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マスター:哀歌
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:12人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/04/05


みんなの思い出



オープニング

●生還者
 少年が震えながら帰宅したのは夜9時を回った後の事だ。
 夕方になっても夜になっても帰る様子の無い息子。友人と遊ぶという話を聞いていた事もあり、親はただ帰って来たら叱り付ける、程度の事しか考えていなかった。親に心配をかけ、その上で怒られて反省する。それもまた子供が通る道のひとつなのだから。
 しかし、あまりに帰って来ない息子に親は心配する。何か事件に巻き込まれたのか。心配のあまり自身で探しに行こうと思った矢先、息子は帰って来た。
 怒るつもりでいた。叱るつもりでいた。
 けれど、どれも出来なかった。噛み合わぬ息子の歯。ガチガチと音を立てて震える幼い息子。顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっており、昼間見た元気な息子の面影が無い。
 どうしたの、と聞いても息子は答えない。一言も口を利かない。
 ただしばらくして――突然、絵を描き始める。言葉ではなく絵で、起きた出来事を説明し始める。どうして絵なのか、それは親には解らない。言葉に出来ぬほどの恐怖を味わったからなのか――。
「友達、いっしょに、病院、行ったんだ」
 絵を描きながら、たどたどしく少年は語る。描かれた絵は確かに病院の絵。しかも子供の絵ながら中々特徴を掴んでいる。崩れかけた様子もよく解り――親は、子供達が廃病院に忍び込んだ事を悟った。
「まーくん、肝試し、するって、いきなり、言って。それで、いきなり、行って」
 言いながら、複数の子供の絵を描く。これも中々特徴を捉えていた。子供さながらの拙い絵ではあるが、服の色や髪型などで息子がいつも良く遊んでいる子供達のグループだと解った。
「中に、入った。探検、した。歌うたって、お話しながら、病院、歩いた」
 そして――少年はその絵に。子供達が遊ぶ光景を表現するその絵に。
 描き加えた。
「くろいの、でた。おっきいくろいの、でた」
 それは大きく黒い『何か』。子供の背丈の三倍はあろうかという黒い『何か』。
 その黒い『何か』が子供達に腕のようなものを伸ばす絵を描いて。

「ぐちゃぐちゃ。みんな、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ――――」

 塗り潰される子供達の絵。友達の全身を、黒く塗り潰していく息子。
 何か取り返しのつかない何かが起こったのだと親は悟ったが――もう遅かった。
 ……翌日、複数の子供の惨殺死体が発見される事になる。

●季節外れの肝試し
「相手の正体は、おそらくディアボロね……それ以外の事は、何も分からないけれど」
 眼鏡を掛けた女生徒は沈痛な面持ちで語る。廃病院で子供を惨殺した正体不明のディアボロ。その姿形、戦闘能力に至るまで詳しい事は解っていないのだという。
 ただ、唯一生還した少年のいう『ぐちゃぐちゃ』……これはそのままの意味だったようだ。殺された子供達は皆等しく『ぐちゃぐちゃ』に殺され見る影も無かったらしい。
 それこそ、告別式で一度も棺桶を開かない……いや、開けない程。
「廃病院は四階建ての建物よ。人気も無いし誰かが邪魔したり、誰かを護る必要も無い。けど、何処に居るのかどのように襲ってくるのか、それが解らないわ。ただ、弱い子供を狙ったということは手分けして少人数で居れば遭遇しやすいかもね……まあ、詳しい作戦は任せるわ」
 相手の能力の殆どが解らない。大きな形をしている、それしか解らない故、本来なら細かな作戦は立てられない。だが、だからこそあらゆる状況を想定する必要が出てくる。
 一人では無理だ。力を合わせ、それぞれ役割を果たさなければ、素性の解らぬディアボロを倒す事など出来ないだろう。
「頼むわね。どんなに不気味な相手でも倒してくれるって信じてるから」


