担当マスター:川上 野溝 |
シナリオ形態:イベント |
難易度:不明 |
リプレイ完成日時:2013/11/1 |
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リプレイ本文
●結果発表!
全ての出場者が出揃った今、会場は興奮に包まれていた。
『非常に悩んだ選考となった。皆美しく、その演技も素晴らしく。想いを伝える姿には心揺さぶられた。聴衆の皆も同じ気持ちだろう。
どうかこれからもその柔軟な心で美と技を磨いてほしい。そして各々の想いが報われることを、心から祈っている』
と審査員渡辺あつしは告げ、いよいよ結果を発表する。
『まず審査員特別賞から――』
会場が静まり返る。
『恵夢・S・インファネス!』
歓声が轟いた。呼ばれた恵夢は笑顔で前に進み出る。
『恵夢君の三段階の装備変更には感心させられた。学業も戦闘も本分とは言い得て妙だ。実に久遠ヶ原らしい特技だったな。何より生着替えが良かった…チラリとおっぱ……痛、痛い!』
どこからか輪ゴムが飛び、渡辺の禿頭を打つ。司会者が慌てて恵夢にコメントを求めると、恵夢はにこりと笑み。
「このおじさん殴っていいかな?」
と受賞の言葉を述べた。
次なる受賞者は、ミスター部門から。
『ジェンティアン・砂原!』
呼ばれた彼は驚いたように目を見開く。
『天使のような歌声、とはまさにこのことだ。胸を打たれる歌詞で、自作の歌とは驚き入った。今後も活躍を期待したい』
ジェンティアンは笑みつつも首を捻る。
「枯れ木に花? のつもりで出たのに、こんなの貰っていいのかな?」
『それじゃ花咲か爺だ…』
いまだ間違ったままだった。
そして、いよいよミス部門。
『――――最上 憐!』
津波のような歓声が押し寄せる。
『まさかのカレー少女が優勝だ。まごうことなき美少女だったが、カレーをあれだけ飲み干すとは思わなんだ…。その姿に思わず涙が』
と目頭を押さえる渡辺。琴線がいまいちよくわからない男である。
『とにかく、学食一年分を得るに最もふさわしい少女だろう――で、最上君は?』
「出店を襲撃中です!」
整理班から声が上がる。
学食からカレーがなくなる日も遠くないと思われた。
こうして、前代未聞の女王不在の授与式の後、ミスコンは無事閉会した。
「お疲れ様でした!」
元気な声を上げ駆け寄ってきたのは、設営や来場整理の面々。ステージに集まり、それぞれが持ち寄った菓子やジュースを広げ、急ごしらえの宴会を開く。そこに残っていた出場者や観客も加わり、たちまち大きな輪ができた。
それぞれの四方山話を披露しながら、賑やかに笑いさざめく。その明るい声は涼風に乗って流れ、赤い陽光が各々の顔を輝かせた。
たった一日の催しに、僅か三分の為に。
彼らがどれだけの時間を費やし、どれだけ心を砕き、どれだけ試行錯誤したのか。
それは口にせずとも、分かる。怒涛の一日を共に過ごした同志だからこそ、十分すぎるほど、理解できる。
見返りなんてないけれど、でも、やらずにはいられなかった。
そんな共感と慰労の空気が、皆を優しく包み込む。
すべては終わりなき青春の為。
これで世界が変わるわけではない。けれど生徒にとっては歴史に名を刻む一大決戦。
それは眩く鮮烈な記憶を残して、今日ここに幕を閉じたのだった。
【了】
