.








静岡から戦いの報告が上がってきている。
どんな結果に終わったのかは、例によって僕の口から語るよりかは、
報告書に目を通して貰った方が良いだろう……お疲れ様。

◆リプレイはこちらから!◆




大規模連動ピンナップ公開!(2月20日)


クリエイター名:夢観士あさき

※ギャラリーへの反映は後日行いますので、今しばらくお待ちください。


――天の後、悪の狂乱が続く――


リプレイ公開!富士の戦の行方は…!(12月5日更新)

『死天』コンテンツ一覧


MVP発表
特別に活躍した撃退士はこちらで表彰します。
12月5日更新!

功績ランキング
最新情報を確認
12月5日更新!

最新情報
現在の状況を確認しよう
12月5日更新!

公式チャット
公式チャット好評稼動中!
死天を語ろう!

作戦方針掲示板
自分の作戦に仲間を募ろう!
11月20日運用開始!

質問受付所
質問はこちらから。
11月20日運用開始!

とりあえず仲間を探すならこちら!
部員を募集しているクラブに参加しよう

部活から勧誘されたい!
募集掲示板との併用もおすすめ

現在の状況

10月2日の状況


11月10日の状況


11月19日の状況

 久遠ヶ原学園は静岡企業連の撃退士組織DOGの要請に応じて、大動員令を発令、静岡県に撃退士の大部隊が集結しました。
 富士山を陥落させる為に、DOGと学園執行部は改造ジャンボジェット機を用いた空挺作戦を決行する事で合意しています。

 まず地上部隊で富士山を攻めて天界軍の守備部隊を迎撃の為に釣り出し、その隙にジャンボジェット機が高度一万を超える高高度から富士山頂へと接近、搭乗している撃退士達はパラシュートや飛行スキルによる滑空を用いて山頂へと降下、一気にゲート内部へと突入し破壊する、という作戦です。

 しかし、これを実行に移すべく、地上部隊が富士山へと進撃した所で、冥魔の部隊が静岡市へと襲撃を仕掛けてきました。司令部はこれを警戒して守備の為に部隊を残していたのですが、敵は先日までの吸魂の成果によって予想以上の数に膨れ上がっており、防衛部隊は苦戦を強いられている状況です。

 現在撃退士達に求められている役割は大まかに、

1.都市部へと襲撃をかけてきた冥魔軍を撃退して、市民を守り、犠牲者を極力減らす事
2.富士山攻略作戦を成功に導いて、長らく静岡県を苦しめてきた天界軍の富士火口ゲートを破壊する事

 この二点です。
 天使と悪魔を撃退して滅びの運命を打ち払い、この地の人々の生存権を取り戻しましょう。

【死天】の関連人物

天魔についての実力は学園に在する天使や交戦した撃退士からの聞き取りを中心におこなわれており
必ずしも実際の実力とは合致しない。

天使側

サリエル 大天使級 イスカリオテ・ヨッド 天使級?
 富士山火口にゲートを構えていた大天使。神意の執行者、死天使、神の威光を守る者。ゲート近隣地域では主に殺戮の赤い大天使の名で知られる。
 けたたましい笑い声と共に大鎌を振るい、長距離衝撃波、稲妻、魔眼等を操り多彩な攻撃を仕掛けてくる強敵であったが、【死天】大規模にて撃退士に討たれる。

イラスト:Kidu
 元は将来有望な権天使だったが、ハーフの力が発現した事により平天使へと降格された経歴を持つ。無気力と成り果てていた所、富士山のサリエル・レシュの元へと派遣され、彼女等と協力して戦ううちに気力を甦らせつつあったがサリエルは戦死。以降、撃退士と人間を殺す事に執念を燃やし静岡で暗躍している。最終目標は世界を叩き潰す事のようだ。

イラスト:虎井シグマ

ガブリエル・ヘルヴォル 大天使級 リカ 使徒級(下位〜中位)
 かつて静岡県、伊豆の国市にゲートを構えていた大天使。柔和な表情が特徴的な美女だが、放つ言葉と行動は高飛車。かつて反発し合っていたサリエル・レシュと連合して富士市を攻めたが敗北、サリエルは戦死、自身もゲートを失った。現在ではサリエルの後を継いだイスカリオテ・ヨッドの元に身を寄せ協力している。

