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マスター:相沢
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/11/13


みんなの思い出



オープニング

●微睡みの姫
 きみの夢が欲しいんだ。
 きみの眠りが欲しいんだ。

 でも、きみは××××子なんだってさ!

●呼ばれることの無かった魔女
 わたしはパパが大好きだった。
 わたしはママのことも勿論好きだったけど、ママはわたしのことが好きでは無かったみたい。
 ママはいつも真っ赤な炎みたいに怒ってわたしをぶった。それでもわたしはママが大好きだったの。
 ずっとずっと昔、ちいさい頃、髪を結ってくれたあの日のことを思い出す。
 ラプンツェルみたいに長く髪を伸ばしてしまったらあなたはお外に出て行ってしまうのかしら、――なんてやさしい顔で笑っていたあの日。
 あなたは自慢の娘なのよって、笑ってわたしの額にキスをしてくれたあの日。

 わたしはラプンツェルにはならなかった。
 だけど、ある時からは眠り姫になってしまったみたいだった。
 ママとパパが起こしてくれるのに、眠くて仕方が無い。
 起きてご本を読んでいても、眠くて堪らない。
 起きていなくちゃママが哀しむのに、わたしはとうとう起きていることが出来なくなった。
 たくさんたくさん眠って、目が覚めるとママはいつもいない。
 パパは笑ってた。ほんとうに、ほんとうに、わたしのことが大好きだよってパパは笑ってみせて、ママはどこへ行ったの、なんて尋ねると、黙ってしまう。
 いつからか帰って来なくなってしまった、ママ。
(ママはラプンツェルになってしまったのかもしれない。だからパパは口に出せないのかも。)
 そんな夢をみて、また一日が終わる。
 わたしの世界にはパパとママしか居なかった筈なのに、いつの日からかひとり増えて、もうひとり増えて、次第にどんどんひとが増えていった。
 どうしてだかはわからない。
 パパのお友達だと言った真面目そうなお姉さんはわたしの病気を看てくれて、パパのお友達だと言ったお洒落なお姉さんはわたしに似合う洋服を見てくれた。パパのお友達だと言った優しげなお姉さんはわたしのごはんを作ってくれて、パパの友達だと言ったきれいなお姉さんはわたしの部屋の掃除を、パパのお友達だと言った×××なお姉さんはわたしのママだと言って、――――違う。違う。違う。違う。違う。ぜんぶ違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
 わたしのママはひとりだけで、パパのお姫さまはママだけなんだって、そうなんだって、言って!

 そうしてわたしがひとつ歳を取って十六歳になっても、ママは帰って来なかった。
 ママは梯子を降りたラプンツェルで、パパは愚かな王子様だったのかなって、少しだけ思った。
 何度も何度も読んだ絵本にわたしの物語の続きは書かれていなかったから、結局の所どうしてこうなってしまったのか、どうしてママは帰って来ないのか、誰も教えてくれなかった。
 意地悪な魔女たちは我が物顔でわたしとパパとママの家を闊歩して、まるでパパが自分のものであるかのように振舞うんだ!

 それからある時、わたしの小さな世界に登場人物がもうひとり増えた。
 初めてのお兄さん。
 パパの友達じゃあないみたいだった。
 どうして家に入って来たのかは、わからない。
 朗らかに笑ってみせたお兄さんの眼鏡の奥の青い眸がきらきらと光って、きれい。
 やわらかにわたしの髪を撫でる、手。
「きみの夢が欲しいんだ、可哀想なお姫さま」
「あなたのお名前は?」
「必要無いさ」
 そうだったっけ。
 わたしの名前は、何だっけ。

●籠城の茨姫
「急ぎの依頼だよ」
 斡旋担当者であるキョウコは浅いため息と共に、珍しく事務的な様子で言った。
「L市郊外の屋敷で、ディアボロによる事件が発生。現在は屋敷全体が大きな茨に蔽われてて、屋内に取り残された人がいる。依頼主は屋敷当主の男性で、他にも……うん、恐らく、だけど。生存者として娘さんも中にいるらしい」
 らしい。
 不確かな情報を前に首を傾げる生徒に対し、肩を竦めてみせたキョウコは告げる。
「らしい、ってのは。屋敷内で依頼主当人は、黒い犬――恐らくディアボロね。そいつから逃げる為に屋根裏に閉じ篭ってて出られないんだって。だから娘さんが何所にいるのかも、生きているのかも判ってない。……まったく薄情な話じゃねーの」
 低いキョウコの呟き。続けて、曖昧な表情を浮かべる生徒を尻目に、資料を捲る。
「それから、屋敷内にいた数名が既にその犬によって殺害されちゃったんだって。このままじゃいつ依頼人とその娘さんが殺されてしまうか判らない、だから急いで現場に向かって貰う。茨に関しては現在、近隣に詰めていた撃退士たちが除去を行ってくれてるところ。きみたちが着く頃には大分片付いてる筈だけど、一応対策は用意して行ってちょーだい」
 取り急ぎ作成された資料によれば、茨状のディアボロは然して強靭なわけではなく、アウルを篭めた攻撃を与えられれば容易く崩れ、朽ちるらしい。
 その量ゆえに作業は完了していないが、致命的な障害にはなり得ないと予測されている。
「健闘を祈るよ。……ついでに、気になる情報も最後にひとつ。どうやら何者かが屋敷に侵入しているかもしれないそうよ。金髪の男……まあ、錯乱した依頼主の見間違いって可能性も有るけどさ、一応頭に入れといて」
 拳を掲げたキョウコ。
 急を要する内容に顔を引き締めた撃退士たちは依頼書を攫み、急ぎ足の打ち合わせを開始した。


