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マスター:相沢
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/03/20


みんなの思い出



オープニング

●潜みし蛇が嗤う頃
「我こそは聖女。我こそは救世主。我こそは、永久なる楽園を統べし者」
 教会、或いは祭壇の様な。蝋燭がボンヤリと照らす、香のにおいの詰まった空間だった。
「同胞達。我々は選ばれました。私もまた選ばれたのです。我々には力があります。我々は力ありし者としてこの世界を統制せねばなりません。絶対統制、それが我々の使命です。
 我が下に傅く者には永遠の幸福を。そして全ての生命が聖女の下に集いし時、世界は救済され浄化され、絶対的な楽園となる事でしょう」
 謳う様に語ったのは神々しくも荘厳な女であった。その前方には多くの人々が跪き、『聖女』の言葉に恍惚と感動の涙を流して奉っている。「聖女様、どうか我等を楽園へ」と誰も彼もが口を揃える。
 と、その時。
「いや、はや。お美事です、ツェツィーリア様」
 ぱちぱち、と軽い拍手がトランスに恍惚とする異常空間に響いた。
 暗がりから現れたのは一人の男――否、悪魔。外奪(ゲダツ)、と聖女に名を呼ばれたそれがニコヤカに微笑む。
「全く全く、仰る通りで。素晴らしいお考えです。地獄に生を受け早云百年――斯様に素晴らしい考えに出会った小生はきっと疑いなく幸福な悪魔なのでございましょう。こんな素敵な考えは是非とも広めねばなりませんね。いいえ広めるべきなのでございます。我々悪魔も全力で協力させて頂きますよ、えぇ。全ては楽園の為に!」
 恭しく仰々しい一礼。そんな悪魔から聖女――ツェツィーリアは同胞達に眼を移し、その腕を凛然と掲げ、言い放った。
「それでは往きなさい、楽園の同胞達。汝に聖女の救済と終わりなき安寧があらん事を。祝福あれ!」

●愛華燦々
「ゐのり」
「はい、ツェツィーリア様……」
 返す言葉で浮かべるは恍惚とした表情。甘い声音、それはまるで二人きりの蜜月を愉しみ夢見る少女。
「ゐのり。貴方はとても優れた子。選ばれた存在。ですから――貴方のその素晴らしさを、力を、世界の全てに教えて差し上げなさい。この世界と、いずれ築かれる楽園の為に」
 良いですね、と囁かれた美しい声音に少女の鼓動が跳ねる。それと同時に彼女の頭に置かれる掌はやわらかく撫でる仕種を築き、流麗な動作でなめらかな女の掌は頬に触れた。次いでつ、と唇に触れる。近付いたツェツィーリアから、仄かに甘い香りがする。――ゐのり、と呼ばれた少女は、眩暈を起こしてしまいそうな感覚を覚えながら羨望に満ちた吐息を洩らした。
「ツェツィーリア様……。判りました、あたしは……ゐのりは、ツェツィーリア様のお望みのままに――」
 ゐのりは普段より幾らも血色を良くした顔色で、陶酔し、慈しむよう、愛おしむようその名を呼ぶと、名残惜しさを振り払い大きく一礼した。

 ――少女は目蓋を開く。

 広がる街並み、広がる世界。
 眼前のモノクロを美しき色に染め上げる為、彼女は身の丈以上のチェーンソーを背負い佇む。
「……汚い街……」
 背の高いビルの上から臨んでも尚、風景は変わらない。
 薄汚い繁華街、無様に散らばる下賤な人間たち、ディアボロに虫けらのように転がされひしゃげる恰好は、惨めに潰されたカエルのよう。
 ディアボロの群れが人々を文字通り裂いて進む。進軍方向等無い。行く当ても無く彷徨うその一塊は、目に付くものすべて――人も建物もすべてを崩して薙ぎ払う。飛び散る鮮血、上がり続ける悲鳴、泣き声、喧噪に紛れてしまえば何もかもが無意味。
「あたしは選ばれた……選ばれたの……」
 反芻。静かに繰り返す少女は薄らと目を細め、窓枠に足を掛けると蹴り降りた。
 ――覚醒者たる少女はディアボロと人々の群れに突入し、そして、戦乱を更に加速させる。
 飛び交う怒号。罵声。嗚呼、世界はなんて醜いんだろう。ヒトはなんて醜いんだろう。
 巨大な主により統率され、奔る銀狼たち。
 街を侵す悪魔と覚醒者の悍ましい協奏曲。
 圧倒的な力を以て襲い来る絶望に、人々は倒れ伏していくしかない。