リプレイ本文

●その病院を見上げ
「よくもまぁ、子供だけでこんなところにきたものだよね……」
 煙草の煙を吐きながら、真野 恭哉(ja6378)は夜の廃病院を見上げた。
 廃墟となった建物。夜の暗闇が恐怖感を誘う廃病院。
 この中に、話に聞いたディアボロが居る。正体不明の黒い影が。
「話を聞く分には面白そうな敵だけどな……めんどくせぇ。で、見取り図は手に入れられたんだっけか? あと敵の情報なんかも?」
 鬱陶しそうに髪を掻きあげながら、御暁 零斗(ja0548)は昼間に情報を集めていた仲間達に問い掛ける。こうして夜の病院に集う前に、各自廃病院の情報や、敵の情報を得る為活動していた。
 今は潰れているとは言え、ここは過去に営業されていた。情報の一つや二つ、探れば出てくる。
「ああ、見取り図の方は俺とグランが見つけてきたさ。今もほら、そっちで確認してるぜ」
 長成 槍樹(ja0524)がそう示した先では、グラン(ja1111)の手に持つ病院の見取り図を確認し合う仲間達が。鼬 アクア(ja6565)の照らすペンライトが、闇の中で病院の構造を浮き彫りに。
「私、昼間に少し見に来たけど、中の構造はこの図の通りだったぞ。全部は回ってないけど、間違いないんじゃないか?」
「ふぅん。じゃあ中で迷う事は無いか。これなら何とかなるでしょ……や、違うか。『何とかする』かな?」
 常木 黎(ja0718)は苦笑しながら言う――が、その瞳には確かな戦意が。
 相手が何であれ、それを『どうにかする』のが彼等の、彼女達の役割だ。故に、暗闇の病院でも恐怖には値しない。怖いのは、戦えなくなる事のみ。
「……犠牲者の子供、引きちぎラレ、殺されていたようデス。詳しくは三神サンが調べて来たようなのデスガ……」
 紅 椿花(ja7093)は昼間聞き込んだ情報を語る。だが、視線は三神 美佳(ja1395)へと。口伝で聞いた情報より……実際に『視た』情報を彼女は手に入れている。
「……シンパシーで見えたのは、大きな、黒い影みたいな存在でした。暗闇から、音も無くいきなり現れて、天井に届きそうなくらい大きくて、手を鞭みたいに伸ばして振るって……」
 説明しつつ、徐々に蒼ざめてく美佳の顔。
 シンパシーを用いて、直接惨劇を見知った彼女の負担は大きい。体力は減らずとも、自身と同じ年頃の子供が無残に殺されていく様子を見て――平気な顔をしていられる筈が無い。
 共に子供の下へ行っていた、雀原 麦子(ja1553)は美佳の頭をくしゃりと撫で、仲間達に笑いかけた。
「まあ、そういう事ね。推測してたのとそんなに変わんない相手みたいよ。大きな影が暗闇から出て来て腕伸ばして襲ってくるってね。サッと行って、サッと倒しちゃおうよ♪」
 明るい笑顔で言う麦子――けれど、仲間達はそんな彼女の瞳の中に、炎を垣間見る。
 それは、敵に対する明確な怒りの炎。陽気に振舞う彼女の内に、それは確かに宿っていた。
 仲間達の決意も新たに。闇に包まれた病院の中を睨みつけて――。
「それじゃあ行くのー! 弔い合戦なのー!」
 ふわふわの白髪を揺らして、あまね(ja1985)が掛け声をかける。
 それが始動の合図だ。廃病院に潜む闇を狩る為に、一同は足を踏み出した。

●囮と尾行
 一同はある作戦を立てて廃病院に乗り込んでいた。
 それは三班に別れ、更にその中で囮と尾行に分かれて進むというもの。
 広い廃病院内で戦うが故の作戦。一同は隣り合わせの危険に緊張しながらも、寂れた院内を巡る。
 その最中、一階を歩む班では。

