「新しい肉がきたぞー!」
報告がてら肉塊を中央処理台に置いた鎹 雅 (jz0140) に、周囲から歓声があがった。
四国、大歩危。
渓谷の川をゴムボードで下った先、広い河原にはずらりと大型のバーベキューコンロが並んでいた。
「ちょ……野菜切るの間に合わない!」
「もうキャベツは丸ごと持ってけ!」
「ねー肉まだー?」
「今切ってるところー!」
まだ昼になる前だというのに、材料を切り分ける中央処理班の周囲は戦場のごとき有様だ。
「おーい。鮎釣れたぞー」
そこへ川へ鮎釣りに行っていたメンバーが帰ってきた。びちびちと活きの良い天然鮎だ。
「ねー先生ぇ、食べ終わったらラフティング行ってもいい?」
「いいぞ。インストラクターさんの話はよく聞いておいておくれな」
「はーい」
口の端に焼肉のタレをつけたまま、少女達がラフティングの受付へと走っていく。
川原のバーベキューエリアからは弱肉強食の悲痛な声や笑い声、楽しげに歓談する声で溢れかえっていた。
一人一人の笑顔を嬉しげに見守って、雅は巨大なバケツを運び込む。
中にびっしり入っているのは氷とビール等酒類だ。
「さて、二十歳過ぎてる子限定でアルコール飲み放題だ。二十歳前の子等はこっちのジュースで我慢な。どうせ嫌でもすぐに飲める年齢になるぞ」
悲鳴とも笑い声ともつかない声を聞きながら、雅は笑う。
「沢山食べて、いつも元気な子でいておくれね」
天気は上々。
晴れ渡った空は試験を乗り越えた今、なおのこと広く、清清しい。
口の中いっぱいに詰め込んだ焼肉を飲み込み、ふと生徒はポケットに入れていた『お知らせ』を取り出した。
皺だらけのチラシにはこうある。
『四国大歩危バーベキュー大会のお知らせ』
試験後教室に張り出された、今日のイベントのお知らせだった。
皆様、進級試験お疲れ様でした。疲れた分、のびのびと遊んでいただければと思います。
食材費等は全て学園持ちですので、気にせず存分にご堪能ください。
楽しいプレイングをお待ちしています。
●大きな船がやってきた!
「進級おめでとうございますー。よく頑張りましたね〜」
先生がたの挨拶が済み、合格点に達した学生たちの手に、進級証書が配られる。
「今回は、周遊クルーズを楽しんでくださいねー。船はとっても大きくて、豪華ホテルがそのまま入っているみたいだそーですよー?」
久遠ヶ原島の大桟橋に、大型客船の中継船が到着した。
何回かに分けて、停泊中の大型客船へと学生たちを運ぶ。
さて、この大型客船、エメラルド・オーシャン号のウリは、とにかく、美味しい食事である。
広々とした、食堂と言う言葉とは無縁そうな、絨毯敷きの、ゴージャスなディナーホール!
大きくて広くて、かゆいところに手が届く、業務用キッチン!
ディナーホールには、大きなステージがあり、そこで、一芸あるものが何かしらを披露することも出来る。
この度、エメラルド・オーシャン号は、近海をのんびりと周遊しながら、美しい音楽や歌などをナマで披露しつつ、久遠ヶ原学園生に、ご馳走を振舞う手はずになっていた。
「あ、あら?」
だが、しかし‥‥。
久遠ヶ原島で合流するはずだった、料理長たち、配膳係、ディナーショーの芸人さんを含む、スタッフたちのバスが、ことごとく、到着しなかった。
理由は、その直前に起こった、本州での天魔との戦いで、道路がいくつも通行止めになり、バスが立ち往生して、結果、久遠ヶ原島行きのフェリーに、こぞって乗り遅れたからであった。
そんな事情もあり。
料理長不在。(言われれば、細かい仕事をする、下っ端料理人はいっぱいいる)
配膳係不在。(同じく、言われたことだけ出来るお手伝いさんは、いっぱいいる)
ディナーショーの歌手や楽器演奏をしてくれる人、不在。(機材はあるが、こちらはひとりも替えがいない)
食べる人、たくさん。(勿論、久遠ヶ原学園生の皆さんである)
こんな状態で、時間通り、船は周遊クルーズに出発してしまった!