●斡旋所にて
「緊急の依頼だよ。ディアボロと――それに、覚醒者が街を破壊して回ってる」
 斡旋所に入るなり資料を机に置いたキョウコ(jz0239)は、集まった顔ぶれに対し切迫した声で言う。
 資料に記されているのは現場とエネミー・データ、及びそれらの写真。
 ディアボロの数は六体。そして、それと対なすように数えられている人間、の数。
「覚醒者が何でって? そりゃあこっちが知りたいさ。彼女ら及びディアボロどもは、破壊活動をしてるんだ。まるですべてを壊し尽すように、ただひたすらに街を侵し続けてる。住民も街もしっちゃかめっちゃか、どうしようもない状態ってこと」
 資料に映る人間の姿。それはディアボロに襲われている訳ではない。彼女らはディアボロと――共闘していた。
「……そう、これがアウル覚醒者、ってわけ。どうしてだか判んないけど、彼女らとディアボロは協力して、街を破壊してる。力ある者に力ない人々が傷付けられて、苦しんでるんだよ。黙って見過ごす? ――そんな訳無いよね。私らは人々を護らなくちゃいけない、そういうわけ。勿論どういう状況なのか理解出来れば御の字だけど、それよりもきみらに下された指令は”敵戦力を退ける”こと。奴らを止めて」
 キョウコはそこまで言い切るとデスクの資料を纏め、集まった生徒たちに手渡していく。
「役所から出された依頼だから報酬は高い――けど、それだけ危険な任務になるのは確か。斡旋者が言うのもアレだけどさ、……命は大事に。それだけ」
 資料を握ったままキョウコは苦く笑って言い、急く撃退士たちを見送った。


リプレイ本文



「汚い、汚い、汚い……」
 神経質に呟く声音は小さい。細道を往き一心不乱に建物を破壊し奔り、路地の物陰に潜む人間を斬り裂き、汚物を、虫けらを、潰していく少女――京臣 ゐのり。追従するもう二人の少女はただ黙々と追い続ける。そこに、スマートフォンを通して仲間からの一本の伝達が入った。自分たちと同じく光纏した者――撃退士が現れた――と。街で暴れる少女たちは、遅かれ早かれ自身らを退けに誰かしらが来るだろうということを予測していた。その予期から隠れ潜みスコープで大通りを覘いていたインフィルトレイターの少女の索敵、その網に掛かったのだ。
 それでもゐのりは奔り、チェーンソーを振り回し、泣き喚く人をまるでバターか何かのように斬り棄て、飛び散った返り血に露骨に顔を顰める。悲鳴、汚鳴、縋る嘆願、すべては聞き飽きた。耳に残る叫び。頬を濡らす血。――脳内で煩く残響するすべてが彼女にとってはノイズでしかない。
「――行って」
 大通りで先頭を進み白焔を放っていた巨大なディアボロに対し聴こえるよう路地からゐのりが言うと、銀狼・轟は大きく一声鳴いて歩みを止めた。そうして、ゆっくりとその巨体で振り返り――撃退士らを迎え撃つべく進軍を始める。群れ成すライオンサイズの銀狼もまた、同じ。
 ずん、ずん、と地を揺らし、巨体が往く様はまるで怪獣映画のワンシーン。
 ――それは、破滅への序曲となる行進だった。

 壁を奔り前へと進む雨宮 歩(ja3810)は発見する。巨大なディアボロ銀狼・轟がこちらへと向かい、駆けてくるその姿を。その周りには轟に比べ幾らか小さなディアボロ銀狼・雷の姿。覚醒者の姿は見えないが、隠れ潜んでいる姿を探すいとまも無い。――道化舞台開幕。アウルで出来た血色の翼を広げ、歩はそれを羽ばたかせながら嗤い壁を往く。
「さぁ、一緒に無様に踊ろうじゃないかぁ?」
 いざないに付き従うように、白い焔を歩に向けて吐き散らしながら、轟と雷の六頭はその後を追う。

