TOP読み物>イメージノベル 第15話

登場人物

宝井正博
[学園長・43歳]

 久遠ヶ原学園の学園長。
とある大手通販会社の経営者であるが、久遠ヶ原学園の創設者や各機関への人脈や、初期の学園への巨額の投資実績をかわれて遠ヶ原学園の学園長に就任する。
 学園への姿勢は教育方針「生徒の主体性を重んじ、探究心と思考力を養う」そのままに寛容(無責任とも言われているが)であり、非常に穏やかな表現を使えば「快活」な学園の醸成に一役買っている。
 性格は基本的に軽く、学園生徒たちと遊んでいる姿がたびたび目撃されいている。
 撃退士が集う学園の長であるが、彼自身はアウルの活性化能力は保持していない。

クリスティーナ・カーティス
[堕天使・17歳(外見年齢)]

 天魔の侵攻が始まった比較的初期、天界を離脱し人間界に帰属した、いわゆる「堕天使」。
 正義感がすこぶる強く、目の前に魔族のゲートがありながら人類の生命力の吸収だけを主張し、魔族への攻撃を認めない上層部に反発する形で堕天をおこなう。
 現在は久遠ヶ原学園の高校1年生として通学しながら、魔族に関する依頼を中心に受けている。

 本人は袂を分かったとはいえ、かつての仲間である天界と刃を交えるつもりはないが、天界から堕天した裏切り者として命を狙われている。

 辛いものが大好き。
(Illustration. ナイダ ヒカル)
(Illustration. marina)

 

第15話

「原因をまず抑える、ですか」

 執行室。木造の机に着き、指を組んで女が言った。

「うむ、そういうやり方をする連中のようだね。黒瀧辰馬から聞いていた話を元に考えるなら、中山律紀の考えが基礎になっているのだろう」

 眼鏡をかけた美貌の青年が頷いた。貴公子と呼ばれる生徒会執行部の頭脳、大塔寺源九郎である。枕詞に色々つくが。
 中山律紀と火村飛鳥は寮の人間達と交渉して猫を呼び寄せる原因となっていた生塵を大型の収容箱に納めさせる事にしたようだった。
 ゴミ捨てのルールを守らない人間も出るかと思われたが、先に黒紙袋が言っていたように、あの寮に入っていた人間は真面目な者が多かったのでそれは守られ生ゴミが野良猫達の口に入る事はなくなった。餌を与えられる事もなくなったようだ。
 三日も経てば野良猫は完全に寄りつかなくなり、中山と火村の両名は依頼を成功させたようだった。

「報告御苦労様です」
「うん」
「――ところで、源九郎さんそれ、なんです?」

 会話の最中、青年が手に持っている物体に目を留めて女が言った。

「ああ、これかね? これはショップの紙袋に穴を開けたものであるよ。このところ暑かったのでね。気に入った」

 眼鏡を外してかぽりと紙袋を被ってうわははははと笑って源九郎。押しも押されぬ美形だが、学園生の一部には『学園の残念な貴公子』の異称で呼ばれている。  ハテナマークを顔に浮かべて首を傾げている神楽坂へと源九郎は言う。

「正体はバレてないと思うよ」
「……もしかして、変装するのにそんな物使ったんですか」

 嘆息して神楽坂、その上さらに服を脱いで会っていたのだが、それは神楽坂は知らない。源九郎が情報を遮断しているからだ。

「まぁ良いですけどね。それで、どう見ます?」
「これ一件だけで全てが判断つくもんじゃないと思うけど――」

 源九郎は少し考えて言った。
 所詮、雑用だ。だが雑用一つに対する姿勢で示される意志もある。何らかのトラブルでそれが発揮されない時もあるだろうが、その時は双方にとって運が悪かったと諦めるしかないだろう。

「今回の件から判断するなら。問題外とは思わなくって良いんじゃないかね。脳筋って訳じゃないようだ。前回のテストの時は波乱万丈だったけど、今回は無難に終わったね」

 一応、黒瀧辰馬の推薦であるだけはあるらしい、と源九郎は思った。

「では……例の件は彼等に任せても大丈夫でしょうか?」

 黒髪の少女が生真面目な表情で言う。

「そうだねぇ、危急じゃなければもう一つやってもらってからのが良いんじゃないかな。徐々にで良いと思う。まぁ大丈夫そうだとは思うけどね」
「では大丈夫そうならやってもらいましょう」
「会長は果断だねぇ」
「今の状況だと、のんびりはしてられませんから」
「一理はあるか。了解」

 青年はそう言って頷いたのだった。


 日暮れ。
 校舎の屋上から眺める夏の学園は朱色に染まり、大きな太陽が西の水平線へと沈みゆこうとしていた。
 風にはやはり潮の香りが濃い。故郷は内陸の町だったから来た直後はあまり慣れなかったがそれも今では慣れた。

「律紀」

 声をかけられて振り返ると太陽と同じ色の髪の少女が居た。

「火村、良くここが解ったね」
「寧々さんが多分屋上じゃないかって」

 なるほど、と少年は頷く。姉なら自分の習性など良く把握しているだろう、と律紀は思った。屋上といっても沢山あるが。

「何してるの?」
「考え事」

 忙しさに目を回していると考える暇もないが、ぼんやりすると偶に考える。心配性なのだ。昔からそうだった。

「ふぅん」
「明日の天気は晴れかなぁ、とね。綺麗な夕焼けの次の日は確か晴れとか聞いたような聞かないよーな」

 火村にはそう言った。

「雑学ね。確かそうだったと思うわ」

 少女は頷いた。
 火村はそれからちらりと一度青い瞳を寄越して視線を合わせた後に言った。

「ま、あんまり遅くならないうちに切りあげなさいよ」
「――や、もうそろそろ帰ろうと思ってたんだ。良かったら一緒に帰らないかい」

 そう述べると何故か火村は吹きだした。

「へぇ」
「なんだい、駄目かい?」
「いや、なんでも。オッケーよ。それじゃあ行きましょ!」

 少女は笑いながらそう言った。

「何考えてたの、とか聞いても良い?」

 歩き出すと火村はそんな事を聞いて来た。

「とりとめのない考えだけどね。この学園は天魔に支配されないと良いなぁって」
「そう――うん、そうね」

 日本国のあちこちは天魔に支配されていて、多くの人々が犠牲になったり故郷を追われたりしている。中山姉弟もそうだった。
 天魔のゲートの出現数は益々増加してきている。撃退士の数も一時よりは増えてきているが、それに対抗しきれるのかどうか。天魔だけでなく人間同士での問題もある。

「ま、大丈夫でしょう」

 火村は自信ありげに言い放った。

「……根拠は?」

 何故そこまで断言できるのか、疑問に思って問いかける。
 その問いに対して少女は笑って言った。

「勿論、あたし達が頑張るからよ」

 律紀は目をぱちくりと瞬かせた。
 だが、やがて笑った。
 実際の所は、まぁそんな簡単なものでもないだろうが。

「――なるほど、それは確かに、そうかもね」
「うん、そんな訳だから元気出していきましょ! 明日はきっと晴れるわよ!」
「うん」

 頷き、夕焼けの屋上から校舎内へと歩いてゆく。
 空には一番星が輝いていた。



 了






小柄な身長に可愛らしい顔立ち、その割に発…



卒業試験

推奨環境:Internet Explorer7, FireFox3.6以上のブラウザ