イラスト:Msuke
 元は死天使サリエルの使徒で、その死後イスカリオテ・ヨッドと力のラインを繋いだ。
 一度は戦場から去る事を決意するも、伊豆に残されたサーバント達の窮状に、再び武器を取り、彼等を指揮した。
 14年の夏に勃発した伊豆半島の決戦にて撃退士達に敗れ討たれる。

イラスト:miru

カラス 天使級
 本名:ヴェズルフェルニル。 日本国内、とりわけ東海地方を活動拠点とする天使。 報告書【闇風】より、動向が届けられている。 文化を知ってからは、興味を持った『鴉』を自称している。過去にゲート展開に失敗、報告書【氷華】にて使徒も喪い、能力は往時より減退している。 性格は至ってビジネスライク。 利・不利の状況判断に迷いはなく、撤退も選択の一つと考えている。

イラスト:大原千万

冥魔側

カーベイ=アジン ヨハナ=ヘルキャット
 フルネーム、カーベイ=アジン・プロホロフカ。子爵級悪魔、プロホロフカ軍団の首魁。血染めの白衣にやたらに鋭利なイェローサングラスがトレードマークな長身痩躯の男。研究好き、というよりも研究以外はどうでも良い、と考えている程に研究にすべてを捧げる男。なおその研究とは、言うならば生命科学研究である。ドクター・カーベイ。狂気の博士。

イラスト:鈴木クルート
 プロホロフカ四獄鬼のうち一鬼。女男爵。カーベイ=アジンの配下にして助手。小柄ながらも足が長く起伏に富んだ体型の少女。滑らかな白金の長髪、雪白の肌、白ストッキングに淡桃色の靴と看護服、頭には髑髏マークのついた看護帽、といった装い。炎の光に魅入られており、破壊と殺戮を撒き散らすのが無邪気に大好き。邪気の塊だが。性悪外道の地獄猫。

イラスト:ヒワタリ

レイガー=ウルヴァリン SW=マーヴェリック
 プロホロフカ四獄鬼のうち一鬼。カーベイ=アジン配下。男爵。「自分探しの旅に出る」と現在行方不明。月夜の狼人。他情報収集中……

イラスト:―
 フルネーム、サイドワインダー=マーヴェリック。プロホロフカ四獄鬼のうち一鬼。カーベイ=アジン配下。旅団長。「働きたく無いでござる」と現在行方不明。蛇剣の侍。他情報収集中……

イラスト:―

シャリオン=メタフラスト
 プロホロフカ四獄鬼筆頭。カーベイの指揮下にあるが客将といった扱いらしい。少将。鬼神の如き強さとの噂がある。「悪魔の勤めには飽きました」と現在行方不明。夕陽の死神。他情報収集中……

イラスト:―

人類側

神楽坂茜 大塔寺源九郎
 久遠ヶ原学園生徒会会長。公的な場所では会長としてきらきらと笑顔を振りまいているが、地の性格は泣いたり笑ったりやさぐれたりと喜怒哀楽が激しい。くたびれ果てたOLのような顔で生徒会室の机に突っ伏している事も多い。基本は穏やかだがいざという時は空気読ない。周囲の頭を抱えさせる事もしばしば。生徒会では司令官的役割の他、対外的な調整を担っていて、営業・外交官的な仕事も多い。

イラスト:四季童子
 学園生徒会書記長。鬼島武が戦死した穴を埋める為、生徒会副会長代理も務めている。三度の飯より歴史書と歌劇が好き。かつては奇行が目についたが、最近は落ち着いているようだ。古い名家の御曹司。かつての大惨事を生き延びた経験を持つ。新制度下では生徒会の書記長として参謀的な役割を担う事が多い。冷静沈着。

イラスト:彩樹

西園寺顕家 エアリア
 西園寺警備保障の社長兼静岡県の企業連合が共同して出資し組織されている撃退士組織DOGの長。前撃退長の山県明彦が暗殺された後、外部より招聘されて新撃退長となった。白髪交じりの黒髪と死んだ魚のような黒瞳、くたびれたコートに身を包んでいる事が多い壮年男。基本的にだるそうだが、やる事には容赦が無い。DOG組織員達からの支持率は低いが、警備保障の社員達からはなんだかんだで信頼が厚い。