リプレイ本文

●楼上に籠城せしは誰
 少女の楽しげな声が室内に響く。
「ねえ、ラプンツェルのお話を聴かせて」
 ねだる甘えた声音は、父親に寄せるそれ。
 金髪の男は口許に笑みを刷きながら、そんな少女に視線を投げ掛けた。
 簡素な空間。クローゼットの中身は空っぽ。
 冷えた部屋の中には、金髪の男と栗色の髪の少女、二人だけ。
「ラプンツェルはまた今度。今日は茨姫の話」
「茨姫もわたし、好き」
 男の言葉に咳をして肯く、見た目以上の幼さを纏う少女。
 彼女は懐かしいにおいのする枕を抱き締めながら、身に負担をかけないようゆっくりとベッドに横たわる。
 うとうとと微睡みに沈み始める少女に合わせ、幾度か瞬くライト。
 その傍らで、男は本の頁を捲り始める。
「さあ、今日の話はどんな風に紡がれるんだろうね」
 ――幕は、開いた。
 後は役者を揃えるだけと、男は指を鳴らして小さく笑う。

●茨の海を越えて
 屋敷一面を蔽う茨、茨、茨。
 花は咲かず、蔦のみが生い茂っている。
「……しかし、クソみてえに不可解な状況だ」
 赤坂白秋(ja7030)は、唸る。
 眼前の屋敷内で繰り広げられている住民の殺戮。
 御伽噺のように茨で蔽われた壁面は、まるでファンタジーの古城のよう。
 不可解で、不愉快で堪らない現状を打破する為に、彼はアウルを振るう。
 ――決して小さいとは言えない建物を丸ごと取り囲み巻き付く、一見すると植物にしか見えない天魔を刈り取り、或いは裂いて一同は道を切り開いていく。
「シュトュルム・ウント・ドランク移動が重要ですねっ」
 いやに発音良く胸を張ったのは黒瓜 ソラ(ja4311)。疾風怒濤の移動とはよく言ったものだが、どこかテンポのずれたそれに対して突っ込みを入れる者は居ない。
 けれど撃退士たちには、確かに急を要さなければならない理由が有った。
 要救助者二名がどうしているのか、どうなっているのかは未だ不明。
 定期的に脅えた依頼人から入る連絡で片方の無事は確認されているが、娘の消息については一切攫めていない。
『こ、ころ当たり? ……な、無い、無いんです。気付いたら室内に黒い犬が居て、友人たちが食べっ……食べられ、亡くなっていて……ッ』
「そうですか……判りました。もう少しですから、待っていてくださいね。その場を動かないようお願いします」
 依頼主と通話を繋げ、現状及び情報を確認しているのは安瀬地 治翠(jb5992)。動揺し、怯んでいる電話先の相手を落ち着かせるよう、宥めるよう努めながら通話を切ると、治翠はスマートフォンをポケットに仕舞った。
「今情報を得ることは難しそうです。また後程、合流出来てから改めて話を聴きましょう」
「了解。確かに、天魔がいつ来るか判らない状況じゃあ気が気じゃないだろうしな」
 ハンズフリーによって会話を耳にしていたフレデリック・アルバート(jb7056)は同意し、垂れ下がる茨に向けて魔法書からカードを打ち出し、斬り付ける。
 元々現地詰めの撃退士によってある程度出入り口の確保は出来ていた為、協力の結果突入までそう時間はかからなかった。
 鍔崎 美薙(ja0028)が手配した見取り図を元に窓周り及び玄関口――退路の確保を重点的に依頼した後、彼らは茨犇く門を抜け、静かに佇む屋敷の玄関に突入する。
 ――屋内は、異様と言って差し支えのない静けさに包まれていた。
 さながら眠れる姫君と共に百年の眠りに落ちてしまった城の中。
「娘さんは正に茨に囚われた眠り姫、だな。こっちは王子なんて柄じゃあないが」
 事前に資料から得ていた娘の病状にかっちりと当て嵌まる状況に、違和感さえ覚えながらフレデリックは呟く。
 その傍らで、アウルを研ぎ澄まさせ、見取り図を見ながら屋敷内の生命反応を探る美薙。
「娘か敵かは判らぬが、複数で居るのはまず敵じゃろう」
 図の各部屋、反応が有ったポイントを一箇所ずつチェックしていく。
 一階は、ダイニングに二つ、そして、リビングに二つ。二階は、効果範囲的に限られてしまったが、先ずは寝室Bに二つ。上階で再び行使すれば問題無く屋敷内すべての探知を行うことが出来るだろう。
「さぁ、ろっくんろーる! むーぶむーぶですよっ!」
「よーし、全力で行こうか!!」
 声を上げての襲撃上等。相も変わらず元気なソラに、それに合わせて拳を握る藤咲千尋(ja8564)。
「2Fはお任せしました」
「パパさんの代わりに私達が絶対その子は守っちゃうんだよ!」
 治翠の声を背に受けながら、意気込むエローナ・アイドリオン(jb7176)。
 キイ・ローランド(jb5908)を先頭としてエローナ、美薙もまた追走し、全力で階段を駆け抜けていった。

