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北上は阻止されましたか……思った以上に彼らの意志は固かったと言うことですね…。
ですが、私も譲るわけにはいきません。
例え忌み責められようとも――この迷いを断ち切ると、決めたのですから。
南下は失敗に終わったか…忌々しい人間共め……。少し甘く見ていたようだな。
次はこの手で葬ってやる。ああ、手加減するつもりも無い。
あの名で呼ばれるなど、いつ以来だったか……くそ…気分が悪い――
皆さん、何とか侵攻は押されられました。力を貸してくれて本当に嬉しかった……!
ですがいつまた戦いが始まるか、わからない状況です。
引き続きどうかよろしくお願いします。九重先生と共に頑張りましょう!

最新情報

2013年10月 現在の情勢





 九州南部に位置する種子島。
 人口三万程度の小さな島に、突如天魔が来襲して早一ヶ月。
 瞬く間に穏やかだった地は戦場と化してしまった。

 南の要地「南種子町」を制圧したのはシュトラッサー・八塚 檀。

関連依頼
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【種子】憂愁の侵日・中央前
【種子】憂愁の侵日・中央後
【種子】憂愁の侵日・左翼
【種子】憂愁の侵日・右翼
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 対して北の要地「西之表市」を制圧したのはヴァニタス・八塚 楓。

関連依頼
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【種子】業火の猛侵・前線大部隊
【種子】業火の猛侵・後方別働1
【種子】業火の猛侵・後方別働2
【種子】業火の猛侵・最後尾
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 各々が北上、南下を目論む中、それを阻んだのは久遠ヶ原の新人生徒達。互いの目的が見えぬまま、彼らは両者の侵攻を抑えるために命懸けで戦い抜いた。
 ひとまず侵攻は抑えられ、現在は小康状態を保ってはいるものの。いつまた両者が動き出すかわからない。

 また一方では種子島宇宙センターが襲われると言う事件も起きており、種子島の状態は余談を許さない。

関連依頼
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【涼風】希望への脱出
【涼風】その思いの向かう場所
【涼風】桂花に灌ぐ慈雨
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 そこで人間側の指揮官九重 誉は島のちょうど中央に位置する「中種子町」に拠点を設置することを決定。
 ともすれば北と南から挟み撃ちにとなり得る危険な場所。
 しかし空港も近く何よりどちらの侵攻にも即対応できるとの理由からの判断である。
「報告を聞く限り、天と冥の奴らが手を組むことは考えられない」
 そう語る誉の目は、何らかの思惑が宿っているようにも見えたと言う。

 その頃、八塚檀・楓両者も各々の思惑で動き出そうとしていた。
 人と天冥。
 三つ巴の思惑が、この小島で交差することとなる。


 「種子島」連動の依頼では、教室に表示される際、左端に左記のアイコンが表示されます。
 種子島シナリオには、原則レベル制限を設定しておりますので
 ご参加の前にご確認いただきますようお願いいたします。

主要 敵NPC

天界勢力

八塚 檀(やつづかまゆみ) シュトラッサー ジャスミンドール 天使(無階級)
 ジャスミンドールのシュトラッサー。楓の双子の兄。弟がヴァニタスになったことを知り、自ら使徒になった。
 外見は20代の青年。口数は少なく伏し目がちで、常に思い悩んだような表情をしている。
 礼儀正しく攻撃性は低いが、状況によっては楓よりも苛烈になるという報告も有り。
 弟に対しては憎しみの感情は無く、ただ救いたいと言う気持ちが強い。また主に対しては素直に感謝をしており、命令には忠実。
イラスト:癸 青龍
 とある事情から種子島に左遷されてきた天使。元は階級持ちだったが、現在は剥奪。
 外見は15歳くらいの少女で、ジャスミンの強い香り漂う神秘的な雰囲気を持つ。
 少女のような無邪気さと、反面人は利用すべきものという合理的考え方を併せ持つ。
 弟を殺すために力を欲した檀を気に入り、使徒にした。彼に対しては愛情に近い感情を抱いている節がある。
イラスト:緑蘿

