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●シューターモード!

 荒野をゾンビが彷徨っていた。

 フラフラ、歩くそれは――直後、爆走する大型バイクに撥ねられ、宙を舞う。
「ヒャッハー! ゾンビ狩りだァアア」
 ショットガン片手に大型バイクを暴れさせるミハイル・エッカート(jb0544)。
「わあ☆風が気持ちいいー! バーチャルってすごーい!」
 サイドカーには大口径銃を持ってはしゃぐクリス・クリス(ja2083)。
 バイクは暴走をしながらゾンビを撥ねてゆく。進路外のゾンビへは二人が弾丸をぶち込んでゆく。
「奴等はクリスさまの的だぜー! ボク、ダアトだから武器戦闘って憧れだったのー。『美少女』に大型武器は萌え要素だよねー」
 クリスの無邪気な笑い声。ゲームに『入る』前、スタッフへ伝えた希望通りの武器を装備できて大満足だ。
「殺しても殺しても沸いて出てくるんだぜ、こいつは痛快だ」
 ミハイルの散弾銃が、ゾンビの腐った頭を吹き飛ばす。しかし、と周囲を見渡して。
「どこまで行けばいいんだ」
「決まってるよ!」
 びしっ。クリスが指差したのは、ゾンビの群れ。
「ミハイルさん、ゾンビに突撃だよー。大丈夫? できる? じゃあよろしくー」
「よっしゃ!」
 だが。
 ここでバイクが止まってしまったではないか。ガソリン切れだ。ミハイルは舌打ちをし、バイクから颯爽と下りると。
「クリス、ここは俺が食い止める。お前はまだ若い、未来がある。――振り向かずに行け!」
「う、うん言うとおり振り向かないで逃げるー」
 涙を堪えて走り出すクリス――生きろよ、ミハイルは背中で呟いて。
「ここが俺の死に場所か。いいぜ、思う存分暴れてやる」
 バイクに積んだサブウェポン、愛用のアサルトライフルを二丁取り出し。

「全員、かかってこいやぁぁぁーー!!!」

 オートモードON。
 ゾンビの群れへ怒涛の弾幕。立てた死亡フラグと共にミハイルの得点が跳ね上がる。
 しかし、ゾンビ共は弾丸よりも多かった。
 無情なる弾切れ。
 ミハイルへ食らいつくゾンビ共。
「ごふっ……クリス、今までありがとう、楽しかった……ぜ……」
 ミハイルは親指を立てて、ゾンビの波へと沈んでいった……。


「うわーん、ミハイルさんがやられちゃったー」
 走るクリス。犬ゾンビが物凄い速度で追い縋ってくる。弾も切れて絶体絶命、大きく開かれた犬ゾンビのアギト――だがそこに、丸太が容赦なくぶち込まれ。
「普段から大剣を使用していますから、使い勝手が良いですね」
 対ゾンビ最強兵器が一つ、丸太を持った雫(ja1894)だった。彼女は余分な丸太をクリスに渡すと、
「皆さん丸太は持ちましたね。行きますよ!」
 丸太を勢い良く振り回し、周囲のゾンビを叩き潰し始めた。
「お、俺様にかかればゾンビ位どうという事はないぜ!」
 一方三下 神(jb8350)は白目状態で一心不乱にフライパンを振り回していた。周囲にはゾンビの群れ。
「俺様の背後に立たないでもらおうか」
 早くもクライシス状態。普通に遊園地を楽しむつもりだったのに、どうしてこんな所に。やる気はないが、脱出したい。でもヤバイ――が、ここで雫達が彼方に見えた。「おーい!」と全力で呼ぶ。間もなく合流することに成功した。
「え〜っと、此処は私に任せて、先に行ってください? 私、この戦いが終わったら更正しようと思います」
 丸太を手に小首を傾げる雫。
「こんなところにいられるか……私は現実世界に帰らせてもらいます。もう何も怖くないです」
 怒涛の勢いで死亡フラグを立てまくる雫。跳ね上がる難易度。ゾンビが物凄い沸いてくる。「ひぃ」と竦み上がる神とクリス。対照的に雫は神妙に頷いて、
「これ位立てれば良いでしょうか……前に死亡フラグを立て過ぎると、折れるとも聞いた様な?」
 構える丸太。視界の先にはボス級のでっかいゾンビ。
「楽しい……」
 そう呟いて、雫は大量のゾンビの群れとボスゾンビに立ち向かっていったのであった。
 周囲にいる神とクリスはとばっちりである!