「……先程の話を聞いた限りだと、暗闇、つまり影になっている所から出てくるみたいね。影に擬態している……ということなのかしら?」
 卜部 紫亞(ja0256)は、隣を歩く零斗に小声で話しかける。
 紫亞の脳裏に渦巻いているものは、先程聞いた敵の素性。大まかな姿形能力は解ったものの、まだまだ未知数の部分がある。
「さあな。俺に解るのはどっちにしろ、めんどくせぇ相手だって事だ。擬態してるにしろ隠れてるだけにしろ……今ここは暗闇だらけじゃねぇか」
「確かに、ね。尚の事、囮のあの二人から目を離す訳にはいかない。何時、敵が現れてもおかしくないのだわ」
 そう言って、二人は先を歩く二名に注視する。同時にその周辺、全体を見渡すように。
 そんな中、囮役の二名は。
「よう三神。あんまり無理すんなよ? シンパシー、結構辛かったんだろ?」
「え、えと、大丈夫です。これくらい……実際に酷い目に遭ったあの子に比べれば……」
「それでもだ。こういう仕事してんだ。そりゃ無茶する場面は多いだろうけどよ。仲間に頼ったっていいと思うぞ。一人で頑張りすぎるなよ」
「は、はい……」
 その内気な性格の為か、美佳は若干おどおどした様子で叶 心理(ja0625)と会話を交わしていた。
 心理がこうして美佳と話をする理由は、敵を誘き出す為――以外にも、ある。彼もまた、昼間に少年の様子を見に行っていたから。心理自身、怯えて、まるで生気を失ったかのような子供の様子を見たのだ。
 怒りに震えた。皆の前では顕にしなかったものの、敵を憎んだ。
 見ただけで感情が昂ぶったのだ。実際に、惨劇の光景を視た美佳の衝撃は想像に難くない。
 少しでも平常に、普通に話が出来れば――そんな想いがある。

 そして二階、別班では。

「おおー! コレはなかなか良い感じに肝試しになるのだ♪」
「お、おばけなんていないのなのー。おばけなんてうそなのー!」
「おばけなんて、幽霊なんていないぞー? 居たとしても……それはディアボロなのだー♪」
「きゃー!」
 アクアとあまねが、歌を歌ったり陽気に話したり、わいわい楽しんでいる様子で囮役をこなしていた。ここに居るという明確な意思表示。暗い暗い病院の中を騒ぎつつ――さりとて油断せず進む。
 怖がる振りをしながら、視線は物陰などの暗闇に。周囲を見渡し、敵の出現を待つ。
 けれど、中々出現しない。だが、ある意味それは当然の事。敵が大きな姿形であるとはいえ、この廃病院は敵の大きさを遥かに上回る。そして時間帯が夜な為、暗闇などそれこそ掃いて捨てるほどある。
 恭哉と麦子の二人は、囮の二名を視界の先に収めつつ、静かにその後を追った。
「何かあったらすぐ駆けつける気持ちではあるけど……これだけ広いとちょっと大変かな?」
「見取り図があるから迷う事は無いですけどね。……まあ、すぐというのは難しいかも」
 小声で交わされるやり取りは、合流の困難さにあった。互いに携帯電話の番号を交換して、すぐに連絡がつけられる状態にはなっているが……この病院の広さは、いささか厄介である。
 どんなに急いだとしても時間は掛かるだろう。
 暗闇は、視界に入る至る所に。今この瞬間襲われたとしても違和感は無い。
 そう。何も違和感は無い。突如、携帯が振るえ、敵の出現を知らせたとしても――。