 破壊と絶望の音に塗れた戦場――否、繁華街、跡。
 何所かで上がる叫び声が耳に入る。何所かで上がる泣き声が耳に入る。何所かで上がる罵声が耳に入る。それらはノイズ、撃退士たちの鼓膜を震わせる耳障りで不快で、そうして悲痛で堪らない音。
 潰れたカエルのようにひしゃげた人間。壁に叩き付けられ大量の、夥しい量の血液を飛び散らせて死した人間。臓腑まで噛み砕かれ、汚物を撒き散らしながら転がった人間。或いは、焔に灼かれ、炭化して真っ黒になった人間――の、亡骸亡骸亡骸。そこら中に散らかる遺体や破壊の限りを尽くされた進路の建造物だったモノは、その場で起こった出来事の悲惨さをありありと伝えて来る。
「相手が誰であろうと敵対するなら手加減は出来ないな」
 リチャード エドワーズ(ja0951)はその凄惨な様子を眺め、低く呟いた。
 ノーブレスオブリージュ、強さがあるならそれに対する責務がある。強さを以て弱者を傷付ける者を、黙って見過ごすわけにはいかない。
 その隣では、黙したままの片瀬 集(jb3954)が阻霊符を展開し、思案する。
(――不可解な状況なのはいつも同じ。だけど、第三者の思惑が混じると違った一面が見えてくる。理解できないのではなく、させないという意思が)
 救助活動は出来ない。早急な敵の撃破を求めなければ、それだけ被害は大きくなるだろう。そう予感させる惨状を見据えたまま、集はスマートフォン越しに――眼前の路地で待機する仲間に伝える。
「阻霊符の展開、完了だよ。そっちの班でも念の為、展開宜しく」
「勿論、忘れずに展開を。あちらの方が数は上で、恐らく質も上々でしょう。まともに敵全部を磨り潰すのは難しい……そうなれば、重傷者が出る可能性もありますから」
 阻霊符を同じく展開させながらユーノ(jb3004)は対岸側から返す。
「あちらも戦い慣れしているならば、そう簡単には釣り出されてはくれないでしょうね。或いは雑兵を様子見の餌にするか」
 ずん、ずん、と聴こえる地鳴りは遠いが、恐らく『銀狼・轟』のものだろう。
 何れにしても、先ずはぶつからなければ話にならない。
(人の魂の輝きは時に歪むもの……とはいえ、紛い物も一緒となれば歪めたのは同族ですか。どこまでも趣味の悪い……)
 紛い物、彼女はディアボロをそう呼ぶ。魂の器を貴きものとして見るユーノにとって、無粋以上の何物でもない行為だからだ。
 そして今この岸にいる攻撃班――ゼロ=シュバイツァー(jb7501)、紫苑(jb8416)、不知火 蒼一(jb8544)は、囮役を買って出た歩の合図を待つのみ。
「人と悪魔……ねぇ。ま、こっちと同じようなもんか」
 宙空で待機するゼロの呟きの、数秒後。
 ――――オォォォォン。
 空気を震わせ轟き、街中に響く遠吠え。街に入って直ぐ、陽動作戦の為に街角に飛び込んだ撃退士たち数名は、その鳴き声に伴い物陰からくぐもった声が上がったことに気付いた。
「――誰か居るのか?」
 後衛位置、最もコンテナに近い位置に立っていた蒼一が言いながら物陰を覘き込むと、そこには一人の男性がいた。片腕に怪我を負っている男は、蒼一と目が合うなり息を呑んだ。
「――う、わあああああああああああああああああああああ!!」