「リアルハ○ス・オブほにゃほにゃ……これはやるしかないよね!」
 シェリー・アルマス(jc1667)がスポーンしたのは如何にもな屋敷だった。背後でドアが閉まって開かなくなるアレである。そして早速現れるゾンビ、シェリーは武器を構える、が。
「って、あれ、この武器ピコピコハンマー!?」
 市販のものより大きいから武器にはなるだろうけれど。仕方がないのでぶん回す! ぶん投げる! なぜか手元に戻ってくる!
(なら、下手投げしながら『ピ○レイン!』とか言えば小さく分裂しながら降り注いだりするのかな?)

 降り注いだりした!

「……まぁ、光纏しながら『コ○ハン!』とか叫んでも、敵は凍ったりしてくれないよね」
 なんてフラグを立てていると、向こうの方でゾンビへボンタンを投げまくっているクリスティーナ・カーティス(jz0032)が。
「あ、あそこにいるの、もしかして以前屋上でお会いしたクリスティーナさんかな?」
「む? 学園生か」
「一人は心細いから、同行お願いしてもいいかな」
「構わんぞ」
 ボンタンを手に微笑むクリスティーナ。そうだ、とシェリーは彼女に問う。
「ジョブ違うけど、戦い方も教えて貰いたいな」
「いいだろう」
 そう言って渡されたのは、ボンタン。
「古くから固いボンタンは鉄砲に勝る武器になると言われていたらしい。これは比較的柔らかいが気にするな」
「えっダメじゃんそれ!」
「いくぞアルマス!」
「ええええ強引!?」
 彼女達はこの先生きのこれるのか。多分無理かな!


 場面は変わって怪しげな研究所エリア。
「先生……私、この戦いが終わったら伝えたい事が……」
 みそかれーパンをモグモグしながら、蓮城 真緋呂(jb6120)。
「それはそうとみそかれーパンがあるならステキーマカレーとかよくね?」
 答えたのはゾンビにコブラツイストを決めている棄棄(jz0064)。
「ざわー……? まさか……これは……はっ! 真相が分かったわ! 早く皆に知らせなきゃ! パインサラダ作って待ってて」
「だが奴は四天王の中でも最弱」
「先生が出るまでもありません……ここは私が」
 死亡フラグたて合戦によるエクストリーム会話である。
 それ故に、凄い量のゾンビ(しかも強化型)が沸いてくる。
「棄棄先生と一緒に仲間を助けます! 脱出目指して頑張りましょうね!」
 それに立ち向かうのは棄棄達と行動を共にしている川澄文歌(jb7507)。
 彼女の武器は、歌。手にしたマイクで高らかに、
「ゾンビさんの心も響かせる、そんな歌で――改心させます! 聞いて下さい、恋の南無阿弥☆オブザデッド」
 翻すアイドル衣装。ゾンビの格好から生前を推測し、その嗜好にあった歌を。
「私のサブマシンソングで、ゾンビのみんなのハートを狙い撃ち☆」
 ずっきゅん☆ 改心というより成仏である。周囲のゾンビがじゅわあああと溶ける。それだけでない、彼女の歌で仲間の士気も――
「あ、先生も食べます?」
 上がっているのだろうか、真緋呂は超笑顔で棄棄の口にたこ焼き(アツアツ)を放り込む。
「あっづぁああっぶわハァ」
「せんせー、いっちょ戦術ご教示、お願いしまっす!」
 更にそこへ、天井のダクトを突き破って九鬼 龍磨(jb8028)が棄棄へと挑みかかる! ガチンコ勝負だ、向けるのは拳銃!
「今口の中やばくてそれどころじゃないの!」
 マジレス。

 その様子を、ユウ(jb5639)は物陰から目撃していた。
 彼女の武器は火掻き棒。隠れながら、ゾンビの特性を観察しつつ慎重に進んでいたが、ここで生存者に会うとは。
「共闘しましょう」
 ひらり、今のところ一人でしか頑張っていない状況の文歌の隣。ユウはゾンビへ火掻き棒を振るい始める。隠れて観察しきった成果、パターンは完全に把握している。
 が。
「……数が異様に多くないですか?」
「ちょっと死亡フラグを立てまくった方が!」
 だいたい棄棄と真緋呂の所為。
 この状況じゃ棄棄に挑んでいられない、龍磨は銃を握り直し戦列に加わった。このところ気合いが足りてないぞー、と自分の喝入れに参加したのもある。
「遊んでても、これも訓練である! なーんて」
 頑張ろう。ゾンビへと引き金を引く。
 だがたった五人で、この無尽蔵ゾンビ&黒子を切り抜けられるのか?
 かくなるうえは――!