イラスト:―
 撃退士組織DOGの副長。金髪碧眼、彫刻のように調った造作の堕天の女聖騎士。豊かな肢体を白の胸当てと具足で包み、細い腰に鋼の長剣を佩く。戦闘時は専ら槍と盾を出現させ、白翼から光粒子を撒き散らしながら加速してランスチャージを行う。一見クールな立ち振る舞いだが「天界の暴虐が許せん故、反抗すべく堕天した」との経歴が現す通り激情家。真っ直ぐな性根故指揮官としては微妙だが一戦士としてはDOG最強と名高い。

イラスト:―

一刀志郎
 撃退士組織DOGの副長。巌のような角ばった顔立ちの初老の男。常に穏やかな笑みを浮かべ、和装を好み、剣豪として名高い。しかし、専ら二丁のPDWやRPGで護衛の後方から支援する事が多く、その鋼をも泥のように断つと評される日本刀を抜くのは稀。黒い噂の絶えない爺さんである。茶をたてるのが趣味。一戦士としても指揮官としても一流だが保身術も一流、敵に回すと厄介だが味方につけても油断できないと悪名高い。

イラスト:―


イメージノベル

10月2日更新分


11月10日更新分


11月19日更新分


 霊峰に雪が降る。
 純白に白く、綿のように舞いながら、静寂を秘めて雪が降る。
 冷風が、山頂に佇む男の頬を撫でた。
 天から地へと音も無く舞い降りるのは、滅びゆく者達に贈られる、凍てついた白布。
 滅びるのは人か、それとも天の使い達か。
 無論。
「人間達だ」
 イスカリオテ・ヨッドは呟いた。彼はこの世界の体制をまだ何も破壊していない。この世界に圧殺された少女達の絶望を、それを見た己の絶望を、昇華するにはこの絶望的な天魔人が争う世界構造社会の仕組みを破壊するしかない。故に世界を破壊する。静岡を滅ぼすのはその第一歩。
 故に。
「俺は負けん」
 黒衣のハーフブラッドは闇色の瞳に破滅の火を宿して、静かに下界を見下ろした。
 黄金白翼の大天使ガブリエル・ヘルヴォルは、そんな男の背をじっと見つめている。
(……大きな風が、吹くのだろうか)
 ヴェズルフェルニルことカラスはそんな二柱を一瞥してから、空を見上げた。
 天からは冷たい雪が降っていた。
 巨大な風が、この富士に向かって吹くならば。
(――打ち消すまで、とね……)
 風を打ち消す者、ヴェズルフェルニルは胸中でそう呟いたのだった。


「ウーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!」
 血染めの白衣に鋭利なデザインのイェローサングラスをかけた男が、身を仰け反らせて哄笑をあげている。
「わぁ〜らいがぁ、止まりませんねぇえええ! 漁夫の利さぁああああいこうぉおおおう!! いぃぃぃぃぃやっふー!」
 冥魔プロホロフカ軍団の首魁、子爵カーベイ・アジンは連日の都市襲撃の成果に上機嫌だった。天使達と人間達とがせっせと殺しあってくれているおかげで、悪魔達は労少なくして多大な成果を獲得できている。
「あっはぁ! 妾達さすがよなマスター! これでこそ悪魔というものじゃあ!」
 可憐な笑みに悪意を乗せて、小鳥が囀るように髑髏帽をかぶった金髪ナースが歌う。カーベイ子爵の助手、プロホロフカ軍団の四獄鬼がうち一鬼、『ヘルキャット(性悪女)』の名を持つ女男爵ヨハナである。
 目をきらきらと輝かせながら少女は腕を振るう。
「天使も人も愚かじゃのう♪ 愚かな感情のもとに愚かな事を言って愚かに争う、かわゆいのう、かわゆいのう、争えー、争えー、もーっと争え〜、あーーーはっはっはっはっはっ!」
 悪魔の博士とその助手は、耳障りな笑い声を共鳴させている。
(……相変わらずですなぁ、このお二人は)
 ボマージャケットにジーンズ、ブーツというあまり異界の悪魔らしくない装いに軍帽をかぶった男は苦笑した。
 エジプト神話のアヌビスの如く人の身に獣の頭部を持つ人狼、ヨハナと同じく四獄鬼の一鬼、『ウルヴァリン(狼の如き)』レイガーである。
 気分屋な彼は、軍団から召集がかかっても、いつもなら無視して雲隠れを続行する所なのだが、
「ああ、戦よ、戦よ、大いなる戦よ、吹き荒れる大風が天地を呑み込み雪原を赤く染めるなら、絶望に哭き叫ぶ魂どもすら燃え上がる、紅蓮に滾る戦場を、飢える狼の元に寄越すが良い――至急であっしを呼び戻したという事は、期待しても良うござんすな猫娘?」
 千の強敵達と拳を交えられるような大戦(おおいくさ)が出来ると聞いて、先日軍団に戻ってきたのである。
「狼男よ、ぬしゃあ、相変わらず――独特な、詩人さんじゃのう」
「ま、下手の横好きって奴でぇ、その通りの詩人にございやす。そして戦士だ。狼の戦士は歌い、歌われ、そうして永遠を戦い続ける」
「自分探しの旅とやらの成果はどうなったのかや?」
 金髪娘が小首をちょいと傾げると、ウルフマスクは獣面に苦笑を浮かべ、
「やっぱあっしにゃ殴り合いしかないようで。骨と肉の軋み声、砕ける音、熱く赤い血潮だけが、俺に生を実感させてくれる。他は薄めた霊酒みたいなもんで、てんで酔えやしない。酔えなければ歌えもしない。人狼の脳髄を焼くのは血肉だけです――他にも何か、世に無いかと思ったんですがねぇ」
「ふぅん、ついぞ見つからなんだか。『メタフラスト(伝説集成者)』は御主が言うそれには飽きた、と言うておったが」
「殺し過ぎたんでしょうなぁ」
 レイガーは思う。それはきっと人間の世で言う"はしか"のようなものだ、と。
 多くは道から戻って来て、そして二度とはそちらの道へは移らない。
 だが、偶に、その道を行ったきり戻ってこれなくなる者もいる。そしてレイガーは、どうやら己は戻れないらしい、と旅の果てに悟った。少なくとも、まだ。
 狼にとって戦いとは、水が合い過ぎて、またそこそこに困難であったから、飽きなどというものはこなかった。あの鬼神のように息を吸って吐く様に殺す、という"作業"の繰り返しにはならない。賭けるべきものがある。
 故に、レイガーにとって、戦いとは手段なのではなく、目的だった。戦いの為に戦う。
 何が愉悦かそうでないかは、本能の部分に関わる事なので仕様がない。
「あるいは、案外少将はあっしとは違うタイプの戦士だったのかもしれませんね。あっしは戦いが大好きさんですが、少将はうんざりしていたのかもしれやせん。あるいは、もっと別の何かの理由なのかもしれやせんが」
「ふぅん。よーわからんのじゃが、ま、多分喜んでくれて良いと思うのじゃよ。此度は存分にぬしの腕を振るえようぞ」
 髑髏ナースは状況をジャケット男爵に説明する。
「――という訳で、人間どもの勢力が富士山を拠点とする天界軍に一大攻勢を仕掛けようとしておる。妾達にとっても天使どもなんざぺぺぺいのぺいじゃがあ、きゃつらにはまだ利用価値がある。生き残ってくれるなら、まだ生き残ってくれていた方が良いのじゃな」
「ほ、じゃあ、あのハーフブラッドに援軍でも出すんで?」
「まさか、妾達は自由の旗を掲げる悪魔じゃぞ」
 地獄猫は赤眼をぎょろりと動かして狼男を睨む。
「神とやらの言う事に諾々と従う狗どもと肩を並べて戦うなど冗談じゃないわ。なので、妾達は妾達で勝手に動く。例によって美味しい所をいただく、それで十分援護になろうよ。それでも足りずに天界軍が潰されたら潰されたでそれも一興、というか、奴等の為に実入りの無い危ない橋なんぞ渡りたくないのじゃ。徹底的に無理はせんしリターンは取ってゆく」
「無理のない生き方なんてのが果たして愉しいもんでしょうかね。勝つと解ってる勝負が楽しいもんかよ」
「妾はラクしてきもちよーく連中を踏み躙りたい、実に楽しい」
 にこりとヘルキャットは笑う。
「まぁその辺は好きにせいよ。妾達は無茶はせなんだが、マスターはぬしに渡すディアボロは好きに使ってくれて良いとの仰せじゃ」
「ほ、豪儀、豪儀、太っ腹でらっしゃる、さすがの我が主君と助手殿だ」
「そーでもしなきゃ、ぬしゃあ、やる気なくして帰っちゃうじゃろが!」
「はて、何のことやら……」
 狼男は明後日の方向へと視線をやる。
「ま、大体は承知しやした。それじゃ失礼さんですが配置をもらえますかね。とりあえず小難しい事は考えずに突撃して敵を殴れるポジションでお願いしやす、あ、出来れば激戦区で」
「注文の多い脳筋詩人ってどうなんじゃろな……」
 そんな事を語り合いつつ、悪魔達はさらなる漁夫の利を得んが為の手筈を整えてゆくのだった。


