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●第四の課題
 この日のために念入りに手入れされた会場は、芝が青々と茂り、照りつける太陽を反射して煌く。
 紅組が一歩先に、サッカーフィールドへと駆け込んでくる。
 何処からともなく投げつけられるボール。あらかじめ並べられているとか、そういうのではなくて、ぶんっ! と飛んできた。
「うわっ」
 まぁ、そこは撃退士の面々。
 胸や足で上手くキャッチして、課題であるリフティングを開始する。
 ―― ……かちかちかちかちか……
 恐らく参加者も、応援席側も、この1000回ものカウントをどのように取っていたのか、疑問を持ったもの居たかもしれない。
 課題開始した選手の傍で響く、カウント音。先ほどまで無人だったはずのコートから沸いて出たのは、野鳥など動きの良いものをカウントする能力に長けた面々だ。
 よく見れば、背中に芝生を背負っている。
 あぁ、なるほど野鳥を驚かさないように……って、今それをやる必要があるのか!?
 何を隠そう、ここまでの競技でも人知れず片隅で、かちかちかちとカウントをしていたのは彼らだったのだ!
 鋭い眼力は如何なカウントも見逃さない。
 その代わりに、開始前に仕込まれていたカメラ等は見逃したのだから――その生暖かい対応に気がついたのか、無心でボールを捌いていた九重棗(ja6680)の肩がぴくりと跳ねた。
 くれぐれも悪用しないようにね☆

 遅れて白組も入場
(勝った方に1000点って、そんな、アタシ達が今までガンバってきた意味は!?)
 それはきっと誰もが思うこと。
 そして、並木坂マオ(ja0317)は
「――ま、いっか。お祭りは楽しまないと!」
 自己完結。
「ふはは、サッカーしようぜなのじゃー!」
「だいぶ、緊張してきたのじゃ……」
 意気揚々と乗り込んできたのは叢雲硯(ja7735)普段はさほど緊張を感じることはないものの、今回は大勢での参加。僅かな緊張を孕んでいるのはクラリス・エリオット(ja3471)そんなメンバーが、雪崩れ込んでくると人数的には若干白が優位のようだ。
 トントントン、かちかちかちかち。
 なんということでしょう。リフティング、意外に地味競技だ。

●攻防前の準備運動。
「さて、白黒ハッキリさせますか! ……ん? 紅白はっきり?」
 ぽんっと受け取ったボールを膝で弾いた一条常盤(ja8160)は小首を傾げた。
 飛んできたボールを、片手で受けそのまま傍に居た澤口凪(ja3398)に渡したのは桐生直哉(ja3043)自分の分も、受け取って
「お互い頑張ろうな」
「はい、がんばりましょうね!」
 掛けられた言葉に澤口も答える。
(みっともない真似は絶対できないや……!)
 と気合を入れ、まずは一回ボールを腿で弾く。

 片方の耳にイヤホンを引っ掛け、流れてくる音楽のリズムに合わせながらリフティングしていた君田夢野(ja0561)は白組も位置につき、競技開始したところで、同じ”音響撃団ファンタジア”の団員である暮居凪(ja0503)と恋人であるフェリーナ・シーグラム(ja6845)を発見。
「オンドゥルルウラギッタンディスカー!」
 力強いシャウト! ただし検索はするなよ、絶対にだ。
 裏切ったとは二人にとって片腹痛いが……思わず、夢野がボールを落としたので良し。元々苦手ということもあり自爆してくれた。
「今回は大戦果を挙げて、撃団々員としての威厳を誇示してやるんだッ!」
 大丈夫、ちゃんとボール拾って再開。夢野めげてない。