「私が囮になります、その隙に……大丈夫です、必ず切り抜けて合流します」
「私に任せて、先生達は先に行って」
「私にかまわず行ってください!」

 ユウが、真緋呂が、文歌が。
「これが譲り合い精神」
 龍磨も目を輝かせている場合じゃない。
 連続死亡フラグでゾンビが一気にパワーアップ!
 だがここで真緋呂が小さく悲鳴を上げた。なんと食料が切れてしまったのだ!
「お腹空いた……もう、ダメ……ああ、ゾンビが角煮に見える……」
「落ち着いて下さい!? まずはあそこにある回復アイテムを目指してっ」
 必死に支える文歌。彼女の肩口をがぶがぶする真緋呂。
 こんなんでクリアできるんだろうか。うん、多分無理かな――ユウは遠い目をするのであった。


「やるなら最強目指さんとな?」
「ん、最強は、私達」
 ニヤリと笑った麻生 遊夜(ja1838)に、ヒビキ・ユーヤ(jb9420)がコクリと頷いた。
「楽しそうだねぇ、負けないぞー」
「ん、偶には暴れるのも悪くない」
 来崎 麻夜(jb0905)はクスクス笑い、麻生 白夜(jc1134)はポツリと呟く。
 彼ら四人はチームだ。全員で生き残りを目指す。
「まずは探索だな。情報ついでに武器やら収集すんべ」――と遊夜の提案で、開始地点付近にあった廃村から弾薬や武器、そして軽トラをゲット。今、四人は軽トラで荒野を駆けていた。運転は遊夜、助手席は麻夜、荷台にはユーヤと白夜が警戒にあたる。
「もうすぐショッピングモールに着くみたいだよ」
 地図を手に麻夜が遊夜の横顔を見やる。
「ヘリポートあるかねぇ」
「あればいいんだけどねぇ」
 ゾンビを跳ね飛ばし、軽トラは一層速度を増した。


 ――雁鉄 静寂(jb3365)は対戦車ライフルのスコープからそれらを見ていた。
 彼女と、そして相棒のリョウ(ja0563)がいるのはショッピングモール付近。
 地図を手に、地形把握や物資調達も完了。スマホの通話機能を起動した静寂はリョウを見やる。
「リョウさんは先に行ってください。わたしが目的地まで送り届けてみせます」
「分かった」
 頷いた彼は「囮の設置はこの位でいいか」と呟いた後、「ああそうだ」と静寂を呼んだ。
「雁鉄。コレが終わったら言いたい事があるし俺の秘密を教えながらとっておきの料理を振舞ってやろう。気にするな、フラグという奴だ。それに、お前が俺の後ろを護ってくれるのだろう? 頼りにしている。ん? これもフラグか?」
「了解です。この任務が終わったら……いえ、何でもありません」


「必ず生きて脱出しましょう……フラグってこんな感じでしたでしょうか?」
「フラグってなんです?」
 不思議そうに首を傾げあったのは、黒井 明斗(jb0525)とマリー・ゴールド(jc1045)。「よく分かんないけど楽しめればそれで良いか」と結論が出たので二人は荒野を進むことにした。
「まずはショッピングモールを目指しましょう」
「ついてくです」
「ありがとうございます。あ、これで援護して下さいね」
 明斗は自分の武器であるショットガンをマリーに渡した。マリーの武器がスプーンだったからである。


