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やられてばっかじゃしまらねぇ。今度はこっちの番だな。
非常に危険な任務であるが――俺は生徒諸君を信じてるぜ。しっかりな!
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● 敵の情報を収集せよ――潜入調査シナリオはこちら ●

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桜の蕾が膨らみ始めたある日の久遠ヶ原学園。
数ある教室の中で、ひっそりと閉じられてきた空き教室で埃が舞った。
長い間使われてこなかった教室だ。舞うと言うからには、滞留する空気を乱す存在が現れたという事。
「あーもう、本格的にここを使うなら掃除が必要ね。まぁ、それは律紀に頼むとして」
教室の隅に追いやられていた机の一つをガタガタと引っ張りだしてきたのは、久遠ヶ原学園新聞同好会会長の中山寧々美(jz0020)だ。
明るい栗毛についた埃をぱたぱたと払い、どうにか並べた4つ分の机の上にファイルを幾つかのせた。
当然、机に積もった埃が舞い上がってしまう。
「机もどうにかしないと、インタビューに答えてもらうのも難しいかも」
彼女がわざわざこんなホコリまみれの教室にいるのには、理由が勿論あった。
遡ること数日前。
「中山先輩。ちょっとよろしいでしょうか?」
そう、凛とした学園の顔に告げられたのはいつものように、同好会が発行する新聞の配布許可を貰うべく生徒会室を訪れた時のことだ。
「ななな、なんでしょう? 会長、記事にナニカももも問題でも?」
書かれていた内容は、『四月の馬鹿騒ぎのすゝめ』を筆頭に『今月のおれんじじゅーす』や『探せ学園長?』といった記事だが生徒会長に睨まれるような内容ではないはずだ。今回は。
「いえ、そうじゃなくて。先輩の、力を貸して欲しいのです」
「力?」
やや眉を潜ませた黒髪の麗しい少女。しかし、力という意味においては彼女こそがこの学園における力の頂点に立つ人物の一人だ。
学園鎮護の刀、神楽坂茜(jz0005)が己に力を貸せという。
どうしよう、今月は既にお財布ぴんちのレッドラインで、律紀に頼る算段を立てる私じゃ金銭的な助けは出来ない。いやいや、生徒会長ともあろう方がお金に困ってる訳がないわよね。根拠はないけども。ということは、何かしら……そう、そうよね。人生の先輩に頼るといったら、乙女の相談よね。
「いいわっ、この寧々美が何でも聞いてあげる!」
「本当ですか、助かります。訳あって生徒会のメンバーを表立って動かすわけには行かないので」
近すぎるのは相談しにくいこともあるわよね。
「しかし、事が大事になってからでは遅すぎる案件です。その点中山先輩なら、自然に人からの情報も探りやすいはず」
なるほど。相手の友人関係から探りを入れたりって大事よね。
「で、相手は誰なのかしら?」
「悪魔に唆された、能力者。それも、恐らくは……」
「あの、乙女の相談は…」
「え?」
「え?」
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悲しい事件だったのだ。
回想に耽っていた寧々美は、気持ちを切り替えるように状況を思考にめぐらせた。
「ともかく、引き受けたからにはしっかりやらなくっちゃね」
能力者が人間を襲う。
そういった事件は今までも、少なからず学園の依頼に上がってきていた。
主に風紀委員が取り締まっているものなのだが、今回は風紀委員に任せる訳にはいかないという。
「学園の生徒への積極的な干渉…。だから、学校の生徒を守るべき生徒会が動かなきゃならない」
けれど、問題は繊細なものだ。
人間が人間を襲う。襲える。――天魔と変わらない脅威となりえてしまう。
『出来るだけ、水面下で準備を進めるべきでしょう。中山先輩ならば、そういう立ち回りが出来るはずです』
不安を払拭するため、間違いなく私達は人類の盾として誇るため、強い姿勢を示さなければならい。
なるべく、強いインパクトで根源を絶つ。
即ち――主力生徒を全て動員しての検挙作戦。
「その為にも、作戦を発動するだけの確証の持てる情報を集めて欲しい…か。よし、そうと決まれば取材よ!」
そうつぶやいた寧々美は、手早くメモに予定を書き込むと、勢い良く立ち上がる。
その衝動で埃が大きく立ってしまいくしゃみを連発。
「うぅ、その前にやっぱり掃除かな」
後に【双蝕】という名でファイリングされることになる事件はこうして明るみに出ることとなったのだ。
(執筆:コトノハ凛)
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