 お互いを牽制しつつも前半は黙々とカウントを稼ぎに来ているのか、嵐の前の静けさか……。
 いやに緊迫した雰囲気を孕んだままリフティング対決は続けられている。

「先輩達の足を引っ張らないように頑張りますっ!」
 ぽん、ぽん、ぽーん……ころころ、あわわっ。
 真摯に取り組んでいる。
 それは認めるのだけれど、見ていると頑張れエールと共に手に汗握る。
 御守陸(ja6074)現在進行形でボールを追い掛け練習中。大丈夫、一回目より二回目、回数増えてるよ!(野鳥好きの会:談
「白組にいるカーディス兄ちゃんには負けねー!」
 と兄への闘志を見せつつも、動作は楽しげcicero・catfield(ja6953)
 それと同じくらい愉快そう……というか愛らしさ満載なのは逸宮焔寿(ja2900)
(試合形式だったら、どうしようかと思ったけど、はい。
 リフティングなら大丈夫、どこまで記録を伸ばせるか挑戦なのですー♪)
 ボールに合わせて若干自身も跳ねている。ぴょこんぴょこん。
 腰に下げているぬいぐるみポシェットの白兎も一緒に跳ねる。
「ボールは友達なのです☆」
 ぴょんぴょこーん。なんだかこの一角メルヘン。一つ前の競技が嘘のようである。

(足技なら任せて!)
 そう思って小器用にリフティングをこなしつつも、與那城麻耶(ja0250)は目立ちたいという衝動も抑えきれない。もちろん、それはプロレスラーを志す者として、観客を魅了する美技というのが必要不可欠だから。
 ちらちらと相手の出方を、前に出るチャンスを窺っている。

 そんな中でも、
「へへっ、リフティングは、元サッカー少年の俺の得意分野だぜ」
 と、サッカー経験者である虎落九朗(jb0008)、そして、棗は的確にボールの芯を捉えてボールを操る。
 棗に関しては、ダルそう、いや、実際口からも「だるぅ」の声は洩れている気がする。その合間に、風船ガムをぷぅっと膨らませる余裕すらある。
 ……ふぅぅぅ、ぱちんっ
 とガムが割れた瞬間、静かだったフィールド内が、わぁっ! と沸いた。
 南條真水(ja2199)のアクロバットリフティング。
「なんじょーさんの華麗なテクニック、魅せてやるじぇ」
 飛んだり跳ねたり回ったり。回数を稼ぐというよりは、魅せに走り歓声を浴びる。

●勝負はここから?
 どちらが先だったのかは分からない。
 遂に火蓋は切って落とされたのだ(さっきまでのは準備運動的な? 慣らし的な?)
 麻耶はちらりと、真水を見やる。けれど、丁寧にリフティングをこなすことも、疎かにすることは出来ない。紅組は頭数で不利だ。

 二つのボールが交差する。
 目立つタイミング。それは妨害されなければ決して訪れることはない。
 じりじりとセンターラインに、意識するしないなしに麻耶は近づいていた。そして、弾かれたボールを妨害行動と受け取ったマオは飛んできそうなボールに、目掛けて自身のボールをぶつけて弾く。
 高く上がったボールを、麻耶は高く飛び上がり華麗な足技でキャッチ。
 逸れに対して反射的に
「ホアチャー!」
 と謎の掛け声と中国武術のポーズをとってしまったマオのボールは……当然地面と仲良しだ。

 じりじりと残暑の日差しが降り注ぐ中、妨害戦が続く。
 ―― ……ぱしゃぱしゃぱしゃ。
 場にそぐわない水音。
 それまで地味に回数を重ねていた暮居が、暑さに耐えかねてミネラルウォーターを頭から被った。
 ふるりっと頭を振ると、弾ける水滴がキラキラと太陽に反射する。
 自身の下へと戻ってきたボールを、ぽんっと受けてリフティングを再開。ぴったりと張り付いた服、容赦なく透けてしまうのも仕方ないというものだが、本人は誰得? と思っているくらいだ。
 主に観客席からの熱い視線に気がつかないのはちょっと惜しい。
 使うまでもなく、スキルCODE:LPの効果はあったも同然だ。
(まだ暑いけど、風邪とか引かないか?)
 しかし、その姿が目に留まったシセロの心配は、なんだか明後日なところに向けられていた。