 ショッピングモール内は屍の楽園と化していた。
「弾の無駄遣いはしたくないんだけどなぁ」
 麻夜のアサルトライフルが銃弾を吐き続ける。狙いは足、倒れたゾンビの頭は、戦場を縦横無尽に駆け巡るヒビキが踏み潰す。己の身体こそ最強の武器。
「弾数制限が、ないのは、強味」
 別方向では、遊夜が拳銃で確実にヘッドショットを決めていた。
「ここぞというときに使う」
 言いながら白夜が構えたのはロケットランチャー。ボス級の巨大ゾンビを吹き飛ばす。
 ゾンビを薙ぎ払い駆け抜ける四人。見事な連携、隙がない。
「ヘリポート……重要施設の、屋上等が一般的?」
 ヒビキが小首を傾げる。クスクス、笑みを浮かべた。
「今日は、熱い一日に、なりそう」

 一方リョウも双槍を振るい、バサラなゲームの如くショッピングモールを突き進む。その進路をサポートする弾丸は、高台に陣取った静寂の対戦車ライフルだ。
 援護の下、リョウが繰り返すのは一撃離脱。質より量で点数稼ぎ。倒したゾンビは可能な限り、集めたライターで火をつける。トドメである。
「雁鉄……装備を奪うだけでは駄目だ。最近のゾンビは止めを刺さないと蘇るからな。こうして――燃やせ。黒子? まぁ似たようなものだろう」

 そうして各々、向かう先は屋上、ヘリポート。

 そこに待っていたのは……
 超巨大ラスボスゾンビ『ナイトメア黒子』。
 子分の黒子ゾンビも超大量。

「ここはボクに任せて!」
「ユーヤが、出るまでも、ない……ここは私が、行く」
「こいつは倒してしまっても、構わないんでしょう?」

 クスクス。麻夜、ヒビキ、白夜、頼もしい女性陣。
「大丈夫、何時も通り。――ボク、この戦いが終わったら先輩と結婚するんだ」
「ここが貴方の墓場」
 作戦通り、麻夜が援護、白夜がボス狙い。
「させない、これで終わり」
「さようならだ、良い旅を」
 ヒビキが、遊夜が、確実にトドメを刺す。
「アイテムが充実してるしチャンスだねぇ」
 出し惜しみはしない、麻夜は手榴弾と火炎瓶を周囲に投擲する。
「ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?」
 爆風に髪を靡かせ、妖艶に笑うヒビキ、少女達。まるでダンスを踊るよう、華麗の一言。
 しかし、だ。
 死亡フラグを立てたナイトメア黒子は、まさにナイトメア。凄まじいビームの一撃で四人の体力を一気に削る。
 よろめいた白夜は「おとーさん」と遊夜を呼んだ。
「なくすと大変だから、預かっていて」
 大事なハーモニカを彼に託し、白夜はロケットランチャーを構え直し。
「こんな相手、私一人で十分」
 たった一人、死亡フラグを立ててナイトメア黒子に立ち向かう。
 ランチャーの一撃。爆風と土煙。
「や……やったか?」
「ん、倒せた……?」
 ダブルでフラグを立てる遊夜と白夜。
 結果は勿論、やってない! 土煙からビームが、再度皆を薙ぎ払う!
 耐え切れず、白夜が倒れてしまった。
「大丈夫……ちょっと休めば……すぐ元気に……なるから……」
 ガクリ。
「絶体絶命、か」
 遊夜はコートのボタンを開け放つ。コートの裏側、そして体に巻き付けられていたのは大量のダイナマイトだ。

「俺に任せて、お前らは先に行け! なぁに、すぐ戻るさ……心配すんなよ」

 自爆特攻。
 吹き飛ばされるナイトメア黒子。
 けれど、その代わりに遊夜は――
 否、彼は無事だった。白夜が間一髪救い出したのである。仲間のピンチに復活は基本だ!
 そんなこんなで四人はザコ黒子も蹴散らしつつ、ヘリポートに到達である。
「見つけた……ユーヤ、こっちに……油断してると……」
「後ろにいるパターンもある」
 ヒビキと白夜の念入りチェック&フラグ。
「大丈夫、問題ない」
 ウンとうなずくヒビキ。完全にフラグである。
「ん、結構楽しかったねぇ」
 麻夜の笑みと共に浮き上がるヘリ。