●遭遇
「コチラ椿花! 遭遇したネ! 今、一階のロビーまで誘導……っ!?」
「くっ! 想定より射程が長い……紅君下がりますよ!!」
 椿花とグランは、物陰より突如出現した影、いや『闇』に襲われ、既に負傷していた。
 敵である『闇』は、グランが用意した爆竹の激しい音に誘われたか、すぐに姿を現していた。音も無く静かに、暗闇から伸びるように姿を見せた人型の『闇』。それは腕を鞭のようにしならせ伸ばし、二人目掛けて唸らせる。
 爆竹から離れた場所に居たのが幸いだった――もっと距離が近ければ、一瞬で倒されていたかも知れない。椿花が鉤爪を振るいなんとか応戦を試みるが……分は『闇』の方にあった。
「『幽霊の正体見たり枯れ尾花』……なんて言ってる場合じゃ無いね。二人とも、早く一階まで行きな! 殿は何とかするよ!」
 黎の持つ小型自動式拳銃が火を吹きながら、『闇』を誘導する。負傷した二人に、これ以上攻撃の手を向けさせぬよう、自ら攻撃を囮にして黎の拳銃が幾度となく吼える。
 そんな彼女を援護するように、槍樹のリボルバーも『闇』を撃つ。
「一人で張り切るなよ黎。俺達だけでどうにかなる相手でもないだろう」
「解ってる。だから、ちゃんと手伝ってくれよ。オ・ジ・サ・ン?」
「黎の方から願われるか……なら、受けようか、その願い」
 二人は共に微笑を浮かべ、拳銃による弾幕を張る。そして――退却。
 追ってくる『闇』に攻撃を仕掛けつつ、向かうは一階ロビー。全ての仲間を集結させて、勝負を着ける。それが最良――否、そうしなければ勝てる相手ではない。伸びる『闇』の腕は強烈。離れて攻撃を仕掛けても尚、着実にダメージを刻んでくる。
 特に、最初襲われた二人の傷は深い。
「接近も厳しい相手デス。舞う蝶スラ、落としそうな攻撃だったデス」
「あと少しの辛抱ですよ。確かに強力な相手ですが……皆が集えば、必ず」
 口惜しそうに顔を歪ませる椿花の横で、グランは再び爆竹を鳴らす。
 既に敵が出現している為、この爆竹の意味は別にある。音が鳴れば反響し――同じく一階に向かう仲間達に、その位置を知らせる。
「お待たせ――体制立て直すわよ! てぇや!」
 横手から駆けつけた麦子の蹴撃を喰らい、『闇』が後方に吹き飛ぶ。
 視線を巡らせば、そこには二階担当の四名が。
「これが今回の相手ですか。恨みはないけど……つぶさせてもらいますね」
 恭哉のピストルが『闇』を撃つ。前衛で敵を迎え撃つ麦子を、そしてあまねを援護する。
 負傷の大きい三階担当の四名を護るように――あまねのナイフと苦無も暗闇に奔る。
「ホラー映画みたいに、やられっぱなしでいると思うなよ、なのー……でも、この攻撃、結構怖いのー!」
 伸びる『闇』の腕。戦況は未だ『闇』の有利。
 無論、一同もその事を理解しており、合流後も休まず一階に向かっているのだが――それでも負傷は免れない。
「謡い舞い、祈りて風凍てる白鋼の槍なのだ! ……って、まだまだ元気なのだ! 良い感じすぎる肝試しなのだー!」
 アクアのクリスタルダストを受けても、『闇』の攻撃の苛烈さは減らない。
 思わず叫んで退却に専念するのも止むを得ない様子ではある。
 されど。いかに敵が健在でも――その身に攻撃を受けている事実までは消せない。逃げながらでも、少しずつ『闇』の身体に傷は刻んでいっている。
 だからこそ、一階ロビーにまで逃げおおせたその時は――逆転劇が始まるのだ。

●一気呵成に
「やっと来たのだわ。随分待ちくたびれたけど……思ったより大きくて強いみたいね」
「構わん。どんな敵だろうと……蹴り破るのみ!!」
 ロビーに現れた仲間達と『闇』を視認し、紫亞と零斗が動き出す。
 猛烈な速度で加速した零斗の蹴撃が、紫亞の広げたスクロールから放たれた光弾が『影』の巨体を穿つ。傷を負った仲間に代わり、最後の一班が待ちわびたとばかりに牙を剥いた。
「……様子を見る限り、相当やばい攻撃してくるみたいだな。なら……!」
 傷を負いながらロビーに到着した仲間達を見やり、心理は援護に徹する。
 腕を伸ばし鞭のように攻撃してくる『闇』。その攻撃の範囲に入らぬよう、慎重にピストルを撃っていく。
 美佳も同様だ。散開し、距離を取って、『闇』の攻撃をばらけさせる形で雷の弾丸を撃つ。
「……仇は、討ってみせます。だから、待っててください」
 美香の瞳に映るのは『闇』。その『闇』を見て思うは、怯え震えていた少年の姿。
 友人が惨殺されていく様をシンパシーで視た。あの絶望と無念を晴らす為――攻撃は、次々に『闇』の身体を打っていく。
 広いロビーでの戦いは『闇』を不利へと導いていた。いかに単体では強くとも、四方八方から襲い掛かる攻撃に対処するのは難しい。更に下手に巨体な分、攻撃も当て易い――取り囲み、一気呵成に加えられる一同の攻撃は、確実に『闇』を弱らせていっていた。
「こういうのを質より量と言うのかしら? ……さあ、そろそろ滅びの時なのだわ」
 全員による逆襲攻撃で、動きの鈍ってきた『闇』。その『闇』に向けて、殺意を篭めて、紫亞は生み出す。それは煌めく氷の錐。『闇』の身すら凍て付かせる冷たさを伴って、その巨躯を抉った。
 苛烈な一撃を受け、身を揺らす『闇』。そこを麦子が駆け抜ける。
 アウルが燃焼する。力が大太刀へと宿る。振りぬかれるは石火の一刀。
「――約束したからね。必ず、仇取るって」
 大太刀を振り切ったまま呟かれた麦子の一言。
 けれどその呟きに答える敵はいない。斬り伏せられた『闇』は、もう動く事は無い。