 ころころころ。
 ただひたすらに、一途にボールと向き合い回数を重ねていたマキナ・ベルヴェイク(ja0067)同じく地道に数をこなしているように見えた秋月玄太郎(ja3789)の蹴り出したボールに弾かれて地面に落ちた。
 逡巡しつつもボールを拾い上げたマキナは、すっと瞳を細めて威圧的に玄太郎を見る。
 ―― ……とんっ
 逸れに対して玄太郎は、自分の下へとボールを何事もなかったように受け止めリフティング再開。
 ちらとかみ合った視線には
(ボールに当たったのは偶然だ。妨害の意図はない)
 という白々しい感情が読み取れた。
 無言のまま、リフティング再開……かと思われたマキナはもちろん
 ぼこんっ!
 全力でボールを蹴り玄太郎のボールを大きく弾く。くっ! と息を呑んで睨み返してきた玄太郎に
「……他者の妨害をして、見過ごして貰えるとでも?」
 冷ややかに告げ
「次に邪魔をしたら――」
 念を押したところで、ばんっ! 再びボールが飛んできた。
 ああ……ここのやり取りは終わりそうにない。
 回数をぶつけて、地面に落ちなくなれば数に入れても良いだろう。
 地面には、ついてない……。

●続くよ。
「邪魔は基本ってかァ?」
 棗は、順調なリフティングの合間にボールを、高く蹴り上げて相手へ石を投げ、ボールの返りを微妙にずらす地味な妨害。
 リズムを狂わせるには良いし、稀に落としたりすればラッキーだ。
 その他の攻防も、ボール同士がぶつかったり、若干地味で、それ以上も以下もない。それ以上も、以下、も…… ――

 白のカウントが微妙に有利に映った瞬間だった。
 観客席からざわめきが起こった。
 悲鳴も混じっている。阿鼻叫喚? いや、ここはお化け屋敷とかではなくて、その声は、おかし……く、なかった。
 ケラケラ! ケラケラケラ……
 奇怪な笑い声。拘束された両手(サッカー競技だからではなく彼女はこれが標準だ)
「メンドくせぇ考え抜きにしてよぉ、勝ちゃあいいんだろうぉッ!」
 低く「何をしてでも……だよなぁッ? ケラケラ!」と続けられた台詞に背筋が寒くなった。
「喰って潰してブチのめすッ! ケラケラケラ!」
 革帯暴食(ja7850)を象徴するように、光纏した暴食の姿は口を模した模様が幾つも浮かび上がり、人であることを疑う。
 そして、跳ね上げたボールの下に入り込むと
 ―― ……ッ!
 喰った。
 ざわつき、悲鳴を含んでいた観客席が刹那しんっと静まり返る。
 ―― 纏うは狂気。孕むは狂喜。
 歪んだ愛を絶叫し、死すらも恐れず猛り狂う ――
 カッと瞳は見開かれ、大きく開かれた唇はにやりと引きあがる。
 ”狂気の慟哭。或いは、孕みし狂気の断末魔”の発動だ。
 体内に過量のアウルを循環させたその状態は死をも恐れぬ……って、今死を恐れるのは白組です。
 地面に付いたらリセット。
 つまり、食べてしまえば地面には、つかない。
 魔装並みの強度のボールを食い破った代償に、今夜から暫く顎が外れやすくなるかもしれないが。
 ギンッと睨みつけられると、反射的に身体が強張る。風を切る音が耳を掠めると、白陣営へと割りいってきた。
 目前を疾風が如く駆け抜けられ、その姿にも息を呑みボールを落とすもの、慌てて頭上高くボールを非難させるものが続出した。
 掛かってきた相手に対し、受け流すことで失敗させようと思っていた硯も……相手ボール持ってないし。受け流すとか、え、ちょ……無理。
 ボールを落とさないように、暴食の軌道から逸れるよう移動。
 応援席の一部の心境として、たゆんたゆんと揺れる胸を堪能したいというのに……現在ホラー展開です。

 ―― ……ザッ
「そこまでだじぇ」
 誰が呼んだかなんじょーさん(本名です)突きつけた人差し指が輝かしい。
 毅然と暴食へと立ち向かわんとするのは南條真水。
 一陣の風が舞い、砂塵を上げた気がした――芝生ですけど。
「はっはっは、最期まで楽しもうじゃあないか!」
 ぽんぽん……と、数回地面を跳ねたボールに狙いを定めて真水のスマッシュシュートっ! ボールが凶器に早変わり。
 ゴッ!! とボールが風を切る。
 相手は(今現在は色々と疑うかもしれないが)女性。だが、そんなものは無問題っ。
 顔面狙って何が悪い。
 ―― 爆ぜろ蹴球!!
 