 やった、クリアだ――


「人間? ああ黒子の変装ですね。騙されません。黒子の罠です。倒します」


 断言。
 それは、対戦車ライフルでヘリに狙い定める静寂。
 容赦なく、引き金を引く。

 どかーん。


 モール内でアイテム収集をしていた明斗とマリーは、なんとかゾンビを退けつつ屋上に到達していた。
「きゃー! きゃああーーー」
 マリーは叫びながらもショットガンを撃ちまくる。明斗は拾ったバットを振り回す。連携は忘れない、互いの死角を補い合う。
 屋上は黒子ゾンビまみれだった。明斗はそれらを足払いして転ばし鳩尾を踏み、マリーは「変なのです」と言いながらも彼を真似してストンピング。
 が、ここで足を滑らせたマリー。
「ひゃうっ!?」
 そのままヒップドロップ、ご愛嬌。
 と、周囲に影が出来たことに気がついた。
 なんだろう? 見上げる。
 そこには、静寂に狙撃され墜落しているヘリが迫っていて……

 きのこ雲。

 リョウは真顔でその光景を見ている他になかった。
 その間にもヒョッコリ顔を出した静寂は、残りの黒子にトドメを刺しつつアイテムを漁っている。
「リョウさん、アイテムはわたし達のものにしましょう」
 山分けです。ニコ。
「そ……うだな……」
「楽勝ですね!!」

 嗚呼、彼女こそゾンビ界に舞い降りし最強のゾンビハンターであろう――。



●ゾンビモード!
 暗い夜は魔の時間。
 夜の主役は生者ではない、死者共だ。

「ウラミハラサデオクベキカー!」
 生存者を駆逐してやる。この世から一匹残らず!
 巨人化はしていない藤井 雪彦(jb4731)、彼と手を繋いだ隣には駿河 紗雪(ja7147)。二人はゾンビカップルである。
「腐ってみるのも良いですよね♪ 腐った雪君も素敵ですよ☆ 良い腐り具合なのです!」
 イチャァ。リア充爆発しろ、という感じで武装した生存者が襲いかかってくる。
「鬱憤を晴らすべく! 大暴れなのです♪ この身腐り果てようとも、塵となるまで共に……!」
 フラグを立てつつ、紗雪の体がぶちゃあした。グロすぎてボカすけど、体内環境フル使用して生存者や黒子を絡めとる感じ。
「くらえ〜腐ってるだけに腐ってるもんばっかり〜☆」
 そこへ雪彦がねばねばぁ〜と納豆投擲。更に牛乳拭いた雑巾も投擲。
「くっさ……おえぇぇ雑巾はダメだ……」
 噎せながらも次の得物。最高に腐っているその名は、
「BL本〜☆ ふふふ……あっあれ? 男?」
 火炎放射器を持ったイイオトコが雪彦をじっと見ている。アイツハキケンダ!
「ちょっ!? 火はヤメテ! 退避ぃぃぃぃぃ!」
 そんな雪彦に手を引かれ、紗雪は飛び散ったパーツを回収しつつ――超能力で生存者へ黒子投擲! 更に巨大槌で生存者をぶん殴る!
「いっぺん……死んで見るです? 一緒に腐ライフエンジョイなのです! いえ、別に薔薇園的なあれではなくてですね」
 紗雪の苦笑。雪彦はそれすらも愛おしくてフッと笑うと、
「やっぱり大好きな子と一緒に過ごせるから……楽しいよね☆」
 そっと、口付け。


 場面は廃研究所。
 ダクトから聞こえたのは「助けて」という声。
「体を這い回って気持ち悪い……。助けてくれ」
 生存者一団の頭上から襲いかかって来たのは遠石 一千風(jb3845)。ぬめぬめとしたゾンビ鰻を全身に纏わりつかせている。
 一千風は彼氏とゾンビから逃げる途中、鰻の養殖場に転落しゾンビ化してしまったのだ。死した彼女の願いは一つ、この気味の悪い鰻を生存者へ渡し、解放されたい。
 嗚咽に似た呻き声。口から吐き出される無数のゾンビ鰻。阿鼻叫喚。
「彼を見つけるまでは、まだ」
 地獄の最中、自分を見捨てた彼を探し……彼女は当て所なく彷徨い続ける。