「これで……平穏は取り戻されましたね」
 事が終った後、安堵の溜息と共にグランが言った。同時に、ほぼ全員がその場に座り込む。
 ようやく隣り合わせだった危険が消えて――気が抜ける。
「はぁやれやれ……今度はもう少し楽なのが良いなぁ」
 苦笑しながら呟いた黎の言葉に、全員が同意を示す。
 厳しい戦いだった。敵の攻撃力は高く、一対一なら間違いなく敗北していた。仲間との連携、協力があればこその結果。
 つまり、それだけ一人一人の責任が重かった証拠であり……思わず腰を下ろしてしまう。
「はー……お腹減ったのだー……はうわ! そういえば4食しか食べてないのだぞ! 通りでお腹ペコペコなのだ!」
 突如起き上がり食欲を顕にしたアクア。そんな彼女の様子に、皆の顔に笑顔が浮ぶ。
 確かに、激しい戦いだったのだ。腹が減るのも当然の事で……これから夕食に行くのも、それはそれで悪くない。
 ただその前に、やりたい事がある。
「……俺は、子供に報告しに行って来る。生き残った彼のおかげでもあるのだからな」
 槍樹は言った。強く厄介だった今回の敵。それを打ち倒せたのは、事前に僅かでも情報を手に入れられたからこそだ。もし今回の相手、全くの無情報で挑んでいたと思うと――。
「あの子のおかげで仇討つ、出来たデス」
「そうなのー。くろいのすごく強かったのー」
 椿花とあまねは、先程の戦いを振り返り改めて実感する。
 結果は大成功に終ったが、それは情報があり作戦を立てた状態での事。
 生き残った子が居なければ、今こうして話が出来ていたか。
「俺も行くかな……三神はどうする? 行くか?」
「はい。あの子に言いましたから。お友達の仇を討つって、だから……伝えにいきます」
 心理と美佳の二人も、もう一度あの子供の元に向かおうと決めた。
 震える事しか出来なくなっていた子供。完全に立ち直るには、まだまだ時間が必要であるだろうが……少しでも、立ち直る足掛かりになりたくて。
「ま、どっちにしろ、一旦ここから離れようぜ。こんな寂れた場所にいつまでも居てられるか」
 面倒そうに言う零斗に続き、一同は廃病院の外へと歩んでいく。
 ここにはもう、おおきなくろいかげは居ない。
「だから……さよならですよ」
 一言囁き、廃病院に向けて、恭哉が煙草の煙を吐き出す。

 時刻は夜。辺りは黒は覆われた闇の世界。
 けれど、もう闇は無い。廃病院に巣食っていた『闇』は、もう無い――。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:12人

原罪の魔女・
卜部 紫亞(ja0256)

卒業 女 ダアト
泰然自若・
長成 槍樹(ja0524)

大学部9年172組 男 ダアト
疾風迅雷・
御暁 零斗(ja0548)

大学部5年279組 男 鬼道忍軍
不屈の魂・
叶 心理(ja0625)

大学部5年285組 男 インフィルトレイター
筧撃退士事務所就職内定・
常木 黎(ja0718)

卒業 女 インフィルトレイター
天つ彩風『探風』・
グラン(ja1111)

大学部7年175組 男 ダアト
名参謀・
三神 美佳(ja1395)

高等部1年23組 女 ダアト
夜のへべれけお姉さん・
雀原 麦子(ja1553)

大学部3年80組 女 阿修羅
反撃の兎・
あまね(ja1985)

中等部1年2組 女 鬼道忍軍
撃退士・
真野 恭哉(ja6378)

大学部8年33組 男 インフィルトレイター
黄泉路への案内人・
鼬 アクア(ja6565)

大学部7年43組 女 ダアト
闇狩り・
紅 椿花(ja7093)

大学部4年278組 女 鬼道忍軍