●姫君の微睡み
 絵本を読み聞かせられながら。
「わたし、王子様よりもママの方がいいなあ」
 抱き締めた枕に頬擦りをすると、少女は小さく呟いた。
 足音が聴こえる。
 階下から響く喧騒は、誰のものだろう。
 そう考えるより先に、眠りが彼女に降って来る。
「ママはもう直ぐ来るよ」
「……わかるよ、だって、ママの足音が聴こえるもん」
 夢か現か、少女の眠りに忍ぶ影の存在を男は知っている。
「いい子に待っていなくちゃ」
 男の言葉に少女は身動ぎをして、それから微かに頷いた。

●消失からのカウントダウン
 白秋と治翠が始めに訪れたのは、生命反応の有ったダイニング。
 むせ返るような血のにおいに満ちた室内。壁にはあちこちに血の痕が付着している。
 そこで真っ先に遭遇した黒い大型の犬に、即座に臨戦態勢を整える二人。
「と、こちらは矢張り外れでしたか」
 人間の姿を見るなり唸り声を上げながらヘルハウンド二頭はじりじりと距離を詰め、二人が攻撃を加えるより先に、その内一頭が持ち前の素早さを駆使して飛び込んでくる。
 涎を散らして吼えるヘルハウンドが飛び掛かった先は、白秋。その速度ゆえに避けられず、爪による攻撃は腕を裂くが、大したダメージではない。
「魔法だってこなして見せるぜ。何たってイケメンだからな」
 飛ばす軽口と共に光纏した彼が手にしているのは、言葉通り普段愛用している銃ではなく白銀の魔術書。反撃とばかりにアウルを篭めればフェアリーテイルのその名のまま、妖精を模したシルエットが白秋の周りを美しく飛び交う。生まれた光球は操られるままヘルハウンドを追尾し、その末見事命中する。
 悲鳴を上げる仲間を尻目に唸るもう一頭。
 牙を剥き出しにし、ぼたぼたと垂れる涎からは死の――鉄錆のにおいがする。
「させません」
 二頭目が飛び掛らんと床を擦る様子を捉えた治翠はすかさず間に割り入り、敵の攻撃筋を予測した上で盾を翳して防御した。
 弾かれる爪に荒々しく唸りながら二頭目は後退り、しかしその隙を逃さず治翠は槍の穂先で薙ぎ払う。先端が硬い毛皮を掠め、幾本かの獣毛を散らした。
 追い討ちとばかりに押し出した盾での一撃は避けられるものの、獣二頭は実力差からの不利を本能的に悟ったらしく、機を計り兼ねるように後退する。
 しかし、その好機を逃す撃退士二人ではない。
「犬っころは大人しく首輪にでも繋がれてな」
「そういうことです」
 一歩踏み出して雷で形作られた刃を振り被った治翠の一撃で麻痺し身動きを奪われたその腹に容赦ない白秋の光の球を喰らい、あっさりと一頭が反吐を撒きながら沈む。
 結果戦意を喪失させられた残りの一頭が沈むまで、時間は一分も掛からなかった。
「――……妙だな」
 戦闘が終わって直ぐ。否、戦闘の最中から感じていた違和感に、白秋は眉を寄せて呟く。
 ダイニングは酷い有様だった。壁に飛び散った血痕、床に転がった肉片、割れたポットにティーカップ。茶会でもしていたのだろうか、他にも床には茶菓子や、砂糖瓶が無残に散乱している。
 この場所で、先程倒した犬たちが暴れたのは明らかだった。
 だが、おかしい。
 そこには有るべき筈のものが、ひとつもなかった。
「……死体が、ひとつも有りませんね」
 同じ違和感を覚えていたのだろう、治翠もまた頷いて部屋を見渡した。
 ただ一人が流したにしては多過ぎる、おびただしい量の血液。
 複数被害者がいたのは間違いない筈であるのに、遺体が無い。
 一繋がりになっているキッチンへ歩み覘いた瞬間、白秋は片眉を上げる。
 残された衣服からして、恐らく使用人の男性だろう。腹を抉られ、顔面を貪られ、口なき死体と成り果ててしまった者。
 彼のいるキッチンもまた凄惨な有様を曝していたが、矢張り明らかに、人一人が散らす量の血痕ではない。
「他を当たろうぜ。……この分じゃ、生存者は居ないもんだと思っといた方が良さそうだが」
「ええ……」
 嫌な予感がする。
 奇妙で、気持ちの悪い、寒気を催すような不快感。
 そして、予感は的中した。
 客間A、リビング。双方ともに、血の痕はあれど遺体は無し。
 事前情報では確かに存在していた筈のそれらが、忽然と姿を消していた。
「――みんな、黒い女型の天魔が居たよ! 場所は――……」
 ハンズフリーのスマートフォンからエローナの声が響いたのは、リビングでのヘルハウンド二戦目の最中。
 白秋と治翠は二頭を屠り、急いて現場へと直行した。