 耳を劈き、喉を裂かん勢いで上がる叫び声。それに、驚いた紫苑は慌てて声を掛ける。
「だいじょうぶですかぃ、おれらはくおんがはらのげきたいしでさぁ!」
「止めろッ、近付くなッ、ひ――ッ、ひいッ!」
 脅え後退る男は、負った怪我からか表情を苦悶に歪ませる。
 ――ヒヒイロカネから武器を具現化させた撃退士たち。アウル覚醒者とディアボロに殺されかけ、命からがら逃げ出し、怪我を引き摺りながらも何とか息を潜めていた一般人。明らかに武装した姿で彼らと彼が出逢えば、どうなるかは判り切っていたことだろう。生存者は物陰に身を潜めていると言われていた、それを無き者として思慮を怠った撃退士らの判断不足だ。
「雨宮さん、あかん。一般人が居った、一旦待っ――」
 ゼロが歩に連絡を送るより先、男は怯み切った声を上げながら立ち、闇雲に走り出す。その先、――大通りに飛び出し、わけのわからない言葉を叫んで躓く男。
 けれど男の喚き声が途絶えるのは、直ぐだった。
 壁を奔る歩に狙いを定めていた銀狼・雷は眼前に飛び出して来た男に意識を奪われ、大した予備動作も無しにふう、と吐き出す。――白銀の焔を。
 めらめらと音を起てて上がった焔を浴びた男は、瞬く間に炭化した。
「……!」
「おれたちはちがうんでさぁ……!」
 護ることが叶わない苦々しさに息を呑むリチャードと、もう届かぬ声を上げる紫苑。
「……敵さんこちらぁ、随分沢山釣れたから、早めに倒しちゃった方が良さそうだねぇ」
 歩は言いながら壁を蹴ると、銀狼たちをその翼で誘き寄せる。
 未だ他にもどれ程の一般人が隠れているか、判らない。角地と言えば物陰、身を潜めるには打ってつけだったのだろう。
 ぬらりと顔を覘かせた銀狼から注がれる眼差しは、撃退士たちを圧倒するよう睨みを効かせる。
「デカブツ登場、ってか。やってやろうやないか」
 巨大な鎌を構えたゼロは、言うが早いか轟の眼前へ飛び込み大きく薙ぎ払う。――瞬間的に轟は体毛を硬化させるが、頭部への衝撃に眩暈を起こす。
「今や!」
「――嗤え」
 綺麗に決まったスタンの隙を狙い、歩もまた片刃の曲刀を抜刀する。それと同時に放たれる、アウルで生成された、刀身に血色のオーラを纏わせる迷い無き刃の一閃、抜刀・血翔閃。
 分断の為にと別った街角の幅は、そう広くない。大型トラック程のサイズの轟一頭と、雷一頭。それらが並ぶだけで道は塞がれる。
 残りの連れ立った四頭は対岸――リチャードと集の元に引き寄せられるように向かって行った。リチャードが放つ、タウントのアウルの力だ。
「こちらは任せてくれ! 四頭は受け持とう!」
「――負けないよ。人々を救う為にも、俺たちはね」
 集は言いながら双槍を具現化させる。覚醒者の姿が見えないということには違和感を覚えたが、今は目先の敵が相手。よだれを撒き散らしながら駆け寄って来る雷たちが吐く焔を回避し、その中心目掛けて飛び込んでゆく。
 発動せしは――不動金縛り。九字の印を指で空間に刻みながら、不動明王の真言を詠唱する。それは四肢の自由を奪う、陰陽師の結界。
 それと同時に、雷四頭の内三頭の動きが止まった。束縛の効果が見事成功したのだ。
「そして俺は陰陽魔術師――ってね」
 集は再度放たれる焔を避けながら槍を振るい、ステップを踏んで小さく言う。