「―― ……あ」
 間違いなくボールは暴食の顔面へとクリティカルヒット。した、と思う。その瞬間ボールが散ったので、詳細は不明だ。喰ったんじゃないよね?
 ケラケラ! ケラケラ! と変わらぬ笑い声が響く。
 直ぐに走り出す暴食を妨害するために、真水も動いた。全力跳躍を用い、果敢にも暴食の行く手を邪魔しようとトライ。
 手には手錠があるが。死活状態の暴食を捉える隙がない。
 フィールド内をボール持たない二人が駆け回る。
 スキル効果が切れるまでの約十五秒間は後に
 『十五秒間の悪夢(訂正線)奇跡』として、学園の(黒)歴史に刻まれたとか……刻まれてたら良いなとか……思った、まる ――

●借りは返す主義です。
「……」
 その様子を見守り、奇しくも暴食の妨害に合い取り落としてしまったボールを見詰めた常盤は、ちらと赤陣営を見やる。
 一番回数を重ねていそうな相手……この位置からなら、数人は狙えそうだ。
(行けます――)
 会心の一撃! と思ったら札を持ってない。まだ、その札を持つミリサは解放されていなかったのだから。
 仕方ない、そのまま、自らの足へとアウルを溜め込み一息に解き放つっ!
「オーバーヘッドキィィーーーーック!!」
 違う。ソニックブームだ。
 念の為。
 ズザザザザッと芝生を削り、芝を巻き上げていく衝撃波。
 それはそのまま棗と九朗からボールを取り上げていった。華麗に青空の下へと舞い上がる大熊猫色のボール。
 きらりと、陽光を受けて、不規則な動きで落下してくる。落下位置を特定した棗は、地面を蹴りボールを取り戻し、九朗は取り落としてしまった。
 現役サッカー部と、元サッカー部の差。仕方ない。
 苦々しく常盤を見たときには、もう既に再開していた。

 両陣営、かなり荒らされた感が漂っているが、どう見ても白組が有利(一人差し引いても)に見えていた……にも関わらず。
 ―― ……ピィィィッ
「紅、1000回達成っ! 実行委員一名解放し、1000m走を走りきってくださいっ!」
 ホイッスルが鳴り響いた。立ち上がり手を高く上げていたのは……えっらい、端っこのほうに居るんですけど……。
 陸のカウントをしていた審判員だ。
 転がるボールを追い掛けながらあんなところまで行ってるとは。妨害行為も届かない。

 サッカー紅組が解放したのは中山寧々美。
「いやー、助かったわ! はい、これが札ね」
 寧々美から【失敗の呪い】の札を渡されながら、玄太郎は黒髪の長身を想った。
「いや、何でもない」
 訝しげな寧々美の視線に気付いて、首を振る。
(本当なら俺が助けたかったが……、それよりも早く解放されたならその方がいい)
 
 これが運命。運命には翻弄されてなんぼだ…… ――。


●ラストスパート
 1000mは全員ゴールで終了。
「俺が、連れて行こうか?」
 死活のお陰で、暴食はばたんきゅー。絶賛気絶中。
 誰が? という相談に持ち込む前に、シセロがしゃがんで暴食を肩に担いだ。
 ―― 一応女性なので、姫抱きとかの選択肢は……? 2m超えですもんねぇ……ない、ですよねー……。
 駆け出すシセロを追う形で、じゃあ、順番に。ということになったようだ。
 
 紅組がコースに入ったところで、ホイッスルがもう一度鳴り響く。白組も1000回達成した合図。
 解放されたのは桐江零。こちらも札は【失敗の呪い】。
 拘束が解かれた瞬間、微妙に零の表情が名残惜しげだったとかはきっと気の所為だ。