 二〇一四年、十一月の末、久遠ヶ原学園は静岡企業連の撃退士組織DOGの要請に応じて、大動員令を発令。静岡県に撃退士の大部隊が集結した。
「さて、富士攻めは上手くゆきますかねぇ」
「解らんが、上手くゆかせるしかないだろう」
 学園執行部・親衛隊総長、地上主攻部隊に編成された岸崎蔵人は、隊員からの言葉に常と変わらぬ仏頂面でそう答えた。
 危機において各地を転戦する彼等にとっては、一県の存亡をかけた決戦、というものに参加するのは経験がない事ではない。というか、いつだって負けられない戦いばかりである。
 されど、
「ここまで大規模な空挺作戦っていうのは珍しいですね」
「……確かに、そうだな」
 学園執行部は現在撃退長代理を務めているDOGの一刀志郎の提案に基づき戦略を採択、改造ジャンボジェット機による空挺作戦を決行する事で合意していた。
「地上と空を連携して立体的に攻める……か、一刀志郎氏の発案らしいが、らしくない印象だな」
 今回の作戦は、まず『地上部隊で富士山へと攻撃を仕掛け、敵の迎撃部隊を釣り出す』のが第一。
 その隙にもう一部隊がジャンボジェット機に搭乗して進発する。
 そして敵の目の届きにくい高度一万メートルを超える高高度から、地上で交戦中の敵味方の頭上を密かに飛び越え富士山頂に肉薄、ジャンボジェット機に搭乗している撃退士達がパラシュートや飛行スキルによる翼を用いて降下、一気に富士山頂火口ゲート内へと突入してコアの破壊を目指す、というものだった。
「慎重さが持ち味の爺様にしちゃあ、とんでもなく思い切った作戦ですよな」
 まさかジャンボとは、と隊員が言い、岸崎は頷く。
「ああ、ジャンボを使うのもそうだが、空挺隊は勝敗の行方によっては全滅しかねん。彼等には退路が無い。勝てば良いが、負ければ破滅だ。空挺作戦を上手くゆかせる為には、俺達がしっかり地上から攻めて、敵を引き付けなければならん」
「しかし地上部隊も地上部隊できついですよ。冬の富士山を攻め上る訳でしょ? どういう訳か冬だってのにいまだ山林はジャングル状態ですし、その癖雪だけはしっかり降り積もっていると来る。敵は隠れる場所が沢山で、こっちは素早く攻め上るどころか、満足な機動すら積雪と傾斜のせいで難しい。不利ってレベルじゃないですぜ」
「それでもなんとかせねばならん……幸いなのは、俺達地上部隊は必ずしも勝つ必要はないという事だ。空挺の方が失敗したら、その限りでは無いが」
「あっちが上手くいく事を祈りますよ……で、その為には俺達がきばる必要がある、と。ほんと、微妙な押し加減が必要になりそうで、厄介な事です。無理しすぎて壊滅したら元も子もねぇですし」
「腕の見せ所、という奴だな。学園撃退士ここにありと示してやろう」
「了解です」
 撃退士達が進む先には日本一巨大な霊峰、富士山が聳え立っていた。