心配そうに船を見送る先生たち。だが、同時に、先生たちは学生たちを信じていた。
「皆さんなら、きっと大丈夫、ですよね」
●それならば!
「わたしたちで、なんとかしようよ!」
海を眺めながら、美味しい食事が出来る。
そう思って、期待もして、でも、どうやら出来なさそうな現状に、がっくりしていた学生の中から、声が上がった。
「そうだね! 僕たちの中にも、料理ができるものはいる。メイドさんだって学園内にいっぱいいる。
ショーのほうも、歌い手さんや、楽器演奏が出来る人はいるんじゃないのかな?」
こうして、一転、学生の、学生たちによる、学生のための手作り周遊ディナーツアーが、幕を開けたのであった。
以下、メイン行動を5つに分けます。
プレイング冒頭に、【※】の要領で、お書き添えください。お願いします。
(※は、以下に説明する「漢字1文字」のことです)
■料理を作る人【料】
料理の指揮をとる人です。「おれはこれを作るぜ!」を重点的にアピールしてください。
細かい作業は、モブの料理人さんが頑張ってくれますので、レシピなどは記述不要です。
船への、食材の積み込みも済んでおり、キッチンも業務用です。何も不足はありません。
■配膳をする人【配】
出来上がった料理を配膳する人です。学園内のメイドさん、執事さんにおすすめです。
メイドらしさ、執事らしさのアピールを重点的にどうぞ。
細かい作業は、モブのお手伝いさんが頑張ってくれます。
■食べる人【食】
とにかく、わたしは飲んで食べるのが専門です! そんな人はこちらをどうぞ。
何を飲んで食べたいか、簡単にメニューを書いておくと、あなたの前に配膳されるかも!
食べっぷりをアピールするも良し、上品さをアピールしながらいただくも良し。
未成年者にはアルコール飲料をお出しいたしませんので、そこはご勘弁くださいね。
■歌う人【歌】
ディナーステージで歌う人です。曲名は出せませんので、あしからず。
どんなジャンルの歌を歌うかや、ステージ衣装を簡単にお願いします。
場合により、演奏者さんと共演になる可能性もあります。
■演奏する人【奏】
ディナーステージで演奏する人です。曲名は出せませんので、あしからず。
どんな楽器を演奏するかや、ステージ衣装を簡単にお願いします。
場合により、歌手さんと共演になる可能性もあります。
上記までに当てはまらない行動をなさりたいかたは、【他】でお願いいたします。
例えば、歌や音楽に限らず、「手品」や「剣舞」「ダンスショー」等を行っても、構いませんよ。
それでは、楽しい周遊クルーズを!
皆様ごきげんよう、フリーシナリオを担当させていただきます、神子月弓と申します。
プレイングは100文字までという制限がございますが、
出来るだけ、ディナーショーを楽しんでいただけますよう、
心を尽くしてお迎えいたしますので、どうぞよろしくお願い致します。
「……かるたを、作るぞ」
何がどうしてそうなったのか、しかもこの季節に。
だが、この人の思考回路をまともに分析しようなどと考えてはいけない。
返り討ちに遭って脳味噌をくず鉄にされるのがオチ――かどうかはともかく。
彼、門木章治(jz0029)の思考は、大抵の場合どこか一般常識とズレているのだ。
しかも多くの場合、何の脈絡もなく突然言い出す事が多い。
今回も、それだ。
まあ一応それらしい理由もあって、しかもいつの間に手を回したのか学園長の了承まで取り付けているらしいが。
「……学園にも、パンフレットや映像……外部に向けて発信する様々な媒体が、ある」
だがそれは大抵、外部の目を意識して作られたものだ。
現場の生徒の声なども一部には取り上げられているが、それだけではこの学園生活の本当の姿を余すところなく伝えきるには不十分と言わざるを得ない。
「……そこで、だ」
学園生活のナマの姿を、学園生自身の言葉で伝える為に。
かつ、遊びを通して撃退士の何たるかを知って貰う為に。
「……かるたの、読み札を考えてほしい」
読み札、つまり「犬も歩けば棒に当たる」や「武士は食わねど高楊枝」といった、読み上げ用の短い文章の事だ。
「……内容は、この久遠ヶ原学園や人口島……或いは、天魔との戦いに関すること、全て……だ」
学園での生活全般を紹介する内容になっていれば、何でも構わない。
「……例えば……そうだな、『恐怖の魔窟、科学室』とか『くず鉄も、みんなで作れば怖くない』……みたい、な」
ああ、自分で言っちゃってるし。
「……まあ、そんな感じで……よろしく頼む」
完成したら、試作品を使って皆で遊んでみる予定だ。
詳しくは解説を参考に。
試験が終わった早々に、また脳味噌を絞るのも難儀な事かもしれないが……
まあ、軽い気持ちで考えてもらって構わないから。
門木が上げた例だって、アレだしね。
皆で楽しく遊べるようなものが出来上がれば、それで良し。
「……では、皆……頑張って、くれ」
という訳で、かるたの「読み札」大募集!