●喪失のレクイエム
 六人が階段を駆け上がった先、二階で再度行われた生命探知の結果、子ども部屋に一つ、寝室Aに三つ、寝室Bに二つ。
 依頼書で知らされていた天魔の数と生存者の数、それに対して二つばかり反応が多い。
「……数が合わないのう?」
「不審者……金髪の男を足しても、数が一つ多いね。生存者が居たのかな?」
 怪訝に首を傾げる美薙の傍らで同じく首を傾いだキイは、取敢えずと踵を返して寝室A――依頼主が居るとされる部屋へと向き直る。数的に、敵が潜んでいる可能性が高いと踏んでのことだ。
「何にせよ、早く急がなくちゃ。不安がってるかも知れないから」
 エローナの言葉にそれぞれが頷くと、二班に分かれて行動を開始する。
 千尋、ソラ、キイ、フレデリックの四人は右手側、依頼人の元へと。
 美薙、エローナの二人は子ども部屋へと。
 敵の気配を警戒しながらキイが率先してドアノブを引くと、扉はあっさりと開いた。
 そして開くなり、左右から飛び込んでくる影が二つ。
「……っと、狡賢いんだね」
 ヒヒイロカネから瞬時に具現化させた魔具でいなしながら、キイは数歩と下がって攻撃を受け流す。
 ヘルハウンドが二頭。覘いた室内に、依頼人らしき人物の姿は見えない。
 窓を蔽っていた茨は既に取り払われており、開け放てば直ぐにでも外に出ることが出来そうだ。
 屋根裏に繋がるというクローゼットらしきものが目に入ると、千尋は声を張り上げる。
「久遠ヶ原の撃退士ですー!! 救助に来ましたが、もう少しだけ待っていてくださーい!!」
「わ、わかりました……!」
 屋根裏からだろう、男性のくぐもった返事。返答に千尋らは頷き合うと、室内に雪崩れ込み臨戦態勢を整えた。
 手早く分担するが吉と判断すると、千尋はヘルハウンドへの警戒を解かぬまま足早にクローゼットへと向かい、扉を開いて衣服を掻き分ける。――更に上へと続く梯子。
「怪我してないとも限らないから、行って来るね!!」
 屋根裏へと向かう千尋の背が消えていくクローゼットを庇うように前に立ったフレデリックは、厚みのある魔法書を広げ構える。
「悪いけど、此処から先は入場禁止だ。大人しく躾られて貰おうか」
 退路を断つよう立ちはだかるキイに、アウルを研ぎ澄ませ両眼に力を篭めるソラ。
 その時、戦場を後にする千尋含めた全員の耳に、エローナの焦りを含む声が響き渡る。
「――みんな、黒い女型の天魔が居たよ! 場所は――……」
 場は拮抗。救助対象を確保していない以上、移動することは出来ない。
 四人は固唾を呑んで、もう片班と一階班との一刻も早い合流を祈った。

