そんな優美さんの頑張り笑顔に気が付いたルティスさん。
「……ありがとうございます」
表情は普段の無表情に戻っていますが、それでも顔は真っ赤な優美さんでした。
(あらあら、優美ちゃんもいいお友達が出来たのね)
そんな様子を阿佐ヶ谷さんが優しい瞳で見つめるのでした。
●
さて、ご挨拶を終えたところで、早速出発です。最初に行くのは……ラーメン屋さん。
「可愛い名前だよね、ぽかぽかって」
ヴェーラさんが看板を見て思わず呟きます。寒い冬なら、体の心まで暖まりそうな、そんな感じです。
「さぁて、お腹が空いては戦ができぬ! 『温泉ラーメンぽかぽか』の紹介です!」
ヴェーラさんが大きめのアクションを取りながらのぽかぽかのお店を紹介開始です。
「いらっしゃい!」
暖簾をくぐるとお迎えするのは店主……ではなく、入り口に鎮座している猫さん。その首には『ぽか』と名札が付いています。
「にゃん!」
そしてぽか君もお出迎えの挨拶……かな?
「あ、温猫の人ですね。今日はお願いします」
そして改めて店主さん登場です。店主さんは壮麗な老夫婦。
「猫も一緒に大丈夫よ」
「はーい」
おばあちゃんの声で皆さんはお店に入ります。それを追いかけてくるのは……オクビちゃん。
「ついてきたのですか?」
イリヤさんが近づくと、お店の隅っこにだっしゅ。そして、隙間にもぐってイリヤさんの顔をじっと見つめます。
「……一枚撮りますね」
そのぱたぱた走る姿が可愛らしくて思わず一枚パシャリ。そんな様子を狭い隙間から眺めるオクビちゃん。
「みゅ〜」
さらに、そんなオクビちゃんを見ているアユムちゃんでした。
「せっかくだし、少し撮ろうか」
「そうですね」
その様子を見ていたルティスさん。カメラを構えてイリヤさんのレポートを促します。
「猫さんはぬいぐるみじゃありません。生きていますから、怒ることだって、怖がることだってあります」
イリヤさんの丁寧な説明と、隅っこに隠れたオクビちゃん。分かりやすい構図の完成ですね。
「はい、イリヤさんいい説明だったよ」
「あ、ありがとうございます」
イリヤさん、丁寧な説明ありがとうございますね。
「このラーメンのこだわりはありますか?」
「そうだね、こだわりというか、お客さんが喜ぶようにやるだけさ」
さて、本格的に紹介の開始です。イリヤさんが店主さんに質問です。その隣では、用意されたラーメンが並べられ、それをルティスさんが撮影しています。
(ぐるきゅ〜)
そんな美味しそうなラーメンの撮影をしていると、響くお腹の音。
「おや、可愛らしい音が聞こえましたね。じゃあ、早速頂きましょうか」
その音を拾ってしまったのでルティスさんの華麗なアドリブです。少しラーメンの説明を入れる予定でしたけど、このタイミングで食べないのは、別の意味で駄目ですよね。
「いただきます!」
あえて、誰のお腹が鳴ったのか追求しないのはルティスさんの優しさ。ちなみに聞こえた音は二人以上でした。
「お腹が膨れて幸せになった後は、猫さんと一緒にお昼寝なんていかがかしら?」
と、ヴェーラさんの説明で締めるのでした。
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「それじゃあ、猫さんが喜ぶポイント伝授です!」
さて、ラーメン屋さんの撮影が終わった後に、お昼ご飯までは猫さんと一緒に遊びます。そこで、猫さんが喜ぶポイントをヴェーラさんからの伝授です!
「猫さん達はこんな風に撫でるといいのです」
実践のお相手は、外が怖くてお留守番していたみ〜ちゃんです。
「にゃ〜ん」
そして披露されるヴェーラさんの猫さん喜ばせ撫でポイントの秘技。
「猫さんの尻尾は、大事な部分ですから、あまり触らないように……」
そして、喜ばせポイントだけでなく、嫌がる部分もしっかりと説明。撮影はルティスさんと宮子さんで二方向からの撮影です。そんな様子を……相変わらずこっそり一緒にいるオクビちゃんが隅っこから見ているのでした。
さて、少し離れた場所ではルティスさんと優美さんで、別撮りするようですね。
「じゃあ、優美さん、よろしくね」
「はい……」
そして撮影を優美さんに任せてルティスさんは煙草を吸います。そう、禁止事項の紹介のための撮影です。一緒に香水を付けるシーンを入れて完成。ルティスさんのこだわりですね。
「優美さん、ありがとう。これは心ばかりの感謝の印」
そう言うと、カメラを受け取ると同時に手の中から現れる薔薇。そして、ウィンク。
「……はい……」
並の女性なら一撃でハートを持って行きそうなルティスさんの行動に……真っ赤に固まる優美さんでした。
そして、ルティスさんは丁寧に煙草や香水の臭いを消してから戻って、そこで禁止事項の説明です。説明は愛莉さんとヴェーラさん。
「猫さんはにおいに敏感なのです」
そして、赤バッテンして、ぶぶーって警告音。さらに、猫さんのご機嫌斜めな顔を同時に出して編集するのです。猫さんのご機嫌斜めな顔は、オクビちゃんの映像を使うことに。使い回し? いいえ、有効活用ですよ。
