インタビュー

第ニ回「なろうコン」受賞者、佐崎一路先生のインタビューです。

―まずはズバリ、「第二回なろうコン大賞」受賞の知らせを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

 そうですね、二次選考通過候補作品で残れたので、ひょっとして……という気持ちはありましたけれど、この段階では書籍になればいいなぁと他人事のような感じでしたね。その後、正式に公表され契約するまでは結構悶々としていました(笑)。

−そもそも「第二回なろうコン大賞」に応募したきっかけは?

 ちょうどこの作品が完結したのが11月30日だったのですが、なろうコンの締め切りだったのが12月24日でしたので、なんかタイミングもよいので応募してみようかと。それと作品やキャラクターに未練がありましたので、もしも書籍化できたらいいだろうなぁ、夢だなぁという感じで応募しました。つまり基本、タイミングと勢いです。

−そして見事受賞した『吸血姫は薔薇色の夢をみる』。
ストーリーやキャラクター、構成などで、特にこだわった点があったら教えてください。

 緋雪をはじめとした登場人物のネーミングには結構頭を悩ませました。自分的には日本の古典的単語を意識したのですけど、中二ネーミングですねぇとか感想で言われて頭を抱えたりと。ストーリーはあまり悩まずキャラクターが動くに任せました。こだわったというか、こだわれなかったのが世界観ですね。
 できれば世界のあり方や転生の仕組みについても、未来に設置された天文学的規模の記録媒体が…とか説明したかったのですが、唐突なSF設定は萎えそうでしたので、ほぼファンタジーで完結させました。後になってみればそうしたものはやはり蛇足だったと思うので、これでよかったと思います。

−個性的な主人公・緋雪はどうやって誕生したのでしょうか?

 最初は単に可愛らしい女の子が主人公で、プラスアルファで転生。なら別に人間じゃなくてもいいじゃない、なら吸血鬼なら美女にできるし…とパタパタと決めた気がします。
 男の子から女の子への転生にしたのは、ありがちな小さな女の子が大きな剣を持ってというビジュアルが描きたかったから――でも、戦うのは本当なら分別ある大人の男性がやるもので、女の子に武器を持たせるのは善悪でいえば悪! という意識があったので、妥協の産物として見た目は少女、中身は…という形にしました。緋雪という名前は儚くて矛盾をはらんでいる存在を示したかったので決めましたけど、我ながら気に入っています。

−なるほど、そういう理由があったのですね。
ところで『吸血姫〜』は、ご自身が実際にプレイしていたMMORPG時代の思い出が作品のベースになっているそうですが、具体的に影響を与えたエピソードなどがありましたら教えてください!

 ガチャに課金しまくりとか(笑)。
 まあ私はプレーヤーとしては三流もいいところだったので、緋雪みたいにソロでレイドボスを無傷で狩るとか無理ですね。体験としては、ほぼ回復職オンリーでしたので「回復職は死なないのが前提」とか、あと生産職のギルメンとペアでダンジョン巡りをして、ナイトなら最速20分でボスを倒してクリアできるところ、生産職+回復職ペアで2時間半かけてクリアしたのは実話だったりします。当時の思い出は結構作品に反映されていますが、流石に緋雪やその他プレーヤーの強さはチートですね。

−作者として、印象に残っているキャラクターや場面といえば?

 毎回、緋雪が動くのに任せていたのでどの場面も思い入れはあるのですが、最初の緋雪が目覚めてお風呂でこねくり回され、しくしく泣く場面でとりあえず男の尊厳とか自意識が木っ端微塵にされた場面が、彼から彼女になったターニングポイントなのでお気に入りです。あとは思いつくままに書いた豚骨大王のオークキングと緋雪の掛け合いが、適度に肩の力が抜けてよかったかと思います。それと刻耀はずっと喋らないキャラで、最後の最後だけ喋らせたのは狙っていただけに読者の反響があったときに嬉しかったです。

−『吸血姫〜』連載中にあった、「うれしかったこと」「つらかったこと」を教えてください。

 うれしかったのはやはり感想で「面白かった」とか「緋雪が好き」とか書かれたことですね。それ以前の作品ではあまり評価も感想もなかったので、更新するたびに毎回感想をいただけたのは本当に励みになりました。逆につらかったのは、作品そのものに対するものではなく、私個人の感性などを非難する書き込みです。これは半端なく辛かったです。本当に何回も書かれてやめようかと思いましたけれど、逆に心配してわざわざメッセージを送ってくださった方もいて、そのお陰で最後まで更新できたようなものです。本当にありがたかったです。

−現在進めている書籍化に向けて改稿・加筆のポイントや、どういったあたりを加筆されたのかをぜひ、教えてください。また書籍化にあたっての作業についてのご感想も!