 屋根裏、物に埋もれた暗がりの中。依頼主は、直ぐに見付かった。
 懐中電灯を手に蒼白した顔で蹲る、細身の壮年男性。
 スーツの膝が擦り切れている以外、特に外傷は無さそうだった。
「君は……」
「はい、久遠ヶ原の者です」
 千尋の姿を見た瞬間目を見開いた男は、直ぐに安堵の息を洩らす。
「あの、娘は、娘は無事ですか?」
「ええ、仲間が娘さんの保護にも向かっていますので安心してください」
 確信はない。けれど、手練の仲間たちだ。そう易々とミスをするような面子ではない。
「今、下の部屋で天魔と仲間が戦っています。そう時間はかからないと思いますが、脱出の前に――……ご家庭の事情ってあんまり詮索はしたくないんですけど、状況把握のためお話を伺ってもいいですか?」
「……何、ですか?」
 男は存外に冷静だった。
 先程慌て、怯んでいたことがまるで嘘のように。
 顔色こそ蒼くはあるが、言葉も確りとしており、何より堂々としている。
 その度胸は、彼が資産家になり得た所以かもしれない。
 小さな違和感が生まれ、そして揺れる。
「不審者を見た、と伺っています。それは――」
「……娘を置いて逃げ出して来た情けない男の言葉です。信じられないかも知れませんが、確かに金髪の男がいました。今日の昼過ぎのことです、我が家に招いていた客人たちもまた見た、と言っていました。……ですが、その正体は見当もつきません。泥棒か何かかと思っていたんですが、つい先程、逃げる最中にも廊下を歩いている背中を見ました」
「客人さん、ですか」
 饒舌な男に対し、鸚鵡返しに問う千尋。
 嘘を吐いているのか、真実なのかは判らない。
 ただ、何かを隠しているような気がする。
「ええ、客人です。友人たちが、来ていまして」
 真摯に見詰める千尋。その眼に射竦められ、男は言葉を一旦切る。
「……彼女”たち”は、私の会社の女性です。娘を心配して訪ねてくれ、色々と世話を焼いてくれました。心底助かっていましたし、娘もきっと、喜んでいた筈です」
「筈……?」
「はい、その…………あの子には母親が居ません。ですから、喜ぶだろうと彼女たちも言って」
 途端に狼狽え始める彼に、父親としての色はない。
 これ以上話を聴いても無駄だろう。
 見限りを付けた千尋は唇を噛み締めると、小さく息を吐いた。

「たしか……あれですよね? 器物損壊可、でしたよねぇ?」
 屋根裏とはうって打って変わって明るい、しかも何かしらの目論見を秘めた様子でソラは誰にともなく言う。
「ですよね? ですよね?」
 ガトリング砲を手に、うきうきとしながら笑むソラ。
「そうだけ、――ど」
 フレデリックが律儀にも言い終えるより先。
 ソラは緑火眼により澄ませたアウルを纏い、ヘルハウンドへ向けて速射する。
 回避するいとまも与えない銃弾の海を、泳ぐことも息継ぎをすることも出来ない一頭。
 正に弾幕という言葉が相応しい波の合間に、その背後に有った高価そうな装飾の施された壷や、硝子細工が音を起てて壊れていく。
「このぶっ壊れるサツバツめいた感がワザマエですねぇ……クク!」
 奥ゆかしくあからさまにニンジャな言語を駆使するソラは、器物破損に何故かご機嫌だ。
 躊躇わずに撃ち抜き、過剰な銃弾が壁に跳ねる。
「あぁ高そうな壷。でも敵が避けたのだから悪いのです。必要損壊必要損壊」
「……うっかり請求が来ても知らないからね」
 キイの指摘にソラは素知らぬ顔。
 対して冷静に対処をしているのは男性陣。
 前に踏み出し双剣を構え、敵の動きを引きつけるようにわざと大振りな動きを示すキイ。それに釣られて噛み付いて来たヘルハウンドにカウンターの袈裟斬りをお見舞いし、サイドステップを踏んで追撃はかわす。
「ローランド、大丈夫かい?」
 言いながら、攻撃態勢の黒犬に対して魔法書によるカードを放つフレデリック。地に脚を付けた瞬間、逃れる隙はない。
 威嚇に唸り声を上げるヘルハウンドを尻目に、聴取を終えた千尋が依頼人を連れて屋根裏から降りて来る。
「ちょっと暴れず我慢してくださいね……っと」
「えっ、……うわっ、あのっ」
 慌てる男も何のその、千尋は彼をひょいと両腕で抱え上げる。
 その様子を見たソラが景気良くガトリング砲を窓へと向け掃射し、窓枠ごと硝子を吹き飛ばす。
「一丁上がり! さ、さっさとズラかっちゃってください!」
「ありがと、ソラちゃん!!」
 男前系女子と破壊系女子のタッグ、ここに爆誕。
 ヘルハウンドたちの尾が若干丸まっているのは気の所為だろうか。
「さあ、こっちも終わらせよう」
「了解、……それにしても元気な女子たちだな」
 犬と対峙するキイは目を集める為にアウルを身に纏い、それにあっさりと掛かる二頭をフレデリックが後方から狙う。
 寝室Aにおける戦局は、ほぼ終盤へと差し掛かっていた。