 コースインにばらつきはあったものの、ここにきて両者妨害の様子はない。スポーツマンらしい徒競走。
 終始だるそうだった、棗はここにきて本気モード。
 縮地を使用して、微妙に前を走っていた、常盤を抜き去った。
 擦れ違いざま、ちらりと視線が絡む。
 僅かに棗の口角が上がった。

 おや?
 荷物があるのは紅組だけではないようだ。
 白組にも一組、直哉が澤口をおんぶしていた。
「大丈夫です」
 といったものの、リフティング及び恐怖の十五秒体験後では口で言うほど大丈夫ではないと判断したのだろう。直哉には澤口の強がりを見抜くことくらい雑作もない。
 ふわふわっと頬を赤くして顔を伏せている澤口を、落ちないよう念を押してから直哉はスピードを上げた。

 棗の背を追い掛けていた常盤は、後ろを振り返った。
 最後尾は白。
 勝負する以上、勝敗がある以上、勝てる可能性には賭けるべきだ。負けるわけには行かない。
 バスケメンバーから託された魔法札。今解き放つ☆
 解放されたのは【超瞬発】
 猫まっしぐらっ!
 効果時間は、特に短いこの札。但し、単純に距離を稼ぐなら一番効果的だ。
 ばびゅーんっとスピードを上げたマオが、遅れ気味な直哉とクラリスの手を引いた。
 一人、二人、三人、と紅を追い抜き次々と白組がゴールしていく。

 ―― ……勝敗は……
 荷物差で、白。上半身分負けた。
 元気に飛び込んだマオが、両手をぶんぶんと回して、テニスメンバーに全員入りきったことを合図する。
 魔法札を使わなければ、ここまで詰まる事も無かったかもしれない。
 勝負の行方は、最終課題のテニスへと持ち越された。



 駆け出した次なるメンバーを見送って、全員が向うのはもちろん。
 責任BOXという洗礼を受けた「く」「お」「ん」「が」「はら」の前。
 白組は、前もって決めておいた「が」のボックスを開ける。
 スプレー缶に、紙皿。
 これは……あれだ。
 徐に、スプレー缶を掴み……紙皿にシュワワワワワッ。白いクリーム状の泡を盛って盛って盛って……(個人保護のため、第一投者は伏せてお届けしています。ご了承ください)
 もう既に散々な目にあっている風な気がしないでもないが、念には念を入れることも大切だ。
 じりじりと距離を詰め……。
「こ、今度は、何をする気ぢゃ!」
 アリスと太珀顔に無言の影が落ちる。
「おい、なんで僕まで、僕になに、を――」
 ぼふっ☆
 べちゃっ。
 話くらいは最後までさせてあげても良かったような気がしないでもないが、始まってしまえば、
 べちべちべち☆
 複数の皿が張り付くまで終わらないのは、言うまでも無い。

 ずるりと、太珀の頭上と、顔面からパイ皿が落ちる。
「―― おい……負けた大将だけじゃないのか」
 怒りに疑問符が消えていた。
 えーと、まぁ、勢い? いえ、いいえっ! 両成敗です。
「太珀ちゃんお疲れさまなのです〜。……えっと、何年生?」
 もう普段のふわり柔らかそうな毛は残っておりませんが……ぺしゃりと、太珀の頭に手を伸ばしたのは焔寿。
「何をしている。僕が誰で教師であるくらい知ってるだろ」
「あ、先生になりたいの? じゃあ、今は自称ですねっ」
 なでなでなでなで、べちゃりべちゃ……。
 念入りに塗りつけている、わけではないですよ、ね? 焔寿はことさら満足そうだ。

「味がせんのぉ、どうせならもっと……」
「せ、先生、ごめんなさいっ。僕がもっと頑張っていれば……」
 頬に乗っかったクリームぺろり☆
 そんなアリスの前で陸はただただ、平謝りしているのであった。
 大丈夫みんな被害者で良いと思いますよ。

 そして、事の収束を見届けた棗は
 「あーしんどかった……」
 とぼやきつつも、カメラを回収。
 後日、この日の動画は無料配布されることになった――。
 勿論健全ですよ。

サッカー 担当マスター:サラサ








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