 うっ……。え、えーと、私はとにかく誤字脱字や文章や視点のブレが大きいので、そのあたりをちょこちょこ直しています。加筆は一巻ではあまり大きくはできませんでした。プロローグ部分を追加したくらいでしょうか。ほかは加筆よりも無駄な部分を削る作業のほうが多かったような……。
 書籍化にあたってはできれば一度全部書き直したいくらいだったのですが、あまり手を加え過ぎてもグダグダになりますし、バランスも崩れるのでそのあたりを考慮してWEB版からかけ離れないよう、またWEB版を既に読まれている方でも楽しめるよう調整したつもりです。でも、どうでしょうねぇ。

−あらためてこの作品を振りかえってみて、ご自身の中でどんな作品になりましたか?

 現在なろうで掲載している作品に多大な影響を及ぼした作品になっています。キャラクターや作品構成などでも、この『吸血姫』で成功した部分やできなかった部分、反響のあった部分を考慮して作品作りをするようになりましたので、なろうでの私の基幹ともいえる作品だと思います。

−現在、どんなペースで執筆をしているのでしょうか?

 現在は書籍化作業に向けて一日2〜3時間程度を『吸血姫』関係に費やして、余った時間でなろうの更新用作品の執筆を行っています。連載中の作品については休みの日にまとめて足りない分を書いて、出来上がったらその都度なろうに掲載するという感じで前もって予約投稿するとかの余裕はない自転車操業です。

−好きな小説家や小説作品、小説のジャンルがあったら教えてください。
また小説やMMORPG以外で創作に影響を与えたものなどはありますか?

 最初に影響を受けたのは菊地秀行先生ですね。アクション&ホラーとあと所謂『ロード』もの。旅をして物語をつむぐ……というジャンルが好きです。筒井康隆先生の『旅のラゴス』とか、あとはやはり王道ですが『ボーイ・ミーツ・ガール』はいいですね。古いところだと笹本祐一先生の『妖精作戦』とか秋山瑞人先生の『イリヤの空、UFOの夏』などの流れの作品をいつかは書いてみたいです。
 小説やMMORPG以外で影響を受けたのは、う〜〜ん、本と漫画とアニメしか見ない典型的なインドア派なのでそのあたりでしょうね。もっと恰好いい趣味があればいいんですけど(笑)。

−小説を書き始めたのは何歳くらいのころですか?

 高校に入ってすぐにですね。上記の影響で小説家にあこがれて、自主制作映画を撮ったり脚本を書いたりして、そのついでに短編を書いては送ってたりしたのですが、編集者の方から手紙をもらったりしただけで有頂天で、友人に見せたりしたのですが、あまり評価されなかったので、大学の頃に一度は挫折して諦めました。

−普段はどんなことをされていますか?

 普段は働いています(笑)。
 一応はきちんとした社会人です。帰宅してからと休日にひいひい言いながら執筆しています。

−次回「なろうコン」応募者の方にぜひ、アドバイスをいただけますか?

 えーと、偉そうなことは言えませんけれど、作品というのはやはりトータルバランスが重要なのではないかと思います。奇をてらった発想や設定とかも勿論重要で、半面「ありがちな設定」や「テンプレート」といわれる題材を軽く見る向きがありますが、結局のところ上手に自分なりの作品と融合できるか、自分の個性を出せるか、が重要ではないかなと思います。
 あ、もの凄く先鋭的な作品というのもアリだとは思います。私には難しいですけど。ただそうした作品はかなり評価が分かれますので、安心して読める完成度の高い作品を生み出すのがどちらかといえばいいかなと思います。

−では最後に、応援してくれた、そしていまも応援してくれている読者さんにメッセージをお願いします。

 この「第二回なろうコン」開催中及びそれ以前の作品掲載中、掲載後も多くの方々に応援していただきまして、本当にありがとうございました!
 おかげさまで書籍化というチャンスもいただきましたが、これで一区切りとか安穏とせず、今後とも少しでも皆様に楽しんでいただける作品を描いてみたいと思います。
 願わくば今後ともご支援・ご声援をいただけますよう、心よりお願いいたします。
 どうも、ありがとうございました。

−ありがとうございました。


○「吸血姫は薔薇色の夢をみる」特設ページ