●箱の中身は
 美薙とエローナが子ども部屋の扉を開けたそこで待ち構えていたのは娘ではなく、――一塊の、闇だった。
 蟠る、漆黒。それが長い黒髪を揺蕩わせる女、その横顔だと気付いたのは、どちらが先か。
 割れた硝子。打ち砕け、開け放たれた窓から、さあさあと風が吹いてカーテンが揺れている。撃退士らの手によって取払われた茨は、もう窓を蔽っていない。
 血の涙を流すその相貌。真っ赤で大きな唇。手には大きな鎌と、この部屋に有ったものだろうか。小さなテディベア。大事そうに抱きかかえながら、漆黒の闇は何事かをぼそぼそと謳うように呟いている。――……泣き女、バンシー。
 バンシーは二人に気が付くと、鎌を引き摺りながらゆったりとした動作で近付いて来る。
「――みんな、黒い女型の天魔が居たよ! 場所は――……子ども部屋!」
 咄嗟に後方へと下がってハンズフリーで伝えると、それに伴い美薙が前に出、庇うように薙刀を構える。
 ほぼ同時に大きく薙ぎ払われる鎌は、風を切って彼女の髪を僅かに巻き込み散らした。
「早期決着させて、もうひとつの寝室に向かわねばならん! あちらは生命反応二、そうなると、娘が危ないかも知れんのじゃ!」
「放ってもおけないし……、急いで倒さなきゃ」
 エローナは言うが早いか一発、ショット。しかしゆらりと揺れたバンシーの動きによって外れる。
 二人は前後衛の位置を作ると武器を構え直し、背後を気にしながらある程度の距離を取った。それを追い縋る一閃を、再度美薙が受け流す。
「流石に二人では分が悪そうじゃな」
 バンシーの一撃はひどく重い。薙刀を握る手にびりびりと響いた攻撃の余韻に息を呑みながら、美薙は眼前の敵を睨み付ける。
 片手には大鎌、片手にはテディベア。
 そんな歪な恰好のバンシーを目で追い銃で撃ちながら、後方から響く足音にエローナは振り返る。
「お兄ちゃんたち!」
 そこには、階下でヘルハウンドを殲滅してきた白秋と治翠の姿。
「イケメンは遅れて参上ってな」
「お待たせしてすみません。……随分物々しい敵ですね」
 出会い頭に隙間を縫って射抜くのは、アウルによってカオスレートをも変動させた白秋の破魔の一撃。蒼の光は着弾と共に弾け消え、バンシーを大きく仰け反らせる。
 その隙を縫って撃たれたエローナの銃弾と、踏み込んで振り上げる槍盾での突きにバンシーは呻いた。
 呻き声と共にカウンターで薙ぎ払う一撃は、横一列に並んでいた美薙と治翠に防御のいとまも与えない。重い一振りが腹を深く裂き、派手に飛び散る鮮血。癒し手である美薙は痛みを堪え踏み止まり、すかさず治癒のアウルを自身に注ぎ込む。
「随分とこいつの攻撃は重いみたいだな。強いご婦人も嫌いじゃないけどよ……っと」
 動きをつぶさに観察した結果の軽口と合わせて撃ち出す光球に纏わせる蒼い光は、攻撃の隙を狙った二発目。
 被弾二回となれば流石に目につくか、バンシーのぎょろりとした眼が白秋へと向く。
 けれど前衛二人に囲まれている今、その鎌は狙いまで届かない。
 嘆きか、怒りか、その眼からこぼれる血色の涙は赤く紅く、まるで茨の花のよう。
 白い顔に映える真っ赤な唇が動き、そして、空気が震える。
 ――――ア゛アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。
 それが悲鳴だと認識すると同時、彼らの意識は奪われた。

●呼ばれることの無かった魔女
 あなたを愛していた。
 あなたを慈しんでいた。

 あなたを言葉で傷つけ、手を上げ、虐げた私を、あなたは憎んでいるのでしょう。

 それでも私は、あなたを愛していた。
 それでも私は、あなたの傍で、母として在りたかった――。

 ――親愛なるあなたへ、世界一の後悔、世界一の愛情、一匙の諦観を胸に。

 今更迎えに来た私を、あなたは拒絶する?
 それとも――。

●グッバイ・ディアマザー
 愛と情に溢れた温かな色味を帯びた世界。
 母親は娘に愛していると告げ、娘はそれに応え笑い掛ける。
 娘の長い髪を梳いて、ラプンツェルの詩を歌う母。
 誰にも邪魔をされない、誰にも否定されない、――幸福の亡骸。
 喪ってしまった後悔、悔恨、取り戻したいという彼岸からの悲願、泣き叫ぶ女の正体。
 誰もがこの家に住まう眠り姫の姿を見たことは無かったが、一瞬で判った。
 この眼前のディアボロこそが、その娘の母親であるということが。
「今の――は」
 意識を取り戻したエローナが見た光景は、バンシーが大きく振り被り、立ち塞がる前衛二人の命を刈り取らんと鎌を振るう姿。
「……ッ、させませんよ」
 咄嗟に掲げた盾で美薙を庇う治翠の横を、援護するように白秋の狙い定める光球が滑る。
「はっ! ……ったく、良い趣味した奴も居るもんだぜ」
 ディアボロが映すビジョン。被る。何かが過ぎる、奇妙な感覚。
 けれどどうだって良い。何だって良い。この茶番を用意した主の全てが気に入らない。
 白秋はそんな苛立ちすら滲む感情の昂揚に皮肉めいて笑う。
 開け放たれたままの扉の手前側、廊下から声がする。
「カブーム! ちょいといきますよー!」
 爆発を意味する台詞に合わせたソラの狙撃は、四人の射線を縫って鎌の柄を撃つ。
 挨拶抜き、不意を打った一撃に容易く鎌を取り落とすバンシー。
 手から離れた鎌は、形を変え輪郭を揺るがせた。今にも掻き消えてしまいそうな得物を拾わんと長い背を折り曲げたその頭に、フレデリックの放ったアウルのカードが突き刺さる。
 祖霊符による領域が展開され、出入り口を封鎖され。
 逃れる術を無くして尚敵意を喪わない彼女を待っているのは、二度目の死でしか有り得ない。
 ディアボロの素材が何であろうと倒すことには変わりない。
 眼前の女を倒すべき敵として見据え、撃退士たちはそれぞれの魔具を振るい、その生に終止符を打った。