冥魔勢力

八塚 楓(やつづかかえで) ヴァニタス シマイ・マナフ 悪魔(騎士クラス)
 シマイ使用のヴァニタス。檀の双子の弟。兄とは違い、攻撃的で狡猾冷静な性格。
 外見は兄と同じだが目つきは悪く、いつも不機嫌。口は悪いが兄に対してだけは敬語で喋る。
 元々双子であるが故に起こった事件から兄を憎み、人を憎み、人としての生を捨て自らヴァニタスになった。人間など滅べばいいと思っているし、兄を殺したいとも思っている。
 目的意識が強く感情的になることは少ないが、内に抱える心火が時折見え隠れする。
イラスト:癸 青龍
 騎士クラスの緩い雰囲気を持つ悪魔。外見は40代程度の細身なおじさんで、いつもへらへらしているように見える。が、心の内は見せず腹に抱えているものは多い。
 楓に対しては放任主義で、成果主義。互いに利用し合えば良いと言うドライな感覚の持ち主でもある。
 権力に興味は無いが出世はゲームと考えているため、今回の種子島に目をつけた。
イラスト:北条 梅

イメージノベル

 まばゆいほどの陽差しだった。

 周囲を取り囲む大海は、鮮やかなコバルトブルー。
 水深十メートルを遥かに見通せる透明度は、この国ではごく一部でしか見られない。

「……綺麗な所、やねえ」

 光を反射する水面を眺めながら、ジャスミンドールは呟いた。見た目は十五歳位の少女だろうか。
 陶器のような肌を持った、美しい顔立ちである。
 彼女は妖艶とも神秘的とも取れる虚ろげなまなざしを、自身の隣に居る青年に向ける。
「なあ、檀もそう思う?」
 檀と呼ばれた青年は、どこか憂いを帯びた瞳でじっと海を見つめていた。
 沖からの風に、彼の艶やかな髪がさらさらと流れる。
「檀?」
 再び呼ばれた青年は、はっとした表情でジャスミンドールを見つめ返す。
「えらいぼうっとして、何かあったん」
「……いえ、申し訳ありません。少し……昔のことを思い出していました」
「もう。また『かえで』のこと考えてたんやろ」
 ちょっと拗ねたような彼女の言葉に、檀は苦笑してみせる。しかしその目元から憂いが消えることは無く。
「……美しい島ですね。とても」
「でも、退屈やわ」
 言ってから、うつむく。黙り込んだジャスミンドールを、檀はどうすることも出来ずにただ見つめていて。
「……こんな所で何せえって言うん?」
 こんなはずでは無かった。
 対冥魔作戦で犯した痛恨のミス。敵の罠を見抜くために起こした行動が、逆に罠にはめられる結果となった。
 独断でやったしまったがため、上官がそれを許すはずも無く。
 ジャスミンドールは階級を剥奪され、ここ種子島に左遷されることとなった。
 人口三万程度の小さな島である。
 ここを制圧したところで、何の功績にもならない。要するに、戦力外通告をされたようなものなのだ。
「……ジャスミン様、せっかくの機会ですしお身体を休められては……」
「うち、誰にも何の役にも立たんのは嫌なんよ」
 檀の言葉を遮るように、ジャスミンドールは続ける。
「何とかして、中央に戻りたい。なあ檀、どうすればええやろ?」
 自身を見つめる視線に、檀はどう応えて良いかわからなかった。

●種子島本土

 島を探索していた使徒・八塚檀は、南東の端を通りがかった時にふと足を止める。
 大きなロケットが、地面から宙へ向けて立っているのが見えたから。
「……宇宙センター……?」
 そう言えばここ種子島にはロケットを飛ばす施設があると、聞いたことがある。
 遙か昔、自身が人だった頃の事ですっかり忘れていた。
「ああ……楓とここに来てみたい、と話しましたね……」
 もう二度と戻らない、平穏の日々。
 憂いを帯びた瞳が、さらに深い色を映す。
 檀は人目に付かぬよう気を付けながら、施設に足を踏み入れてみる。
 角張った大きな建物が、幾つか並んでいる。他の地域と違い、ここだけがどこか異質な空気だった。
 ――異質?
 檀はこの違和感が、単なる施設の存在だけでは無い感覚をおぼえた。
 この辺り一体の『気』が、妙に濃い気がするのだ。これは、以前どこかで感じたのと同じ気質。
「これは……ジャスミン様にお伝えした方がよさそうですね」
 檀はそっと施設を離れると、ジャスミンドールの元へと戻っていった。