 轟はよろめき、みしみしと音を起てながら建物に身をぶつける。
 その隙を逃すわけもなく、紫苑は戦鎚を毛が生えておらず脆そうな鼻先にぶち当て、蒼一もまた火器の射程ギリギリから射撃する。
 広範囲広射程の相手に対して敢えての近接を挑むユーノは、白銀の槍を払い頤下を突き上げる。それに伴い、飛び散る体毛。
 撃退士たちの猛攻を威嚇するよう唸った隣の雷は、手近な所に居たユーノに対して焔を吹き散らし、宙に舞う彼女の髪を灼き払う。二連続、ともくれば回避し切れない。二撃目でまともに白焔を喰らったユーノはその芯を融かすような熱度を堪えつつ、せり上がって来る血を地へと吐き出した。
「……中々厳しい、熱さですの」
「大丈夫か? 無茶は禁物やで、っと――!」
 ゼロが轟に追撃の鎌を振るうと同時、瞑られていた轟の目蓋が大きく開かれる。
 ――――オォォォン。
 鳴き声。それが何の意味を成すかは撃退士らには判らずとも、轟が覚醒したということは直ぐに判る。
 歩が抜刀で攻撃するも、轟はそれを振り払うよう首を振るうと、再度朗と鳴く。その足許で、踏み躙られる灼け焦げた遺体。それを目に、ユーノの眸に僅かな怒りが宿る。
 その怒りを嗤うよう放たれる――一筋の焔。
 ――分断の為、と取られた位置取りは、文字通り自身らの分断にもなり得る。
 轟は銀の眸を眇めると共にすうと吸い込んだ空気を腹に貯め、勢い良く焔として吐き出す。
 そう広いとは呼べない路地だ、範囲の広い焔を撒き散らすディアボロにとって彼らは格好の餌食と言って良い。地を滑って行った焔はうねり、撃退士らを呑み込み、悲鳴さえも奪う。
「皆、避けろォ!」
 上がるゼロの声。更に間を置かずにもう一息、追撃。研ぎ澄ました眸を輝かせる轟はその喉を鳴らし、大きく開いた口から火焔をぶち撒けた。吐き出された焔は白銀に煌めき軌跡を残しながら、敵対者を――眼前を飛び痛撃を与えたゼロをも包み込む。
 咄嗟に飛び退き焔を回避した歩は振り返ると同時、被害の甚大さに眉を微かに顰める。
 灼き払われたタイル地の床。それだけではない、味方たちの多くは――範囲外から射撃をしていた蒼一以外は、まともに一撃ずつ喰らっている。
「随分やってくれるねぇ」
「皆、大丈夫か」
 ぶっきらぼうながら、心配げに掛けられる蒼一の声。
「……っ、だいじょうぶでさ、おにっ子はつよいんでさぁ!」
 空元気いっぱいに答える紫苑だが、喰らったダメージは重い。げほげほと血を吐き出しながら、口許を拭う。咄嗟に飛行しようと地を蹴ったが、轟の焔のスピードには間に合わなかった。それでも保つ意識は、確固たる意志に依るもの。
 死んで花実が咲くものか。――生きて帰ると、決めたから。
 それは誰もが思うだろう願い、誓い。譬え敵が如何に強大であろうと、覚醒者、人間であろうと、迷わず斬り、命の奪い合いをするものであると心に決めている。
 ディアボロ風情に負けるわけにはいかない。撃退士としての矜持にかけて。
「ちっとばかし下がろうや、この位置はあかん、また焔喰らってまう!」
 指揮官たる位置で在ろうとし、不利を見とって後退を宣言するゼロ。
 それに倣って攻撃班は後退する。少なくとも化け物級の大型ディアボロに出口を塞がれてしまっている今、それが最善の手段であろうと思われた。既に逆分断されてしまっている以上、消耗は避けなければならない。
 ディアボロの耐久力を嘗めていたわけではない。だが、火力が足りない。そして、ディアボロの火力は予想以上のものだった。エネミー・データとして記録されていた『特別高い』ステータスは、その文字通りだったというわけだ。
 轟の焔が届かなくなる位置まで駆け抜ければ、透過能力の使えない轟は立ち往生するしかなく、雷を誘き寄せることが出来る筈。轟を防御班に一旦任せる形にはなるが、致し方ない、そう思われた時――。
 三度目、朗と鳴いた轟は撃退士に向かって直進する。その身を無理矢理にねじ込み、突貫していくように建物を破壊する。がらがらと崩れていく建物。阻霊符が可能であるのはあくまで物質透過の阻止であり、物の破壊では無い。
 歩の血色の翼、道化舞台開幕は消えている。それでも尚向かって来る轟に一同は驚きが隠せなかったが、立ち向かう他手段が無い。二名の防御班が抑え切れる数にも時間にも限度が在るだろう、路地の向こうに取り残された一頭の雷を瓦礫の奥に塞いで、轟は撃退士ら五人と対峙した。
 ――その背後。
 期を待っていたかのように一人の覚醒者が現れたのは、轟が一歩踏み出した直後だった。
 鉄線を引き握り、返り血を浴びたままの姿で笑う女学生。
「えへへぇ、こんにちはぁ、袋の鼠さん」
 くすくすと笑う少女は糸を引き、小首を傾げる。
 一人きりで覚醒者が行動している訳がない。そう考えた紫苑が探り、辺りを見回し――そして、視認する。壁を奔り降下してくる一人の少女の姿を。
「あっちにもいまさぁ!」
「ああ、――ばれましたか」
 無感動に言う太刀を持つ少女――鬼道忍軍と、鉄線持ちの少女――阿修羅を交互に見遣り、歩は嗤う。
「初めまして、血濡れの覚醒者ども。同じモノ同士、殺し合おうかぁ」
 状況は、劣勢。けれど、士気は絶えることがない。
 味方を庇うように――否、自ら闘いに身を投じるように脚を進めた歩は口許には笑みを刷いたまま、一定の距離を保ち対峙する。それに伴いユーノと紫苑もまた一歩前へと進み出る。
 後方ではその背を護るようゼロが翼をはためかせたまま轟と向き合い、蒼一もまた銀狼を見た。