「もし、つけてきちゃったら、温泉で一汗流すのはいかがかしら? 猫さんも『あら、いい匂いになったわ』って寄ってきてくれるかもしれませんよ」
そして、温泉映像を追加するのでした。
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そして昼食が終わった後はもう一件のお店、喫茶店の紹介ですね。
「ここが猫さんと一緒に入れる喫茶店、トリプルベルですね」
先頭で喫茶店に入るわくわく顔なKamilさん。その店内に入ると同時に大きく……ゆっくりと見渡すと、そのほんわかとした空気を感じます。
「……素敵です」
その空気を感じたKamilさんがため息と一緒に緊張が溶け出していますね。
「いらっしゃい〜」
そんな少し緊張気味だったKamilさんの緊張が溶けたときに、ゆっくりと間延びした声が響きます。このトリプルベルの店主さん。店主さんはエプロンがお似合いのお姉さん。その腕には甘えん坊の猫さんが、この喫茶店に溶け込むような自然な雰囲気でいるのでした。
「ぬくぬくねこねこ温泉の人ですね、今日はよろしくお願いしますね」
『ぬく』と『ねこ』が多いですが、お話は伝わっているようすですね。
「この子はアベルです」
「にゃ〜ん」
そして、一緒に猫さんの紹介。抱っこしているのがアベルちゃん。そして、足下にはもう二匹の猫さんが……。
「この子がラベルにリベル」
「にゃにゃ〜」
「にゃ〜」
アベルが三毛猫で、ラベルが白猫、リベルが黒猫。そして改めて看板を見ると、白いベル、黒いベル、三色のベル。
「もしかして、この看板はラベルちゃん、リベルちゃん、アベルちゃんで、トリプルベルなのかな?」
察しのいい宮子さん、大当たりです。
「はい、正解です」
まるでクイズ番組のお姉さんのように笑顔で『正解!』してくれるお姉さん。
そんな店内の様子にやっぱり付いてきていたオクビちゃんですが……今回は隅っこじゃなくて比較的広い場所で、まったりな様子。そしてアユムちゃんは、リベルちゃん、ラベルちゃんと一緒にくるんくるんと遊んでいますね。
「あ、お店の紹介しないと!」
あんまりなほのぼの空気に、ゆっくりとしてしまった皆さん。『ゆっくりでいいですよ』という雰囲気のお姉さんの視線もありますが、Kamilさんの声で改めて撮影開始です。
「えと、まず、お店の簡単な説明……ですね」
説明を始めるとやっぱり緊張しちゃうKamilさん。だけど、そんな緊張を溶かすように、足下に集まってくるアユムちゃんにケイトちゃん。『大丈夫だよ〜』『一緒に紹介して〜』とでも言いたそうな雰囲気。そして、一生懸命Kamilさんは紹介をするのでした。
●
「優美さん、一緒に入って宣伝しよう♪」
「は、はい」
「え?お風呂シーンもPV撮るの……? 」
「やっぱり温猫温泉の特徴といったら温泉に猫さんと入れる所だよね♪」
「あ、水着着用なんですのね」
「Kamilさんも一緒に……」
「はい、ご一緒しますね」
そんな女性達の賑やかな雰囲気。ルティスさんは、それを邪魔しないように先に温泉に入って猫さんたちと一緒に温泉の撮影をしていますね。
そんな賑やかな様子にやっぱりついてきたオクビちゃん。
「一緒に入る?」
辛抱強くゆっくりと待つヴェーラさん。その想いが通じたのか、ゆっくりと温泉に入ってくる。
「みゅ〜」
ヴェーラさんに優しくなでなでされて、イリヤさんに体を洗ってもらい、そしてKamilさんに抱っこされて幸せそうな顔をするのでした。
ゆっくりのんびりと温泉を堪能した後は、夕食。そして最後の編集ですね。
「あれ、ここ……」
シーンを編集しているイリヤさんが素っ頓狂な声を上げました……あらら、このシーンは。
「これ駄目です!」
「あわわわ!」
即座にルティスさんに見ちゃ駄目な目隠しをするヴェーラさんに宮子さん。二人のコンビプレイでルティスさんを目隠します。
「はは、わかった、わかったよ」
二人に目隠しされたルティスさん。慌てての目隠しだからちょっと痛かったかもしれないのに爽やかなお答え。でも、最初っからルティスさんは温泉のシーンは目を反らして、膝の上のケイトちゃんのブラッシングをしていたのですけどね。
そして、怪我をしちゃったときの説明や、その際の責任の話などを補足して、編集もだいたい終わり、今日はおしまいですね。
「ふわ!? あぅ、寝姿を撮影するのはちょっと恥ずかしいんだよ」
「猫さんとお布団の様子も撮りましょうね」
そんな修学旅行の夜のように、楽しげな雰囲気の中で夜は更けていきます。Kamilさんは皆さんに慣れてくれたオクビちゃんと一緒にお布団に入っています。ちょっと怪我しちゃうんじゃないかと思っていたKamilさんですけど、仲良くなれてよかったですね。
ここは猫と温もりを共にするお宿。よかったらまた遊びに来てくださいね。