 ――彼女は事切れて尚テディベアを手放さず、大切に大切に抱き締めて、いた。

 バンシーを屠って直ぐ、全班は情報共有を行った。
 無くなっていた死体。父親の話。母親の幻。
「……何だかなって、感じだね」
 誰にともなく呟いた千尋の呟きに、言葉を返す者は無く。
 千尋が語る父親の人物像と、美薙らが見た母親の人物像。
 そこに生じた奇妙な歪さに各々ため息を吐きながら、三度目の生命探知の結果二つの反応が有る寝室Bへと一同は急いだ。

●楼上の茨姫
「――茨姫の元には眠りを醒まさせる王子様が。そして、呼ばれることの無かった魔女は永遠の眠りに」
 扉を開けると同時に朗と響く声に、一同は目を丸くする。
 ベッドの上には身を丸めて枕を抱き締める一人の少女と、その傍らで腰を下ろして本を広げている金髪の男の姿が有った。
 背には開け放たれた窓。茨が取払われた広い窓辺からは、茜色の陽射しが逆光となって降り注ぎ視界を刺す。
「……何者じゃ」
 警戒露に前に出る美薙の声に顔を上げると、男は柔和な笑みを返す。
 この血塗れた屋敷で平然と生きている。それだけで、ただの人間ではないと言うことは十分判っていた。
 全員態勢は崩さず、隙を許さない張り詰めた空気の中、少女の小さな寝息が響く。
「ドーモ、キンパツ=アヤシイサン。クローリー=ソラです。……同業者じゃないですね? 何者です」
「これはこれはどうも。俺はアベル、ただの通りすがりさ」
 礼儀正しいお辞儀終了から数秒、一転変わって冷静な声音で尋ねるソラに、男は穏やかな笑みを浮かべたまま本を閉じる。
「お姉ちゃんは大丈夫なの?」
「勿論。彼女はただ眠っているだけ」
 エローナの心配気な問いに、アベルと名乗った男は頷いて返す。
 その言葉に嘘は無いようで、眠る少女の表情は穏やかだった。
 問答が繰り広げられる中、キイは集中し、眼前の男の識別を図る。
 けれど、結果は失敗。
 つまり、男がそれなりの実力の持ち主であるということが判る。
 一歩前に踏み出して慇懃無礼にわざとらしく頤を引いて見せるは、白秋。
「――初めましてクソ野郎。或いはお久しぶりですファッキンシット。あのグレイトな演出、覚えが有るぜ」
「ああ――……きみは、そうか、覚えてるよ。可哀想な姫君を撃ち抜いたナイト様じゃないか」
 無礼な言葉には無礼な言葉で。男は肩を揺らして笑いながら、横たわる少女の髪を撫でて白秋に告げた。姫君を撃ち抜いた――そう言われ、白秋の脳裏に過ぎる、金魚を模した少女の姿。胸糞の悪い返礼。
 冥魔認識を終えたキイが肩を竦めて息を吐くと、ちらとアベルが視線を向ける。
「一つの家に大量の茨に六匹の犬、そして化け物一匹。随分と過剰戦力だね」
 何が目的で有るのか。
 そう続けたキイの隣でまた、治翠も目を細めて頷く。
「……あなたは、今まで幾度も似た事件を繰り返している。そうでしょう?」
「あれ、俺って有名人だったっけ? ――そんな心算は微塵も無かったけど」
「目を通した報告書に、不思議な共通点が有るものがありました。生前の意思を持ったディアボロが幻覚を見せる、と。あなたが作り出したものなんでしょう」
 おや、と返したアベルは目を丸くする。それから再度口許は笑みを形作り、喜色を滲ませ笑う。
「嬉しいな。ヒントはいつも大きく出していたとは言え」
「屋敷内の死体をどこへやったんですか。それに、その子に何を――」
 アベルは悪戯っぽく笑うと口許に人差し指を立て、首を左右する。
 人を喰った物言いと振る舞いからこれ以上の発問は無駄だろうと考え、治翠は沈黙した。
「良ければ教えてくれないか、――……君は、何がしたいんだ?」
 継いで口にされたフレデリックの問い掛けに、アベルは膝に置いた絵本の表紙を指先でトンと叩く。
「救済だよ」
「救済? 何のだ」
「――世界の救済、さ」
 フレデリックの鸚鵡返しに迷い無く言い切るアベルは淡々と、けれど口許だけは笑っていた。
 ぞっとする表情を湛えて笑う男の背後、そよぐ秋風でカーテンが揺れる。
 アベルは続けて言う。
「きみたち撃退士のお蔭で、感動の母娘の再会はぶち壊しだ」
「……感動の再会なんかじゃない。ディアボロ化なんてして、何を!」
「彼女の母親の願いは、『再会』。そして、彼女の願いもまた、『再会』。二つの願いを叶える為に用意した舞台は、敢え無く失敗――二度と叶えられなくなってしまったんだよ」
 千尋の否定の言葉に、けれどアベルは首を横に振る。
「彼女が彼に”追い出された”んだとしたら?」
「え……?」
 エローナは目を瞠りながら、リック――常日頃から肌身離さない人形を抱き締める。
「俺が事の顛末を教えてあげようか」
 再度開いた本。頁を捲ると、金魚、青い鳥、鳥籠、赤いずきん、着物の女、かぼちゃ頭、そして、――茨に覆われたお城の絵。
「――献身的なまでに病に侵される娘に尽くしていた母親、手伝いもせずにただ娘をペットのように愛でていた父親、母親が壊れるのは直ぐだった。そんな憐れな母親を追い出し、追い詰め、結果的に愛玩動物……娘の面倒を見切れなくなってしまった、愚かな父親。母親はその結果、自ら命を絶ってしまったのさ」
 違う、嘘だと否定しようにも、千尋から聞いた様子から窺い知るに、恐らく間違ってはいないのだろう。
「それが彼女を取り巻く物語の顛末。判るかい? 彼女の負っている傷と、追っている情の行方が」
「母親がディアボロにされておる時点で、全ては無意味じゃ。死しか与えられぬ等、乱暴にも程が有るわ」
 凛と背を伸ばし、臆することなく言い切る美薙。
 その清廉とした相貌を眺めながら、どこか諦めた色を乗せてアベルは苦笑する。
「判り合えるとは始めから思ってないよ」
「早くその子から離れてください。八体一、アウェーだってのは判ってますよね?」
「勿論。俺は彼女を救うことが出来なかったからね、もう役目は御終い」
 ヒヒイロカネに手を伸ばしながら言うソラに冗談めかして両手を上げてみせると、男はベッドへ乗り上げ、窓辺へ歩く。
 がら空きの背中。けれど、男を追う者は誰も居ない。
 張り詰めた空気で判る。
 手負いの今追い縋って勝てる相手ではないのだと。
「――良い演目名を考えとけよ」
 その後姿にかかる、白秋の声。
「これから始まる演目名が、てめえの遺作になるんだからな」
 逆光の夕陽も構わず射る、獰猛な眼差し。
 アベルは肩越しに振り返ると小さく笑い、絵本を掲げてみせる。
「タイトルは、救済。――すべての迷える人々に、救いの手を」
 そう芝居がかった口調で告げ、窓辺から落ちるように姿を消した男。
 撃退士らが少女を保護して外を覗き込んだ時、既に男の姿は見えなくなっていた。