 片や、銀狼・雷を相手取る二人。リチャードがタウントを用い敵の目を浚っては、集がその状態の雷を二槍一組の双槍で穿つ。その素早さに苦戦はさせられるが、互いに補い合い、そして工夫された戦闘法に依って一頭を先ずは楽に葬った。
「簡単にやらせはしないよ」
 リチャードは出来るだけ雷の正面を避け、突進してくる銀狼に対しいなすように剣を振るう。そのずば抜けた突進力とカオスレート差が仇となり、切り払いのカウンターは見事に決まる。
 眠そうな眼で敵を見据える集は、けれど金の眼を持つ獣の牙を冷静に巧みに回避しながら双槍を振るう。
 そこで不意に気付く、対岸で轟が――巨大なディアボロが、味方側の奥地に向かって歩み進んでゆくことに。
 そして取り残された銀狼・雷が駆け寄ってくる様もよくよく見えた。
「大丈夫か……?」
「――……急ごう。こちらが分断されてしまっているようだ」
 集の憂う呟きに返すリチャードの声には焦りが感じられた。護らなければならない。轟を相手取る仲間が心配だった。
「この状況でも仲間想いとは素晴らしいな、諸兄ら。私たちの同朋になれば良いものを」
「……! 覚醒者か!」
 突如路地の裏から響き渡る声に振り向くと、そこには三人の少女が立っていた。悠々とした表情で矛の付いた盾を構えた者――ディバインナイト、冷静な眼差しで薙刀を構えた者――アストラルヴァンガード、そして、チェーンソーを構え無表情に二人を見詰める――京臣 ゐのり。
「同朋って、何?」
「『我等に従え、我等に傅け、されば聖女が汝を救わん』――素晴らしい言葉だと思わないかい?」
 集の問い掛けに堂々と笑って返すディバインナイトに、彼は合点がいく。
 特定の思想に基づく行動――”何か”、この場合は聖女を崇め奉る、宗教の類のものではないか、と。
 その問答の最中でも、銀狼・雷たちはリチャードと集に向かって白焔を吐き散らす。
 その焔を受け止めつつ、リチャードは一息で笑う。
「は、何が聖女だい。そんな偶像に囚われ我を忘れるなんて、愚かしいにも程が在るよ」
 ――それは挑発。言葉に乗せてディバインナイトに大剣を振り払う素振りを見せ、リチャードは続ける。
「”聖女様”に救われなくちゃいけないくらいきみたちは低俗な存在ってことかな? 笑えるじゃないか」
 殿でチェーンソーを構える少女にふと目を遣ると、少女の様相はゴシックパンク、そしてまるで狂信者であることを示すようなシスター染みた被り物。その上片腕には幾筋ものリストカットの痕が見えた。
「……まるで、ただの式神か、屍だね」
 その姿を見て集も自嘲気味に笑って言う。妄信的に誰かを、何かを信じ、求め、縋り、救いを求める。その先に何が在るのか等欠片も判らないものであるのに、ただただひた走る、若さゆえの暴走か。
 リチャードと集の言葉に、けれど少女たちは特に感慨も示さなかった。
「判り合えるとは勿論思っていないとも」
「……劣等種族に話す言葉なんてないわ……」
 雄弁なディバインナイトと、漸く口を開いたゐのりに二人は目を向ける。アスヴァンはただ無言のまま警戒を露わにしていた。
 一間。緊迫した空気が満ち、それを裂くような轟の声が耳に入ると同時。
 ――誰よりも速く、雷に囲まれた撃退士に向けゐのりが走る。
 チェーンソーを掻き鳴らしながら、集に向かって横薙ぎの一撃。躱すべく身を捩った集だったが、それは叶わず肉を大きく削がれる。避けた筈の位置を裂く、刃。
「ッ……!?」
 集は回避に長けた陰陽師だ。それにも構わず、ゐのりは当ててみせた。命中力が特別高いということだろうか。削がれた肉、飛び散る血飛沫で集の思考が鈍る先、リチャードが雷をいなしながら更に挑発の声を上げる。
「多勢に無勢、卑怯だとは思わないのか。きみたちの思想はそこまで下卑た物なのか!?」
「煩いですね」
 アスヴァン前に出、薙刀を翳すとアウルの輝きが宙に満ちる。何事かをされた、それは判るが、それが何なのかは判らない。
 ――薙刀を構えた少女と同様に数歩と前に出て雷を惹きつけ、敵の中心部で不動金縛りを行おうとした集は理解する。シールゾーン、スキルを封じられてしまった。
 そこを狙い定めるように雷の一頭が焔を吐き、それを寸前で回避する集。
 正直、ジリ貧だった。
 雷のみを狙えば確実に頭数を減らすことは可能だろうが、それをさせないよう少女たちは動いて来る。盾を押し出し矛で突き上げて来たディバインナイトの攻撃を鍔で受け止め、リチャードは苦心する。
(味方を護らねば――)
 それは彼の定め。退くことなく、敵と対峙し味方を護る。それが、彼にとっての騎士道だった。
『負傷者が――』
 連絡が入る。耳に、入る。リチャードは僅かに動揺した。
 そしてハンズフリーのその音は、少女らの耳にも入る。
「……大変ね、騎士様って」
 少女――ゐのりは目を細めると、隈の刻まれた幼い相貌を歪めて意味深に言った。
 その片手は、何を示しているのだろう、いつの間にか指鉄砲の形が作られていた。それにリチャードが一瞬意識を奪われたのも束の間。
 アスヴァンが突き出した薙刀が、彼の身体をずぶりと貫通した。深々と突き立ったそれは血と臓に塗れ、明らかに深手だということが判る。
「か、はっ……」
「リチャードさん……!」
 リチャードは防御力が高く、装甲は硬い。それなのに何故――そう薄れゆく意識の中細い息を吐き出すと、唇からは鮮血が溢れ出す。飛び散る血、出来ていく血だまり。
 自身の腹、薙刀が突き立った箇所には――何時の間に出来たのだろう、紫色の”クロスのシンボル”。ボンヤリとした形を持ったそれは淡く輝き、リチャードの意識が潰えると共に、消えた。
「……ピンポイントに防御を下げたとでも言うのか?」
 けれどどうやって。
 その一部始終を見ていた集もまた、焦りに呟きを洩らす。
 雷に囲まれている。覚醒者三人に囲まれている。背を向けること、どころか――逃れる術もない。
 それは絶望的な状況だった。