「檀、ここ凄いわあ」
 宇宙センターまで来たジャスミンドールは、ふわりと微笑んでみせる。
 ジャスミンの香りが、微笑が咲くと共に広がっていく。
「ほら、前にゲート展開に必要な地脈を調べたことがあったやろう? あの時強い地脈がある場所で、ここと同じような感覚を感じたの覚えとる?」
「ああ、あれでしたか。私もどこかで感じたような気がしていたのですが……」
 けれど、ここの『気』はあの時とは比べものにならないほどに強く、濃い。
「ここはねぇ、いわゆるパワースポットなんよ。うちら天使の力を強めてくれる貴重な場所や」
 この地を有効利用すれば、天界にとって有利なモノを作れるに違いない。どう使うかは上が決めることであるため、今自分がすべきことは――。
「檀、うち決めた」
 紅い唇がしなやかに動く。
「この島を、うちのモノにする」
 そう言って無邪気に瞳を細める姿は、少女そのものでさえあって。
 檀は紫水晶のような彼女の瞳を、ただ見つめ返すことしかできない。
「ここを手に入れたら、きっと中央はうちを認めてくれる。そしたら戻れるに違いないんよ」
「……わかりました。ジャスミン様がそう仰るのでしたら……私もお手伝いいたします」
 それを聞いたジャスミンドールは、嬉しそうに。
「ありがとなあ、檀ならそう言ってくれると思ったわぁ」
 それを聞いた檀は、苦笑する。素直に命令をしないところが、彼女らしかった。
「それならなあ、ここに近い南種子町を制圧してくれるやろか。あそこを拠点にしたら、ええ感じになりそうやから」
 その言葉に、檀はうなずいてみせるのだった。

●??

 闇が心地良い、と気付いたのはいつからだろうか。

 物心ついたときには、既にそうなっていた気がする。
 自らの存在すらも分からなくなるほどの、深くて濃い――闇。
「なあ、楓」
 自身を呼ぶ聞き慣れた声に、ヴァニタス・八塚楓は振り返った。
 視線の先には、主である悪魔の姿。
「お前にね、ちょっといい話を持ってきてやったよ」
 緩い笑みを浮かべるシマイ・マナフに、興味なさそうに返す。
「いい話? どうせくだらねぇことだろ」
「おいおいつれないね。お前の兄貴のことだけど、聞きたくないか?」
 その言葉に楓の表情が一瞬にして強ばる。シマイをその鋭い目で睨み付け。
「……アイツがどうかしたのか」
「今、お前の故郷にある『種子島』ってところにいる」
「なんでお前がそんなこと知っている」
 明らかに興味を示す楓を見て、シマイは愉快そうに笑む。普段は何を言っても面倒臭そうな反応しか返ってこないからだ。
「あの島に最近、天界の人間が飛ばされてきたってんでね。興味あって調べてたところだったのよ。
 それがお前の兄貴とその主だったってわけ」

 不機嫌そうな表情を崩さないまま、楓は主を見据える。早く先を言え、とでも言いたげだ。
「それでさ、楓。お前もその島に行ってきてくんない?」
 気軽な言い方だが、命令されているのは分かっていた。
「……行ってどうしろと?」
「多分、天界のお嬢さんはあの地を支配するつもりだから。ちょっと行って、引っかき回してきてよ。
 まあ、平たく言えば横取りしてこいってことね」

 横取り、と言う言葉に楓の表情が反応する。つまりは天界の人間と敵対して来いと言うわけで――
「ほう……好きにやっていいんだな?」
「俺は成果主義だって知ってんだろ? 結果出せば口出しするつもりは無いよ」
 それを聞いた楓は、にやりと口の端を上げ。
「……悪くない。いいだろう、お前の望み叶えてやるよ」

 闇はいい。
 自分の姿を誰にも見られない。
 この顔を見て、何かを言われることも――  

 

●久遠ヶ原学園

 それは、突然の報せだった。

 自身の生まれ故郷である種子島。ここが使徒の脅威にさらされていることを、宇都宮 宙(うつのみや そら)は学園の発表で知った。
 通報を受けた撃退庁からの緊急要請だったそうだ。既に斡旋所では、使徒対応のための緊急招集が始まっている。
「なんでなの……?」
 思わず、言葉が漏れる。
 人口三万程度の小さな島。自然豊かで美しい場所だが、襲うメリットなど到底高いとは思えない。
 それをわざわざ何故?
 宙は不安だった。
 京都や四国の時と違い、今回は目的すらはっきりいない。現れた天使や使徒の強さもまだわかっていないのだ。
 この状況で、一体どれほどの人員があの場所に割かれると言うのだろうか。不安で心が押しつぶされそうになる。
 宙は無意識に走り出していた。自分に何が出来るかはわからない。
 けれどいても立ってもいられなかった。
(行かなくちゃ……!)
 いつか宇宙へ行くと夢見た場所。この美しい地球を守ると決意させてくれた、大事な故郷。
 誰にも、壊させはしない。
 その固い決意を胸に、作戦本部のある斡旋所の扉を叩いた――



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