●楼上の心は鎖されて
「…………ママ?」
 また眠りに落ちてしまったと、悔いながら起き上がる少女は病院のベッドの上。
 傍らでその手を握り締めていた父親が安堵の息を洩らすと、彼女は辺りを見回しながら小首を傾げる。
「ねえパパ、ママは?」
「……キリカ」
「ママが帰って来たんだよ。おいでって言って――……ねえ、パパ?」
 撃退士たちから委細を聞いた父親は、彼女と視線を合わせることが出来ない。
 不思議そうに尋ねる娘の手を固く握ったまま、ただただ項垂れる。

 救済を命題に掲げる冥魔は笑う。
 ――少女の深い深い夢は未だ、醒めない。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 花咲ませし翠・安瀬地 治翠(jb5992)
重体: −
面白かった!:8人

命掬びし巫女・
鍔崎 美薙(ja0028)

大学部4年7組 女 アストラルヴァンガード
インガオホー!・
黒瓜 ソラ(ja4311)

大学部2年32組 女 インフィルトレイター
時代を動かす男・
赤坂白秋(ja7030)

大学部9年146組 男 インフィルトレイター
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
災禍塞ぐ白銀の騎士・
キイ・ローランド(jb5908)

高等部3年30組 男 ディバインナイト
花咲ませし翠・
安瀬地 治翠(jb5992)

大学部7年183組 男 アカシックレコーダー:タイプA
貴き決断、尊き意志・
フレデリック・アルバート(jb7056)

大学部6年12組 男 アカシックレコーダー:タイプB
無垢の光、まだ見ぬ闇・
エローナ・アイドリオン(jb7176)

中等部3年12組 女 アカシックレコーダー:タイプB