『……ごめん、持ちそうにないよ』
 通信で届いた集の最後の言葉は、狂った少女らの哄笑と、狼の遠吠えに紛れて小さく。



 壁を蹴った忍軍の少女と歩が交差する。一瞬の内に太刀と太刀を合わせ、飛び散る火花は戦場に咲く哀華。
「もっともっと踊りなよぉ、無様に、愉しくさぁ」
「戦闘狂――ですか」
「覚悟が無かったとは言わせない。殺すなら殺されるのも道理だぁ」
 互いに冷徹、冷静。回避を重んじる忍軍同士が手合せするのもまた、道理と言えよう。
 互いに避け続ける不毛さは在れ、他に被害が及ぶことは無い。それに如何やら歩の方が優勢らしい。後手後手に回りがちだった撃退士らだったが、漸くと一歩の余裕が見える。
 対する地上では、阿修羅の少女がユーノと切り結ぶ。
「――血絡<ウィンクルム・サングイス>、ですの」
 武器を触媒に相手に魔力を打ち込み、それを媒介として互いの生命力を接続、活性を自らに流し込む。相手が保っている自己治癒能力を利用する力。
「キャハハ! なーに、その技! スッゴイじゃん! 超面白い!」
 トリガーハッピー超ハッピー。少女は楽しげに笑いつつユーノに再度迫り、薙ぎ払いの一撃を加える。鉄線が高めた命中力で、ユーノの頭部にぶち当たりその意識を刈り取った。
 その合間を縫って、紫苑は手にした得物で阿修羅の足払いを狙う。――が、それは外れ。飛び退かれ、あっさりと回避される。阿修羅もまた手練れであることは間違いない。
「なーに? やっちゃうよ?」
「うるせーですぜ!」
 得物を手にしたまま少女を睨み付けると、紫苑は一蹴する。
「おれは一つ目で、まだおっぱいもねぇガキんちょですがねぃ。それでも、このきたねぇゴミみてぇなせかいの中でひかるきれいなとこもちったぁ見えてるつもりでさ」
 阿修羅は興味深げに――けれどユーノの方は警戒したまま、紫苑を見詰める。紫苑にとってそれは好機。ユーノの復帰までに時間を稼ぐことが出来る、重要なチャンス。
「あんたらおれよりだいぶなげぇことその目んたまにひかりうつして、けっきょくなにもみえてねぇんですかぃ。いいとこせっきょくてきに見つけようとしねぇもーもく女はひリアまっしぐらですぜ!」
 剣戟の聴こえる街中で、紫苑の小さな叫びがこだまする。
「それでもおっぱいついてんのか――……ぁ、すいやせん」
 そこまで言い切って学生服の少女の胸部にふたつ並ぶ、発達路線まっしぐらの膨らみに思わず紫苑は目を逸らす。ついていました。どーん。
「で? それで? ――って、あっ、起きちゃったじゃん!」
「……話の内容は兎も角として、助かりましたの。有難う御座います」
 頭から血を流し、多少ふらつきながらも目を開いたユーノは軽く目を伏せ、次いで、雷符を具現化させる。それに対し警戒する阿修羅だったが、それより早く、ユーノの壊雷が瞬く。奔る僅かな電光、それは幻惑を与える魔力の電界。
 弾ける光はけれど――阿修羅には絡まない。
「あっぶなーい」
 言いながら、向ける鉄線は潜行せんと空気に紛れていた紫苑へと。阿修羅は紫苑の挑発に乗り、彼女をじっと見詰めていた。その為、潜行の効果は得られない。
「……っ!」
 ぶつ、と刈り取られる紫苑の意識。血が舞い散り、ぱっと華が咲いたよう。愛華燦々、美しい紅色の花弁。ぱっくりと額を斬られ大量の血を流しながら崩れ落ちる紫苑を傍らに、ユーノは焦りを覚える。
 視線の先、阿修羅の向こう側――何か光るものを見捉えた気がして、咄嗟に身を捩る。と、肩口を貫くアウルの銃弾。
「勘が良いな」
 遠くから掛けられる声でも判った。敵であるインフィルトレイターだろう。
 二体一、多勢に無勢。
 援軍を呼ぼうにも、歩は忍軍の相手で手一杯な様子だった。
 そもそも、覚醒者の二人が自身に集中砲火しない訳がない。
「負傷者が出ていますの。このままでは――」
 ユーノはハンズフリーに向かって言いながら、ごり押しの血絡を繋ぐべく武器を構える。が、それより先に放たれた阿修羅の鉄線での激しい一撃で、ユーノもまた、気絶寸前で踏み止まっていた意識を浚われた。
 避け合いながらふと地上を見た歩は我が目を疑う。地に倒れ伏し、血に染まる紫苑とユーノ。撤退も考えなければいけない状況だ。
 更に見やれば、轟に向かう二人も危うく――。
「ダンスをしてくださるんでしょう? 死を賭けた舞踏を。余所見なんて野暮じゃあありませんか?」
「――っと、そうだったぁ。お前たちも中々の戦闘狂だねぇ」
 歩の脇腹を掠める太刀の一撃。忍軍は太刀を構えたまま唇から血を吐き棄て、言葉尻にそぐわぬ獰猛な笑みを浮かべた。
 インフィルトレイターのスコープが、精密さを持って彼を狙う。阿修羅もまた同じく彼を狙いに掛かる。囲まれてしまえば血晶・万華鏡での回避にも限界はある。阿修羅からの攻撃が届かぬ高い位置まで壁を駆け、そして、彼は見た。壁面を拳で打ち砕く阿修羅の満面の笑みを。
「壁が在るなら、壊しちゃえば良いじゃない♪」
 少女はけたけたと笑いながら、味方諸共崩れた壁面から落ちて来た歩を執拗に、仲間と共に連携し着実に追い詰める。
 が、何とかそれを凌ぎ、回避し、いなし、歩は気絶寸前のラインで踏み止まる。そして倒れ伏した仲間二人を抱え、壁を奔る。――撤退。その二文字を果たさなければならない。
 打ち合っていた忍軍の少女が、壁から落ちた。
「撤退も仕事の内、ってねぇ」
 歩は苦渋を内心で呑みながらも、血反吐を吐き、覚醒者たちを巻いて、ひたすらに奔る。