「ば、ばっ、ばっ、化け物だーッ!!」
 他方、撃退士達の地上部隊が富士山へと攻勢を仕掛けるのとほぼ同時、静岡市の中心地区に隣接する西部の山岳地帯より、業焔をまとう大鬼や赤眼の大熊、紫色のトカゲ人といった異形の怪物達が出現し、市街へと怒涛の勢いで雪崩れこんできていた。
 異形達の先頭に立つのは漆黒の獣の頭部を持つ狼人。
「やぁやぁお兄さんがたお集まりの所に失礼ですがお控えなすって! 手前はレイガー! ケチな詩詠いにして大冥魔プロホロフカ軍団が四獄鬼の一鬼、レイガー=ウルヴァリンと申しやす! シズオカ市のニンゲンの皆々さまぁ! 小難しい事は申しやせん! 手前等の要求はただ一つ、黙って俺達に殺されろぉっ!!!!」
「舐めた野郎だ! てめぇらが出て来る事なんざ予想済みなんだよッ!! 静岡市防衛隊、迎え撃てぇーーーっ!!」
 静岡市に配備されていた撃退士達が異形達の牙より市民を守るべく武器を振り上げ気勢をあげて突撃してゆく。
 一刀志郎は冥魔の軍団プロホロフカが富士山への攻勢の隙を突いて都市部に襲撃をかける可能性について警戒はしており、DOG本部と空港のある富士市と、県最大級の都市である静岡市へと守備隊を配置していたのだ。
 レイガー部隊と静岡市守備部隊は市の西部で激突し――すると今度は市のど真ん中と東部分にかけてディアボロが突如として出現し、市民を襲い始めたのとの報が入った。
 それは人型のディアボロ達であり、人間のふりをして密かに潜伏していたのである。人に擬態したディアボロによる潜伏からの奇襲についても静岡市の防衛部隊は警戒しており、故にすべてをレイガー部隊への迎撃には出さず、中心部にもいくばくかの撃退士達を残していたのだが、
「馬鹿な……なんという数だっ?!」
 先月からの襲撃の成果によりディアボロの数を増やしていたプロホロフカ軍団は、人型ディアボロの数もまた多く増やしていた為に、市中に残った撃退士達と比べて圧倒的に頭数で勝っていた。
『救援を! 至急救援を請う!』
 この叫びを受けて撃退士司令部は富士市の守備にあてていた部隊を救援として西に送る事を決定する。
 大都市静岡市とDOG本部のある富士市は隣接した市であり、救援に向かえる距離であった。
 だが、静岡市と富士市を繋ぐ東海道、山と海とが迫るその細い狭隘地帯、横砂東町を中心として冥魔の一部隊が通行を遮断するように展開しているとの速報が入る。
「ふっふっふーん、そーんなの読んでるんじゃよ愚か者め。プロホロフカ四獄鬼の名にかけて、ここから先は通行止めじゃよ撃退士どもっ!!」
 それは四獄鬼のうち一鬼『ヘルキャット』ヨハナが率いる足止め部隊であった。


 富士山攻略の地上部隊が白雪降り積もる霊峰へと足を踏み入れ、静岡市で冥魔の軍勢との戦端が開かれ始めた中、山頂のゲートに突入しコアを破壊する任を帯びた空挺部隊の撃退士達は、ジャンボジェットの中で進発の時を静かに待っていた。
「……勝つ……勝つ……なんとしても、勝つ……」
 機内、細い腰に長剣を履いた金髪の娘が、碧眼に鋭く燃える火を宿して、機内の床を仇敵のように睨みつけている。
「勝ってゲートを破壊し、静岡に平和を取り戻す……それが……それだけが、私が死んでいった皆に対して出来る、手向けだ……!」
 元DOG撃退長代理、先に失脚し一戦士となった堕天使エアリアは、そう呟いた。

(執筆:望月誠司)


  (※タイトルをクリックすると表示/非表示が変更できます)



大規模連動ピンナップ

戦闘の思い出を残そう!

戦闘を飾る記念として、大規模連動ピンナップを発売!

クリエイターさんは「夢観士あさき」さん!

完成したイラストは大規模作戦【死天】イメージイラストとして久遠ヶ原学園年表に掲載予定!学園の記録に残るチャンス!

期間がございますので、ご希望の方はお早めに!


●過去に作成された大規模連動ピンナップはこちら!


クリエイター名:jusc0 クリエイター名:やまひつじ

申し込みはすでに終了しております。







推奨環境:Internet Explorer7, FireFox3.6以上のブラウザ