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 戦況の推移。
 南部隊はギメルとリカが率いていた伊豆ゲリラ本隊を粉砕し追撃を仕掛けた。
 東南部隊はカラスの伊豆ゲリラ別働隊の前に敗北、東南部隊を粉砕したカラス部隊は伊豆ゲリラ本隊を救援すべくさらに西進する。
 北部隊はイスカリオテの部隊とほぼ拮抗し後退はさせたものの被害も激しく追撃を仕掛ける余力は無く、依然戦力を保持するイスカリオテ部隊と睨みあう。
 北西部隊はガブリエル部隊を撃破、追撃を仕掛けガブリエル部隊は敗走。
 中央、三島市に本陣兼予備戦力を置いていたDOG撃退長西園寺顕家は、北が睨み合い、北西と南が押し、東南が破られて敵が南へと向かう状況にあって、本陣を南へと動かす時、動かせる時だと判断した――北が敗れていれば、迂闊には動けなかったが、北は互角以上だ、三島市の守りを手薄にしても危険が及ぶ確率は低い。東を破り伊豆ゲリラ本隊の救援に向かうカラス部隊へと西園寺部隊は急行し牽制的に迎撃の攻勢を仕掛ける。
 これによってカラス部隊が抑えられている間に南部隊は伊豆ゲリラ本隊をギメルを除いて殲滅する事に成功する。
 また同様にガブリエル部隊を蹴散らした北西部隊は北部隊への援護へと向かい、それを察知したイスカリオテ部隊は離脱を開始。富士山へと退却していった。
 南部隊は、交戦中の西園寺隊への支援へと向かい、その接近を察知したカラス部隊もまた富士山への撤退を決意、大きく撃ち減らされながらも血路を開いて富士山へと落ち延びていった。
 敵味方の数多の骸が転がる荒野。
「博打はこちらの勝ち、でしょうか……?」
 重厚なボディアーマーに身を包み、頭部に赤い頭巾を巻き、突撃銃を担いだ巨漢、カワード・ホスローが総大将に問いかけた。
 周囲の血海を見渡し男は息を吐く。既に周囲に立っているのは人類側だけだが、倒れている人々もまた多い。
 カワードの問に対し、狙撃銃を担ぎくたびれた企業制服に身を包んだDOGの長は、死んだ魚のような目を向けて答えた。
「あぁ……一時はどうなる事かと思ったが、なんとかなった、と言える。こちらの勝利だ。被害は出たが、勝ちは勝ちだ。戦勝だ。勝ったと全軍に伝えろ」
「はっ」
「それと皆に報酬を、特に部隊編成時に編成に協力的だった奴等には規定よりも多めに出しておけ」
「多めに、ですか、財務状況苦しいと思うんですが……よろしいので?」
「信賞必罰、それが俺の流儀だ。DOGになっても俺が頭である限りはそこは曲げねぇ。苦しい時こそな。頑張っても頑張らなくても同じだと頑張った奴が馬鹿らしくなるだろ。そういう組織は強くならない」
「左様ですか」
 西園寺は空を仰ぎ、一つ息を吐くと言った。
「ゲリラ連中は富士山へと去った。仕留めきれなかったのは残念だが、半島からの脅威は消えた。伊豆半島の安堵を確認した後は、次は富士山を落とす」
「この戦力でゆかれますか」
「こっちにも被害は出てるが、敵の被害の方が大きい。成功だと大手を振るって言えるまでではないが――東が破られたからな――しかし、削り合いはこちらが押し勝った。総戦力ではこちらに分があったから、順当な結果、普通って奴だな。だが僅かであってもプラスはプラスだ。余力は無いが、ここは押す場面だし、押せる。多少無理してでも前線は上げる。攻勢だ」
 西園寺顕家は言った。
「イスカリオテの息の根を止めるぞ。次で静岡の戦を終わらせる」
「また正念場……という奴ですな、なかなか楽になりませんが、押し負ける訳にもいきませんな。了解です。では、次の段階の仕込みに入ります」
「頼む」
「はっ」
 巨漢は壮年の男に敬礼すると、骸の広がる戦場跡より去って行った。


 了


エピローグ 担当マスター:望月誠司








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