 ゼロは翼を羽ばたかせたまま轟と対峙し、薙ぎ払いを繰り返す。
 回避力が特別高い訳では無いらしい轟は、スタンに易々と掛かる。その隙を縫い蒼一もまた射撃による攻撃をゼロと同じ箇所、足へと加える。轟の体力を順調に削れていた。そう思えたが――、不意に入る通信にゼロは顔を上げる。
『ごめん、持ちそうにないよ――』
「何やて!?」
 轟と睨み合いを利かせ、鎌を振るうゼロは振り向けない。
 連絡は防衛班の集からのものだった。
 覚醒者の数は六だった筈。向こう側に、三人が向かっていてもおかしくはない。
『負傷者が出ていますの。このままでは――』
「……まずいな。紫苑とユーノが落ちてる」
 矢次に入る通信、蒼一が振り向けばそのざまだ。
「あかん、撤退せな!」
 声を張り上げ響かせるゼロ。だが、その声に答えようとした蒼一を、轟のブレスが呑み込む。絶えず飛行しているゼロより尚、ちょこまかと攻撃して来る蒼一を邪魔だと捉えたらしい。蒼一が銃を手放し、意識をも手放す姿が傍目に見えた。
「……っ!」
 名を呼ぶいとまも惜しく、せめて活路を見出す為にゼロは大鎌を振るい、轟の脚を削る。――が、屈強な体毛で覆われたそれは崩れない。
「クソが! 幾ら堅い言うても限度が在るやろ!」
 悪態をつくゼロを睨め付ける轟に、ぐっと意識的重圧を掛けられる。
 翼は折れず、心も折れず。撤退しなければならないという絶対の意志が在った。
「――飛んでる子は好きだな。まるで虫けらみたいに散ってくれるから」
 けれど、不意に、背後から届く声。
 振り向くより先、放たれたアウルの銃弾――イカロスバレットは、ゼロの背中を深々と撃ち抜く。
「ぐ、ッあ!」
 落下させられたゼロは、振り向いて漸くと知る。
 ――何とか三人は、逃げおせることが出来たのだということに。
 息も絶え絶え、気絶寸前。朦朧とする意識の中でゼロは安心しふ、と笑うと、近付いて来る少女三人へと声を掛ける。
「っ……そんなカリカリせんと普通にデートでもしながら君らのこと教えてくれへん?」
「断る。心に決めた人が居るからな」
 向けられる銃口。落下の衝撃で痛む身体は動かず、意識は薄れてゆく。
 正しく前門の虎、後門の狼。
 ゼロは目蓋を閉じ、笑った。
「そらあかんなぁ」
 ――たあん。
 銃声、吹き出す血、返り血、血塗れ、――ああ、少女たちはけたけたと笑う。



「アハハ! 無様にひしゃげて転がって、バッカみたい!」
「無様ですね」
「命在っての撃退士だろうに。彼らは本当に蛮勇だ」
「……すべてはツェツィーリア様の為に」
「面倒だが息の根でも止めて置くか? ――如何せん、撃退士は堅いのがいけない。骨が折れるよ」
「ねぇねぇ、そんなことよりお菓子を食べに行きましょう、飽きちゃったし!」
「「「「――ああ、それはいい考え!」」」」
 ゐのりは返事をしない。だが、少女たちは血を浴びたばかりとは思えぬ表情で笑い合い、お喋りを交わし、ディアボロに破壊の指示を出して繁華街を後にする。
 手にしていた撃退士の身体をぼろ雑巾のように放り投げると、ぐしゃりと音を起てた。



 銀狼たちが街一つを破壊し尽くし悠々と去った後、後発隊――もとい、救助隊によって、負傷した彼らは保護された。
 完全孤立した後、ぼろぼろになるまで少女らに嬲られ、玩ばれ、そうして打ち棄てられた彼ら。生きていることが不思議な程だっただという。
 搬送され、手当てを受け、彼らはそれでも生きている。
「…………」
 誰も一言も発さない、発せない。
 救えなかった、街を救うことが出来なかった。

 得られた情報は、少女たちが”何かを信仰している”ということと、”少女の内一人が奇妙な技を使う”ということだけ。

 ――ほんの僅かな情報を学園へと報告する彼らの脳裏に、少女たちの笑い声がこだました。



 けれど撃退士は確かに奮闘した。この凶敵相手に抗い続け、全力で食らい付き――確かに牙痕を残したのだ。それは揺るぎ無き事実なのである。


依頼結果

依頼成功度:大失敗
MVP: 撃退士・雨宮 歩(ja3810)
重体: 鉄壁の騎士・リチャード エドワーズ(ja0951)
   <覚醒者の猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
 幻翅の銀雷・ユーノ(jb3004)
   <覚醒者の猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
 焦錬せし器・片瀬 集(jb3954)
   <覚醒者の猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
 縛られない風へ・ゼロ=シュバイツァー(jb7501)
   <覚醒者の猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
 七花夜の鬼妖・秋野=桜蓮・紫苑(jb8416)
   <覚醒者の猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
 任に徹する・不知火 蒼一(jb8544)
   <ディアボロの猛攻を受けた為>という理由により『重体』となる
面白かった!:8人

胡蝶の夢・
ケイ・リヒャルト(ja0004)

大学部4年5組 女 インフィルトレイター
鉄壁の騎士・
リチャード エドワーズ(ja0951)

大学部6年205組 男 ディバインナイト
撃退士・
雨宮 歩(ja3810)

卒業 男 鬼道忍軍
幻翅の銀雷・
ユーノ(jb3004)

大学部2年163組 女 陰陽師
焦錬せし器・
片瀬 集(jb3954)

卒業 男 陰陽師
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
七花夜の鬼妖・
秋野=桜蓮・紫苑(jb8416)

小等部5年1組 女 ナイトウォーカー
任に徹する・
不知火 蒼一(jb8544)

大学部4年85組 男 ナイトウォーカー