「地獄がいっぱいになると 死者が地上を歩き始めるんですよぉ」
 黒子の衣装を身に纏い、夜空に紛れて生存者へ急降下襲撃を仕掛けたのはベルティーユ(jc1764)。
 傍らでは天険 突破(jb0947)が、心を無にして彷徨っていた。正にゾンビ、動くものへ無差別に襲い掛かる。
 更にその近くでは鳳 静矢(ja3856)が、生存者や倒されたゾンビを捕食していた。彼は食べた相手の力や能力を我が物にする能力を持っているのである。凶暴性を増した彼は、口から酸を吐いて生存者へ襲いかかった。

 恐るべきゾンビ達。
 生存者は気付くだろう。
 自分達が知らぬ内に包囲されていたことに。

「祭り事は楽しまなければなりませんねぇ それが礼儀というものですよぉ」
 事前調査を完璧にこなしたベルティーユによる作戦である。
 そして、次の瞬間。


 ちゃーらーーー♪ ちゃーらーらー♪


 鳴り響いた音楽。
 突如中空に現れたミラーボールにカラーライト。
 地面からボコーンと現れたゾンビは鷺谷 明(ja0776)。なんかそれっぽい音楽と演出機材を召喚できるゾンビである!
「フー!」
 音楽に合わせて、明が流暢な英語で歌い始めた。
 そして始まる、ゾンビダンス!
 ベルティーユも踊る! 静矢も踊る!
 突破も体が勝手にあわせてしまう! 指揮がいいのでムダにピッタリだ、雑念がないので追随しやすいのだ。ムーンウォークとかも良く分かんないけど後ろにも動けるのだ。

 ゾンビ共は踊り狂う。
 ただひたすら踊ち続ける。
 一心不乱に踊りまくる。

 明はその最前線、爆発も銃弾も回避しながら踊っている。
「フィーバー!」
 踊り終えた明はサタデーナイトな決めポーズ――その視界には生存者が操る戦闘機が迫っていて。
 爆撃と一斉掃射。
 突破は華麗に舞って十回転位して爆発四散。
 明もベルティーユも爆発四散。
 だが静矢は生きていた。ゾンビだけど。
 彼は散っていったゾンビ達を食らう。彼らの力を身につける。
 そして、次の瞬間。


 ちゃーらーーー♪ ちゃーらーらー♪


 鳴り響いた音楽。
 突如中空に現れたミラーボールにカラーライト。
 明の能力を手に入れた静矢は覚醒した。なんやかんやあって全てを食い尽くす凶悪ゾンビになったしなんか巨大化した上に音楽を流し続けるイカれたジュークボックス状態と化したのである!
 だが、そんな巨大静矢を横合いからビームがぶっ飛ばした。

 (V)o¥o(V) デェン

「フォッフォッフォッフォ」
 どこぞの巨大宇宙人っぽいのがズシーンズシーンと現れたのである。
「盛りすぎ設定推奨……? OK、理解した」――そんなクラリス・プランツ(jc1378)である。
「フォッフォッフォッフォ」
 歩く死亡フラグと化したクラリスはハサミ的な手からビームを出して人という人ゾンビというゾンビ大地という大地を薙ぎ払う。殺る気満々だがなんかデカイから動きは遅い。手もハサミだから掴み辛いぞ!
「フォッフォッフォッフォ」
 空を飛ぶ戦闘機のミサイルはハサミで防御し、そしてハサミで叩き潰す。戦車もビームで一網打尽。
 だがここで生存者側の最終兵器っぽいなんか巨大ロボが出てきた。
「フォッフォッフォッフォ」
 ガシーンと取っ組み合うロボと怪獣。クラリスは両手ビームで応戦する。

 ……なんだこれ。(※ゾンビゲーです)

「フォッフォッフォッフォ」
 人類側は強かった。
 立て続けの砲撃がクラリスを襲う。ロボがビームを出す。
 けれどクラリスは逃げなかった。

 怪獣たるもの、華々しく散るもの――

 最終的にロボの必殺技を受けたクラリスは、スローモーションで崩れ落ちる。
 その顔は、やり切った安らかな顔だった。


 刹那、大爆発したクラリスの炎がバーチャルの世界を包んだ。
 人類、そして世界は、ベストオブゾンビ・クラリスによって滅んだのである……。


 今日のまとめ。怪獣は、爆発物。
(※ゾンビゲーです)



『了』

【ゾンビ】オブザデッド・オブ・ザ・デッド 担当マスター:ガンマ








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