久遠ヶ原かるた・基本仕様:
清音「あ行〜ら行+わ」の46文字
濁音「が行、ざ行、だ行、ば行」の19〜20文字(「じ」「ぢ」はどちらか片方でも良い)
半濁音「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」の5文字
以上の70〜71文字を頭文字にした、読み札・取り札のセットで構成される。
その他「ふぁ、きゃ、ぎゃ」などは最初の文字と、「う゛」は「ぶ」と同一と見なす(例:ふぁ=ふ、など)
応募規定:
・応募数に制限はない。一人で複数の応募も可能(勿論、プレイングの字数に収まる範囲で)
・ひとつの文章は10〜15文字程度が望ましいが、それより長くても短くても可。
・作品の前に、【】でくくった頭文字をひらがなで記すこと。
・作品は「」や『』でくくること。怠った場合、見落とされる可能性がある。
・判読困難と思われる場合には、よみがなを付けること。
例:【き】「恐怖の魔窟(まくつ)、科学室」
題材:
久遠ヶ原学園に関連するコトやモノ、ヒトの全て。
教師、学生、敵、周辺住民なども使用可。
ただし生徒の場合は安全上の配慮の為、名指しは不可。通り名などを使用のこと。
また、ヒトに言及する場合は当人の名誉を傷付けないこと。
自虐ネタの場合も、ほどほどに。また、本人であっても本名の表記は不可。
友人、知人を題材にする場合、本人の了承を得ている事が望ましい。
あまりに知る人ぞ知る的な「一部にだけ有名」な事柄や人物に関しては、不採用になる可能性が高い。
審査:
門木の独断で行われる。
皆が知っている題材や、いかにも久遠ヶ原っぽいもの、楽しいもの、読みやすくリズム感が良い文章は採用される確率が高い。
ひとつの頭文字に応募が複数あり、甲乙つけがたい場合、その判断は学園長に一任される。
また、応募作品がなかった頭文字に関しては、学園長の作品が自動的に採用される。
応募作の全てが採用に至らなかった文字に関しても、同様の処置がなされる。
学園長のセンスに期待。不安な場合は皆で頑張ろう(
その他:
リプレイは主に結果発表の場となります。
採用作品の掲載がメインになりますが、プレイングに採用時の喜びの声や制作時の苦労話などが書かれていれば、それも記載されるかもしれません。
不採用の場合、余程の事がない限り作品の掲載はされませんので、ご了承下さい。
また、応募数の少なそうな文字を選ぶと採用確率が上がるかも……?
或いは事前に分担を協議して、なるべく競合を減らす手もアリです。
NPCについて:
基本的に、公式・非公式・敵味方を問わず、ネタにして頂いて構いません。
名前もフルネームでズバッと書いてOKです。
皆様の主観という事で、ある程度までの弄りは許容されます。
ただし、悪質な誹謗中傷や極端な事実との差違、その他客観的に見てNPCの価値を損なう表現に関しては不採用とさせて頂きます。
無事にかるたの読み札が集まった場合、次回のフリーシナリオではそれを使った「かるた大会」を行う予定です。
勿論、撃退士のかるた遊びですから……室内でちまちま、なんて事にはなりません。
秋空の下、取り札を奪い合って走り回って頂く事になるでしょう。
その際の遊びのアイデアやルールなど、思い付いた事があれば、プレイングにお書き下さい。
次回の参考にさせて頂きます。
お世話になっております、STANZAです。
前回の正月シーズンから温めていた題材です。
その時には自分の担当以外のNPCについて、扱いが難しそうなので断念しましたが……
大規模の一環としてなら出来るかも!?
……ということで、実現にこぎつけました。
楽しい作品を、手ぐすね引いてお待ちしております。ふふり。
では、よろしくお願いいたします。